JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第127号 2014年2月25日発行 ++ 目次  トピックス 1.ポスト2015開発課題をめぐる動き 2.日盲連の国際交流 −日韓交流を中心として− 3.SROI評価研修参加報告 4.2013年度JOCVリハビリテーションネットワークセミナー開催報告 + インフォメーション 1.「開発途上国リハビリレポーター」Facebook、ホームページのご案内 2.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.ふわりんクルージョン2014 ++ トピック 1 ポスト2015開発課題をめぐる動き 松井 亮輔  JANNET会長   2月20日(木)9時30分〜12時、外務省会議室で「ポスト2015開発課題に関する外務省・NGO意見交換会」が行われました。この会議には、外務省からは、持続可能な開発目標(SDGs)交渉官である南 博国際協力局審議官/NGO担当大使が、またNGOサイドからは25団体の30名の関係者(JANNETからは上野さんとわたし)が参加しました。  この会議のサブタイトル「SDGsオープンワーキンググループ(OWG)テーマ別セッション(全8回)を終えてこれからのプロセスを展望する」からもわかるように、2012年6月にリオデジャネイロで開催されたリオ+20サミット(国連・持続可能な開発会議)の成果をフォローするため、2013年3月から今年の2月にかけてSDGs・OWGセッションが8回開かれてきました。その参加国は、6つの国連地域グループから選ばれた日本を含む、30カ国です。これらのセッションでは、貧困削減、食糧安全保障と栄養、水と衛生、生物多様性、社会保護、社会的公正、ジェンダー平等、平和構築等といった多岐にわたる課題についての意見や見解の集約が行われました。南審議官によれば、そこで出た意見や見解について、12項目からなる優先課題をとりまとめた報告書案が2月21日に国連事務局から公表されるということ、そして、OWGでは、その報告書案をベースに交渉をすすめ、7月18日を目処に最終報告書のとりまとめが予定されている、ということです。  こうしたOWGを中心としたSDGsをめぐる動きと並行して、2013年9月に開催されたミレニアム開発目標(MDGs)ハイレベル・パネルの成果をとりまとめた、国連事務総長報告書(「極度の貧困の根絶」「だれも取り残さない」をスローガンに、「貧困を終わらせる、健康な生活を実現する、安定した平和な社会を実現する等、12の目標が掲げられている。」)をフォローするため、この2月から6月にかけて6回にわたる国連総会議長プロセス(テーマ別討議+ハイレベル会合)が開催されるようです。  今年9月の国連総会では、SDGs・OWG報告書と国連総会議長プロセスの成果を踏まえた、ポスト2015開発課題に関する決議が行われます。その決議を受けて、今年12月に出される国連事務総長の「統合報告書」をベースに2015年前半に行われる政府間交渉の成果が、2015年9月の国連総会で「ポスト2015開発目標」として採択されるということです。  2月20日の外務省との意見交換会は、以上のようなプロセスを通してつくられるポスト2015開発目標にNGOの意見等が十分反映されるよう、国際NGOとも密接に連携しながら、政府等に働きかけていくことを意図したものです。この3月にはそうした働きかけをさらに強化すべく、より多くのNGOの参加をえてプラットフォームの立ち上げが予定されています。ポスト2015開発目標に障害が確実に位置づけられるようにするためにも、JANNETをはじめ、障害関係団体がこうしたプラットフォームに積極的にかかわっていく必要があると思われます。 + トピック 2 日盲連の国際交流 −日韓交流を中心として− 指田 忠司 日本盲人会連合国際委員会 事務局長  2010年秋、WBUAP(世界盲人連合アジア太平洋地域協議会)の中期総会が千葉市で開催されました。この総会には海外から約120人の関係者が参加しましたが、うち70人が韓国からの参加者でした。団長は、KBU(韓国視覚障害者協会)の会長、チェ・ドンイク氏でした。総会終了後、代表団一行が日盲連本部を訪ね、笹川吉彦会長(当時)の講演を聴きました。その後の会談で、チェ会長から「今後、定期的な交流として、相互訪問をしてはどうでしょうか」という提案があり、これに応じる形で、翌2011年度から相互訪問が始まりました。             2011年11月には、日本から9人の代表団が韓国を訪問しました。福祉施設の見学を行い、按摩業の状況、差別禁止法をめぐる動向、視覚障害者運動のリーダー育成などについて話し合いました。  また2012年度は、2013年1月に、韓国から代表団20人が京都・大阪を訪問し、福祉施設の見学とともに、日本の福祉制度の状況について研修しました。  そして2013年度は、2013年9月、日本からの代表団14人が韓国を訪問し、障害者スポーツ施設の見学の他、雇用、差別禁止法制、女性視覚障害者、音声解説放送、スポーツなどのテーマについて日韓双方からの報告をもとに質疑を行いました。  こうした相互訪問の機会を通じて、就業問題、差別的扱いの解消、福祉の充実など日韓の視覚障害者が直面する共通の課題が浮かび上がってきました。チェ会長は「日本の福祉制度は韓国のモデルになっています。お互いの制度を理解しあってそれぞれによい点を伸ばしていきましょう」と、今後の交流への期待を語っていました。  日盲連では、2003年5月に国際委員会を設置し、視覚障害当事者団体の国際交流を行ってきました。その活動の一環としてJANNETに加入しています。これまでの主な活動はWBU(世界盲人連合)に関連するものでしたが、最近では、上記で紹介した韓国との交流、モンゴルへのスポーツ協議会代表派遣、フィリピンの台風被災視覚障害者支援など、近隣諸国の関係者との交流の機会が徐々に増えてきています。 + トピック 3 SROI評価研修参加報告 上野 悦子 1月28日に国際開発センター主催の研修に参加したので報告します。 講師は、佐々木 亮さん(SROIネットワークジャパン理事)と伊藤 健さん(SROIネットワークジャパン代表、慶応大学)でした。 SROIとは、Social Return on Investmentの略で、日本語では社会投資収益率法と言われます。社会的活動に対して成果(アウトカム)レベルで金銭価値に換算して評価を行うもので、1990年代後半にアメリカで開発され、欧州で研究開発がすすみ、イギリスではSROIネットワークが誕生し、ガイドラインも発行されています。日本でもSROIネットワークジャパンが設立されています。  SROIの特徴は定量的と定性的(インタビュー)両面で評価ができること、関係者の参加型による合意形成を行えることです。価値が発生するプロセスを数字で共有できるので、関係者間で議論が発生し、組織の能力強化にもなるそうです。これまでは社会的インパクトを数字で説明するのは困難と思われてきましたが、SROI評価により、助成金等がどれだけ社会的インパクトをもたらしたかを数値で示すことが可能になるとのことです。  研修会では2つの事例が紹介されました。いずれも日本財団が助成した日本の障害者支援施設の就労継続支援事業で、設備や機材の購入費用支援なのですが、事業がどういう効果をもたらしたかを見るために日本財団がSROIネットワークジャパンに評価を委託したそうです。 質疑の時間に社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)についてSROIで評価できるかどうかを質問してみたところ、伊藤さんは、できると思うとのこと。厚労省の高齢者の居場所づくりの事業評価で、健康サロンの価値が認識された事例もあるそうです。 感想ですが、事例の就労継続支援事業における関係当事者は行政、財団、利用者、利用者家族。利用者の社会的インパクト分析では、スキルの向上、所得の向上、精神安定の改善、出勤日数が主で、利用者の社会とのつながりがすすんだかどうかまではわかりませんでした。もっとも事業の目的にはいっていなければ評価もされないですが。もうひとつは、資金を出す側が評価方法をよく研究していると思いました。 + トピック 4 2013年度JOCVリハビリテーションネットワークセミナー開催報告 河野 眞 日本作業療法士協会 JOCVリハビリテーションネットワーク 2月8日(土)、京都の佛教大学にて標記セミナーが開催されました。通算5回目となる本セミナーは、今年初めて東京以外の地域での開催となりました。  今回のテーマは、「ミャンマーでリハビリテーションの発展に寄与する専門家、災害後の復興に寄与する専門家」でした。以下に筆者の印象を報告します。  まず、「災害後の復興に寄与する専門家の活動」というセッションで、理学療法士の大垣昌之氏、看護師の宮本純子氏が共に挙げていた「CSCATTT」という言葉が印象に残りました。これは、大規模事故・災害時の医療支援活動に必須な要素の頭文字を並べた言葉です。それぞれ「Command & control」「Safety」「Communication」「Assessment」「Triage」「Treatment」「Transport」を指します。医療支援ではしばしば、後半の「TTT」のみが注目されがちですが、前半の「CSCA」が確立されてこそ「TTT」が機能するとの話でした。「Command & control」という部分を筆頭に、支援活動におけるマネジメントの強調と感じました。  続く、「ミャンマーでリハビリテーションの発展に寄与する専門家の活動」というセッションでは、同国にJICA専門家として3年間赴任していた理学療法士の大澤諭樹彦氏が講演を行いました。そのタイトルは「国際協力の現場から学んだプロジェクトマネジメント―ミャンマーリハビリテーション強化プロジェクトの経験から―」です。その中では、大澤氏がチーフアドバイザーとして携わったプロジェクトのマネジメントについて、具体的な例を挙げながら非常に分かりやすく解説がなされました。  我々リハ職はしばしば自分の専門分野のみに目を向けがちですが、今回のセミナーは、2つのセッションを通じて、「マネジメント」という全体への視線を促す内容になっていたと感じています。                                                                  ++ インフォメーション 1.「開発途上国リハビリレポーター」Facebook、ホームページのご案内 青年海外協力隊 モンゴル 平成24年度1次隊 理学療法士 小泉 裕一   2月1日から、世界中で活動する青年海外協力隊リハビリテーション職種の有志により、開発途上国リハビリレポーター(以下:リハレポ)という情報発信企画をはじめました。現在、世界20ヵ国以上で活動する隊員がリハレポに参加し、定期的に活動の様子や現地の状況についてウェブ上でレポートをお届けしています。 現地に溶け込んで日々生活するからこそ気付けること、現地の方々と日々活動するからこそ分かること、現地の決して十分とは言えない設備、システム、その環境の中で日々葛藤するからこそ考えることなど、日本の方々にも我々の経験や置かれている状況を共有できればと思いこの企画をはじめました。 途上国での経験は多角的な視点をもたらし、その経験や得られた知見は日本社会でも役立つと思っております。JANNETメルマガの読者の方々にもリハレポをお楽しみ頂ければ幸いです。どうぞ応援よろしくお願いいたします。 Facebookページ https://www.facebook.com/reharepo  ホームページ http://reharepo.com/  ☆JANNET Facebook (https://www.facebook.com/JapanNGONetworkonDisabilities)と相互に情報発信をしていければ良いですね。(事務局) + 2.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )     標記批准国の国と地域は以下の通りです。                                    計:141の国と地域  (2014年2月24日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.ふわりんクルージョン2014  JANNET団体会員である日本地域共生協議会、そしてNPO法人ふわり、社会福祉法人むそう共催の標記プログラムについてご案内します。 ◆テーマ:〜明るく楽しい社会的包摂〜◆ 日時:3月22日(土)〜23日(日) 場所:KFC(国際ファッションセンター)ホール3階      東京都墨田区横綱1-6-1 プログラム(概略)  3月22日(土)   講演@ 社会的包括の主人公は地域のみなさんです! 〜生活困窮者自立支援法など〜          講演者:厚生労働省 熊木 正人氏   セッション@変革は遠いところ小さいところから 〜地域に根差したその人の価値を最大化する取り組み〜   セッションAスペシャルニーズのある子ども達にずっと寄り添う            〜0歳から100歳までを豊かに暮らせる地域包括ケアを創る〜 講演A すべての子どもの命が輝く日本に! 〜私は母になりました 野田聖子・わが子との愛の闘い 講演者:自民党総務会長 野田 聖子氏 特別シンポジウム 小児在宅医療・介護の明るい未来!    〜医療依存度の高い子どもから子育て支援施策を考える〜 交流会 3月23日(日) 分科会 セッションB 発達障害を支える人材の質を高めるには   〜ローマは1日して成らず人材は何日にしていかに成る?〜 行政説明   春からの障害福祉はこうなります!         厚生労働省障害福祉課課長 辺見 聡氏 セッションC 老障介護時代の地域を明るく照らす暮らしとは   〜地域生活支援拠点・グループホーム・介護保険活用など〜 ◆詳細・申込み(案内および申込書PDF版) http://hiromoto.up.seesaa.net/image/jcci13E381B5E3828FE3828AE38293E382AFE383ABE383BCE382B8E383A7E383B32014E6A188E58685E7ACAC2E5BCBE.pdf  *上記案内および申込書PDF版、および詳細は下記でもご覧いただけます。 http://hiromoto.seesaa.net/article/385414690.html https://www.facebook.com/events/419655488136130/?ref=22 (Facebook) ◆お問合わせ:ふわりんクルージョン2014事務局 担当:瀬、山口           TEL: 0569-89-6237, FAX: 0569-22-4073, Email: icci@inclusion.jpn.org ++ 編集後記   今回の豪雪では3年前の震災の時と同様に、地域で自立生活している障害者の状況把握がたいへんでした。5時間歩いて障害者宅まで出向いた介助者もいました。 地域に根付いた介助体制の構築は今後も続けていかねばなりませんが、環境問題も無視できません。障害者の生活が影響を受けていることは明白な事実となってきています。気候変動の日々の生活への影響は勿論のこと、環境汚染は見えないかたちで徐々に障害者を含めた私たち皆の生活を蝕んでいます。 MDGに加えSDGにも国際的障害者運動は取り組み始めました。国際的な課題に私たちも無縁ではいられません。先進国より、途上国の人々、特に障害者など弱い立場の人が大きな影響を受けているはずです。私たちももっと環境問題で発言していきませんか。 中西 由起子 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/