はがき通信ホームページへもどる No.99 2006.5.25.
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 苦しさを訴えることは甘えではない 


 ◇チューリップ園で梅をさがす
 チューリップ、桜、ムスカリ、ポピー、ネモフィラ。はるばる立川(国営昭和記念公園)まで行く価値があった。白のムスカリ、アイスクリームという名のチューリップなど、本当におもしろく、美しかった。
 ある体力や年齢を過ぎると、花観賞は、積極行動の中心的なものになる。今日も車イスの超老人を初老の老人が押していた。もしくは、明らかに夫婦の片方を押していた。それぞれが幸せを享受できる社会。一周するのに80分かかった。チューリップだけでも、ゆっくり味わったら、かなりの時間が必要。色の組み合わせで、各公園の庭師の腕が試される。「最初に来た時は、あまりの美しさに感動」と、通りがかりの人が口々に言っていた。私も同感。今や、私も超老人のお仲間入り。
 池を周遊できること、原っぱが広いこと、日本庭園が良くできていること、植物の種類が多く、木々名の説明がわかりやすい、駅がバリアフリーである、駅の前であるなど、利点が多い。千葉佐倉のチューリップとどちらに行こうか迷ったが、やはり、立川が当り。
 「梅はどこに咲いていますか?」係員も奇妙な顔をしていた。「もう、梅の時期は終わっています」と。なぜ、私はこんな質問をしたのか、自分でも時間の概念が失われつつあるのを実感。いやになった。目の前の桜が散って、葉桜になっているのに、なぜ、こんな質問をしたのだろうか? 「青梅行き」の電車の中では、青梅の梅郷をイメージしていた。そのためか? 自分のバカさかげんに、愛想を尽かした。いまさらながら、言葉の重要性を感じる。言葉の記憶で、歴史は綴られていく。その元になる「言葉」が頭の中から失われていっている。木を伐採した川の泥が海に流れ出すように、今、私の頭から単語が失われつつある。イメージと単語の隔離現象が起こっている。頭には、イメージがあっても、言葉にならない。人と会話する時、絵で描くのが良いかも。

 ◇重度になれば出会いはふえる
 エレベーターのボタンを押せなくて、あせった。手が届いても、力が入らなかった。押すための棒を持ち歩けば良いのだが、都会には人がたくさんいるので不要と感じていた。しばらくエレベーター内にいたら、おばさんが乗ってきて、救われた。
 最近は、通りがかりの人に依頼することが多くなった。依存心が強すぎるのはいけないと思いつつ、甘えてしまう。今日も、何人の人に手伝ってもらっただろうか? 電車の乗り降り、背中の荷物や水筒の出し入れ、1つ1つに自立心を失いつつある。この4月のヘルパー導入時間増加、服の着脱介助などを依頼するようになってから、より依頼心が強くなった。もう、自分でやるのが不可能になってきた。外出時も、工事中のガードマンに上着を着せてもらい、帰宅するときも、近所の人に片方の腕だけ服を脱がせてもらっている。こんなことをする障害者っているだろうか? いつか、きらわれてしまうのではないか? いずれにしても、重度になればなるほど、生きるのは困難になっていく。ただし、多くの出会いには恵まれる。まあ、そのことを喜びたいのだが、現実は厳しい。24時間ヘルパーも不可能だし、うざい!?!?
 バリアフリーが進んだので、車輪付きキャリーバッグを引っ張っている人が増加した。最初は、やはり、女性から始まった。社会の変化は、常に女性から始まる。車輪の付いたキャリーバッグを最初に使っていたのは、アメリカンの田中祥子先生であった。今や、男性も使っている。携帯パソコンなどを運ぶ労力は、車輪付きキャリーバッグのほうが、肩にかけるバッグよりもはるかに楽で、落として壊れることもない。
 時代は、労力軽減の方向に移行していく。ベビーカーの普及と共に、私たちの障害者運動のうれしい結果である。自分たちの苦しさを訴えることが、結果として、社会改善に役立っていること、「苦しさを訴える」ことは、決して「甘え」ではない。
 障害者よ、自分の心に忠実であれ!
東京都:K・M


特集!「猛暑に向けての暑さ対策」


 今号の「特集」は、「猛暑に向けての暑さ対策」です。汗を出して体温を調節することができない頸(脊)損者は、先輩や仲間から学んだり、自分で発見したりした暑さ対策にて猛暑をしのいできました。3名の方の対処法をご紹介させていただき、毎年暑さで困っている方の何かヒントになればと思います。
 なお、「暑さ対策」について今回の特集だけに限らずにいつでも原稿をお待ちしております。



  特集 ミスティ・メイトとコールドスプレー 


 夏は、ミスティメイトを使っています。ミスティ・メイトとは、携帯型の簡易シャワークーラー。500ccのボトルの中に水を入れ、フタを閉めてポンプを上下に押すことでボトル内の気圧を圧縮し、ノズルを回すと霧吹きが噴射できるものです。その霧吹きを顔や腕にかけるだけでも涼しくなりますが、扇風機(電池使用)の風を当てると多少体温を下げることができます。
 それでも辛いときは、コールドスプレーをTシャツの上から首や肩に吹きかけています。そして、タオルにコールドスプレーを吹きかけて、そのタオルを顔や首にあてて冷やしています。どちらも一時的な対処方法なのですが、猛暑の中でも外出できるようになりました。
 

 「ミスティ・メイト」
 https://www.gakubun.co.jp/hanbai/shouhin/00055.html





[仕様]サイズ:高さ28センチ、直径8センチ、素材:本体・ポリプロピレン、カバー・ナイロン製、容量:500cc、重量:約310㌘、色:ブルー、アメリカ製
神奈川県:I・M E-mail: gorilla@kk.catv-yokohama.ne.jp


 特集 熱帯フィリピンでの暑さ対策 


 藤田編集委員がフィリピン在住のF・Hさん(頸損・機能レベルC5B)に暑さ対策についてお話をうかがいました。

Q フィリピンは常夏で頸損にとってはかなり暑いと思いますが、暑さ対策はどのようにされていますか?
A そうですね。11月後半から3月初旬ぐらいの間は比較的涼しいので暑さ対策はほとんど要らないのですが、残りの8〜9ヶ月は結構暑いです。家の中ではエアコンと扇風機を併用しています。夜は日本の夏と違って温度が下がりますから扇風機のみで過ごせています。でも稀に暑い夜もありますし、不意の停電などに備えて、冷凍庫には必ずアイスノンが2つ凍らせてあります。

Q 外出時はどうされていますか?
A まず服装は袖のないマッスルシャツにサンダルが私の基本スタイルです。少しでも放熱性を良くしないとね(笑)。それに日射しを避けるための帽子は必携です。近場で短時間の外出ならば、エアコンで体をよーく冷やしてから出かけます。銀行やレストラン、ショッピングモールなどが目的地ですと、到着してすぐにエアコンが効いているのでこれで十分です。



             ●写真1


Q それでは、長時間の外出時は?
A エアコンのない場所に長時間となると結構きついです。例えば晴天の日中で扇風機もないというような場所だと外出は諦めるでしょうね(笑)と、これで終わっては対策でも何でもないので、私が実践している唯一の方法を述べさせていただきます(そんな大袈裟なものではありませんが……)。
 まず広げたタオルに冷蔵庫の氷を適量並べて包みます(写真1)。そして、そのタオルを首の後ろに当てて両肩の方へ伸ばします(写真2)。タオルの端は、やや前方に垂らすと水滴がシャツ前面に染みて、背中からズボンに染みるのを防いで、タオルも後ろにずり落ちにくくなります。シャツの色や生地によっては濡れているのが目立ちますから、綿の白いシャツなどが良いと思います。
 でも、日本で実践するのは、シャツが濡れて周囲の目が気になりますから、やや難しいでしょうかね。



            ●写真2


Q 外出先によっては日本でも十分に可能ですね。
A それからフィリピンの夏って、日本より湿気が少ないのですよ。ですからタオルやシャツに染みた水が早く蒸発して気化熱で涼しいのです。湿気の多い日本だと氷の量やシャツの濡れ過ぎに注意が必要かもしれませんね。
 ああ、今思いついたのですが、中に包む氷を氷嚢かビニール袋に入れて、それを濡れタオルに包んで首に巻くという方法も、効果は落ちるでしょうが、シャツが濡れなくて良いかもしれませんね。

Q なるほど。その他の暑さ対策は何かありますか?
A 以前に、熱冷まし用の「熱冷まシート」とか「冷えぴたクール」などを外出前に体の数箇所に貼っていたことがあります。確かに効果はあるのですが、フィリピンでは、なかなか手に入りませんし、経済的にちょっとね。まあ、私にとってはフォーマル用といったところでしょうか(笑)。
 大して参考にならなかったでしょうが、私が実践しているのは、これくらいですね。

Q 参考になった方もいらっしゃると思います。今日はどうもありがとうございました。
A いいえ、また何か考え付きましたら投稿させていただきますね。

 
フィリピン:F・H


 特集 クーラーボックスと携帯扇風機 

C4、50歳、暦21年、♂

 かなりの暑がりの私ですが、暑い!暑い!と言いながら、習慣的にビールをグイグイと飲むもんだからもう大変です。自宅においては、1.アイスノン、2.扇風機、3.クーラーと徐々に追加冷却していけますが、外出時においてはそうはいきません。
 夏場のお出かけには、麦茶と水に濡らしたタオルをバッグ型のクーラーボックスに保冷剤と共に入れ、必ず持って行きます。
 圧巻は、12V用の扇風機でしょうか? 風力には満足ですが、25センチとちょっと大き過ぎるのが難点です。夏場は電動車イス後部のバッグに常に入れています。顔に霧吹きをシュッシュッとして、扇風機をかけると効果は抜群! それでも暑い時はリクライニングを倒して、頭の下にはコンビで買った氷を置き、顔に扇風機をあてて「あつーぅ」とぼやきながら公共施設の片隅で休みます。





 ちなみに、12V用扇風機はネットショッピングで購入(980円+送料)しましたが、現在は同類のものはなく、小型のものが(980円)出ています。

広島県:O・Y E-mail: ohtake@enjoy.ne.jp

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