放送アクセシビリティの取組 平成28年10月28日 総務省 ◆スライド1 視聴覚障害者向けテレビジョン放送の普及促進 テレビジョン放送による情報を全ての視聴者が享有できるようにするため、 視聴覚障害者、高齢者等に配慮した字幕放送、解説放送及び手話放送の普及を促進する。 放送法(昭和25年法律第132号)(抄)  (国内放送等の放送番組の編集等) 第4条 (略) 2 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送塔の放送番組の編集に当たつては、  静止し、又は移動する事物の瞬間的映像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組  及び  音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組  をできる限り多く設けるようにしなければならない。 字幕放送・解説放送の普及目標の策定、進捗状況の公表 ・平成29年度までの字幕番組・解説番組の普及目標 「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」(平成19年10月策定・ 平成24年10月改定)を策定・公表 ・放送事業者の字幕放送、解説放送及び手話放送の実績を年度ごとに取りまとめて公表 字幕番組・解説番組等制作費の一部助成  身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律(平成5年法律第54号)に基づき、 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)を通じて、字幕番組、解説番組、手話番組等を制作する者に対し、その制作費(放送番組に字幕等を付与するための追加経費)の2分の1を上限として助成金を交付するための補助金を交付 ・ 助成対象に手話番組(平成11年)、手話翻訳映像(平成22年)、CM字幕チェック装置の整備費用(平成27年)を追加 これらの取組を通じて、放送事業者の自主的な取組を促進 ◆スライド2 「障害者基本計画(第3次)」(平成25年9月27日閣議決定) 〇 障害者基本計画(平成25年9月27日閣議決定)(抜粋) T 障害者基本計画(第3次)について 1.障害者基本計画の位置付け 障害者基本計画は障害者基本法第11条第1項に基づき,障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定されるものであり,政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画として位置付けられる。 2.障害者基本計画(第3次)の対象期間 障害者基本計画(第3次)は,より長期的な展望を視野に入れつつ,平成25(2013)年度から29(2017)年度までの概ね5年間を対象とする。 V 分野別施策の基本的方向 6.情報アクセシビリティ (2)情報提供の充実等 〇 身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律(平成5年法律第54号)に基づく放送事業者への制作費助成,「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」に基づく取組等の実施・強化により,字幕放送(CM番組を含む),解説放送,手話放送等の普及を通じた障害者の円滑な放送の利用を図る。 ◆スライド3 「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」の経緯 平成9年 「字幕放送普及行政の指針」を策定(平成9年度〜平成19年度)  ・ 放送法改正による努力義務化(平成9年10月1日施行)に伴い、字幕放送の普及促進目標を設定 <ポイント> 〇 平成19年度までに、新たに放送する※1字幕付与可能な全ての放送番組※2に字幕を付与   ※1:再放送番組は除外  ※2:生番組等は除外 平成19年 「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」を策定(平成20年度〜平成29年度)  ・ 「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」報告書における提言を受けて「行政指針」を策定 <ポイント> 〇 平成29年度までに  @ 字幕付与可能な全ての放送番組に字幕を付与すること  A 解説付与可能な放送番組の10%に解説を付与すること  などを普及目標として設定 平成24年 「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」を改定  ・ 東日本大震災の教訓や技術動向等を踏まえ、「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送の充実に関する研究会」報告書における提言を受けて改定 <ポイント> 〇 字幕放送:「大規模災害等緊急時放送については、できる限り全てに字幕付与」の目標※を追加  ※ NHKについては、「災害発生後速やかな対応ができるように、できる限り早期に、全ての定時ニュースに字幕付与」 〇 解説放送:解説を付与することのできない放送番組の類型を設定 〇 手話放送:新たに目標を設定 ◆スライド4、5 「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」 A 視聴覚障害者向け放送普及行政の指針 (平成19年10月30日策定) (平成24年10月2日改定) 1 字幕放送(注1) NHK 普及目標の対象時間:7時から24時 普及目標の対象番組:字幕付与可能な全ての放送番組(注2) 目標:2017年度までに対象の放送番組の全てに字幕付与 大規模災害等緊急時放送については、できる限り全てに字幕付与 災害発生後速やかな対応ができるように、できる限り早期に、全ての定時ニュースに字幕付与 備考:教育放送については、できる限り目標に近づくよう字幕付与する。 放送大学学園 普及目標の対象時間:7時から24時 普及目標の対象番組:字幕付与可能な全ての放送番組 目標:聴覚障害者等のニーズの実態を踏まえ、できる限り多くの放送番組に字幕付与 地上系民放・放送衛星による放送(NHKの放送を除く) 普及目標の対象時間:7時から24時 普及目標の対象番組:字幕付与可能な全ての放送番組 目標:2017年度までに対象の放送番組の全てに字幕付与 大規模災害等緊急時放送については、できる限り全てに字幕付与 備考:県域局については、できる限り目標に近づくよう字幕付与する。独立U局及び放送衛星による放送については、目標年次を弾力的に捉えることとする。 通信衛星による放送・有線テレビジョン放送 普及目標の対象時間:7時から24時 普及目標の対象番組:字幕付与可能な全ての放送番組 目標:当面は、できる限り多くの放送番組に字幕付与 注1 字幕放送には、データ放送やオープンキャプションにより番組の大部分を説明している場合を含む。 注2「字幕付与可能な放送番組」とは次に掲げる放送番組を除く全ての放送番組 (a)技術的に字幕を付すことができない放送番組(例 現在のところ、複数人が同時に会話を行う生放送番組) (b)外国語の番組 (c)大部分が器楽演奏の音楽番組 (d)権利処理上の理由等により字幕を付すことができない放送番組 2 解説放送 NHK 普及目標の対象時間:7時から24時 普及目標の対象番組:権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組を除く全ての放送番組(注3) 目標:2017年度までに対象の放送番組の10%に解説付与 備考:教育放送については、対象の放送番組の15%に解説付与する。 放送大学学園 普及目標の対象時間:7時から24時 普及目標の対象番組:権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組を除く全ての放送番組 目標:視覚障害者等のニーズの実態を踏まえ、できる限り多くの放送番組に解説付与 地上系民放・放送衛星による放送(NHKの放送を除く) 普及目標の対象時間:7時から24時  普及目標の対象番組:権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組を除く全ての放送番組  目標:2017年度までに対象の放送番組の10%に解説付与  備考:県域局については、できる限り目標に近づくよう解説付与する。独立U局及び放送衛星による放送については、目標年次を弾力的に捉えることとする。 通信衛星による放送・有線テレビジョン放送 普及目標の対象時間:7時から24時  普及目標の対象番組:権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組を除く全ての放送番組  目標:当面は、できる限り多くの放送番組に解説付与 注3 「権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組」とは次に掲げる放送番組 (a)権利処理上の理由により解説を付すことができない放送番組 (b)2か国語放送や副音声など2以上の音声を使用している放送番組 (c)5.1chサラウンド放送番組 (d)主音声に付与する隙間のない放送番組 3 手話放送 NHKにおいては、手話放送の実施時間をできる限り増加させる。放送大学学園、地上系民放、放送衛星による放送(NHKの放送を除く)、通信衛星による放送及び有線テレビジョン放送においては、手話放送の実施・充実に向けて、できる限りの取り組みを行う。 ◆スライド6 字幕放送、解説放送の実績(平成26年度実績調査) 【字幕放送】 (1)「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」の普及目標となる放送番組における字幕番組の割合、(2)総放送時間に占める字幕放送時間の割合 NHK(総合) 86.9% [+2.1ポイント] 75.9% [+3.6ポイント] NHK(教育) 71.5% [+8.3ポイント] 62.7% [+8.2ポイント] 在京キー5局(注4) 98.0% [+2.5ポイント] 57.5% [+5.2ポイント] 在阪準キー4局(注5) 96.6% [+2.5ポイント] 52.5% [+5.0ポイント] 在名広域4局(注6) 92.8% [+3.6ポイント] 48.7% [+4.3ポイント] 全国の系列ローカル局 (在阪準キー4局及び在名広域4局を除く101社) 74.0% [+4.6ポイント] 42.9% [+4.8ポイント] 上記以外のローカル局(13社) 16.8% [−] 7.8% [−] 【解説放送】 (1)「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」の普及目標となる放送番組における解説番組の割合、(2)総放送時間に占める解説放送時間の割合 NHK(総合) 10.4% [+0.6ポイント] 10.0% [+1.1ポイント] NHK(教育) 15.3% [+1.7ポイント] 13.7% [+1.7ポイント] 在京キー5局 6.1% [+0.7ポイント] 2.3% [+0.3ポイント] 在阪準キー4局 6.2% [+0.7ポイント] 2.3% [+0.3ポイント] 在名広域4局 5.2% [+0.5ポイント] 1.9% [+0.2ポイント] 全国の系列ローカル局 (在阪準キー4局及び在名広域4局を除く101社) 4.3% [+1.0ポイント] 2.0% [+0.4ポイント] 上記以外のローカル局(13社) 0.3% [−] 0.1% [−] ◆スライド7 基幹放送局への再免許(平成25年)に当たっての総務大臣からの要請 〇 総務省は、平成25年10月31日をもって有効期間(5年間)が満了する基幹放送局の免許について、同年11月1日付けをもって、再免許を行った。 〇 再免許に当たっては、総務大臣から各基幹放送事業者等に対し、文書により以下の要請を実施した。 〇 基幹放送局の再免許等に当たっての要請  民間基幹放送事業者(テレビジョン放送)等宛て 1〜4 (略) 5 字幕放送、解説放送及び手話放送について、視聴覚障害者、高齢者に十分配慮し、総務省が策定した「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」を達成するよう努めること。特にできる限り全ての大規模災害等緊急時放送における字幕放送の実施及びCMへの字幕付与の普及に留意すること。 6〜10(略) ◆スライド8 字幕番組・解説番組等制作費の一部助成 1 目的  字幕番組、解説番組、手話番組の制作費等に対する助成を通じて、視聴覚障害者向けテレビジョン放送の充実を図ることにより、放送を通じた情報アクセス機会の均等化を実現。 2 施策の概要 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が次の助成金を交付するために必要な経費を、同機構に対し交付する。 〇 字幕番組・解説番組・手話番組等を対象とした支援  字幕番組、解説番組、手話番組等(※)を制作する者に対し、その制作費(放送番組に字幕等を付与するための追加経費)の2分の1を上限として助成金を交付する。 (※) 特に普及が遅れている手話番組については、日常生活用具給付等事業(障害者総合支援法第77条第1項第6号)により給付されている「聴覚障害者用情報受信装置」で受信する放送番組の手話翻訳映像を制作する者に対しても同様に助成 〇 字幕付与確認設備整備支援  一般の番組に比べて取組が遅れているCM番組への字幕付与について、CM素材への字幕付与のチェックを行う機器の整備を行う者に対して、その費用の2分の1を上限として助成金を交付する。 3 所要経費(平成28年度予算額)  一般会計  300百万円         4 助成実績(平成27年度) 〇 字幕番組を対象とした支援 111社、解説番組を対象とした支援 17社 〇 手話番組を対象とした支援 127社、手話翻訳映像を対象とした支援 1者 〇 字幕付与確認設備整備支援 15社 ◆スライド9 〇 テレビジョン放送のバリアフリー化 視聴覚障害者や高齢者等を含む全ての視聴者が、テレビジョン放送を通じて、特に災害情報等を含む地域情報へのアクセスの機会を均等に享有できるようにすることは、視聴者の利益を確保する観点からも極めて重要であり、そのため、放送事業者は、放送法第4条第2項77の規定に基づき、テレビジョン放送での字幕番組等の制作の拡充に努めている。 総務省では、字幕放送等拡充のための「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」78を策定し、その後、NHKや地上テレビジョン放送を行う民間放送事業者等による大規模災害等緊急時放送については、できる限り全てに字幕を付与する目標を追加79した。 併せて、(国研)情報通信研究機構を通じた補助金交付により、放送事業者等に対し字幕番組、解説番組制作費等の一部助成を行っている。 放送事業者の自主的な取組の促進により、字幕放送の実績は年々伸びているが、他方で、災害時に緊急で制作される生放送では、いつ発生するかわからない大規模災害の発生に即応して、字幕付与の技術に習熟したスタッフを招集し字幕放送体制を構築するには時間を要する等の課題がある。大規模災害等緊急時放送で、視聴覚障害者や高齢者等がテレビジョン放送を通じて生命・財産に関わる重要な情報を取得できない状況が発生しうるのは、大きな問題であり、生放送への字幕付与の強化が求められている。 そもそも、平時・非常時を問わず、生放送に字幕を付与するためには、多くの人員体制と字幕付与に必要な放送設備の整備が必要となるため、特に地方の民間放送事業者では、生放送での字幕付与体制の整備が遅れている状況であり、生放送を含めたテレビジョン放送番組全体で、視聴覚障害者向け放送の普及を更に推進するための方策が必要である。