JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第112号 2012年11月29日発行 10月末から韓国・インチョンでアジア太平洋地域における新たな十年に関する国際会議が開かれました。今月号では4つの会議の報告を特集します。 ++ 目次 特集:障害関連の国際会議報告 (韓国・インチョン) 1.DPIアジア太平洋総会報告 2.APDF(アジア太平洋障害フォーラム)会議報告 3.第22回RI世界会議に参加して 4.ESCAPハイレベル政府間会合出席報告 インフォメーション 1.障害チャンピオン賞受賞(藤井克徳氏) 2.WBUアジア太平洋新会長就任(田畑美知子氏) 3.NPO法人ヒーリングファミリー財団 「国際協力・障がい者支援センター 愛のかけはし」発足 4.アジア・太平洋防災閣僚会議報告 5.国際障害同盟(IDA)広報誌のご案内 6.国連障害者の権利条約批准国情報 イベント情報 1.JANNET研究会 第二回コミュニティにおけるインクルーシブ開発(CBID)検討会(12月8日開催) 「日本から世界へ〜日本の地域実践例をCBRマトリックスで読み解きます〜」 + 特集 1 DPIアジア太平洋総会報告 DPI日本会議 中西 由起子  障害者インターナショナル(DPI)第15回アジア太平洋ブロック総会が10月24-27日に、インチョンでの一連の障害関連国際会議の先陣を切って開催されました。この中には、アジア太平洋自立生活ネットワーク会議、DPI北東アジア小ブロック会議、DPOユナイテッドも含まれます。  会議を貫いたテーマは、障害者の権利でした。イタリアDPI議長であり、ヨーロッパ障害フォーラム理事のジャンピエロ・グリフォ氏の基調講演「障害者の権利の世界的傾向」に続いて、各小ブロック議長の活動報告も権利の観点からでした。DPOユナイテッド準備会会長キム・ホンジン氏による第2次アジア太平洋障害者の十年の評価でも、権利実現のために新十年での障害者団体の参加保障が強調されました。  直接的・間接的差別のセッションや、ジェンダー平等のセッションでも権利実現の方策が討議され、雇用や障害インクルーシブ・リスクマネジメント、環境へのアクセスのセッションでは権利推進のグッド・プラクティスも紹介されました。  若いリーダーは自立生活運動を通しての権利擁護活動の成果を語り、新十年での牽引力となることを示しました。最終日には37か国の代表が「新アジア太平洋障害者の十年での権利実現のためのインチョン人権宣言」を採択しました。  詳細な報告は、 DPI総会がhttp://www.dpiap.org/reports/detail.php?id=0000183&year=2012&month=11、 ネットワーク会議がhttp://www.dpiap.org/reports/detail.php?id=0000184&year=&genreid=、DPOユナイテッドがhttp://www.dpiap.org/reports/detail.php?id=0000186&year=&genreid= で、それぞれ見られます。 + 特集 2 APDF(アジア太平洋障害フォーラム)会議報告 上野 悦子                                             2012年10月26日から30日まで、インチョンでAPDF会議は開催されました。APDFは、第一次アジア太平洋障害者の十年を民間で推進してきたRNN(障害者の十年推進会議)を拡大発展させて第二次十年の推進を行ったアジア太平洋地域の障害者団体、支援団体のネットワークです。第一次十年での団体間の連携が東南アジア中心だったことから、第二次十年では南アジア等に広がりました。2003年の開始会議をシンガポールで開催されたのち、2006年、2008年、2010年と続きました。今回は5回目で第二次十年の最終年会議でした。  インチョンでのAPDF総会の結果、新たな十年を推進する新体制のAPDFの役員が選出されました。代表には、障害のある人の夜学校校長で、韓国障害フォーラム(KDF)代表のKyung Seok Park氏。副代表にはパシフィック障害フォーラム代表のMr. Latoa HalatauとJDF国際委員長の寺島 彰氏が選ばれました。10月27日、28日のAPDF会議には、約360名が参加し、全体会、分科会ともに盛況でした。日本からはJDF(日本障害フォーラム)を中心に約60名が参加し、6人が発表しました。  APDF会議では、障害インクルーシブ開発の発表が多くみられ、ヒュン・シック・キム氏(前障害者権利委員)は、インクルーシブ開発では、多くの関係者がかかわることが重要であると述べました。  28日にはトークセッションが開催されました。これは一人ずつステージに上がり、自分の障害のこと、考えていることなどを10分ずつ、様々な方法を用いて発表するという内容で、韓国の障害者の巧みな進行により進められました。それぞれの地域での障害のある人の暮らしや夢について実感をもって伝わりました。  次は2014年にベトナムで開催したいとの意思表明がベトナム障害者団体連合会会長からあいさつがありました。 + 特集 3 第22回RI世界会議に参加して 日本リハビリテーション連携科学学会理事長 奥野 英子               2012年10月29日から11月2日まで、韓国のインチョンにおいて第22回RI世界会議が開催されました。RI(リハビリテーション・インターナショナル)は本部をニューヨークに置き、国際障害者リハビリテーション協会という名称で1922年に創設され、本年で90周年を迎えました。 これまで4年に1回世界会議が世界中で開催され、1988年には第16回世界会議が東京で開催されています。今回のRI世界会議のテーマは「ICTパートナーシップを通した世界の変革」であり、全体会のテーマは@障害者権利条約の実施メカニズムと挑戦、A障害・IT・改革、B地域に根ざしたインクルーシブ開発、C投資としてのリハビリテーション、D保健・労働・障害、E災害管理・紛争・障害、F開発プログラムへの障害の主流化、でした。これらのテーマの基に、様々な国から3〜4名の講演者が講演をし、韓国と国際の手話通訳が用意され、原稿があるものについては英語でスクリーンに映し出されました。  分科会も開催され、分科会のテーマは@女性障害者、AMDGsと貧困削減、B資金調達、Cアクセスと支援機器、DCBRと自立生活、E学校から就労への移行、F福祉的就労から一般就労へ、G高齢化とリハビリテーション、HICFと総合リハビリテーション、I一般就労者のリハビリテーション、Jステークホルダーとの連携による障害の主流化、K災害管理、L障害のある人の文化・レジャー・スポーツ、M障害児、NICTと障害のある人の生活改革など、多岐にわたっていました。ポスター発表については毎日ポスターが張り替えられ、合計60のポスターが掲示されていました。わが国からは、分科会やポスター発表に9名が発表しました。総合的なリハビリテーションの世界会議として素晴らしい大会となりました。 特集 4 ESCAPハイレベル政府間会合出席報告 浦和大学 寺島 彰  10月29日(月)から11月2日(金)まで、韓国インチョンのゾンド・コンベンションセンターで開催されたESCAPハイレベル政府間会合に出席しましたので、その報告をします。  プログラムの概略は、下表のとおりです。前半は高級実務者会合、後半は閣僚級会合でした。高級実務者会合は政府代表団による会議で、閣僚級会合は大臣クラスの会議ですが、実質的には高級実務者会合の議論を閣僚級会合で承認するという形式になっています。日本の政府代表団には、日本障害フォーラム(JDF)の藤井克徳幹事会議長が一員として参加されました。  議題は、「アジア太平洋障害者の十年(2013−2022)に関する閣僚宣言」案と「アジア太平洋の障害者の権利の実現のためのインチョン戦略」案についての検討が中心でした。  インチョン戦略については、@貧困の削減と雇用強化、A政治と政策決定への参加の促進、B物理的環境、公共交通機関、知識、情報、コミュニケーションへのアクセスの向上、C社会的保護の強化、D障害児に対する早期介入と教育の拡大、Eジェンダーの平等と女性のエンパワメントの確保、F障害者を含む災害時の危機回避と対応の確保、G障害者に関するデータの信頼性と比較可能性の改善、H障害者権利条約の批准と実施の促進と国内法の調和、I国際協力、域内協力、および、小地域における協力の推進の10の目標が設定され、新十年に達成することが求められます。  このインチョン戦略は、来年のESCAP総会で採択されることになっています。 [高級実務者会合] 10月29日(月)   議題1 開会式 (a)開会挨拶 (b)会議役員選出 (c)議案採択   議題2 びわこ・ミレニアム・フレームワークのまとめ   議題3 「アジア太平洋障害者の十年(2013−2022)に関する閣僚宣言」案と「アジア太平洋の障害者の権利の実現       のためのインチョン戦略」案についての検討 10月30日(火)   議題4 アジア太平洋障害者の十年ワーキンググループの構成についての検討 10月31日(水)   障害者を含む政策の根拠を強化するためのパネルディスカッション   「障害者を含む災害時のリスク削減」スペシャルイベント   議題5 会議報告書採択 [閣僚級会合] 11月1日(木)   議題6 開会式 (a)開会挨拶 (b)チャンピオン賞授賞式 (c)会議役員選出 (d)議案採択   議題7 アジア太平洋地域のアジア太平洋障害者の10年(2013−2022)についての検討   議題8 その他 11月2日(金)   インチョン市内の施設見学(ミコール特別支援学校、キョンジンリハビリテーション病院)   議題9 「アジア太平洋障害者の10年(2013−2022)に関する閣僚宣言」と「アジア太平洋の障害者の権利の実現の       ためのインチョン戦略」の採択   議題10 会議報告書の採択   議題11 閉会式                                                                    ++ インフォメーション 1.障害チャンピオン賞受賞(藤井克徳氏)  日本障害フォーラム幹事会議長で日本障害者協議会常務理事の藤井克徳さんが、去る11月1日にインチョンで開かれた国連ESCAPハイレベル政府間会合の席上で、障害チャンピオン賞を受賞されました。この賞は、アジア太平洋地域で障害者の権利擁護を推進する人に与えられたものです。おめでとうございます。 + 2.WBUアジア太平洋新会長就任(田畑美知子氏)  世界盲人連合(WBU)の総会が11月12日より16日までバンコクで開かれ、アジア太平洋地域の会長に田畑美智子さんが選ばれました。田畑さんはWBUアジア太平洋の活動の一環で、モンゴルやラオスの視覚障害者のための事業にデンマークの団体とともに携わってきました。JANNETでは財務・組織委員長を務められています。おめでとうございます。 + 3.NPO法人ヒーリングファミリー財団 「国際協力・障がい者支援センター 愛のかけはし」発足  佐賀県・からのご報告です。  10月1日より、障害者自立支援法に基づいた生活介護ならびに就労継続支援B型の多機能型の事業所(定員20名)として活動を始めています。 事業所名はNPO法人ヒーリングファミリー財団「国際協力・障がい者支援センター 愛のかけはし」 という多少長い名前となりました。愛のかけはしという名称は2007年にありました日タイ修好120周年のテーマ「微笑みが心をつなぐ愛の架け橋」からいただきました。  佐賀県では生活介護を行う事業所が多くはありません。私たちが活動している多久市についても就労継続支援B型の事業所は増えてきたというものの、重度の障がいのある方はサービス利用については苦慮している現状です。  そのような背景の中、生活介護と就労継続支援B型事業所として佐賀県より指定障害福祉サービス事業所としての指定を受け、大変嬉しく思っています。正式名称の中に「国際協力」を入れたということも一つの特色です。  作業内容はてをり(さをり織り)、陶芸、ヤギ牧場・がちょう小屋の運営・監理、学校卒業後の教育の提供をしています。いろんな方が利用されているので、それぞれの方に合わせたプログラムづくりを心がけています。 タイ・チェンマイのヒーリングファミリー財団とは、今後とも「てをり」作品の制作過程における協力などさまざまな面で共に活動していくことになります。  九州にお越しの際には、ぜひ私たちの活動をご覧下さい。一同お待ちしております。 NPO法人 ヒーリングファミリー財団 国際協力・障がい者支援センター 愛のかけはし 大垣内 勇 + 4.アジア・太平洋防災閣僚会議報告  JANNET会員のみなさま 10月22日から26日にインドネシアのジョグジャカルタでアジア・太平洋防災閣僚会議がありました。そこでの結果をシェアさせていただきたいと思います。  今年の始めから、マルティーザ・インターナショナル(Malteser International)は障害者の防災ロビーを活発に始め、DiDRRN(Disability Inclusive DRR Network Asia and Pacific)というネットワークを立ち上げ、10月の防災閣僚会議では国連・国際防災戦略(以下ISDR)主導の会議の正式な障害グループを代表するネットワークとして承認されました。会議後、南アジア障害者フォーラム(SADF)や太平洋障害者フォーラム(PDF)も新しくメンバーに加わりました。 おかげさまで、今会議の最後の議定書は今までにないほどしっかりと障害者の参加が書かました。 (リンク:http://www.preventionweb.net/english/professional/policies/v.php?id=29332&pid:0) また、今会議の新しい試みとして、10の市民団体グループからなる添付文章(Stakeholder Annex)が追加され、「障害」もその1グループとして、しっかりと現状と今後の展望を訴える場を得て、議定書に添付されました。(同リンク参照)  来年5月のスイス・ジュネーブの世界防災会議(グローバル・プラットフォーム)でも私たちのネットワークが中心となって、障害者の参加を積極的に押し進める予定で動いています。このネットワークの目的は2015年のポスト・兵庫行動枠組み(FHA)(以下リンク参照) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kikan/pdfs/wakugumi.pdfにいかに、どのように障害者の参加、権利の部分を導入させるかということをアドボカシーの焦点を絞って動いています。ポスト・兵庫行動枠組を調印する世界防災会議は2015年上旬に日本で行われることが決まっています。今後もいろいろと5月に向けて動きがあると思います。皆様と連携できる部分はぜひさせていただければと思います。それに向けて日本の関係者さまにもぜひご支援いただいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。 マルティーザ・インターナショナル日本事務局代表 可児 さえ + 5.国際障害同盟(IDA)の広報誌のご案内   IDAの広報誌(月刊)が以下のURLよりご覧いただけます。 http://www.internationaldisabilityalliance.org/en/ida-disability-rights-bulletin 定期購読の申込み方法についても上記をご参照ください。 事務局 + 6. 国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 新たに標記批准国となった国と地域は以下の通りです。 (2012年11月26日現在)     126. アフガニスタン 計:126の国と地域 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.JANNET研究会 第二回コミュニティにおけるインクルーシブ開発(CBID)検討会 「日本から世界へ〜日本の地域実践例をCBRマトリックスで読み解きます〜」 のご案内 標記JANNET研究会を以下の通り開催いたします。 日 時:12月8日(土) 13時〜17時 場 所:戸山サンライズ2階 中会議室 参加費:会員500円、非会員1,000円、学生500円 8月に引き続きCBID検討会を開催します。 最初に、CBRガイドラインのコンポーネントの内、前回の検討会で扱わなかった「保健」、「教育」の要点を確認します。会の後半では、長野県松本市の実践例を講師にご紹介いただき、CBRマトリックスを使用しながら内容を分析していきます。 会の詳しい内容、お申込みにつきましては、以下のURLよりご覧ください。 http://www.normanet.ne.jp/~jannet/kenkyukai/121208kenkyukai.html 皆様のご参加を心よりお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。 事務局 ++ 編集後記   今月号のメイン・トピックスは、10月から11月初めにかけて韓国の仁川(インチョン)で開かれた一連の国際会議の報告でした。大変内容の濃い記事構成となりました。それぞれの会議に日本から参加された皆さん、発表された方々、お疲れさまでした。今回ご報告いただいた概要から、障害者の権利や地域に根ざしたインクルーシブ開発といった議題に国際的な関心が高まっているという躍動感が感じられました。インクルーシブな世界を目指そうという人々の意志が世界から結集し、「節目」となったような印象を受けます。その後、11月26日から28日までは、インドのアグラで第一回CBR世界会議が開かれています。こちらの報告は今月号ではお伝えできませんが、参加している皆さんがFacebookで近況を発信してくれています。ぜひそちらの情報も覗いてみてください。 公益社団法人 日本理学療法士協会 古西 勇 + JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/