JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第120号 2013年7月29日発行 ++ 目次 + トピックス 1.ワーカビリティ・アジア会議2013 “すべての人に価値ある労働を” 開催! 2.「障害インクルーシブ開発、バングラデシュでの進展」(JANNET研究会)に参加して 3.CBR公開研究会in名古屋「CBRマトリックスを使って考える」参加報告 4.国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)セミナー 「地域ぐるみの福祉先進地域に学ぶCBR」報告 + インフォメーション 1.新団体会員のご紹介 2.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.アジア・コミュニティ・センター21主催プログラムのご紹介 ++ トピック 1 ワーカビリティ・アジア会議2013 “すべての人に価値ある労働を” 開催! 佐藤 ふき ワーカビリティ・アジア(WAsia)事務局、きょうされん事務局  2013年7月1日〜3日まで、マレーシア、クアラルンプールにて、ワーカビリティ・アジア(WAsia ※2013年総会で略称がWASからWAsiaに変更)会議2013が開催されました。参加者は、12の国・地域から、36人の海外参加者を含む約150人、WAsia会議の単独開催としては過去最高の参加者数となりました。障害当事者、障害当事者団体、障害者支援団体、国会議員、研究者、マスコミ関係者等多岐に渡る参加がありました。  1日目の午前中には3人から以下の基調講演がありました。 1.国連ESCAP上級専門官サン・ユンワ氏:「新10年・新戦略−障害者の権利のためのアジア太平洋イニシャティブ」 2.ワーカビリティ・インターナショナル(WI)会長、オーストラリア全国障害サービス(NDS)最高執行責任者パトリック・メアー氏:「すべての人に価値ある労働を−真の改革に向かうオーストラリアの旅路」 3.マレーシア高等裁判所弁護士シム・ホイ・ホン氏:「マレーシアの障害者ワーカビリティ、どこから始めるか」  1日目の午後には、トヨタ財団の助成を受けて開催したワークショップ“すべての人に一定の収入を伴う労働を”(2013年3月、フィリピン)参加者の「もっと多くの人とこのワークショップの成果を共有したい」という意見を受けて、WAsia会議2013の中でワークショップを再現しました。香港、台湾、マレーシア、日本、タイから障害者の就労を高め、就労を通じて障害者が社会に参加する実践事例が報告されました。  2日目は、マレーシア・中国・フィリピン・パキスタン・スリランカ・ネパール・香港・インド・台湾の14人が、自国で展開する障害者就労促進活動について発表しました。  3日目は、WAsia2013年総会後、“すべての人に一定の収入を伴う労働を”プロジェクトの最終報告書作成にむけて互いのアイデアを交換し、午後からは障害者の働く事業所を2カ所見学しました。  各国の経済状況や社会保障制度のあり方は本当に様々ですが、それぞれの国で地域の実情に応じ、創意工夫に富んだ、障害者の生活を支える就労活動があります。このような団体のネットワークとしてWAsiaは、メンバー団体間の情報や実践の交換を核として、アジア地域で障害者の就労や生計創出の底上げを目指します。また、ワーカビリティ・インターナショナル(WI)を通じて、アジアの豊かな知恵を世界に発信することをメンバー間で確認した会議でした。 本年より、「アジア太平洋障害者の10年(2013-2022年)」がスタートし、その行動指針である「インチョン戦略」のゴール1は「貧困削減と雇用機会の創出」です。WAsiaの目的と合致するこのゴールにいかに到達していくか、新たな段階においてWAsiaの積極的な役割が求められています。 + トピック 2 「障害インクルーシブ開発、バングラデシュでの進展」に参加して 小池 宏美 公益社団法人日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)  7月10日に戸山サンライズで標記のセミナーが開催されました。CBRは、CBID(コミュニティベースのインクルーシブ開発)へと進展しています。JANNETでは、バングラデシュのNGO CDD(Centre for Disability in Development)の協力を得て、2005年から2008年までバングラデシュの障害と開発の活動を学んできました。今回はCDD所長 ナズムル・バリさんを招いて、その後のCDDの活動の進展と、障害の開発への組み込みの成果を学びました。  CDDは、障害のインクルージョンに関するリソース組織として、1996年に設立されました。障害のメインストリーム化(社会主流化)に関する意識向上、能力開発、技術援助を行っています。その目指すものは、生活全般における障害者の機会均等と完全参加です。障害当事者をエンパワーメントし、アクセスなど社会における具体的な障害を取り除き、加えて障害の問題を主流化することで、すべての人々のための社会を作ることに取り組んでいます。その目標を達するための活動の一つが組織に対しての訓練で、これを障害者自身が行っています。コミュニティが、障害者に対してポジティブなイメージを作ることが大切、とナズムル氏は語ります。CDDは、開発関係の団体に関心を持たせるべく、働きかけを行いました。その団体がよい活動をしていれば、コミュニティとはすでに信頼関係を築いているはず。つまり、コミュニティに入っていくインフラは既に出来上がっているのです。そのような団体メンバーに対してトレーニングを行い、障害者を含めたインクルーシブ開発に繋げていきました。障害者の人々と協力し合うことにより、全ての人々のためのインクルーシブな社会を作ることが出来る、というナズムル氏の言葉が印象的でした。 + トピック 3 CBR公開研究会in名古屋 「CBRマトリックスを使って考える」 支え合いコミュニティを作りだすために 〜日本の福祉現場から、アジアの草の根での実践から〜 参加報告 山崎 眞由美 特定非営利活動法人名古屋NGOセンター 副理事長 2013年7月13日(土)  於名古屋国際センター   主催:日本障害者リハビリテーション協会 参加者・関係者総勢 76名  今回の公開研究会は、名古屋開催ということで格別の意味がありました。中部圏で活動する2団体の取り組みを取り上げて、「これまでCBRを知らなかった」という地元の参加者と共に、支えあいコミュニティをつくりだすCBR理解を深めました。東京に出向いて学ぶ従来の学びとは一味違う、CBRの「community-based=地域に根ざした」という根本のところの意味を体感できたプロセスでした。  運営チーム(JANNET・AHI・起業支援ネット・むそう・ふわり・草の根ささえあいプロジェクト)は、CBRマトリックスに焦点を当てて、当公開研究会の目的を「身近に感じるCBRマトリックスの理解」に置き、オープンな形で事前準備会を開催し、大阪や長野からの参加も得てそれぞれのCBRマトリックス理解と現場での活用を共有し合い、どうすれば参加者が自分の活動に照らしてCBRを取り込めるのか、話し合いました。  制度をうまく活用して小さなサービスを地域に分散させ、複数を組み合わせて利用できるようにして地域生活支援システムを構築している「むそう・ふわり」は、制度の限界を超える開拓的な活動を起こしていたにもかかわらず、教育や医療に関してニーズには応えていなかったことに気づかされたこと、「草の根ささえあいプロジェクト」は、どの活動もCBRマトリックスの3 項目(スキル開発、パーソナル・アシスタント、アドボカシーとコミュニケーション)に集中していることに着目し、それしかしていないのではなく社会的に孤立している人たちにとってもっとも大切なことに当たってきたのであり、問題に寄り添うなかで、地域の社会資源につないでいって各人のニーズに即して項目がひろがっているのが見て取れたことを共有し、両者にとってCBRマトリックスが活動を展開する上での重要なツールになっていることが語られました。参加者は、力を得て自分の活動に当てはめてみることに挑戦し、更には  CBRマトリックスに追加したい重要項目を挙げるまでの勢いになりました。海外ゲストのナズムル・バリさん(CDD)の講演が効いていたことはいうまでもありませんが、主役は地元に取られてしまったようです。 + トピック 4 国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)セミナー 「地域ぐるみの福祉先進地域に学ぶCBR」報告 弓中 夏子 国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)  2013年7月15日(月・祝)に大阪府堺市の国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)で「地域ぐるみの福祉先進地域に学ぶCBR」が日本障害者リハビリテーション協会様との共催にて行われました。講演内容を一部紹介致します。  基調講演ではバングラデシュのNGO・Centre for Disability in Develop ment (CDD)の所長ナズムル・バリ氏にお話頂きました。CDDはバングラデシュで活動するNGO等に障がいインクルージョンのための人材研修・啓発資料・教材・財政支援・組織開発を提供しているリソース団体で、政府や自治体に必要な法律等を作るよう働きかけもされています。  CDDの活動領域はリハビリサービス・生計手段・教育・外科手術・補装具など多岐に渡り、ライトバンや船舶に機材・スタッフを積んで村々を回りリハビリサービスを提供されている事例等を紹介頂きました。障がいインクルージョンの実現にはメインストリーム化、リハビリテーションとエンパワメントが必要であることを説明されました。  CDDが得られた教訓も紹介頂き、変化はほとんどの場合緩やかであるため忍耐強くなる必要があること、協働する組織は各々独立した存在で独自のペースと変化のプロセスがあるので、それらを尊重する必要があることが特に印象に残りました。  パネリスト報告では、東近江圏域働き・暮らし応援センター“Tekito−”センター長の野々村光子氏と、社会福祉法人むそう 愛知エリア長 兼 日中活動部センター長の五味紘子氏にご講演頂きました。お二人が「困っています、手伝ってもらえますか?」「ありがとうございます」という言葉で支援している方々や地域の方々に働きかけられていることをお聞きして、支援すること・人のつながりを作ることについて自分が持っていた認識が改められる思いが致しました。  セミナーの最後にバリ氏から「小さくスタートすること、すべてのことにトライしようとしないこと。一粒の水滴も、集まれば雨のように大量の水となるのだから」とアドバイスを頂きました。                                                                   ++ インフォメーション 1. 新会員のご紹介  今月、JANNETに1団体会員、2個人正会員の入会がありましたことをご報告いたします。新団体会員を下記の通りご紹介いたします。  ●日本地域共生協議会(Japan Council of Community Inclusion:JCCI)    誕生したばかりのネットワーク団体です。すでに人材育成、情報交換をおこなっています。主に日本国内の障がい福祉分野で活動をしていますが、CBR研究会への参加、および将来的には海外での活動も視野に入れたいということです。その他の活動については下記URLをご参照ください。 http://jccinclusion.seesaa.net/article/355957478.html 事務局長は戸枝陽基さんで、事務局は社会福祉法人ふわりに置かれています。代表者はNPO法人とやま地域福祉ネットワーク代表の岡本久子さんです。戸枝さんにはこれまでもJANNET研究会等でご講演いただいており、また2015年第3回アジア太平洋CBR会議の組織委員もお引受いただきました。 +   2.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )  新たに標記批准国となった国と地域は以下の通りです。                      133. シンガポール                                   計:133の国と地域  (2013年7月26日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.アジア・コミュニティ・センター21主催プログラムのご紹介  標記センターがアジア5か国6名のNGOリーダーを招き、8月6日、7日の両日に下記3つのプログラムを開催します。プラティープ・ウンソンタム秦氏 (ドゥアン・プラティープ財団創設者/事務局長、タイ)も6名のNGOリーダーの一人として、8月6日の公開セミナーならびに7日のシンポジウムでご登壇されます。  ●公開セミナー「アジアのNGOリーダーから見た日本企業のBOPビジネス −期待と提言−」    日時:8月6日(火) 17:00〜20:00    場所:味の素(株)本社(東京都中央区)    申込締切日:8月2日(但し、締切日前でも定員90名に達した時点で締め切る場合もある)    詳細・お申込:http://acc21.org/news/seminar0806.html  ●公開シンポジウム「震災復興を支える人たちを結ぶ −スマトラ沖地震と東日本大震災−」 日時:8月6日(火) 18:00〜21:00    場所:グラントウキョウ ノースタワー 17階 大和スカイホール (東京都千代田区)    申込締切:8月6日正午まで(但し、定員200名になり次第締め切り)    詳細・お申込:http://acc21.org/news/sympo0806.html  ●アジアのノーベル賞「ラモン・マグサイサイ賞」受賞者3名によるシンポジウム開催 「アジアをつなぐNGOとソーシャルビジネスの役割 〜ラモン・マグサイサイ賞受賞者が語るアジアの未来〜」    日時:8月7日(水) 13:30〜17:00    場所:立教大学池袋キャンパス (東京都豊島区)    詳細:http://acc21.org/news/sympo0807.html  *事前のお申込不要 ++ 編集後記   シンガポールが7月18日に障害者の権利条約に批准しました。批准国はこれで133カ国となります。 日本でも、2011年の障害者基本法の改正、2012年の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)、今年の障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(差別解消法)が成立し、条約批准への準備が整いました。2017年までの5年間の障害者基本計画案では、「基本計画の対象期間中にできる限り早期に同条約を締結することができるように、所要の準備を進める」と明記されました。 今後は、政府の批准がスムーズにはこばれるように、また特定の条項を留保することがないように監視していかねばなりません。この際、再度条約の全文を読みなおしてみませんか。 中西 由起子 JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/