2015731():難聴者用スピーカ「コミューン」が本研究会に寄贈さる

 「音場拡声システム」(SFASound Field Amplification)が軽度難聴者用の補聴方法として注目を浴びている。厚労省の障害者自立支援機器開発促進事業の助成により実用化された卓上型対話支援システム(コミューン:COMUOON)が、開発者の中石真一路社長((株)ユニバーサル・サウンドデザイン)から本研究会に恵贈された。私が補聴相談を担当しているトライアングル金山記念聴覚障害児教育財団(東大先端研・福島智研究室)で贈呈式を行った。今後、試聴を希望する会員に貸出をする予定である。






2015728()NHK総合TV「ニュース シブ5時」で軽中度難聴の問題を啓発

 NHKは、偽ベートーベン・佐村河内事件報道の反省を踏まえ、難聴者問題について十分時間をかけて社会に訴えていこうとする姿勢を見せ始めているようだ。一年前、障害者手帳の認定についての疑問をもった三瓶祐樹記者(NHK報道局遊軍プロジェクト 生活情報チーム)が東大先端研の私の研究室に訪ねて来た。その後何度も懇談を重ねた。三瓶記者は「軽中度難聴の場合は、重度難聴に比べなかなか周囲の手助けや理解が得られにくい、補聴器購入の補助が受けられない」ことについて社会に訴えていく覚悟を決めるに至ったのである。

 先ずは軽中度難聴とは何かを社会啓発することから始めようと、1か月前からの新番組「ニュース シブ5時」の特集テーマに入れることになった。ちなみに「シブ」とは「渋谷から発信」の意味である。様々な聴覚障害関係者への取材を経てほぼ内容が固まってきたところが、同時間帯に大相撲夏場所中継が入り2週間延期となった。そして本日の本番を迎えたのだが、今度は国会中継が長引き、スタジオでは時間のやりくりや台本の変更に大わらわ。生放送は時間との勝負だという現場を見せつけられた。軽中度難聴を世の中に理解してもらうには欠かせない内容が台本原稿からどんどん削られていく苦渋を感じた。今回は、障害者手帳問題に向かうための軽中度難聴の入門編と位置づけ、第2弾以降の戦術を三瓶記者の熱い報道記者魂に乘せられながら考えていこうと思う。



2015715():月山夏スキー行

 とうとう今シーズンはゲレンデに立つ機会を逸していた。思い立って、ミニバンにスキー用具一式を積み込んで月山の夏スキーに出かけた。常磐道、磐越道、東北道、山形道と高速道路を乗り継いでの長距離ドライブである。前日は山形蔵王温泉に一泊。山形市内の最高気温は30度を超えているので残雪がどこまであるか心配だ。翌朝、月山夏スキーのベース地である姥沢の駐車場まで行き、山小屋の人に雪渓の残り具合を訊ねると、やはり1時間ほどスキーを担いで登らなければ辿り着けない。しかも、夏スキー用に設置されていたTバーリフトは数日前に撤去したという。スキーは諦めて、せめて雪の上に立ちたいと思い空身でトレッキングすることにした。

 小学校5年生の時からスキーをしないシーズンはなかった私である。アメリカ留学中ですら、山というものがないセントルイスからコロラドのデンバーまで3日もかけてスキードライブを決行したのだから、今年73歳で打ち止めになるようでは悔しい。意地でも続けたいのである。結局は雪渓までの山歩きに終わったが、「スキー行」だけは今年もやり遂げたということにしよう。来年は6月中の夏スキー最盛期に月山に再挑戦するつもりである。私にとって一番長続きしたことって何だろうと考えると、スキーと聴覚障害の仕事なのであろうか。



201576()NHKEテレで難聴者用スピーカが話題に

  NHKEテレ「ろうを生きる難聴を生きる」で、「卓上型対話支援SFAスピーカCOMUOON」(ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社)を紹介する番組を編集しているのでいろいろ助言してほしいと、長嶋愛ディレクターから取材を受けた。このスピーカは厚生労働省の障害者自立支援機器等開発促進事業に採択され製品化されたものである。上京の都合がつかなかったので長嶋ディレクターには急遽つくばの自宅を訪ねてもらい、難聴の特性と補聴の原理などについて2時間ほど解説した。その内容が面白かったのか、インタヴュー撮影を引き受ける羽目になった。1時間以上にわたってカメラの前で話した。このまま聴覚補償学の講義に使えるのではないかと自負する中身もあったと思う。しかし編集作業を経た結果、私のコメントは1分半ほどにカットされた形で番組に添えられることになった。今週末11日(土)の夜に放映される予定だ。http://www.nhk.or.jp/heart-net/rounan/

 難聴者用スピーカが出来上がったと宣伝されると、補聴器に代わる機器が開発されたと誤解され過剰な期待を持たれる向きもあるので留意しなければならない。主に、加齢難聴や軽・中等度難聴に適応するものである。

 音場拡声システム(SFASound Field Amplification)について少し説明してみる。難聴者にとって聞こえにくい音や音声をよりよく耳に届ける補聴技術は、補聴器のように挿耳型レシーバーを装着するか、耳介をヘッドホンで覆うかが主流である。外耳道を塞いで音を鼓膜面に届ける方式を「イヤホン法」と呼ぶ。一方、耳を塞がずにスピーカから出力される音を聞く方式を「音場法」と呼ぶ。普通に空間で聞くこの方式は「スピーカ法」とも呼ばれる。科学技術の粋を集めた最近の補聴器の進歩には目を見張るものがあり、いきおい聴覚補償の様式はイヤホン法が当たり前のこととなっている。ところが補聴器の適応となるほど難聴程度が厳しくない場合や、補聴器そのものの装用や補聴器による耳の閉塞感を嫌う場合に、イヤホン法よりも音場法(スピーカ法)による情報保障の方がよく適用する。そのような意味で、欧米を中心にSFAと呼ばれる「音場拡声システム」が軽度難聴者用の補聴方法として取り上げられるようになった。テレビ音声を明瞭に聞くために手元における小型スピーカなど、既製の手軽なSFAは多い。

 COMUOONの評判がいい理由はどこにあるのだろうか。開発者の中石社長のプレゼンテーション上手もあろう。スピーカが難聴者の近くに置かれるので周囲の騒音から影響されにくく、相手の声がSN比(信号対雑音比)の良い条件で耳に届く。また、人間の音声の特徴成分が比較的多く含まれる500Hzから2000Hzの周波数領域が増幅されて出力されるので聞きやすくなる。さらに、このシステムは単に音を大きく聞かせるのではなく、難聴者の聴力低下の程度に合わせた周波数特性で対話者の音声特性も加味して音響増幅しようとするところに特徴がある。しかし、オージオグラムをもとに難聴者の聴力特性データをどのように取り込むか、快適聴取レベルをどのように設定するかなど、個々人の聞こえの特徴や対話者の話し方の条件を考慮した細かなフィッティングを自在にするまでには課題が残る。それにしても、デザインのよい小型スピーカから出力される高音質の音声支援は、難聴者用SFAの在り方に新しい展望をもたらすであろう。




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