JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第115号 2013年2月27日発行 ++ 目次 トピックス 1.国際開発学会「障害と開発」研究部会 2013年度第1回部会報告 2.インチョンでの会議と、世銀コーヒーアワー参加の感想 3.第20回海外技術協力セミナーの開催 + インフォメーション 1.インチョン戦略日本語版(JDF仮訳)、ウェブサイト掲載のお知らせ 2.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.JANNET役員会およびCBR世界会議報告会 ++ トピック 1 国際開発学会「障害と開発」研究部会 2013年度第1回部会報告 森 壮也 日本貿易振興機構アジア経済研究所(JETRO-IDE) 開発研究センター貧困削減・社会開発研究グループ 主任研究員  去る2013年1月12日(土)、千葉県幕張のアジア経済研究所において国際開発学会障害と開発部会の2013年度第1回部会が開催されました。報告は、磯部陽子さん(JICA人間開発部社会保障課特別嘱託)による「日・英、アジア太平洋におけるインクルーシブ教育・特別支援教育」と川越東弥さん AAR Japan(難民を助ける会)による「パレスチナにおける障がい者支援―ガザ地区アトファルナろう学校」の二件でした。  磯部報告では、同氏が英マンチェスター大学に提出した博士論文での日英の障害児教育の比較をベースにアジア太平洋の実情、特に知的障害者の本人活動についてご報告を頂きました。特にアジア・太平洋の知的障害者の本人活動では、タイの当事者団体立ち上げから、ミャンマー、カンボジアと本人グループが形成され、3つの組織のネットワーク「知的障害メコン地域ネットワーク」が結成された過程をご報告頂きました。全体としてアジア・太平洋の事例のように、当事者が支援する側になれるような支援が大切な一方、途上国の教育者のニーズと支援する側の支援したいものの間のズレの問題が指摘されました。  川越報告では、パレスチナ障害法(1990年)が未だに施行されていないことや、イスラエルとの戦いで障害を負った場合にはリハビリ代免除などの特典があるといいます。また障害調査(2011年)の結果、聴覚障害の原因として近親婚が従来言われていたのとは異なり、病気29%、加齢21%、先天性17%であったということです。この他、米国、パレスチナ、日本のNGOが共同で設立したアトファルナろう学校の紹介もありました。ろう者がスタッフとして多数関わり、手話教育、給食・制服の無償支給で、キャンセル待ちになるほどの人気だといいます。職業訓練のほか、ろう者によるカフェもオープンさせています。一方、高等教育については、手話通訳がないため、地元の大学に通うことが依然、難しいとのことでした。 + トピック 2 インチョンでの会議参加の感想と世銀コーヒーアワーの感想 福田 暁子 全国盲ろう者協会:国際情報委員会委員  インチョン会議に関しての率直な感想は、Something about us with us(「いちおう私たちも参加し、何やら私たちのことを話しているのに、なんだかわからない」)です。「支援者というフィルターが存在しなければ、声が届かない障害者もいる」ということが忘れられているかもしれない危惧感について考えるきっかけになりました。  障害者という社会的に弱者といわれる存在の中で、マイノリティグループの声をすくい上げるメカニズムが存在するのだろうか、存在しなければ、工夫して築いていかなければならないと思います。そのような、聴こえない声を拾えてこそ、障害者団体の集まりとして強いものになるのだと思うのです。  会議では、事前に活字障害者に対しては、データでの資料提供がなされなかったりして苦労しました。結局、会議前日に現地事務局で交渉をして、自分の持ち込みのUSBに配布資料などをもらうことができ、ホテルで読んでから会議に参加しました。そうでもしないと、音声通訳から触手話通訳にしたものを理解する私の場合、どうしても内容を確実に理解すること難しいのです。触手話通訳者は、発言内容だけでなく、会場の様子も通訳しなければなりません。そのような支援者がいて、支援者というフィルターを通して初めて、私は参加することができたわけです。私のような盲ろう者の声というのはなかなか届かないものだと思いました。他にも、会場にはいるけれども、明らかについていくのが難しい障害者もいました。Nothing about us without us(「私たちのことを私たち抜きにかたらないで」)の難しさと課題を突きつけられたように思いました。  また、1月16日に世界銀行のコーヒーアワーに参加して、インチョン会議・インチョン戦略のダイジェストを藤井克徳さん、また、世界盲人連合の動向について田畑美智子さんから聞くことができました。インチョンでの会議に参加したことの意味を改めて感じました。参加者の中には、開発分野で障害について深く関わったこともない人もいたので、内容もとてもわかりやすくまとまっていてよかったです。  おふたりの発表とは、直接的な関連がないですが、テレビ番組のひと場面、東日本大震災の中での障害者に関するDVDの予告編などが、上映されました。私は、触手話通訳を読み取りながら「ああ、これらの素晴らしい内容のものでも、私は自分の力だけでは理解する方法がないのだな」と再度思いました。情報保障、情報格差とはいいますが、音声以外のコミュニケーション方法をとる者にとって、フィルターとなる支援者の存在と質で理解度は大きく変わってきます。当事者主体の支援者確保・育成に関する専門部会を設けるなどできないものかと思いました。 + トピック 3 第20回海外技術協力セミナーの開催 田口 順子 公益社団法人日本理学療法士協会 JANNET役員  第20回海外技術協力セミナー(日本理学療法士協会・日本作業療法士協会共催)が1月26日、27日に開催されました。会場となった田町の日本理学療法士協会カンファランスルームには約100名が参集しました。  1日目は基調講演として「タイにおける高齢者ケア」と題して竹林経治氏(厚生労働省)がタイ王国社会保障アドバイザーとしての経験からアジアの高齢者の問題を中心に、次いでハンドヨ チャンドラクスマ博士(元ソロCBRDTC所長)が、インドネシアのCBRがどのように進化しているかについて、CIR(コミュニテイ主導型リハビリテーション)について説明、また、小柴巌和氏(三菱UFJリサーチ&コンサルタンテイング株式会社)からは、「国際貢献の未来をソーシャルビジネスの観点から提言する」について話されました。  小林義文氏の司会で参加者との活発な議論が行われアジアの高齢者並びに国際貢献としてのBOP(Bottom of the Pyramid)ビジネスへの関心の高さを伺わせました。  20年前、CBRとは何かをCBRの創始者の一人であるハンドヨ博士の来日が機となり海外技術協力セミナーの開催につながりましたが、20年を経て再び招聘することができました。ハンドヨ博士はCBRの概念がグローバル化とともにCIRと変わり、近隣国を含めたインドネシアでの現在の実践活動について話されました。  17時からは同会場で20周年記念式典が行われ、日本理学療法士協会長 半田一登氏が祝辞を述べ、日本作業療法士協会長 中村春基氏、JICA人間開発部 合澤栄美氏、元衆議院議員 山口和之氏らよりお祝いの言葉が述べられました。  2日目は海外で国際協力の活動を担ってきた人々による実践活動報告が行われました。 協力隊からの派遣者 中村謙太郎氏(マレーシア2004年)、宮崎愛弓氏(ベトナム2007年)、柴本 勇氏(ベトナム・ウルグアイ2006年)、幸福秀和氏(ウルグアイ2006年)、米本竜馬氏(タイ国2011年)らの現地活動報告がありました。来年6月に日本の横浜で開催される世界作業療法士連盟学術大会についての準備進捗状況が日本作業療法士協会国際部長、佐藤善久氏より報告され「参加しよう 集まろう 発表しよう」のキャッチフレーズのもと国際協力の経験をしてきた参加者に向けて参加協力を呼びかけました。  20年に亘って継続されてきた海外技術協力セミナーでありますが、来年度から協会の組織改定に伴い益々の発展が期待されています。                                                                   ++ インフォメーション 1. インチョン戦略日本語版(JDF仮訳)、ウェブサイト掲載のお知らせ 昨年11月の国連ESCAPハイレベル政府間会合で決議されたインチョン戦略の日本語版【日本障害フォーラム(JDF)仮訳】は以下URLに掲載されています。どうぞご覧ください。 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/twg/escap/incheon_strategy121123_j.html + 2.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 標記批准国の国と地域の数は以下の通りです。   計:127の国と地域  (2013年2月25日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.JANNET役員会およびCBR世界会議報告会 【再掲載】  先月号でもご連絡しました通り、今年度末の役員会および、昨年11月末にインドで開催されたCBR世界会議参加者による報告会を以下の日程で開催いたします。 CBR世界会議報告会には会員の皆様もご自由に参加いただけますので、短い時間ではございますがご参加を希望される方は事務局・佐々木(sasaki.yuka@dinf.ne.jp)までご連絡いただきますようお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。 【日時】 3月8日(金) 18時15分(18時開場)〜19時 (CBR世界会議報告会)              19時〜21時 (JANNET役員会) 【場所】 戸山サンライズ 2階 中会議室 事務局 ++ 編集後記  先日、30年以上視覚障害教育に関わってこられたイギリスの先生の講演を聴く機会がありました。1980年代からインクルーシブ教育を実践してきたイギリスでは様々な取り組みが行われてきましたが、まだまだ当事者の不満が大きく、抜本的な制度の転換期にきているとのことでした。わが国でも特別支援教育の制度は大きく変化してきており、そのことが教育界や社会に徐々に影響を与えるようになってきていると思います。その中で、個別のニーズに適切に対応していくための方策を充実させることが大きな課題となっています。多数の論理だけに合わせるのではなく、少数者に十分配慮された社会の仕組み作りが求められます。今号でインチョン会議の報告を書いてくださった福田さんの記事からもその点の重要性を知ることができます。当事者と支援者が協力して社会に訴えていく必要性を改めて感じました。  青松 利明      ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/