JANNET障害分野NGO連絡会  メールマガジン 第106号 2012年5月30日発行 昨年3月11日の東日本大地震で被災された皆様、そのご家族様へ心よりお見舞い申し上げます。 JANNETの会員で、被災地にて支援活動を開始した団体の状況をお知らせしています。 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet ++ 目次 トピックス 1.コーヒーアワー「障害と開発」シリーズ(5月18日)報告 2.JANNET個人・学生会員の活動紹介 インフォメーション 1.「平成24年度JANNET総会」ならび「2015年アジア太平洋CBR会議開催準備のための意見交換会」報告 2.国連障害者の権利条約批准国情報 ++ トピック 1 コーヒーアワー「障害と開発」シリーズ(5月18日)報告 琉球大学・高嶺 豊  去る5月18日に、世界銀行と日本財団、JANNET共催のコーヒーアワー「障害と開発」が開催された。当日は、「コミュニティビジネスの目指すこと・発展過程から見えるもの」とのテーマで、NPO法人企業支援ネット副代表の鈴木直也さんによる発表があった。 まず、家族、地域、会社の役割が衰退して、その隙間を埋めるためにコミュニティビジネス(CB)などの共助の割合が今後大きくなることが調査資料等を基にして示された。CBには、地域資源活用型と生活支援型がある。地域資源型CBとして、最近では良く知られるようになった、徳島県上勝町の地元の山にある葉っぱを料亭などに出荷するビジネス、そして、生活支援型CBの例として、滋賀県多治見市の、コミュニティタクシーとママズカフェーが紹介された。 さらに、CBによって、障害のある人の就労が可能になった例が紹介された。名古屋市のNPO法人すみれでは、実習に来た知的障害の女性を、高齢の利用者が気にかけて、仕事を教えるようになり、実習期間後、そこで雇用されたとのこと。そして、彼女がいることにより、認知症などの介護予防に貢献しているとのことであった。 CBと社会起業(SB)との違いとして、SBでは、社会的な課題をビジネスで直接的に解決するに比べ、CBでは課題の予防・解決ができるコミュニティをつくることにある。そして、ビジネスを活用して、コミュニティを維持するという考えである。また、CBに関わる人が、顧客であったり、協力者になったり、またはスタッフとして働くなど、その役割が入れ替わるとのユニークな特徴があることが分かったとのことである。 さらに、既存のビジネスが、思い醸成期から一気に展開期に至るのに比べ、CBの発展過程は、思い醸成期、共同学習期、社会実験期、事業展開期と段階をたどることにより、ビジネスの成功率は高いとのことである。最後に公共経営・社会戦略研究所の露木真也子さんのコメントがあり、大変有意義なコーヒーアワーであった。 + トピック 2 JANNET個人・学生会員の活動紹介  JANNETは、様々な国際活動をおこなっている個人会員にも支えられています。 今回のメルマガでは、3名の個人・学生会員の方々に、各々取り組んでいらっしゃる活動をご紹介いただきますのでぜひご一読ください。 今後も本メルマガにおいて、団体・個人・学生にかかわらず皆様の活動を他の会員にご紹介する機会をつくっていきたいと考えております。ご自身の活動を他の皆さんにぜひ紹介したいと希望される方は、事務局までどうぞお知らせください。皆様からの発信をお待ちしております。 + 【福地 健太郎(個人会員)】 私たちは、スーダンの障害者が社会に完全に、平等に参加するために必要な教育支援を行っています。今回2010年より実施している、点字講習会プロジェクトについて紹介させていただきます。 スーダンには盲学校が全国に4校しかなく、視覚障害児の大半はまったく教育を受けられないか、地域の学校で学ぶか、イスラム教の経典コーランを学ぶ学校に受け入れてもらっています。  点字講習会第2フェーズとなる2011年からのプロジェクトでは、コーラン学校に在籍する視覚障害児26名に講習会を実施しました。 コーランを覚えて宗教指導者になることは、スーダンで限られた視覚障害者の一つの職業となっているので、点字は宗教指導者となるための学習にとても役立つとのことでした。 またハルツーム州の1地区で70校の学校を訪問し、点字を必要とする子どもたちの調査を行い、その結果を受けて、10名の視覚障害児を対象に点字講習会を現在実施しています。同調査では約50名の子どもたちが学習上の支援を必要とする視覚障害をもっていましたが、その多くは基本的な治療やメガネさえあれば対応できるはずのものでした。また、熱心な先生の支援により、全国試験で好成績を収める子どもがいる一方で、先生の理解不足により受験すら認められない子どももおり、組織的な対応と現場の教員の理解を得る重要さを実感しました。 さらに、地域の学校で学ぶ子どもたちにとって、教科書の不足が喫緊の課題であることが明らかになったので、今後は教科書の音声化を実施し、この課題に対応していく予定です。 + 【金澤 真実(学生会員)】 こんにちは。学生会員の金澤真実です。とはいえ、学生証をだすと疑われそうなかなり年季の入った?学生です。日頃は、日本盲人キリスト教伝道協議会という視覚障害者団体で働いています。当会は、ヘレン・ケラーの来日をきっかけに創立された会員500人ほどの小さな団体ですが、1995年よりバングラデシュで唯一の女子盲学校へ支援を続けています。バングラデシュの盲学校は女子寮がほとんどないため、実質的に男子校となっています。そのため同校は、視覚障害女子へ教育の機会を提供する大変貴重な学校です。個人的にも1990年に青年海外協力隊員としてバングラデシュで活動して以来、バングラデシュとの関わりを続けています。この関わりの中で障害のある女性が、女性団体からも開発団体からも障害団体からも、「見えなくされている」存在であることに気がつかされました。誰からも「いないもの」とされ、大変な困難の中で生きている彼女たちを「見えるようにする」こと、換言すれば、開発途上国の女性障害者がどうしたら「自分の」人生を生きられるようになるのかが、私の大きなテーマとなりました。このテーマを研究するために、京都にある立命館大学の学生となりました。開発、女性、障害と3つの分野にわたる学際的な研究ですが、まだあまり研究されていないテーマなので、JANNETの皆さまから学びつつ、自由に大胆な発想で研究を続けていけたらと思っています。どうぞ、よろしくお願いいたします。 + 【高橋 競(学生会員)】 私は現在、東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教室において、障害のある高齢者の社会参加と排泄に関する研究をしています。 平均寿命の上昇と出生率の減少が重なり、日本は世界に類をみない超高齢社会になりました。しかし、増え続ける障害のある高齢者は、障害のない高齢者に比べ、当事者主権に基づく社会参加ができない社会的弱者になっています。高齢者の閉じこもりや孤立死、無縁社会といったニュースが毎日のように報じられる現在、障害のある高齢者の社会参加がしっかりと保障される必要があります。 排泄は、人間の健康と尊厳に深く関わる基本的営みです。誰もがその重要性を感じながらも、排泄を表立って語ることはタブーとされてきました。これまで、排泄を生物心理社会レベルで捉えた研究はほとんど報告されていません。 社会参加の決定因子としての排泄の重要性を学術的に明らかにすること、それも障害のある高齢者という社会的弱者を対象とすることには、超高齢社会になった日本だけではなく、将来高齢化問題に直面する多くの国々にとっても大きな意義があると信じ、研究を続けています。                     ++ インフォメーション 1.「平成24年度JANNET総会」ならび「2015年アジア太平洋CBR会議開催準備のための意見交換会」ご報告 5月19日(土)にJANNET総会ならびに標記意見交換会がおこなわれ、無事終了いたしました。 総会には15団体会員、1個人会員ならびに3名のオブザーバーにご出席いただきました。委任状出席は20名でした。 以下の、主な議題について検討され、全て承認されました。なお議事録案は先日(5月25日付)、MLにて皆様にお送りいたしました。ご高覧いただき、何かご意見等ございましたら、5月31日までに事務局までご連絡ください。 【主な議題】 1.平成23年度事業報告案・会計報告案 2.平成24年度事業計画案・予算案 3.2015年までのマスタープラン案について 4.役員改選(2012-2013年度)    なお、新役員は以下の通りです。 <2012-2013年度JANNET新役員一覧> 【幹事】 新役員名 所属団体 専門委員会ほか 1.松井 亮輔 日本障害者リハビリテーション協会 2.青松 利明 国際視覚障害者交流・協力ネットワーク 広報・啓発委員会 3.福山 博 東京ヘレン・ケラー協会 財務・組織委員会 4.中西 由起子 アジア・ディスアビリティ・インスティテート 広報・啓発委員会 5.田口 順子 日本理学療法士協会 研修・研究委員会 6.古西 勇 日本理学療法士協会 広報・啓発委員会 7.伊藤 智典 日本理学療法士協会 広報・啓発委員会 8.野際 紗綾子 難民を助ける会 財務・組織委員会 9.谷島 邦雄 日本ポーテージ協会 財務・組織委員会 10.今西 浩明 ワールド・ビジョン・ジャパン 研修・研究委員会 11.佐藤 善久 日本作業療法士協会 研修・研究委員会 12. 全日本ろうあ連盟 *6月全国大会後に正式決定 13.田畑 美智子 日本盲人会連合 財務・組織委員会 14.清水 香子 アジア保健研修所 研修・研究委員会 15.原田 潔 日本障害者リハビリテーション協会 広報・啓発委員会 (立候補受付順) 【監事】 新役員名 所属団体 1.安川 雄二 きょうされん 2.小池 宏美 日本キリスト教海外医療協力会 (立候補受付順) + 2.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 1. アルジェリア 2. アルゼンチン 3. オーストラリア 4. オーストリア 5. アゼルバイジャン 6. バングラデシュ 7. ベルギー 8. ボリビア 9. ボスニア・ヘルツェゴビナ 10. ブラジル 11. ブルキナファソ 12. カナダ 13. チリ 14. 中国 15. クック諸島 16. コスタリカ 17. クロアチア 18. キューバ 19. チェコ共和国 20. デンマーク 21. ドミニカ 22. エクアドル 23. エジプト 24. エルサルバドル 25. フランス 26. ガボン 27. ドイツ 28. グアテマラ 29. ギニア 30. ハイチ 31. ホンジュラス 32. ハンガリー 33. インド 34. イラン 35. イタリア 36. ジャマイカ 37. ヨルダン 38. ケニア 39. ラオス 40. ラトビア 41. レソト 42. マラウイ 43. モルディブ 44. マリ 45. モーリシャス 46. メキシコ 47. モンゴル 48. モンテネグロ 49. モロッコ 50. ナミビア 51. ネパール 52. ニュージーランド 53. ニカラグア 54. ニジェール 55. オマーン 56. パナマ 57. パラグアイ 58. ペルー 59. フィリピン 60. ポルトガル 61. カタール 62. 大韓民国 63. ルワンダ 64. サンマリノ 65. サウジアラビア 66. セルビア 67. セイシェル 68. スロバキア 69. スロベニア 70. 南アフリカ 71. スペイン 72. スーダン 73. スウェーデン 74. シリア 75. タイ 76. チュニジア 77. トルクメニスタン 78. トルコ 79. ウガンダ 80. ウクライナ 81. イギリス 82. タンザニア連合共和国 83. ウルグアイ 84. バヌアツ 85. イエメン 86. ザンビア 87. アラブ首長国連邦  88 エチオピア 89. マレーシア 90. リトアニア 91. アルメニア 92. ナイジェリア 93. モルドバ共和国 94. シエラレオネ 95. セネガル 96. セントビンセント及びグレナディーン諸島 97. 欧州連合 EU 98. ルーマニア 99. トーゴ 100. コロンビア 101. ベリーズ 102. キプロス 103. パキスタン 104. バーレーン 105. ルクセンブルク 106. カーボヴェルデ 107. インドネシア 108. ミャンマー 109. マケドニア 110.モザンビーク 111. ブルガリア 112. モーリタニア (2012年5月29日現在) 国連 批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ 編集後記  5月19日のJANNET総会の後、2015年のCBR国際会議の日本開催に向けての意見交換を行いました。途上国支援として受け取られがちなCBR/CBIDですが、途上国で得た地域資源の活用実践を日本の障害者支援や福祉、地域包括ケアシステムなどとリンクしたテーマとすることで多くの参加者を得ることが出来るのではないか、500名規模の参加者を想定したボランティアの募集と配置、活用方法をどうするか、などの前向きな検討課題があげられました。 国内外で記念すべき年を迎えるJANNET、これからの活動にご注目ください。 伊藤 智典 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 + JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/