JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第132号 2014年7月29日発行 ++ 『第3回アジア太平洋CBR会議にむけて』 JANNETでその開催を決議した、第3回アジア太平洋CBR会議は2015年9月1日(火)から9月3日(木)の日程に向けて準備がすすんでいます。準備の一助としてメルマガで「CBRAP会議をめざして」のコラムを設けて、いろいろな会議に対する期待や意見を載せていくことにしました。 JANNETが発足して間もない1990年代は、80年代後半からのWHOのイニシアティブによって、まるで流行のように各国が競ってCBRを取り入れようとしていた、CBRの第一次黄金期と言えると思います。権利条約の成立に呼応して再びCBRが注目されている今は第二次黄金期になろうとしています。そのためCBR(地域に根ざしたリハビリテーション)をCBID(地域に根ざしたインクルーシブな開発)と言い換えようともしています。 権利に根ざした開発にCBRがいかに貢献できるかは、参加者一人ひとり、そして準備にあたる日本の関係者の肩にかかっています。私たちJANNETのメンバーがどのように関与するのか、会議から何を得ようとしているか考えていきましょう。 広報・啓発委員長 中西 由起子 ++ 目次  トピックス 1.ラオス障害者就労支援事業(2011-2014)から見えてきたもの 2.「ダスキン・アジア太平洋州障害者リーダー育成事業第15期生成果発表会」報告 3.第16回世界作業療法士連盟大会(16th International Congress of the World Federation of Occupational Therapists)印象報告 4.「盲ろう者と国際協力 −ウズベキスタンへの派遣の経験から−」参加報告 インフォメーション 1.アジア太平洋CBR会議ウェブサイト(告知板)開設について 2.国連障害者の権利条約批准国情報 ++ トピック 1 ラオス障害者就労支援事業(2011-2014)から見えてきたもの 平成26年7月24日 アジアの障害者活動を支援する会 会長 八代 富子  当会「アジアの障害者活動を支援する会」は、ラオスの障害者の積極的な就労ロールモデルを育成することを目的とし、平成23年5月より3年間貴日本NGO連携無償資金協力「国際協力重点課題」分野で「ラオス障害者就労支援事業」を行ってきました。  ラオスでは、国が障害者の就労について、法律として支援策を全く行っていません。ラオスはメコン5か国の中でも最貧国であり、障害者の社会参加はなかなか実現せず、障害者が地域で生きるためには多くのバリアが存在します。障害者は最貧困層に位置し、アクセスが悪く、教育を受けられず、生活が困窮している障害者に対し、国による就労支援や職業訓練も少なく、障害者が社会自立の一歩を踏む出すことが難しい状況は今もって変わらず存在しています。  一方、海外NGOによる障害者支援は盛んであり、ビエンチャンの都市部には障害者の職業訓練学校も存在し、また、欧米のNGOが都市部の障害者の就労向上のためのパイロットプログラム等いくつか行われていますが、就労モデルとして成功した例はまだ少ないのが現状です。  「職業訓練の提供だけでは根本的には障害者の収入向上にはつながらないのではないか?」 当会は職業訓練の限界と職業訓練と同様に必要なビジネストレーニングの必要性について長い間、解決策を考えていました。  そこで、当会が考えたのが、新しい形の障害者のビジネスモデルでした。NGO等海外の支援期間が決められており、数年後には終わりを迎えなければなりません。ラオスが社会全体で支える持続可能な障害者の就労モデルの構築を・・・。この目的の下、新しいプロジェクトを立ち上げました。 【文章は続く・・・】 ※全文(写真掲載を含)は下記URLからご覧ください。 http://www.normanet.ne.jp/~jannet/kaiin_hashin/houkoku140729_ml132_01.html + トピック 2 「ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業第15期生 成果発表会」報告 日本障害者リハビリテーション協会 総務課 村上 博行  ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業※の第15期生の成果発表会が、先月6月14日(土)に新宿(コンベンションルームAP西新宿)で開催されました。参加人数は、定員を超える120名の盛況ぶりとなりました。研修生6人は、10ヶ月の研修を修了し7月上旬に帰国します。そこで研修の総まとめとして、研修生も主催者に加わり成果発表会が開催されました。  テーマは、「日本で学んだことと帰国後の活動について」です。今年の研修生の発表の特徴は、研修内容と帰国後の将来プランについて整理されて述べられていることでした。従来は、ホームステイ、スキー研修等の楽しかった研修内容の発表が多かったように記憶しております。しかしながら今回は、帰国後の将来プラン、例えば、障害者に関する法律を国で制定する運動をする(パキスタン)、福祉的就労のカフェのスタッフとして働きながら、社会的企業の育成に取り組む(ベトナム)、公共施設をはじめとしてバリアフリー化に尽力する(タイ)等の発表となっておりました。  更に、全員の発表が終了後には、研修生から本協会スタッフにサプライズでプレゼント(寄せ書き・写真)贈呈がありました。これは今回がはじめての出来事でした。司会の奥平研修課長は、ビックリして受け取り事務所で飾ることを約束しておりました。 日本語研修をはじめ、各地の研修でお世話になった先生方、施設の皆様、また、本事業の委託元のダスキン関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。 ※ ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業 公益財団法人 ダスキン愛の輪基金からの委託を受け、本協会が実施中。 <第15期研修生リスト> ●カルティカ・アンギタ・タヌミジャヤ(インドネシア) ●アイリッシュ・メンデス(フィリピン) ●オマー・パーヴェイズ(パキスタン) ●イー・チャン・ロー(シンガポール) ●ナムチョック・ペットセン(タイ) ●ヌゥン・チョ・ダイ(ベトナム) *関連ホームページ:http://www.normanet.ne.jp/~duskin/ + トピック 3 第16回世界作業療法士連盟大会(16th International Congress of the World Federation of Occupational Therapists)印象報告 河野 眞 日本作業療法士協会国際部 杏林大学保健学部  6月18日(水)〜21日(土)の4日間、パシフィコ横浜で標記の学術大会が開催されました。  この大会は、4年に一度、世界の作業療法士が一堂に会して学術的交流や情報交換を行うものです。いわば、作業療法業界のオリンピックと呼べるかもしれません。  今回の開会式には天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、このことも作業療法業界におけるこの大会の重みを表しているといえるでしょうか。  開催規模は、4日間の総参加者数が約6,000名、うち海外からの参加者が約1,400名という非常の大きなものとなりました。口述発表とポスター発表を合わせた発表演題数は2,500を超え、全容を捉えることすら難しい大きさです。  そこで今回は、筆者がかかわった演題発表を通しての微視的な印象を報告します。  筆者はまず口述発表として、東日本大震災被災者支援の報告を行ないました。災害支援の話題は、残念ながら、作業療法の国内学会では一つのセッションが成り立つ数の演題も集まらないのが現状です。しかし今回は、災害をテーマとするセッションが4日間で7つも開かれました。参加者数から見ても、一つのセッションに約100人集まり、会場に立ち見が出るほどのにぎわいぶりで、世界的な作業療法業界における災害支援への関心の高さを感じました。  筆者はまた、JANNET事務局の上野悦子さんを講師の一人として迎え、地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)をテーマとしたワークショップも開催しました。これも、JANNETでCBRをテーマにしたセミナーを開催すると参加者動員に毎回苦労することは周知の事実と思います。ところが、今回のワークショップでは約80名の参加者を迎えることができました。しかも、そのほとんどは日本の作業療法士です。日本の作業療法士だけでこの人数を集めることができるのであれば、来年東京で開催予定のアジア太平洋CBR会議の参加者動員も見通しは暗くないと意を強くした次第です。  広く世界に目を向け、根気よく発信を続ければ、同じ志を持つ仲間は少なからずいるものだと励まされた学会参加になりました。 + トピック 4 「盲ろう者と国際協力 −ウズベキスタンへの派遣の経験から−」参加報告 内海 旬子 障害平等研修フォーラム事務局長 JANNET個人会員  JICA・全国盲ろう者協会共催企画「盲ろう者と国際協力―ウズベキスタンへの派遣の経験から―」に関する報告会が、2014年6月25日、JICA東京にて開催されました。  このプロジェクトは、昨年10月、ウズベキスタンに日本の盲ろう者および通訳介助員の7名が赴き、実態調査、啓発セミナー、通訳・介助員養成講座等を行ったものです。  今回の報告会では、まず全国盲ろう者協会の福田暁子さんより、何人かの盲ろう者について、名前と顔写真、障害の状況や各々のコミュニケーション手段が紹介されました。弱視のろうベースで手話を使っている人が多い印象でした。報告のまとめに福田さんは9つの「当事者の専門家に求められること」をあげました。この中で特に印象的なのは「互いに思う力」です。「盲ろう者同士が直接触れた時、互いに共有する深い孤独感や深い闇を感じるのです。それと同時に暖かさを感じ、心が輝くことができる。自然に笑顔になっている自分に気付きます。きっとこのエンパワーされエンパワーする関係は、当事者だからこそ築くことができるのかもしれません」というこの力を信じ、尊重することの重要さが示されました。 続いて、同じく現地に赴いた村岡美和さんから、「通訳介助者養成講座」では受講生たちが非常に熱心であったこと、また通訳介助者として同行された杉浦節子さんから「得難い貴重な経験をありがとう」との感想が発表されました。 JICAからは、合澤栄美さんが当事者派遣の意義を、@ロールモデルとしてのインパクトが大きい、A障害者が社会に貢献することを伝えられる、B障害者だからこそ引き出せるものがある、とまとめられました。 JICAの電話会議システムを使用して、ウズベキスタンの盲ろう者たちの話も聞くことができました。画面は鮮明ではなかったのですが、それでも彼らの笑顔につられて私も笑顔になりました。当事者の力を大いに感じた報告会でした。 <事務局より> 標記セミナーで講演された福田暁子さんは7月3日に、公益財団法人世界平和研究所が他分野で国際的に活躍する若い世代を表彰する第10回中曽根康弘賞(奨励賞)を受賞されました。おめでとうございます。 http://www.iips.org/award/winner.html                                                                  ++ インフォメーション + 1.第三回アジア太平洋CBR会議ウェブサイト(告知板)開設について 2015年9月1日〜3日に東京で開催される標記会議のウェブサイト(告知版)がまもなく開設されます。開設時期は8月初旬を予定しています。 サイトのURLは、開設時に会員MLで改めてご案内いたします。 どうぞよろしくお願いいたします。 事務局 + 2.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )      標記条約批准国の国と地域の数は以下の通りです。           計:147の国と地域  (2014年7月28日現在) 国連批准国リスト(英語):http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ 編集後記   来年の「第3回アジア太平洋CBR会議」に向けた動きが徐々に活発になってきています。7月22日(火)には、CBID事例集作成に向けた会議と、第3回アジア太平洋CBR会議実行委員会が開催されました。また、今号より本メールマガジンに、『第3回アジア太平洋CBR会議にむけて』というコラムが開設されました。さらに、ホームページやFacebookページの開始、チラシの作成など、本年10月を予定しているWeb受付開始に向けて、対外的な広報にも力を入れていくことになります。  今号の記事にある「世界作業療法士連盟大会」の報告では、CBRをテーマとしたワークショップや災害支援とテーマとしたセッションが活況を示したことなどが述べられています。このような情報・状況を共有しながら、様々な形で協力し合って、来年の会議を成功させればと思います。 宮本 亮平 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: 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