JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第117号 2013年4月26日発行 ++ 目次 トピックス 1.フィリピンでアジアの障害者就労を高めるワークショップ開催! 2.「パートナーシップ」をテーマにした国際会議を開きました +   インフォメーション 1.新団体会員のご紹介 2.加盟団体の法人名移行について 3.出版物(著:指田 忠司氏)のご案内 4.2012年度CBRセミナー報告書DINFホームページ掲載のご案内 5.第一回CBR世界会議報告JANNETホームページ掲載のご案内 6.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.平成25年度JANNET総会ほか 開催のご案内(5月25日) ++ トピック 1 フィリピンでアジアの障害者就労を高めるワークショップ開催! 佐藤 ふき WAS事務局  WAS(Workability Asia、ワーカビリティ・アジア)は、アジアで障害のある人に就労支援を提供している団体が加盟するネットワークです。現在12カ国・地域の33団体が加盟しています。WASでは、公益財団法人トヨタ財団より「2012年度アジア隣人プログラム」の助成を受け、このプログラムの第1フェーズとしてフィリピンで障害者の就労を高めるワークショップを開催しました。  2013年3月20日〜22日まで3日間のワークショップの会場となったのは、マニラ市郊外リザール市のタハナン・ワラン・バグダナンです。日本語では「段差のないセンター」と訳されるこの団体は、政府からの一切の資金援助が無い中、広大な敷地を確保(無償で借用)して障害者就労センターを運営しています。働いている人の2/3は障害のある人たちで、車いす製造、木工製品、縫製、薬のパッケージングなどが主要な事業です。現場の責任者はほぼ車いすの女性というパワフルなこのタハナンの会議室を借りて、WASワークショップが始まりました。  ワークショップのテーマは、“すべての人に一定の収入をともなう労働をプロジェクト(Project on Gainful Employment for All)”です。日本、香港、台湾、フィリピン、マレーシア、タイの参加者が、それぞれの国・地域での障害者の就労を促進するためのグッドプラクティスを発表しました。各々の発表の後には、討論の時間をたっぷり確保し、積極的な質疑応答を通じてお互いの国・地域の状況や活動について理解を深めることができました。もちろん参加したWASメンバーの結束もさらに強くなり、WASの未来につながる大きなステップとなりました。  このワークショップの報告に加え、各国・地域の障害者の就労施策を比較できるデータをまとめて、プロジェクト第2フェーズとして報告書を作成します。第2フェーズを推進する委員会も立ち上がりました。完成した報告書は、WASの加盟団体だけでなく、アジアで障害者の就労支援に関わっている関係者に広く配布する予定です。アジアのすべての障害者が一定の収入をともなう労働機会を得ることを目指して! + トピック 2 「パートナーシップ」をテーマにした国際会議を開きました 白幡 利雄 海外活動グループ チーフ シャプラニール=市民による海外協力の会  シャプラニールは南アジアのバングラデシュとネパール、それに小規模ではありますがインドで、いわゆる社会開発を中心とした活動に、様々な視点から取り組んできました。2000年度に入ってからは、バングラデシュの農村部で生活する障害者への支援を始め、2012年度からは一つの独立したプロジェクトとするまでになっています。2009年度CBR研究会で事例報告をしたご縁もあり、昨年からJANNETのメンバーになりました。  私たちは、現地での支援活動の手法を、ローカルスタッフを自ら雇用する「直接実施」から、現地NGOを通じた「パートナーシップによる実施」に切り替えるという、日本では比較的珍しい経験をもっています。現地の問題は、現地の当事者や、周囲の人々が自ら取り組んで解決していくことが理想であり、私たちはその活動を支えながら、現地の社会を変えていくチカラになりたい、という考えからのことです。  この過程で、シャプラニールの農村事務所に現地NGOとして独立してもらったり、特定の専門性をもった組織と新しくパートナーシップを結んだりと、多様な関係を構築してきました。JANNETのメールマガジンを購読されている皆さんの中にも、現地のNGOなどとパートナーシップを組んで活動されている例がたくさんあることと思います。  今回、「国際協力におけるパートナーシップ」をテーマにした国際会議を、トヨタ財団の助成をもらい、東京と大阪の2ヵ所で実施することができました。東京では4月8日(月)の午後に3時間、また大阪では4月10日(水)の夜2時間半にわたり、NGOリーダーやODA関係者とともに議論をし、一般にも公開するという形で行いました。バングラデシュからは、障害者支援活動のパートナーであるPAPRI(パプリ)の代表を含む2人とネパールから1人を招待し、東京会場には、JANNETの上野さん、メンバーのJOCS大江さん、ワールド・ビジョン・ジャパン片山さんにも参加していただきました。  まだ日本ではあまり議論されたことのないテーマでもあり、結論は出せませんでしたが、議論をこれから展開していくための多様な視点の整理をすることができた、と思います。今回の会議の内容を広く共有するため、報告書をまとめています。シャプラニールのパートナーシップにつき、会議のために分かりやすくまとめた映像素材とあわせ、広く無料で配布したいと考えています。完成の際には改めて紹介しますので、乞うご期待! + トピック 3 コーヒーアワー「障害と開発」シリーズ第38回 概要報告(4月19日開催) 中安 将大 プロジェクト・コーディネーター 国際協力グループ 日本財団  世界銀行事務所、JANNET、日本財団が共催するコーヒーアワー「障害と開発」シリーズ第38回が、4月19日に世界銀行情報センター(東京都千代田区)で開催されました。今回は、「アジアの途上国における視覚障害教育の現状と取組みについて」のテーマで、国際視覚障害者教育協議会(ICEVI)名誉会長のLawrence F. Campbellさんと、元筑波大学教授の鳥山由子さんが講演しました。  Campbellさんは視覚障害者の教育について、「全ての視覚障害児のための教育」を中心に講演されました。途上国では子供たちの教育アクセスを改善すべく様々な取組が実施されてきてはいるものの、視覚障害児への教育が依然として十分行き届いていない現状を説明された後、「今までの活動から得られた教訓を今後に活かし、各国政府だけでなくNGOなどの関係団体が協力・連携することでより多くの視覚障害児に教育を提供することが大切です」と指摘されました。  鳥山さんは、東南アジアにおける視覚障害者の教育や就労の機会を改善することを目的として視覚障害当事者が中心となって実施しているON-NET事業の事業評価についてお話されました。視覚障害者にとってPC及びIT技術は日々の生活や教育、仕事に至るあらゆる場面で重要な存在になっている中、PC及びIT技術の取得及び普及、及びそれに伴う視覚障害当者のネットワーク構築に本事業が果たした役割が大きいことが説明されました。  Campbellさんと鳥山さんの講演の後には質疑応答が行われました。ある参加者からの、教育よりも先に解決すべき問題があるのでは、という鋭い指摘に鳥山先生は「同時に様々な問題解決にあたるべきで、その中で自分が出来ることをやることが必要はないでしょうか」と答えられました。今回のコーヒーアワーには30名近くの参加者があり、途上国における視覚障害教育への関心の高さが伺われました。                          ++ インフォメーション + 1.新団体会員のご紹介  JANNET新団体会員をご紹介いたします。各団体の詳しい活動内容については下記URLからご参照ください。 ●シャプラニール=市民による海外協力の会 (2012年8月入会)  http://www.shaplaneer.org/ バングラデシュとネパールを中心に、南アジアの貧しい人々が抱える様々な問題の解決に向けて取り組む団体です。本号「トピックス」では、海外活動グループチーフ・白幡様に団体の活動についても触れていただいています。 ●笹川記念保健協力財団 (2013年4月入会) http://www.smhf.or.jp/ 世界のハンセン病とハンセン病に由来する様々な問題を世界からなくすための活動と、公衆衛生の向上、および日本国内でのホスピス緩和ケアの普及と質の向上に取り組む団体です。 6月16日には笹川記念保健協力財団とJANNET共催でハンセン病についての勉強会も予定されています。(詳細は決まり次第ご連絡いたします。) 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。 + 2.加盟団体の法人名移行について 複数の会員団体が法人名の移行をおこないましたので、まとめて以下の通りご案内いたします。 <正会員団体> 【旧】財団法人 アジア保健研修財団 → 【新】公益財団法人 アジア保健研修所 (団体名称の変更有) 【旧】社団法人 日本キリスト教海外医療協力会 → 【新】公益社団法人 日本キリスト教海外医療協力会   【旧】社団法人 日本発達障害福祉連盟 → 【新】公益社団法人 日本発達障害連盟 (団体名称の変更有)   【旧】社団法人 日本理学療法士協会 → 【新】公益社団法人 日本理学療法士協会 【旧】財団法人 全日本ろうあ連盟 → 【新】一般財団法人 全日本ろうあ連盟 【旧】社団法人 日本作業療法士協会  → 【新】一般社団法人 日本作業療法士協会 <賛助会員団体> 【旧】財団法人 広げよう愛の輪運動基金 → 【新】公益財団法人 ダスキン愛の輪基金 (団体名称の変更有) + 3.出版物(著:指田 忠司氏)のご案内  JANNET元役員の指田忠司さんが出版しましたのでご紹介します。  本のタイトルは、『世界の盲偉人−その知られざる生涯と業績』で、2012年11月1日に社会福祉法人桜雲会から発行されました。ISBN978−4−904611−23−4(国際標準図書番号)。拡大文字B5判で282ページ。価格は税別2,800円。 桜雲会の連絡先はこちらです。(http://homepage2.nifty.com/ounkai/)  内容は、欧米を中心として17世紀以降に活躍された視覚障害者と視覚障害者の教育や福祉に尽力した請願者、合わせて74人の生涯と、業績が紹介されているそうです。  指田さんは著書について、まえがきでこのように述べておられます。 「・・・私がこうした人々の人生の歩みとそこで勝ち得た業績を紹介したいと考えたのは、これらの人々の実践を知ることによって、私自身が驚き、励まされ、またその生き方に共感したからに他なりません。 (中略) 海外の視覚障害者の生涯と業績についてまとまった形で紹介した図書は、わが国には例がありません。本書が視覚障害者の方々だけでなく、視覚障害教育や福祉の仕事に従事する方々、また、日常的に視覚障害者の生活と関わりのある家族やボランティアなど周囲の方々にも広くお読みいただき、それぞれの生き方を考え、今後のわが国の視覚障害教育や福祉の展開について考える上で活用していただければ、それに優る喜びはありません。」  皆さま、ぜひご一読なさってはいかがでしょう。                                                        事務局・上野 + 4.2012年度CBRセミナー「CBR vs 三方よし」報告書DINFホームページ掲載のご案内 先日、会員ML等でもお知らせしましたが、昨年10月にリハ協が開催した標記セミナーにつきまして、録音の文字起こしによる報告書冊子が完成し、さらに同内容をDINFホームページに掲載しました。下記URLからご覧いただけます。 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/20121013CBRseminar/index.html  冊子については以前お送りしたMLでもご案内しましたように、ご希望のご連絡をいただいた会員の方に1部ずつ配布(郵送)しております。ご希望の方で、まだご連絡いただいていない方は事務局・佐々木(sasaki.yuka@dinf.ne.jp)までメールにてご依頼ください。 + 5.第一回CBR世界会議報告JANNETホームページ掲載のご案内  昨年11月に開催した標記会議の参加者による報告がJANNETホームページにアップされましたのでご案内いたします。下記URLからご覧ください。 http://www.normanet.ne.jp/~jannet/cbr_net/cbr_01sekaikaigi121126-28.html  内容は、本メールマガジン2012年12月号で特集として掲載したものとほぼ同様となります。  どうぞよろしくお願いいたします。 +   6.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )  標記批准国の国と地域の数は以下の通りです。                          計:130の国と地域  (2013年4月25日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.平成25年度JANNET総会ほか 開催のご案内  下記の通り、JANNET総会等の開催日程、場所について再度、ご案内いたします。 【日時】 5月25日(土)  13時〜14時45分 JANNET総会 15時〜17時  2015年第三回アジア太平洋CBR会議に関する会合                         *会員の方はご自由に参加ください。 17時過ぎ〜 懇親会(会費制) 【場所】 戸山サンライズ 2階 大会議室  詳しいご案内はまもなく会員MLにてお送りいたします。ご出欠用紙も一緒に送らせていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。 事務局      ++ 編集後記    4月23日に、厚生労働省から「地域包括ケアシステムの構築における今後の検討のための論点」が公表されました。高齢者を主なターゲットとして語られていますが、地域包括ケアシステムは「障害者や子供を含め、地域のすべての住民にとっての仕組みである」と明記されています。少子高齢化の進展が不可避な状況の中、公的制度のみで支援が必要な人達の生活を支えることは困難であり、地域の人たちの支え合いによる互助の役割が強調されています。ただ、どのように互助を促進するか具体的な提案に欠けました。ここでいう互助を促進するためには、世界に数多く存在するCBRの実践が日本の福祉の向上にも参考になるものと考えられ、シャプラニールの「パートナーシップ」をテーマにした国際会議の報告の中にある、当事者や周囲の人々が自ら取り組んで解決し、地域社会を変えていく活動は、まさに日本でも求められていることであると思いました。 宮本 亮平 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/