はがき通信ホームページへもどる No.102 2006.11.25.
Page. 1 . 2 . 3 . 4 .

前ページへ戻る

 こんなときは・・・ 


 Nさんから引き継いで、今度は広島からじゃけん。9月16日台風13号。わが家は、どの道も崩壊して、一時陸の孤島になってしまったんじゃあ・・・・・・。
 この日は、大切な用事があったけえ、夫と広島の中心街へ行ったんよ。大雨注意報が出とったんじゃけど、雨も上がり風もない。「速度が遅いとか言よったけえ、台風は明日じゃろう」とのんきなことを言うて、用事を済ました後、映画を見に行ったんよ。映画は「出口のない海」。感動したわあ・・・。終わったのは夜の8時半。外へ出ても、雨は降っとらんし、風もない。帰る途中、中華そばを食べに行ったんよ。そしたらお店の大将が、「あんたらあが住んどるA町は、2時間ぐらい前に大雨洪水警報が出とるらしいでえ」とぽつり。「へえ〜そうなんじゃあ、ほいじゃあ急いで食べて帰るわあ、そば2つ!」食べはじめてすぐ、突然の大雨。雨脚は強くなるばっかりで、大急ぎで食べて、車に乗ったんよ。大将が傘をさしてくれたんじゃけど、夫も私もびちょびちょ。
 ワイパーが役に立たんぐらいのぶちすごい雨。前があんまり見えん。道路は所々川のように水が流れとる。家が近づくにつれ、道はほとんど川のように水が流れ、動かんようになった車が、所々に止まっとる。そしてついに家まで後1kmのところが、鉄砲水で通行止め! うそじゃろう!?
 急いでUターンして、残された帰途の道へ向かったんよ。さっき通った道は、さらに水かさが増えとる。ハンドルが取られそうになったり、他の車にぶつかりそうになったり、生きた心地がせんかったんじゃけえ。高速道路は通行止め、残された道も行く先々で通行止めになったんよ。さっき観た映画じゃあないけど、今度は「出口のない道」になったわあ。消防車の方が、「広島の西部へ出た方がええよ」と言うたけん、そうしたんじゃけど、道路のいたるところで小規模な鉄砲水発生! ドキドキしながら、一つ一つくぐり抜けたんよ。映画のワンシーンのようなスリル。怖かったんじゃけえ・・・。
 広島の西部はほとんど雨は降っとらん。さっきの出来事がうそのようじゃわあ。「この様子じゃあ、2、3日家には帰れんかもしれん」不安が過ぎった。とりあえず、今晩の薬の確保のため、A市民病院へお願いに行ったんよ。事情を説明して待つこと1時間、やっと処方されたんじゃあ。時計は深夜の2時になっとった。
 コンビニの駐車場で1泊させてもらった。助手席に座りっぱなしで体中が痛い。ジョクソウも心配じゃし、うとうとするだけで、眠れん。
 空が明るくなり始めた5時半、もう一度帰ってみることにしたんじゃ。道路は悲惨なことになっとった。いたるところにパトカーと消防車が出とって、通行止めになっとる。困った、やはり帰れんのかあ・・・。そんなとき、1つだけ通れるかもしれん道の情報が入ったんで、「行くだけ行ってみよう」と行ったのはええが、離合できんような狭い道なんよ。なんとかいつもの国道に出たんじゃけど、道は半分ごっそりなくなっとって、車が1台逆さまに落ちとった。昨夜通行止めになっとったところだ。7時半家に到着。さっき通って帰ったあの道も、間もなく通行止めになったんよ。
 台風とか警報が出とるときは、「家におりんさい」ということじゃね。中華そば屋さんの、「ほいじゃけえ、早う帰りゃあえかったんよ」と大将の声が聞こえたような気がした・・・。
 追伸・・・先日、車イスのタイヤに画びょうが刺さったんよ。2度目のことよ。ええかげんにしんさいよ、ほんまに・・・。1度目は2年前、島根県出雲市のショッピングセンターの中。体がえらい傾くよなあって思っとったら、画びょうが刺さっとって、片方のタイヤには完全に空気がないんよ。結局、車の助手席に座ったままの半日となってしまったんじゃあ。2度目は、10月7日、綾戸智恵のコンサート前。発見時はタイヤにはまだ空気はあったんじゃけど、このままでは抜けてしまう。「こんなときは自転車屋さんへ」と車イスやさんから聞いとったんで、持って行ったら30分で直してくださったわあ。車イスの修理は車イスやさんじゃのうても、修理によっては対応していただけるところもあるんじゃあ、と勉強になりました。みんなも気を付けんさいね。ほいじゃあまた! 次はどちらの方へ・・・? 関西、名古屋方面はどうじゃろう・・・・・・。

M.K.(広島県)



 『立った!ついに歩いた!—脊髄損傷・完全四肢麻痺からの生還—』
(右近清、樹心社)を読んで−後編−
 

C5損傷19年、57歳♂

つぎはついに歩く訓練。歩行訓練は危険なものだった。突然の不随意運動で体勢がくずれると転倒のおそれがある。転倒は呼吸筋の麻痺につながる。精神の集中を乱す電話・来訪・私語を厳禁したうえで、森さん自身が動かぬ足に「動け! 動け!」と命令を発すると同時に、右近氏と美子さんが外的刺激を与え続けた。関節の回内・回外、屈曲と伸展。タオルこすり、突起物刺激、タッピング、低周波、遠赤外線、電子鍼、電気的振動、温風、氷当て、鞭。はじめは何の反応もなかったが、内的命令と外的刺激をくりかえしているうちに脚部にかすかなふるえがあらわれる。そして事故後883日めの1995年11月6日、右足を随意でくりかえし動かせるようになる。《それまでは一旦重度の損傷を受けた中枢神経は再生、修復することは不可能と、どの先生にも言われ、また本の知識から得た通りであり、やはりその通りだったと何回諦めかけたことでしょう。/しかし、ここから私たちは驚くような事実を経験します。それは二年半にもわたり狂気じみた訓練を行った結果、ほんの微かに神経が繋がった「途端」という表現がピッタリですが、一旦神経が繋がってからというものは、その運動と機能の回復が次から次と伝播していくかのように、今度ははっきり目で確認できるまでとなってきたのです。/それはまるで枯れかけた木の根が高濃度の栄養分を貪欲に吸い取り始めたように、神経の枝が次々と伸びて繋がっていくかのようでした。/これは専門医である島田先生も毎月定期検診に来るたびに確認して、その機能の回復振りに驚くほどでした。》




 ●右近 清 著 樹心社 出版 2100円


 足にかすかな神経がつながると、それまで訓練していなかった手まで動きだした。《いよいよ一歩前に出す足、体重を受け止める腰、腋を支える肩、杖を繰り出す上腕、歩くための四つの条件がこうして整いました。》下肢訓練に入って10日め、褥瘡までなおってしまう。
 事故後3年めの1996年6月14日、4メートルの距離を48分13秒で歩く。しかしこれはただ「すべりうごいた」だけだとして、さらに目標を高く掲げ、補助装具いっさいなしでの歩行に挑戦する。このころ、床についた足の接地感、さらに訓練後のわずかな発汗と外気温を感じるようになる。「フローリングに裸足」が鉄則で、右近氏はその後たずねてきた脊損たちに「まず靴を脱いで素足から」と注文を出す。その結果、ほとんど全員と言っていいほど、足裏から感触が目覚め、それが上がってくるとのこと。森さんはいまや《床に落ちた乾いた米粒や糸屑を踏んだだけで》わかるという。皮膚感覚までよみがえるとは驚きだ。
 最初は100回やったら100回倒れた。《足が完全に床から離れた瞬間、サッ!と恐怖がよぎり、身体が硬くなって金具になった足を出すことができません。/それからというものは猛然と倒れる特訓だけに集中したのです。》頸椎のうしろ側を取り去ったひとにずいぶん危険な訓練をしたものだと思うが、とにかくこの方法で倒れずに歩かせてしまう。凄いとしか言いようがない。森さんも「リハ最中、転倒してコト切れるなら私はそれで本望です。しかし何もせず、ベッドで瞬きだけの生活にだけは絶対戻りたくないのです」と語る。双方にこれだけ激しい気迫があったればこそ偉業がなしとげられたのだ。 
 93年9月、第二病院から札幌の病院に転院するとき、看護師詰め所で「リハビリに頑張って何年後かに必ずこの詰め所に松葉杖で挨拶に来ます」と断言した。その約束を果たしたのは97年6月6日、事故4周年の日だ。《私と森さんの頭の中には第二病院の全ての地図が入っています。/玄関からエレベーターまでの距離。二階に上がり脳外の手術室を通り越して、長い廊下の突き当たりが詰め所。そこを右に折れると病室。その詰め所に行くまでを何回も何回もイメージトレーニングしました。/行く時間は午後三時。/なぜならこの時間帯には、少し傾いた陽が窓を射し、木立の影が長い廊下に市松模様のきれいな影をつくり、落ちるからです。/ストレッチャーで天井ばかり見ていた森さんにその影を踏ませて歩かせてやりたかったからで、段だらのその影を一歩、一歩踏み越すごとに確実に歩いているという実感を味あわせてやりたかったのです。》必ず歩いて帰ってくると断言したり、その再訪の日に事故記念日を選んだり、あるいは光線の射しぐあい、木立の影を計算に入れるなど、企画を立てて演出し自分のイメージどおりに物事をすすめようとするところは、写真家らしい。このような芸術家的感性が右近氏の訓練の原動力になっているものとわたしは見た。
 

藤川 景(編集部員)



 ひとくちインフォメーション 

 ◆本の紹介
 中島虎彦第二歌集『とろうのおの』
 中島さんが、3冊目の本となる歌集を出版されました。障害者の文学「虎の巻」HP内の日誌欄で3年半にわたり連載してきた「とろうのおの集」をまとめた歌集です。興味のある方は、下記の連絡先までご連絡下さい。
 中島 虎彦 著 アピアランス工房 出版 1500円
[問い合わせ先]E-mail: henomohe@po.ktknet.ne.jp
 「障害者の文学」
 http://www.ktknet.ne.jp/henomohe/


 ◆エコノミー症候群 車椅子の難病患者も発症 大阪医大警鐘

 長時間の空の旅などで肺血栓を引き起こす「肺血栓塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)」が、車椅子の難病患者にも発症していることが大阪医科大(大阪府高槻市)の調べで分かった。同大病院の木村文治・神経内科長は「車椅子の高齢者や障害者でも起こると考えられる。夏場には特に注意してほしい」と呼び掛けている。横浜市で13日に開かれる日本神経治療学会で発表する。
 肺血栓塞栓症は、長い時間同じ姿勢をとることで足などにできた血栓が血管を流れて、肺の動脈に詰まる病気。死に至ることもある。発症したのは、ALS(筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症)により筋力が落ち車椅子で生活していた当時61歳の男性。04年夏、呼吸困難を訴え、同病院に救急車で搬送された。胸部CT(コンピューター断層撮影)検査で、左右の肺動脈に大量の血栓が見つかった。すぐに血栓の治療を施し、無事に回復したという。
 重度のALS患者では、呼吸に使う筋肉が衰えるため呼吸不全が起きることがある。この男性の場合、血中の二酸化炭素濃度が低く過換気状態で、ALSの呼吸不全とは状態が違ったため、肺血栓塞栓症を疑い検査したという。同病院ではそれまでにも、車椅子のパーキンソン病患者2人の足の静脈に血栓が発見されたことがあるという。
 血栓は脱水状態になるとできやすい。木村科長は「この男性は、介護者の手間を考えてトイレに行く回数を減らそうと、水分摂取を控えめにしていた。車椅子の方にはよくある傾向だが、夏には注意が必要。発症防止には、自分で足が動かない場合、周りの人に手伝ってもらって、曲げ伸ばし運動などをしてほしい」と話している。
 車椅子の場合、ひざの位置が尻より高いと太もも部分の血液の流れが悪くなるため、尻の下にクッションを置くとよいという。【山田大輔】
(情報提供:平成18年7月12日 毎日新聞)


 ◆障害者差別解消 初の条例 千葉県解決、仲裁手続き盛る

 千葉県議会は11日、障害者差別をなくす条例案を全会一致で可決した。障害者差別解消を目的にした条例制定は全国初。差別行為を定義し、解決に向けた手続きを盛り込んだ。来年7月に施行される。
 国の障害者基本法には差別禁止の理念は盛り込まれているが、差別解消の具体策は示されていない。千葉県の条例では、差別行為を「障害を理由に解雇したり、退職を強いること」などと具体的に例示。差別の訴えなどがあった場合は、知事が委嘱する「地域相談員」が当事者間の仲裁にあたる手続きを明示した。
 それでも解決しなければ、知事への申し立てに基づき、障害者団体関係者や法律の専門家など第三者で構成する「調整委員会」が助言やあっせんを行う。これに対し、「差別をした」側が正当な理由なく従わない場合、知事は勧告することができる。ただし、罰則規定はない。
 また、差別を巡って提訴する障害者に対して、県が訴訟費用の貸し付けなどを行うことができるとした。
 同県の堂本暁子知事は今年2月、悪質な差別事案の公表規定を盛り込んだ条例案を議会に提出したが、最大会派の自民党が反発。今回、再提出した条例案では公表規定を削除したほか、差別を定義する条文に「合理的な理由なく」との文言を付け加えた。
(情報提供:平成18年10月12日 読売新聞)







【編集後記】

 物騒な世の中で、防犯のために身体障がい者に関わる事件を2つお知らせします。1.高知県で、視覚障がい者宅に近くの福祉施設の職員と偽り訪れて、身体障害者手帳を2、3日貸してほしいといわれて渡したが、手帳は戻ってこなかったという不審な事例があったことや、2.鹿児島県で、障がい者宅へ役場職員と偽り訪れて、障害者年金は預金を下ろしてひとつの口座にまとめないと支給されないと騙して、複数の金融機関から預金を下ろさせて数万円を騙し取ったという事件がありました。両方ともその後に不審に思い、問い合わせて発覚したそうです。
 これから形を変えて、障がい者を狙って騙そうとする不審者が現れないとも限らず、気を付けなければと思いました。皆さんもくれぐれもお気を付け下さい。
 次号の編集担当は、瀬出井 弘美さんです。

編集委員: 藤田 忠


………………《編集委員》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:fujitata@aioros.ocn.ne.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報委員》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 松井和子 東京都清瀬市国立看護大学校
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2006.11.25.時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0069 福岡県福岡市東区郷口町7−7
TEL&FAX: 092-629-3387
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

このページの先頭へもどる


HOME ホームページ MAIL ご意見ご要望