は が き 通 信 No.60 - Page. 1 . 2 . 3 . 4 . 5
POST CARD CORRESPONDENCE 1999. 11. 25.

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パソコンを光であやつる
C5・暦12年、50歳、東京

重度障害者諸君! ヘイ、ジュード! 元気にやっとるか。小生は和歌山県のMHさんとおなじ1種1級の障害者ですが、なかなか彼女のようにとんだりはねたりはできません。1種1級でもいろいろなひとがいるんですね。ここで笑いマーク、と。 smile
もちろん指なんか動きません。パソコンを操作するのに、頸損諸君はどのような方法を採っておられるのでしょうか。
マウススティックをくわえてキーボードをつついているひとが多いようですが、小生は「光キーボード」と「光マウス」というものを使っています。便利な器械ですから、ちょっと紹介してみましょうか。

光キーボードは、レーザー光線に反応します。文字の配列はふつうのキーボードと同じですが、表面にキーの凹凸はなく、各キーの下に小さいセンサー(受光部)がついていて、そこに赤いレーザー光線を当てると、ふつうのキーボードを押したのと同じ効果が得られるという仕組みです。小生は光キーボードをパソコン画面の横に立て、帽子のつばにとりつけたレーザー光線発射機から直径1センチほどの光を当てています。
レーザー光線などというと、いかにもモノモノしいけれど、操作はじつに簡単です。野球選手の目なんかねらわず、ぜひパソコンに向けたいものです。

「上の空」は傑作ですよねー!
「上の空 −頸髄損傷の体と心
藤川景著
1993年6月26日 初版発行
三五館
〒160-0004
東京都新宿区四谷2-10
TEL : 03-3226-0035
FAX : 03-3226-0170
郵便振替 : 00120-6-756857
これは小生の処女作『上の空——頸髄損傷の体と心——』(三五館発行)をたまたま目にした国リハ研究所の数藤部長から、「口に筆ペンをくわえて文章を書くより、もっと楽な方法がある」と教えていただいたものです。そのときまで小生は、パソコンはおろかワープロも使ったことがありませんでした。
                                         
44歳ではじめてパソコンに出会ったことになります。パソコンは口筆にくらべ、文章の添削や移動がたやすくおこなえるのが最大の長所だと思います。作文の途中でCD−ROMの辞書・事典類が引けるのもうれしい。平凡社の『世界大百科』書籍版なら全20巻が、ちょっと頭を動かすだけで引けるんだもの。

はじめは便利な原稿用紙としか見ていなかったパソコンですが、そのうち通信機能を使って「はがき通信」の刊行に協力できたらと思いたち、ニフティサーブに加入しました。ID番号というものをもらったとき初めて、「はがき通信」の投稿の末尾に記載されているわけの分からない記号はこれのことだったのかと知る程度の知識でした。
ところが、右往左往しながらやっとパソ通に慣れたと思ったら、こんどはインターネット時代だという。ついこないだまでパソ通といっていたのに、いまはメールだ。IDもアドレスなんていうようになってしまった。世の中の動きがはやすぎる。

困ったのは、マウス。これまでひとがマウスでやっていることは、すべてキーボードでやってきました。そうできるようにパソコンの世界も設計されていたのです。でも、いまはもうダメ。なにもかもが、マウスの使用を前提とするようになってしまいました。
ふたたび国リハに相談、こんどは光マウスのついたパソコンを貸してくれました。ふつうの画面のまわりに分厚い額縁がついていて、額縁の東西南北にキュウリの輪切りのようなものが貼り付いています。これがセンサー。光を当てると、そのセンサーの方向へマウス・カーソルが動いていきます。せっかちなひとのためにセンサーは四隅にもついていて、さらにクリック用のセンサーも右下に3つついているので画面のまわりはキュウリだらけで、まるでパソコンがキュウリパックをしているようです。

「キーつつき」をしたことがないので、光とつつきとどちらがすぐれているのか精確な比較はできませんが、スティックをくわえつづけなくてもいいというのは光の利点でしょう。小生、口内炎ができやすくて。
また、入力中にリクライニングの角度を変えても、さしさわりがないというのも便利です。夏なんか特に起立性低血圧がひどくてね。

欠点は、レーザーの反射光が目に悪く、偏光グラスをかけなければならないという点です。入力方法はともかく、頸損にとってパソコンは必需品です。
「はがき通信」にしても、パソコンなしでは存在し得ないでしょう。諸君の町でもワープロは、「日常生活用具」として援助が出ているのではないでしょうか。パソコンもなんとか、日常生活用具の仲間入りをさせたいものです。パソコンは福祉機器だと思います。

光キーボードの問い合わせ先は、アートロニクス株式会社(TEL:0297-58-9477)です。もうじき光キーボードと光マウスが一体になったものが、30万円ほどで発売されるそうです。30万と聞くと「手が出ない」と思うでしょうが、大丈夫、「意思伝達装置」として45万円まで補助金が出ます。小生の町では出ました。
「はがき通信」59号で「マウスが使えればホームページを見たりEメールを送ったりできるのに」と言っていたRWさん、いかがですか。
浴衣が着られてよかったね。
東京都 : 藤川景(はがき通信・校正) CQN03007@nifty.ne.jp



電動車椅子サッカーの紹介
C5・受傷5年

こんにちは。はがき通信への投稿は2度目になります。前の投稿は4年ぐらい前だったような気がします。
私はあまり自分で車椅子をこぐことができないので、外へ出かけるときには電動車椅子を使用しています。自分で車椅子をこげる人のスポーツはたくさんありますが、電動車椅子を使用した唯一のスポーツ、「電動車椅子サッカー」を皆さんにご紹介したいと思います。
私は神奈川県のチーム「FINE」の監督兼選手(No.11)をしています。電動車椅子サッカーは1980年に日本で誕生した団体競技で、電動車椅子とモルテン社製オフィシャルサイズ9号という直径約50cmの大きさのボールを使用し、バスケット用のコートで1チーム4名で試合を行います。
普通のサッカーのようにパスで繋いでいくというよりも、電動車椅子でボールを取り合いながら、ぶつかり合い、ゴールに押し込むという、どちらかというとラグビーのような過激な(?)スポーツです(たまにひっくり返る!!)。安全のために足を乗せるステップに、軽自動車用のタイヤを半分に切ったものの着用が義務づけられています。
自分で車椅子を動かすことのできる人のスポーツはバスケットなど数多くありますが、電動車椅子を使用しなければ自由に行動できない人にとってスポーツはほとんど無縁の世界でしたが、重度の障害を持つ人でも参加でき、男女、年齢を問わず楽しむことができるのが電動車椅子サッカーです。電動車椅子の操作は手で電動車椅子を動かす人はもちろん、なかには足や顎で動かす人もいます。(電動ストレッチャーもOK)
                                         
選手としての登録条件は障害者手帳をお持ちの方で、選手の方の障害名を挙げますと、脳性麻痺、筋ジストロフィー、ポリオ、二分脊椎、ケイソン(ほんの数えるほど)で、人工呼吸気をつけた方も参加しています。
また、アメリカ・カナダなどでは POWER SOCCER と呼ばれています。昨年実際にカナダへ行き、バンクーバーのチームと試合をしてきました。日本にはこのような電動車椅子サッカーチームが約40あり、1999年11月には熊本で第5回日本電動車椅子サッカー選手権大会(全国大会)が開かれます。(日本電動車椅子サッカー連盟主催)
興味のある方はURLをご覧になるか、ご連絡ください。




便失禁を減らす食事方法

尾籠な話ですが、我々頚損者の悩みの一つに失禁があります。ここ数ヶ月、排便日前日の食事の取り方を変えたところ、便失禁が以前に比べて少なくなりましたので、その方法を紹介します。
排便(座薬使用)は4日に1度。食事は朝晩の2回、昼はコップ1杯の牛乳を飲むのが私の通常の生活パターンなのですが、それを排便日前日は変えます。朝食はいつもに比べて軽めにし、牛乳は朝食時に飲んで昼晩の食事は一切取りません。その日の夜9時ごろ、下剤(アローゼン)を2袋飲みます。下剤は空腹時に飲んだ方がその効果は大きいそうですが、昼晩抜きの空腹状態に飲む下剤の効果は更に大きいように感じます。
排便を済ませ数時間後、または十数時間後に便失禁ということが多かったのですが、おそらくは、前日に食べた物は下の方まで下りてきておらず、暫く時間が経過してから残った分が下りてきて失禁になるようです。それならば、排便日前日は昼晩の食事を取らなければ便失禁を減らせるのでないか、というのが試みた動機です。
食事を抜いた方法は健康的ではないかも知れませんが、便失禁を減らす方法の一つではあるかも知れません。

宮崎県 : RS



こんなタイプの車もあります

6月初旬、健常者夫婦とハワイへ行って来ましたが、景色も言葉もアクセス関係も不自由なく過ごせて、快適な4泊6日の旅でした。行く前に読んだ下記の田村さんのHPが大変参考になりました。

http://www.grn.mmtr.or.jp./~tamura/homepage

さて、こんな車をご存じですか? こんなタイプの車もあるので、皆さんの参考になればと思い書いてみます。
ホテルから空港まで予約していたタクシーを見て、こんな屋根の低い車に乗れるのか、普通車じゃないかと案じた。しかし、乗ってみると座高の高い僕でも入口の高さを気にせず乗り込めるし、助手席までごっとり行けるのでびっく り。さらに視界が広く、揺れずに快適な乗り心地。こんな車があるんだと、もう最高の気分でした。
こんなタイプの存在を知らなかったので、興奮に恥ずかしさも忘れ、片言で運転手に聞くと4万ドルと聞き取れました。やはり高いなぁ!という思いだけだったものが、旅の写真が出来上がってくると、あんな車は日本にはないのだろうか?いくらするだろうか?と、夢中でインターネットで探しまくりました。
タクシーのボンネット写真「プリモス」マークを頼りに検索しましたが探せず、「福祉車輌」でひっかかったのが次のHPです。興味あれば覗いてみて下さい。
http://www.wellnet.co.jp/library/carlife/impress.htmlhomepage
◇ヴァンテージ ミニバン ノーススター
DATA 5070×1905×1740mm 3301cc4段AT
スロープ式1270×762mm ベルト式3点式
7名(3名)用 685万円
丸紅自動車 輸入 TEL:03-5276-9126
車
車

新車はとてもじゃないので、中古車でもと交渉してみたら、デモ車としていたのを販売会社社長ご自身が所有している、6割くらいで譲るというので飛びつき購入。ハワイで知ってから1ヶ月後には乗っていたという気に入りようです。

どんな車なのか説明すると・・・

・クライスラーのグランドボイジャーと同じですが、僕のはダッジ社のグランドキャラバンをヴァンテージ・ミニバン社で改造した車です。アメリカの障害者やレンタカーにも多く利用されています。この様子は今村さんのアメリカリポートにも記載されています。
・フロアーを20cm低くし、電動ドアの開閉で自動的に車体が上下するニーリング装置のため、地面から床まで32cm、スロープ角度は12度弱です。
・スロープは手動仕様もあるが、これは電動ドアが開くと、右側の床下にあるスロープが電動で出入りするノーススター仕様です。ドアの開閉やスロープの出し入れスィッチが室内に2カ所、外に1カ所、おまけにリモコン操作も出来るので、介護者(運転者)にも便利です。障害者本人が運転する場合にも乗降に便利です。運転席、助手席とも簡単に取外しが可能なので僕は今、助手席を外して乗っています。

以上が概略です。今までのニッサン、トヨタのリフト付の車の経験からいうと、日本車は窓からの景色が見えません。揺れが激しく、カーブの多い道路では疲れが激しいです。それに、運転者との会話が遠くて聞こえにくいです。乗降に時間がかかります。
これらの欠点がありますが、写真のミニバンは何と言っても視野が運転者と一緒で広く、低床のため揺れません(疲れません)。乗降時間が短いです。ゆったりしています。等々抜群です。

欠点は高価です。燃費が悪いです。サイズが大きいため駐車場や小道を走りにくいです。左ハンドルのため苦手な者もいます。右側のスロープなので車道での乗降が危険です。故障した場合のメンテナンスが難しいです。等が気付いた点ですが、最大の欠点はメンテナンス体制です。
鹿児島のユーザーは、1997年型で2年間に1度の故障経験だそうですが、僕のは1996年型で1年古いだけでライトのスィッチの接触不良と取替え、シリンダーエヤーの漏れ、一時エンジン停止、と僅か2ヶ月でこれです。後10年は乗りたいのに、不安だし、正直言って少しがっかりしています。それで、「懇親会 in 広島」大会も参加出来なくなりました。
外車については部品を取り寄せたりすること、近くのディーラーでは直せない部分もあること、などのメンテナンスの事を十分検討すべきです。
しかし、障害者が乗る車では、この低床タイプは最高ではないでしょうか。参考になれば幸甚です。  
宮崎県 :HF roro@miyazaki-nw.or.jp



障害者の夢に関するアンケート集計報告・まとめから

「車いすの夢を見るようになったらそれが障害の受容のバロメーターになる、と医者から云われたことがある」と書いていた人がいたが、確かに受傷後年月がたてばたつほど車いすの夢を見る比率が高くなる、という大まかな方向性は否定できないだろう。とはいえ、それが本人の自立の度合いと比例しているとは安直に言い切れない気がする。何十年たっても全く見ない人もおり、だからといって彼らが自立できていないともかぎらない。何ごとも例外はあるということだろう。
障害の受容といっても一概には計れない。⑧の例でも述べたが、何をもって「自立している」と言えるのか定着した基準はないのである。統計総数が少ないのではっきりしたことは言えないが、夢とその人の障害の受容度(あるいは自立度)とは、あまり決定的な関係はなさそうなのである。これにはちょっと拍子抜けだった。と同時に、人智の計りがたさをあらためて思い知らされた。私の小賢しい予測など突っぱねられた感じであった。あとは、読んでくれた人たちの判断に委ねようと思う。
ただ、アンケート末尾に多くの人が夢の覚え書きを記してくれたのは、大変貴重な資料となった。彼らが夢をはじめとする無意識の世界に素朴な好奇心を持っており、それを解明したい(してもらいたい)と願っている熱意がひしひしと伝わってきた。そこでは夢をたわ言と決めつけるのではなく、この世に生きている私たちがまぎれもなく見るものなのだから、ひっくるめて現実の一部なのだと考えたほうが凌ぎやすいだろう。夢の多くには日常の欲求がデフォルメされて登場するが、その中に「どうしてこんな夢を見てしまったのだろう?」と奇異の念に打たれるものがある。そこでは、自身や父祖の記憶だけでなく、人類以前の哺乳類や魚類や原生動物であった頃の記憶までたぐり寄せられていることがないとは言えない。そうなると「障害者」のレベルを軽やかに突き抜けて、人間(生物、生命)存在の普遍性にまで通底してゆける可能性がある。
また、私がはばかりを感じて問わなかった「性的な夢」についても、自ら覚え書きを記してくれた人がいた。それらは身につまされるものだった。ここにはまだまだ探索の余地があるだろう。言葉は悪いが「植物的人間」のような日常を余儀なくされている彼らが、実に豊かな精神世界や性的世界を経験していることがわかる。してみると、脳死者だってひそかに夢を見ているのかもしれない。だとしたら、そこにはせめて紺碧の空がかいま見えていてほしいと願わずにいられない。
最後に、このアンケートにご協力下さった方々に深く感謝申しあげたい。自分のほんの思いつきから始めた仕事とはいえ、分析作業がこれほど大変なものだとは思わなかった。未熟な分析ゆえ、関連の研究所や医大のゼミなどでさらに詳しい追跡調査をして下さればありがたい。そのときには何かのお役に立てるかもしれない。
不一 1999年8月13日

佐賀県 : 中島虎彦



つづく
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