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スマトラ沖地震及びインド洋津波災害支援情報続報

アチェ州の視覚障害者関係被害状況
 日本点字図書館 田中徹二

 このほどインドネシア盲人連合の会長ディディ・タルシディさんから、昨年暮のスマトラ沖地震による津波被害についての報告が寄せられた。池田輝子さんの寄付(メルマガ17号- 2月発行- にて既報)に対する報告である。その主な点を紹介する。

<調査チーム>
盲人連合本部からの派遣者2名とアチェ州支部の4名が2005年3月1日から15日まで現地入りし調査に当たった。本部スタッフは5日まで、その後は支部のスタッフのみで行った。
調査団はバンダ・アチェを中心とした10地域の避難キャンプを視察したが、もっとも被害を受けた5地域については、依然として陸路の移動が困難なため調査を行っていない。
<調査結果>
視察をおこなった10地域では287名の視覚障害被災者が確認された。内訳は、死亡または行方不明者15名。家屋喪失、失業、または家族を亡くす、などの深刻な被害を受けた者133名。災害の余波による生活環境の悪化(収入減、健康被害、共同生活を余儀なくされる住居の問題など)により被害を受けている者139名であった。
また、調査団は視覚障害の夫を亡くした7名の晴眼の未亡人と視覚障害の両親の被災死による30名の晴眼の孤児(12名は学童)も確認した。
生存している被災者の内訳は、独身女性52名、独身男性70名、婚姻者150組(うち48名は晴眼者の妻がおり、15名は晴眼者の夫がいる。87組は盲人夫婦で、全組1人から3人の子どもがいる)、となっており、職業の内訳は、マッサージ師148名、教師24名、手工芸士10名、盲学校生徒47名、リハビリテーション訓練生31名、不明が12名であった。
<生活について>
被災者の仮住まいの状況は避難キャンプに76名、視覚障害者用寄宿舎に100名、友人・親類の家に同居が76名となっている。
現在は支援金に頼る生活をしており、食料は足りているが質的には不十分、水の供給が不足し水質は悪い、健康状況が悪化しており適切な医療は受けられない、着る物が不足している、なのどの問題がある。また、ほとんどの人が杖やスレートなど生活に必要な器具を失っており、何から手をつけて良いかわからない状況で、カウンセリングの必要が認められる、という報告がされている。
< 家屋および学校建物>
ほとんどの家屋および学校が土に覆われており、著しい被害をこうむっている。2校の盲学校の損傷がひどく建て直しが必要。2戸の家屋が流され住み替えが必要とし、23戸が倒壊し建て直し、75戸が修理を必要としているという。(注:これらの家のほとんどは、マッサージ・クリニックを兼ねていた)
<援助計画>
・2005年3月から4月にかけて緊急援助として行うのは以下の項目。
1)272人の被災者に対し、食物および衣類の供給。2) 150家族に生活必需品の供給。3) 272人に杖、スレートおよび針の供給。
・2005年12月までに援助を予定しているのは下の項目。
1)25戸の家/マッサージ・クリニックの建て直し。 2) 75戸の家/マッサージ・クリニックの修理。3) 15名の未亡人に対して就業支援金を支給。4) 残存視力のある被災者に対し、ロービジョン訓練や機器類の提供。5) 12人の孤児に対して奨学金の支給。6) アチェ支部事務所および5つの地方支部にオフィス家具・備品を備え付ける。7) 盲学校とリハビリセンターに新しいハイテク装置を供給。(注:この援助計画の実施においては、政府によるアチェ復興計画に関連した資金の適用が条件とされる)
<資金調達>
インドネシア盲人連合は緊急援助資金として、日本の池田輝子氏より世界盲人連合アジア太平洋地域協議会事務局を通じ10,000ドルの当座の支援金とし受領し、更に同氏より22,000ドルを受け取っている。一方、ドイツ、ノルウェー、スイスの視覚障害者団体とCBMも今後のフォローアップ支援を表明している。
<実施について>
緊急援助資金の多くは、今回の調査チーム視察期間中に被災者に分配された。また、残りの資金についても2005年4月までに分配完了の見込み。
プロジェクト・チームは今後のフォローアップ支援のための詳細な計画を策定し、アチェ州及び関連地域の地方自治体とインドネシア盲人連合支部が協力して計画の実施にあたる予定である。(了)

【ご参考―メルマガ17号より抜粋―】
 東京都新宿区在住の池田輝子さんが、(社福)日本点字図書館に対し、インドネシア、スリランカ、タイ、マレーシアで被災した視覚障害者の支援のためにと総額1千万円を寄託。同館では、世界盲人連合アジア太平洋地域協議会事務局長をカンターパートとし、緊急支援金総額28,000米ドルを各国に送金、事態が落ちつき交通・通信手段が復旧して被災地の視覚障害者の状況が把握できた段階で、視覚障害者の被災状況調査を行い追加支援することになった。

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