2015625():人工内耳と音楽のDVD「音って、楽しい!」

 松本祐二教授(洗足学園音楽大学附属音楽感受研究所・研究長)の協力・監修により日本コクレア社が製作した音楽DVD「音って、楽しい!」の恵贈があった。感想を求められたので次のようなことを書き送った。

●最近私は、聴覚補償学の専門家として講演や論文の中で、『聴覚障害者への聴覚補償・情報保障は、これまでの言葉がよく聞こえればよいという考えから、それに加え更に音楽の補償・保障が求められる時代に入っている』と、次に取り組むべき課題として音楽の重要性を話すことが多くなりました。

●この度DVD「音って、楽しい!」を鑑賞して、いっそう期待をもってこの思いを実感することができました。とりわけ人工内耳による聴覚補償は音声に狙いを定めてきた経過があったわけですが、人工内耳装用の当事者が自ら「言葉だけではなく音楽も」と、より広い音の世界に入り始めた事実に触れる度に、嬉しさがこみ上げてきます。

●特に人工内耳装用のマリンバ奏者・普天間健氏のインタヴューにはとても深い内容が含められています。聴能訓練・聴覚学習の領域で説かれてきた聴覚活用の方法や留意事項が、普天間氏の口からズバリ語られているのでした。それは音楽に限らず、言葉にも、コミュニケーションにも、人間関係にも、更に音楽は人の生き方にまで関わるものだと話されていることに、私は「ブラボー」と声をあげたくなりました。



2015620():「折々のことば」

 このところ隠居した身にしては毎日のスケジュールが混んでいて、会長日誌への投稿が滞っている。しかし、多忙な朝でも朝日新聞の一面の片隅に連載されている鷲田清一先生の「折々のことば」には必ず目を通す。

 名もない江戸の芸者が残したことばが紹介されたと思えば、マルクスが載ったりと、何が出てくるかと楽しみである。今日の「折々のことば」は『聴くとは、動けなくなることだ』だ。私が昔からよく講演で話す“みる”と“きく”に通じるものがある。“観る”は目の前で見えていない物事までみえること、それは、“きく”ことでいえば心で聴くこと、すなわち“聴能”にあたる。

 『「聴く」といいながら、ひとはたいてい聴きたいこと、理解できることしか聴かない。ほんとうの「聴く」とは、これまでそのようなものがあるとすら思っていなかったような他人の心の疼(うず)き、心の震えに触れて、身じろぎできなくなることだ。そしてそれにとことん身を晒(さら)すこと。(今年1月、砂連尾理(じゃれおおさむ)のダンス公演「愛のレッスン」アフタートークでの若き映像作家、濱口竜介の発言)
 
http://digital.asahi.com/articles/ASH6130X0H61UCVL007.html

 大阪大学の総長だった鷲田清一先生とは短い時間だったが一緒に仕事をしたことがある。国立大学の学長は国立大学協会(国大協)の組織の中で各種委員会の委員としての務めも果たす。私が筑波技術大学の学長だったときは国際交流委員会に所属し、鷲田学長がその委員長だった。委員会の席で「政府が構想し始めた“留学生30万人計画”のなかには、障害学生が含まれていないのではないか」と発言したりしたものである。
 
http://www.janu.jp/jacuie/report/report06-1.htm



201569():聴覚・人工内耳センター(東京医大)に教育相談外来を開設

 東京医科大学病院の聴覚・人工内耳センター(河野淳教授)の外来に「発達・心理・教育相談」部門が開設された。私は幼児・小学生の親子の個別相談を毎月第2火曜日午後に担当している。その他に、グループのカウンセリングとして「教育相談会」も計画されている。625日(木)は「新一年生の近況を話す会」である。聴覚障害児の小学校生活の様子、悩みや課題などを話し合い、必要なアドバイスを行う。www.acictmu.jp



201565():子どもたちが考える「補聴器の未来図」

 JAPAN補聴器フォーラム2015 http://jhf-jhida.jp/ の会場である浜松町の都立産業貿易センターには「子どもたちが考える補聴器の来図」が展示されている。選考委員長を務めた私の講評を紹介する。

 ●第2回目となる「補聴器の未来図」作品展には日本全国から520点の応募がありました。いずれも補聴器装用当事者である子どもならではの創造性のある作品でした。選考委員会では一つひとつの力作に魅了されながら慎重に審査した結果、その中から特に優れた5作品に「金賞」を、10作品に「銀賞」を、55作品に「銅賞」を授与することにいたしました。また「学校賞」には、数多くの作品制作に取り組まれた大阪府立生野聴覚支援学校と、優れた作品の数が最も多かった長野県立長野ろう学校の2校が選ばれました。

 ●補聴器が音声を補償してくれるだけでなく、スマートフォンと連動して文字や画像、手話などの視覚的手がかりを付加表示してくれるような多機能型情報保障機器としての役割に着目する作品が多く見られました。電池を交換する必要のない、発電機能のある省エネ補聴器などにも、子どもたちをとりまく今日の社会や文化が反映されています。

 ●より快適な装着性やデザインを補聴器に期待する作品も多くありました。シール型や透明補聴器など目立たないことを求める一方で、環境に合わせてきれいに光る自動変色補聴器など、装着を表に出して主張する補聴器を描いた作品も少なくありません。水泳中も外さないで使える防水補聴器、音楽がよく聞こえる補聴器、英語を日本語音声に変換してくれる補聴器など、学習上の希望を込めた作品もありました。

 ●日頃から子どもたちは補聴器の自己管理などで気を使うことが多いのでしょう。頻繁に作り替えしなくても耳にフィットするイヤモールドなど、親に負担をかけまいとする心遣いが表れています。さらに、今までにない超能力を補聴器に持たせ、子どもの願望を未来の補聴器に託そうとする作品も少なくありません。犬や猫と話せる補聴器。相手の心や気持ちが伝わり合える補聴器などです。

 ●補聴器は単に聞こえをよくするための機器ではなく、聴覚障害児の育ち方・学び方・生き方に広く影響を及ぼすものです。子どもたちは、一生を通じて多様な機種の補聴器を何台も使い続けます。実は補聴器の“最多・最長のユーザー”は聴覚障害児なのです。ですからこの子どもたちこそが補聴器の未来図を描くに最もふさわしく、彼らが描く夢のなかに補聴器がこれから発展すべき方向性が秘められているのだと実感させられます。また同時に、高齢難聴者のための補聴器のあり方についての貴重なヒントも子どもたちの発想から得られそうです。

 ●本フォーラム会場には、応募された全ての作品を展示してあります。「補聴器の未来図」を通して、幼児・児童・生徒の補聴器をめぐる日々の想いと補聴器への期待をお汲み取りいただき、ユニークな発想をご鑑賞いただければ幸いに存じます。



201561():聴覚障害誌に「附属聾の早期教育の特徴」を投稿

 「聴覚障害」(ジーアス教育新社)の2015年春号(Vol.70,通巻761号)に投稿した論文が掲載された。連載企画「聴覚障害児における早期教育のクリティカルパス研究」の、その(3)に当たる「筑波大学附属聴覚特別支援学校の早期教育の特徴」(著者:大沼直紀、児玉眞美、広津侑実子、福島智)である。この原稿を書き始めた時の初稿の題名を「附属聾のレーゾンデートル(存在理由)と教育の特徴についての私論」としたほどであるから、私の私見が多く含まれている。附属聾への期待を込めて関係者には耳の痛い話も書いた。小見出しだけを以下に紹介しておく。

1.近年の聾学校の変容

2.附属聾の特性を支えるスチークホールダー

3.“対応の教育”による学力保障

4.附属聾を選択する保護者の期待

5.附属聾の教員の専門性

6.附属聾の早期教育の特徴




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