はがき通信ホームページへもどる No.96 2005.11.25.
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も く じ
ballごあいさつ 編集顧問:向坊 弘道
ball小倉懇親会を終えて 藤田 忠・宮本 勝己
ball「はがき通信」からのお知らせ はがき通信編集部
ball95号のYさんへの回答 福岡県:岩坪 暎二
ballウエストに注目:頸損者の肥満尺度として 編集顧問:松井 和子
ball来年の「はがき通信」懇親会は広島です 広島県:O・Y
ball懇親会イン小倉 熊本県:I
ball玉葱オヤジのモシ・タラ考 広島県:玉葱オヤジ
ball最近の趣味と加齢(?)による痛み 香川県:S・M
ballチャレンジ精神を取り戻した懇親会 長崎県:S・Y
ball懇親会に初参加 Y・Y
ballハードルを越える人 福岡県:K・K
ball写真だより 編集委員:瀬出井 弘美
ball読書メモ(9) 編集部員:藤川 景
ballとろうのおの集 佐賀県:中島 虎彦
ballひとくちインフォメーション


ごあいさつ

 今年の夏はガンを患ったせいか、ことのほか暑く感じた。夕時、あるレストランの横で久しぶりに海風に当たっていた。波の音と潮風が心地いい。生きていてよかった、と思わずつぶやいた。
 そこへレストランの駐車場係のおじさんがやってきた。「こんにちは。毎日暑いですね」と私は無理に笑顔をつくった。ところが、「ここは車が来るから危ないじゃないか。あっちへ行ってくれ」と怖い顔で、まるで虫けらでも追っ払うような仕草だ。
 ここは公道だし、おまけに駐車場には車が1台もとまっていないじゃないか、と無性に腹がたった。しかし、ガンが治らなかったらこんなに真剣に腹を立てるどころか、地獄の苦しみにあえいでいるに違いないと思った。


編集顧問:向坊 弘道

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 小倉懇親会を終えて 


小倉懇親会に参加していただきありがとうございました。そしてお疲れさまでした。当日は、好天に恵まれ台風の進路も逸れ、約40組が参加され無事日程を終了いたしました。
 今回は、懇親会の準備を通して経験を積んでいきたいという気持ちと、人の役に立つことをさせていただきたい気持ちで実行委員をさせていただきました。昨年の京都懇親会後からひとつずつ準備していき、スムーズに事が運んだことやなかなか難しかったことや下見で小倉の街が詳しくなったことなど実際に動いたことでわかったことが多々あり、おかげさまで貴重な経験をさせていただきました。なにより振り返ると、たくさんの方に支えられていることを感じられた懇親会でありました。
 懇親会が無事に終わりホッとしているところですが、スムーズにいかなかったことやアクシデントを教訓としてこれからに活かしていきたい思います。また、ボランティアさんや情報を提供していただいた方などご支援していただいた皆さま、そして相棒の宮本さんに心からお礼申し上げます。
 来年はOさんをはじめ広島の方が実行委員となり、一度も行ったことのない広島で開催ということで今から楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします。

実行委員長 藤田 忠(編集委員)


              <写真:藤田さんと宮本さん>


 小倉懇親会に参加された皆さん、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。無事終えることができほっとしています。幸か不幸か実行委員は発表を免れ、いや発表できませんでしたが、いろんな人たちの話が聞けて参考になりました。
 特に下腹が張るという現象で多くの頸損者が悩んでいるという話は、興味深かったです。最近ブームになっているデトックス(解毒)で腸内の毒素をうまく排出できたらだいぶ違うのかな、と素人ながら考えていました。腸の調子を含めて、皆さんお体に気をつけてお過ごしください。

実行委員 宮本 勝己


          <記念講演:「介助犬について知ろう!」>

          講師:NPO法人 介助犬育成を目指す会
                代表 手島 芳子 氏



           <介助犬・ミントと訓練士によるデモ>



 「はがき通信」からのお知らせ 


 [今後の「はがき通信」懇親会について]
 小倉懇親会に参加された皆さんにおかれましては、お疲れ様でした。藤田、宮本両氏の熱意とこまやかな準備のもと、お天気にも恵まれてよかったです。どうもありがとうございました。来年は、個性あふれる広島メンバーの方々が引き受けてくださいました。どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、今後の「はがき通信」懇親会について提案させていただきます。今回、私もですが、やはり関東から九州に行くのは遠く、帰宅後体調を崩された方もいました。また今後横浜で開催となりますと、今度は九州方面の方々が大変になります。飛行機という手もありますが、乗り降りの面倒くささがあります。
 ということで、編集顧問の向坊さんにご相談し、ちょうど両方からの真ん中あたりの京都(聞法会館)で実行委員だけを持ち回りで開催したらどうかと考えております。聞法会館なら宿泊も安く全員で泊まれ、会場も一緒で楽です。京都なら、観光にも事欠かないと思います。向坊さんにお口添えをいただき、そのようにできたらと思うのですが、皆さんいかがでしょうか。実行委員は大変ですが、とても勉強になり、自信にもつながります。
 「はがき通信」の懇親会も、今回で10回となりました。10年です。年に1度ですが、顔を合わせ、直接交流する場の重要性を改めて感じました。今後も、何とかできる限り長く続けてゆくことができたらと……。そのために、上記の提案をさせていただきました。
 また、韓国、香港、グァムといった飛行機でも短時間の海外での懇親会のお話も出ております。国内での懇親会の合間に、そういった海外での懇親会もよいかと思います。
 皆さんのご意見等をお聞かせいただければ幸いです。

編集委員:瀬出井 弘美




[97号の「特集のテーマ」の募集について]

 新年・97号の「特集のテーマ」は、「パソコン入力の工夫」に決定いたしました。四肢マヒ者にとってパソコンは、なくてはならないものになってきています。パソコン操作におけるさまざまな工夫は、皆様にとりましても重要な関心事であると思います。
 写真のみ、写真+短い説明文などでもけっこうですので、ぜひドシドシご投稿ください。なお、投稿の際には、身体機能レベルを書き添えていただきますとよりわかりやすいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 原稿の締め切りは、12月31日までです。




 95号のYさんへの回答 


 ご質問の要点は、①慢性膀胱炎(尿の濁り・刺激性尿意)、②排尿困難(残尿が多い)、③膀胱瘻(ぼうこうろう)を勧められていること、ですね。患者さんの背景は、頸髄損傷不全四肢麻痺で反射排尿をしておられる。自己導尿ができるのかどうかがポイントですが、多分、主治医が膀胱瘻(ぼうこうろう)を勧めておられる点からすれば、自己導尿ができない方でしょうか。
 1.脊損の方は膀胱にも何らかの麻痺があるので慢性膀胱炎が起こりやすく、根治できにくいのが普通です。褥瘡ができやすく治りにくいのも同じで、麻痺した膀胱粘膜や皮膚にいったん炎症が起こると細菌が感染しやすく、残尿のために細菌の排除力がなく、粘膜の新陳代謝も悪いので組織の修復能力がないために治りにくいのです。抗生物質を使って治しても一時的で、同じことを繰り返して抗生物質の効かない細菌の棲家になって濁った尿がでます(日和見感染といいます)。慢性膀胱炎で尿の濁りがあっても症状がない場合は、それ以上抗生物質は使いません。濁った時だけ水分を多めに摂り、排尿回数を増やすか、導尿して汚い尿を排除します。ただし、濁った尿は薄まってきれいに見えますが、細菌が死んでしまう訳ではありません。
 2.尿が濁っても、その菌が血中に入らない限り症状を起こしませんし、健康に影響を与えません。運悪く、毒力の強い細菌がついたり、体力が落ちたときに尿中の細菌が血中に入って、腎臓、精巣、前立腺に炎症(急性尿路感染症)を起こしたり、体内をめぐって(急性敗血症)突発する寒気と震えを伴って38度以上の高熱発作を起こします。このときは尿を培養し、細菌に効く抗生物質で治療しなければなりません。
 3.「急性膀胱炎がわかる、尿意を感じると症状が強くなる」のは膀胱の神経麻痺が軽く(不完全麻痺)、苦痛がない人より神経機能が良いからでしょう。しかし、「タッピングで尿意を促す、尿が出にくくて10ないし15分かかる」のは、かなり無理な排尿状況のように思われます。尿は漏れないのでしょうか。パッドや集尿器はつけていないのでしょうか。無理な排尿になっているのであれば膀胱が変形しますので、調べてみる必要があります。
 4.膀胱が変形していなければ一安心で、排尿を楽にする薬(アルファーブロッカー)を内服してみます。排尿が楽になり、残尿が減れば続けます。手指がある程度きくそうですので、一番いいのは自分でカテーテルを用いて導尿すること(自己導尿)です。自己導尿の利点は、①排尿困難や頻尿・尿失禁が少なくなる、②残尿がなくなるので尿が濁りにくくなる(膀胱炎の症状が軽くなる)、③留置カテーテルや膀胱瘻(ぼうこうろう)では管につながれ、カテーテル交換のために病院受診が必要になり、合併症の発生も多くなります。どうしても自己導尿ができなければ膀胱瘻(ぼうこうろう)も仕方ありませんが、お話の様子では自己導尿できそうな方に思えます。キットは数種類ありますので使いやすい物を選び、専門医に相談してください。
 ※元総合せき損センター泌尿器科部長でいらっしゃった岩坪暎二先生に、ご回答をお願いいたしました。どうもありがとうございました。

 岩坪 暎二(元総合せき損センター泌尿器科部長)
 北九州医療法人古賀病院
 北九州病院グループ排泄管理指導室
 E-mail: iwatsuboe@yahoo.co.jp


 ウエストに注目:頸損者の肥満尺度として 


 小倉懇親会では、電動車いす、水泳やフラダンスへの参加、がんからの生還体験、排尿管理、介助体制、仕事などさまざまな体験談が報告されました。その中で頸損者の肥満対策、とくに“頸損腹”が話題にあがりました。加齢とともに脂肪が蓄積してくるのは、頸損者に限りません。ある説によると、中高年になっても中学生のころの体重を維持するのが健康上ベストな目標だそうですが、現在のように飽食の時代ではその目標到達はかなり難しい課題です。肥満の予防が運動と栄養管理であると、健常者に比べ運動量が絶対的に不足する頸損者にとって、その予防は加齢とともに難しい課題ではないでしょうか。肥満、とくに“頸損腹”は女性にとって是が非でも回避したいものですが、加齢とともに肥満が心臓病のリスク要因となってくると、頸損者にとって肥満対策は重要な健康管理の1課題となってきます。
 小倉から戻って数日後、手元に届いた脊髄損傷の国際医学雑誌「Spinal Cord」9月号に脊髄損傷者の肥満と心臓病の関係をテーマとした論文が掲載されていました。カナダ、オンタリオ州の栄養学者と医学者が関連の文献を集めて、考察した論文です。脊損専門の医学誌に心臓病のような疾病が取り上げられるのは比較的珍しいことですが、脊損者の健康問題として肥満がクローズアップされてきたのでしょう。この論文は肥満の具体策について解説したものではなく、脊損者の肥満をどのように診断していくか、肥満の測定尺度について検討した論文です。みなさんが一番知りたいことではありませんが、心臓病の危険要因となる肥満をどのように測定していくかということも予防には重要ですので、概要を紹介します。
 肥満の尺度として一般に使用されているのがBMI(Body Mass Index)です。BMIは体重(kg)÷身長(mの2乗)で計算します。表は、WHOのBMIによる成人健常者肥満分類を示しています。
  分 類 BMI
 ・低体重 <18.50
 ・正 常 18.50-24.99
 ・過体重 25.00-29.99
 ・肥満1度 30.00-34.99
 ・肥満2度 35.00-39.99
 ・肥満3度 ≧40.00
 BMIは測定も計算も簡単で便利な尺度ですが、麻痺のある脊損者には身長と体重の正確な測定が困難という弱点があります。また従来の研究では、BMIと体脂肪率を比較すると脊損者のBMIは低い数値となり、肥満の尺度として適切でないと指摘しています。
 心臓病は、現在、脊髄損傷者にとって最も罹り(かかり)やすく、死亡率の高い疾病の1つになっています。同年齢層で比較すると、10年以上脊損歴のある人は健常者よりも心臓病の罹患率(りかんりつ)が高い結果が出ています。しかし脊損者にとって、BMIを肥満の尺度として心臓病のリスクを予測することは危険とされました。BMIは、心臓病のリスク要因となる体脂肪分布の測定も脂肪の成分を区別もできないからです。
 ウエストも内臓脂肪の測定まではできないが、ウエストと心臓病のリスク要因との間に相関関係があり、脊損者にとっては肥満の尺度としてBMIよりウエストがより適切だそうです。しかし、脊損者の肥満を対象とした研究ではBMIが継続的に測定されているので、脊損者専用のBMI肥満分類を作成することも提案されています。同時に正確なウエストの測定方法を決定するよう提案されています。
 以上が文献の要旨です。
 いずれにしても肥満は健康リスク要因です。“頸損腹”を心配していた瀬出井さんは水泳の効果か、お腹が引っ込んできたそうです。頸損者に効果的な運動、脂肪分の過剰にならない食事など、肥満予防の効果的な方法を実践されている方は、ぜひ経験談をお知らせください。

 [文献] AC Buchholz and JM Bugaresti:A review of body mass index and waist circumference as markers of obesity and coronary heart disease risk in persons with chronic spinal cord injury, Spinal Cord 43(9), 513-518, 2005
 

編集顧問:松井 和子

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