はがき通信ホームページへもどる No.114 2008.11.25.
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<特集!「頸損(脊損)と合併症」>


 日頃から細心の注意を払っていても、またはちょっとの体調変化や過信や油断で、頸損(脊損)歴が長くなるにしたがい、脊髄損傷にともなう疾病を併発する現状があります。健康管理の情報交換のために体験談のご投稿を110号の特集「頸損と合併症」に引き続きご紹介させていただきます。
 なお、今までの特集(連絡方法・私の入浴・車いすの工夫あれこれ・私の常備薬・尿路管理・頸損と合併症・パソコン入力の工夫・暑さ対策)および連載特集の「介護する側、される側」は、次号でも引き続きご投稿をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。



 <特集> 定期検査を怠ると大事に


 私は第1腰椎を損傷している者です。今回、車イス生活者にとって、とても大切な臓器の1つである、腎臓を危機に追い込んでしまった愚かな男の話を聞いて下さい。
 みなさんは、泌尿器関連については、定期的に検査されていますか?「当たり前だよ!」と言われる方がほとんどだと思います。当然、腎臓まで定期的に検査されている方も多々おられると思います。私はそれを怠ってしまい、危うく片方の腎臓を失うか、人工透析になるところでした。私も下半身マヒ者であり、泌尿器に関しては怪我した当初から、尿の色、尿の量など、とても気を遣っていました。怪我してから10年近くたち、この際、泌尿器科にかかり膀胱、その根幹である腎臓も徹底的に検査してもらうことにしました。いろんな検査を終え、医者から「まったく問題ありません」そのお墨付きの言葉に、10年間気を遣ってきた成果だとそのときは喜びました。
 しかし、そのお墨付きが腎臓にとっては命取りだったのです。上機嫌になった私はこれならもう大丈夫と、その後の泌尿器に対する気遣いを怠ってしまったのです。あれから15年、今年の5月ゴールデンウィーク前に、40度近い熱が3日続き、救急車を呼ぼうかとも考えました。我慢強い(我慢強いのも身体には良くないことです)私は何とか病院に駆け込み、いろいろ検査してもらい、その結果、「腎盂炎(じんうえん)」でした。さらに、その原因が腎臓に溜まっている石(腎臓結石)が原因とのこと。「えっ15年前に腎臓調べたときにはまったく問題ないと言われたのに……」
 「腎臓に石が貯まるなんて信じられない!?」という気持ちでした。さらに、先生が追い打ちかけるように、「このまま放っておいたら人工透析をうけるようになるかもしれない。すぐに入院した方がいい」と言われ、ショックは隠しきれませんでした。
 それから、入院施設のある病院に転院することになり、白血球の数値が3万あったのを正常にするため2週間近くかかりました。そこからさらに石を破砕する機械のある病院に転院する予定にしていたら、今度は帯状疱疹(たいじょうほうしん)(こちらの方では「たづ」とも言いますが)ができ、転院は中止となりました。さらに治療に2週間を費やし、帯状疱疹が完治したところで、今度こそ転院と思ったら、腎盂炎を再発し、さらに2週間を費やしたのです。結局なんだかんだで、2ヶ月近く病院での入院生活を送ることになりました。その後、破砕予定の病院から、今、破砕予定が1ヶ月先まで詰まっていて、すぐには入院できないと言われ、とりあえず自宅待機しながら詳しい検査をすることになりました。そこで、また衝撃的なことを言われたのです。右の腎臓は小さなトウモロコシのような固まりが5〜6個あり、「これは破砕で何とかなります」と言われました。しかし、左の腎臓は右の腎臓より3分の1ぐらいに小さく(萎縮)なっており、さらに、その小さくなった腎臓のほぼ全域に石が蔓延って(はびこって)いたのです。素人の私にもこれはかなりやばい状態ではないかと推測できました。案の定、先生からは「左の腎臓は萎縮しており、機能してないかもしれない、その場合は腎臓を取り除くかもしれない……」と言われました。衝撃で頭の中が真っ白でした。15年間1度も腎臓のことを気遣わなかった自分の愚かさを責めました。
 ところで、普通、結石の破砕は月1回通院で行うそうです。そうなると私の場合、右腎臓の結石の破砕は3〜4ヶ月かかることになります。それから左腎臓となると気が遠くなる思いでした。それも私が腎臓を放置した報いと諦めかけていたところ、特段の配慮で右の腎臓の破砕は入院しながらやりましょうということになりました。入院だと週1回ペースでできるのでかなり助かります。結局1ヶ月で右の腎臓の石を取り除くことができ本当に助かりました。今後は、とりあえず左の腎臓の機能が残っているかどうかの検査を行い、それによって、左の腎臓をどうするのか決めるそうです。現在3つの選択肢があるそうです。1.機能してなければ、そのまま放置(素人的には大丈夫なのかと心配になります)、2.または左の腎臓の全摘、3.機能していれば通院で巨大な石を少しずつ破砕していくそうです。あの大きさからすると2〜3年はかかるような気もします(泣)。
 とりあえず、9月中旬に検査が行われる予定です。
 で、私が言いたいのはみなさんもう少し自分の身体を大切にしましょう。ほとんどの方は、常にチェックされていると思いますが、もし怠っている方がおられましたら私みたいに辛い思いや苦しい思いをしないよう、今からでも遅くないので、病院で調べてもらって下さい。また、泌尿器関係以外にも、直腸がんにかかるマヒ者も多いので気をつけたいところです。とにかく、頭でも、胃でも、気になるところは調べてもらいましょう。今は家庭で簡単にできる検査方法もありますが、やはり正式に病院にかかることをお勧めします。
 ※腎臓に結石があるかぎり、いくら水分をたくさん取ったとしても尿は綺麗になることはないそうです……。
 

匿名希望



 横向き寝用枕


 皆さん、寝るときにどんな枕をお使いですか? 受傷してKリハ病院に入院中、病棟に通称“頸損枕”と呼ばれる他の患者より低めの枕があり、頸損には低めの枕(首への負担を軽くするため?)が適していると思っていました。自宅に退院後、母に長さ80cm・幅24cm・高さ3cmの枕を中に綿を入れ、手作りで作ってもらいました。それをそのままか二つ折りにして使用し、今もずっと愛用し続けています。なので、旅行でホテルなどに宿泊すると、枕がフカフカで高過ぎることがほとんどです。
 私は、なぜか仰向けでは寝られません。必ず横向きの状態で寝ています。右、左と自力で体位交換し、背中や腰の部分に後ろに倒れこまないための枕などは一切使っていません。両脚を“くの字”に並べると、自然と上体も横向きになります。ちなみにマットレスは、病院で使用していたのと同じ“クレーターマット”をずっと使っています。
 前は感じなかったのですが、このところ身が重くなったせい(?)も関係しているのか、寝ていて時間が経つと下になっている肩と上腕が痛くなってしまいます。起きれば治るのですが、それでなくても下肢痛で眠剤を服用しないと眠れないのに、これ以上の睡眠の苦痛を少しでも取り除けたらと最近、健常者が使う“抱き枕”を買ってみました。しかし、長年、上記の手作り枕を使ってきた私には、やはりフカフカし過ぎで寝心地があまりよくありません。肩や腕の痛みは、確かに軽減されるのですが……。
 どなたか横向き寝に適した枕をご存じでしたら、お教えいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

編集委員:瀬出井 弘美



 新・今昔物語集  第七話 『ブーズーキとギリシャ音楽』(前編) 


 濡れ雑巾のように疲れ果てた身体を、精神力だけで支えてアムスにもどり、もとのペンションに再びチェックインした。深海のヘドロのような重い眠りに落ちた。翌日は昼近くまで寝て、近くの中華料理屋で酢豚と炒飯を詰め込んだ。考えるとパリではクロック・マダムという目玉焼きサンドばかり食っていたような気がする。
 もうあんな、がむしゃらに歩くストイックな旅はやめよう。視点を変える意味で、28mmの広角レンズだけをカメラに装着し首に下げて出た。「子どもの写真をたくさん撮ってきてよ」広告代理店から頼まれていたのを思い出し、コンツェルト・へボー周辺の公園を散策しながら、遊ぶ子どものスナップを撮った。5月のアムステルダムの空は抜けるように青かった。
 スキポール空港を午後の遅い時間に出発した飛行機は、ドイツ、オーストリア上空を越え、アルプス連峰を眼下に見下ろす。いけばなの剣山のような峰々が、夕日をいっぱいに浴びて神々しくも輝いていた。
 ギリシャ上空に下りてくるころには、地表は夜の帳(とばり)につつまれていた。砂漠のような砂地に黄色のランタンのような街路灯が見渡す限り燈っている。霧雨でも降っているのであろうか、浅瀬の海の中に揺らぐ夜光虫のように、街路灯が滲んで見えた。
 機外に一歩足を踏み出すと、ひんやりした粘っこい大気が、纏(まと)わりつくように身体をつつんだ。塩っけをたっぷり含んだ地中海の風だ。
 アテネの街に遺跡はない。遺跡はほとんど郊外である。だから街そのものは東京やロンドンとさして変わりはない。オフィスビルが建ち並び、ところどころに旧い教会などが嵌め込まれたように残存する。アテネはれっきとした都会だ。
 市内で観るべきものといったら国会議事堂や古代遺跡の博物館ということになろうか。博物館といっても考古学に造詣があるわけではない私にとっては、豚に真珠の類いでしかない。せっせと博物館巡りをしても身につくものは少ない。ならば市民生活にもっと密着した市場や商店街やデパートなどを歩いてみよう。(後編へ続く)
 

千葉県:T.D.




 ひとくちインフォメーション 


 ◆第2回全国頸髄損傷者連絡会・日本リハビリテーション工学協会 合同シンポジウムin KANSAIのご案内

 テーマ:「外に出ようや!〜様々なバリアを乗り越えて外に出るための工夫〜」

 内容:第1回合同シンポジウムは「福祉機器の格差を考える−地域と生活−」というテーマで、2008年3月に東京で開催された。第2回は、「外出する」をキーワードに、シンポジウムまでに頸損連メンバーが外出を含む「実現したいこと」に取り組み、その様子を映像や関係者の話を交え報告する。一人暮らしを行うための住居探し、外泊を伴う旅行を実現するための宿泊トレーニングなど、取り組む様子を報告する。実現したいができない現状、実現するために乗り越えなくてはならないバリアを明らかにする。これを受けてパネルディスカッションで参加者(行政関係者、エンジニア、サービス事業者、外出したいと考えている障害者など)を交え、解決策の検討、参加者が自ら取り組んでいることの報告などを行う。

 日時:2009年3月7日(土)
 午前:花鳥園見学、午後:シンポジウム
 会場:ニチイ学館神戸ポートアイランドセンター(神戸市中央区港島南町7丁目1番地5号)
 主催:全国頸髄損傷者連絡会  日本リハビリテーション工学協会

 [問い合わせ先]
 〈全般〉E-Mail: gogo2-office@.gr.jp 〈交通・宿泊など〉E-Mail: gogo2-access@resja.gr.jp

 [合同シンポジウム事務局]
 兵庫頸髄損傷者連絡会事務局 宮野
 神戸学院大学総合リハビリテーション学部 糟谷




 ◆頸髄損傷者の自立生活と社会参加に関する実態調査へのご協力のお願い

 全国頸髄損傷者連絡会では、日本リハビリテーション工学協会の協力と、(財)テクノエイド協会の助成で、全国の頸髄損傷者を対象に「頸髄損傷者の自立生活と社会参加に関する実態調査」を実施します。
 全国頸髄損傷者連絡会では、1991年に頸髄損傷者の包括的な生活実態調査を実施して、課題を整理し、その解決を求めて活動してきました。その後、頸髄損傷者を取り巻く福祉施策や社会環境は大きく変化し、自立して暮らす頸損者も増えていますが、多くは未だ課題山積の中で生活しています。そこで、誰もが自立して生きるために何が必要なのか、再度の生活実態把握の必要があります。
 当事者の実態を正確にとらえた調査とするためには、全国各地の頸損者のデータをより多く収集する必要があります。そこで会員の皆様には、身近にいる頸髄損傷者の方へ、この調査についての告知をお願い致します。また全国頸髄損傷者連絡会に所属しない頸髄損傷者の方で、この調査に協力いただける方がおられましたら、下記の連絡先までお知らせいただきたく存じます。
 なお調査の詳しい情報は全国頸髄損傷者連絡会のホームページで公開していますのでご参照下さい(http://saka-ue.cside.com/j/naq/)。


 調査の主旨:この調査を通じて、現在の頸髄損傷者の自立生活と社会参加の現状とその障壁を明らかにし、頸髄損傷者の自立生活と社会参加を促進する上での必要な社会的支援のあり方を明らかにします。また福祉機器開発者、医療・福祉関係者の業務に役立つ基礎的資料の提出と、頸髄損傷当事者への情報提供を行います。
 調査の対象:全国の頸髄損傷者
 調査の方法:郵送配布・回収によるアンケート調査(所要時間は30分程度)、インターネットによる回答も予定(詳細は上記ホームページ参照)
 調査の予定:2008年11月中ごろ アンケート調査票配布、2009年12月ごろ報告書の作成と配布
 調査実施団体:全国頸髄損傷者連絡会
 「頸髄損傷者の自立生活と社会参加に関する実態調査」実行委員会
 調査に関する問い合わせ・連絡先:全国頸髄損傷者連絡会 事務局長 八幡孝雄
 〒193-0822東京都八王子市弐分方町57 TEL & FAX: 042-651-3087 E-mail: BXN06214@nifty.com




 ◆「欧米か!」と、男性殴る 容疑の中3男子2人逮捕

 お笑いコンビ「タカアンドトシ」の突っ込み「欧米か!」をまね、電動車いすの男性の後頭部をサンダルで殴打したとして、千葉県警は24日までに、暴力行為法違反容疑で千葉市の中学3年の男子生徒2人(いずれも15歳)を逮捕した。
 1人は「『欧米か!』をまねて、からかってやろうと思った」と供述。1人は「やっていない」と否認しているという。男性にけがはなかった。
 調べでは、2人は8月25日午後2時ごろ、千葉市緑区おゆみ野の歩道で、電動車いすで通り掛かった千葉市の無職男性(53)に対し、「欧米か!」と言いながら後頭部を履いていたサンダルで数回殴打した疑い。
 突然殴られた男性は「何するんだ」と抗議したが、2人は構わず殴打し続けたという。
(情報提供:平成20年9月24日 共同通信)








【編集後記】



 2ページにもお知らせしていますように来年より偶数月(2.4.6.8.10.12月)の25日ごろの発行になりますので、1月末ごろに「はがき通信」が届かないと連絡がドッときませんように、念のため編集後記でもお知らせいたします。
 また、次号の2月号・No.115のみ原稿締め切り日は2009年1月15日(木)、購読者の皆さんのお手元には2月中旬ごろに届く予定です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次号の編集担当は、瀬出井弘美さんです。


編集委員:藤田 忠







………………《編集委員》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:fujitata@aioros.ocn.ne.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報委員》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 松井和子 和歌山県立医科大学
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2008.4.1.時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0069 福岡県福岡市東区郷口町7−7
TEL&FAX: 092-629-3387
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

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