2015224():天山酒造の七田会長

佐賀県聴覚障害者サポートセンターの伊東康博センター長と手話関連事業を担う香田佳子氏の案内で「唐津くんちの曳山」で有名な唐津市に向かった。新年度からの開設に向けて5億円をかけて建設中の「唐津市障害者支援センター」を見学した。地方の小さな町でも障害者支援のための施策が着々と進んでいるのを目の当たりにした。

唐津市から佐賀空港への帰路は小城市を経由する。天山酒造の七田利秀会長(5代目蔵元)との懇談が予定されている。150年以上の歴史のある天山酒造は、全国新酒鑑会で連続金賞受賞の「飛天山」や6代目蔵元の七田謙介社長が世に問うた評判の高い「七田」でも有名である。実は私は60代までは洋酒党で日本酒が好きではなくあまり飲めなかった。70歳にかけてようやく日本酒の味が分かるようになり、駒場の研究室を夕刻に出て代々木上原の街並みを中心に馴染みの店を飲み歩くようになった。七田社長と補聴器談義や文化談義に興じた後、蔵の中に設けられたSAKEバーに寄せていただき、普段はめったに口に入らないような銘酒の数々をご馳走になった。次の佐賀県訪問は10月の「全日本聾教育研究大会」と来年1月頃の「聞こえのバリアフリー講演会」が予定されている。七田会長との再会が楽しみである。



2015223():佐賀県聴覚障害者サポートセンター

昨年の318日に佐賀県庁で講演して以来、1年振りに佐賀県入りをした。「佐賀県聴覚障害者サポートセンター」は九州の中でも最後に設置され、全国にある「聴覚障害者情報提供施設」中でも遅れてスタートした施設である。後発の強みを活かし、従来の聴覚障害者情報提供施設が手話通訳者・要約筆記者の養成と手話・字幕入りビデオの制作などが主な事業であったのに比べ、思い切った新しい試みや事業内容にも取り組んでいる。例えば、聴力・補聴器に関する相談部門には言語聴覚士が2名(1名は常勤)配置され、高齢難聴者を対象とした聞こえの相談支援も行っている。設置時の見込み数の2倍を超える約1万人がこの1年間にセンターを利用しており、その内の聞こえと補聴器相談は約150件と次第に増えている。

開業1周年を迎えたので、昨年に引き続き「聞こえのバリアフリー講演会」が企画された。佐賀県、唐津市、多久市、武雄市、小城市、有田町、玄海町の障害福祉関係者や議員、聴覚障害関係団体の会員などに私の話を聞いていただいた。



2015214():第4回シーメンス臨床セミナー

 名著「補聴器ハンドブック」の編著者としても世界的に知られるハーヴェイ・ディロン先生をお迎えし、「第4回シーメンス臨床セミナー」が秋葉原のアキバホールで開催された。小川郁教授(慶應義塾大学耳鼻咽喉科)が座長を務められ、次の4名の講師が登壇した。

1. ジョエル・バイリン先生(シーメンスメディカルインスツルメンツ・オーディオロジー総括責任者)「両耳効果をより高めるためのスマートテクノロジーの適用」

2. 新田清一先生(済世会宇都宮病院耳鼻咽喉科)「失敗症例に学ぶ補聴器フィッティング~成功のために何が必要か?」

3. ハーヴェイ・ディロン先生(NAL:オーストラリア国立音響研究所ディレクター)「両耳受聴と補聴器の両耳装用について」

4. 大沼直紀(日本教育オーディオロジー研究会)「子どもの聴能を知る~かんたんな聴能評価法」

以下は、当日の抄録集に載せた私の講演概要である。

『聴力レベルのdB値(最小可聴閾値)は聞こえの程度を示す一つの大事なデータです。しかし、ある子どもの“聞こえ方”を知ろうとするとき、“聴力”の数値だけでは十分ではありません。日常生活で実際に聴覚を活用する能力を表していないことがあるからです。聴力レベルではかなり重度な難聴であるにもかかわらず、話を聴きよく分かる、環境音などをよく理解する、音楽を好んで聞くなど、補聴器や聴覚の活用に優れた能力を示す人がいます。またその反対に、聴力レベルは比較的よいにもかかわらず音や音声を聞く実際の場面で聴力がうまく機能しない人もいます。こうした働きを“聴能”といいます。聴力は変わらず同じであっても聴能は“発達する”ものなのです。聴力がうまく働いているか、子どもとの様々な関わりの中から“聞こえ方”を観察することができれば、補聴器の効果的な活用がいっそう促されるでしょう。子どもの“聴能”をどのようにして知るか、簡便な聴能評価の例(「JANT:数唱音数え検査」「家族の呼び名の聞き方検査」など)を紹介します。』



201525日(木):マイクの持ち方発見

 つくば市教育研究会主催の教育論文発表会が開催された。市内5315学園の先生方が市民ホールを埋め尽くす大きな催しである。60件の応募論文の中から3件が市長賞に選ばれた。市原市長と教育委員長である私が演壇に据え置きのマイクを使って来賓挨拶したあと、市長賞受賞の先生による研究発表へと会が進行する。初めにステージに立った発表者は並木学園の池田・市原教諭である。タブレットPCを手に持ちプレゼンテーションを始めようとしたところ、両手が塞がってしまうのでマイクが持てない。そこで面白い行動をとった。ヒョイとマイクを背広の胸ポケットに差し入れたのである。会場に笑いが起きる。口元から15センチほどの距離にマイクの頭が位置し、明瞭な安定した音声が会場に届いたのには驚いた。池田・市原教諭の見事なプレゼンテーションが終わると、その次の発表者が「私も真似をさせていただきます」と胸ポケットにマイクを入れて話し始める。さらに次の発表者も同じようにと続いたのである。たとえピンマイクの用意がなくとも、とっさにSN比の良い音場拡声が簡単にできることを目の当たりにした。こうした工夫も教育オーディオロジーの身近な実践と考えてよい。



2015 21日(日):東大・先端研「聞こえのバリアフリーシンポジウム」

 第6回「聞こえのバリアフリーシンポジウム」のテーマは「多様な情報保障を総覧する」であったが、登壇者も参加者も実に多様であった。聴覚障害当事者の参加も多かった。情報保障と銘うつからにはと、会場には手話、文字、指点字、画像、音声など考えうる限りの情報保障体制を試みた。音声情報保障では磁気ループシステムを敷設する他に、参加者個人持ち込みの補聴システム用FMマイクなどを受付けるデスクも設けた。富澤晃文先生(目白大学)の陣頭指揮のもと教育オーディオロジー研究会の関東地区メンバーが活躍してくれた。

 シンポジストの一人である瀬谷和彦氏(弘前大学大学院)からは「きこえの健康支援センター」(仮称:全難聴の将来構想案)について話題提供があった。そのことに関連して、私のショートレクチャーの配布資料に以下のコメント(センター設立に際して留意してほしいこと)を載せたので再掲しておきたい。

1)一般の人が難聴の聞こえやコミュニケーションの不自由さを「擬似体験」できるシステムの開発とその公開を。

2)難聴当事者が自らの聞こえについて学び直す実践講座(環境音探訪ツアーなども含め)の開設とそのプログラム作成のためのオーディオロジーなど専門家の協力体制を。

3)「当事者研究」の視点と手法を取り入れ、難聴当事者だからこその知見(体験的聴能論など)の整理と集積を。

4)自らの組織を守り発展させるための事業内容だけではなく、組織外の人にとっても為になる企画を。

5)「聞こえにくい人」の問題だけでなく「聞こえすぎる悩みを持つ人」(聴覚過敏のため社会適応ができないなど)の課題解決にも尽力できるゆとりを。

6)「バリアフリー・コンフリクト」の時代を迎え、障害の問題解決の過程で起きる衝突・対立・葛藤を正しく受け止め、次の展望へと向かう止揚を。





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