2015130日(金):福祉工学カフェ

 「福祉工学カフェ」は国立障害者リハビリテーションセンター研究所と(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の共催で開催されている。http://www.rehab.go.jp/ri/event/at_cafe2010/top.html

 実用性の高い福祉機器の開発・普及を目指して、障害当事者と開発者が議論する会として設立された。第13回のテーマは「聴覚障害者を支援する福祉機器とは何か~聴覚補償、情報保障の観点から」である。先ず今回の趣旨説明と話題提供を渡辺儀一氏(聴覚障害者キャリアアップ研究会)が行った。聴覚障害当事者からは、神戸由香氏が「共に働くために~ハード面、ソフト面から」、室園晶子氏が「情報保障の限界と限界突破のために」を発表した。神戸さんは音声を使っての、室園さんは手話を使っての、それぞれ素晴らしい内容のプレゼンテーションだった。私は「聴覚補償の最近の動向」を話した。開発者からの話題提供は、津田敦也氏(セイコーエプソン株式会社)の「スマートグラスの活用事例」だった。情報保障に苦労しながらも会社にとって必要な社員として積極的に活躍する聴覚障害者たちと、聴覚障害者をよく理解しそのニーズに即した情報保障機器を提供しようと意欲的な開発者たち、双方が正にスマートなディスカッションを展開する様子を多くの関係者に知ってもらいたいと思った。



2015124():聴覚障害者のコミュニケーション教室で講義

 東京都教育委員会主催の事業「聴覚障害者のコミュニケーション教室」(委託:東京都中途失聴・難聴者協会)で、「聴こえへの支援~聴覚補償と情報保障~」の演題で2時間30分の長い講義を行った。配布資料の一部を紹介する。

 『聴覚障害者の生活の質を高めるには、その障害を「補償」することだけにとどまらず、伝わりにくい情報を周囲から「保障」するための環境改善も重要です。そして結局、最後には聴覚障害者に直接対応する周囲の人々の理解がなければ何も進展しません。我が国の聴覚障害者への支援は、聴覚補償の時代から情報保障の時代へと進展してきました。「医学モデル」や「個人モデル」から「社会モデル」へと障害へのアプローチが移ってきたわけです。(中略) 今後ますます人工内耳などの聴覚補償機器の普及や手話・文字通訳などの情報保障環境が整う新しい時代にあっては、「補償」から「保障」へと向かうだけではなく、個々人のニーズに即して聴覚補償の可能性を改めて確かめながら、障害補償と情報保障のバランスをとり総合的な支援を行う必要があります。2001年にWHO(世界保健機関)が採択したICF(国際生活機能分類)の障害概念にも通じるものです。』



2015123():障害者総合支援法

 障害者総合支援法の附則第3条においては、施行後3年となる平成284月を目途に5つのことについて見直すこととされており、「障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ」が設置された。昨年1215日に第1回目の会合が持たれ、特に検討項目の一つにある「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者に対する支援の在り方」については、作業チームを設けて論議することになる。厚労省より私がその構成員に就任するよう依頼され、本日開催された第2回目のワーキンググループの会議から出席した。全国38の障害者団体へのヒアリングが24日まで5回にわたって行われる予定で、今回はそのうちの10団体の代表から様々なお話を聴いた。特に私が関係する意思疎通支援のテーマでは、全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全日本盲人連合会などからの意見を重く受け止めた。4月の論点整理まで、東京での会議出席が頻繁になる。この3月末で東大の勤めを終え「第2の定年」を迎える間際になって、最後の超多忙に追われる身である。



2015117日(土):「聞こえのバリアフリーシンポジウム」(最終企画)

 今年の3月末で東大の私の勤めは任期満了し「第2の定年」を迎える。この6年間に6回の「聞こえのバリアフリー・シンポジウム」を企画してきた。来る21日に開催する予定の「多様な情報保障を総覧する」が先端研での私の最後の仕事になる。

http://www.jeaa.info/pdf/todai2015_2.pdf

以下に、第1回から6回までの内容を記しておきたい。

●第1

【日時】2010920日(月)

【主催】第48回日本特殊教育学会(長崎大学)

【テーマ】「聞こえのバリアフリー ~人工内耳・補聴器の選択と非選択~」

【企画者】大沼直紀、福島智(東京大学先端科学技術研究センター)

【話題提供者・指定討論者】

原田公人(国立特別支援教育総合研究所)

神田幸彦(神田ENT医院・長崎ベルヒアリングセンター)

田中英雄(田中補聴研究所・元長崎県立ろう学校)

佐藤紀代子(関東労災病院感覚器センター)

富澤晃文(日白大学)

高橋信雄(愛媛大学)



●第2

【日時】201126()

【主催】東大先端研バリアフリープロジェクト(福島研、中邑研、巖淵研、伊福部研)

【テーマ】「人工内耳装用者による体験的聴能論」

【シンポジスト】

鈴木克美(東海大学・名誉教授)

高岡正(全日本難聴者中途失聴者団体連合会・理事長)

佐藤紀代子(関東労災病院・言語聴覚士)

神田幸彦(長崎ベルヒアリングセンター・神田ENT医院院長)

【総括講演】「人工内耳の効果を左右するものは何か-成人と幼児の違い-」

加我君孝(東京医療センター・感覚器センター・名誉センター長)



●第3

【日時】201225(日)

【主催】福島智研究室/大沼直紀研究室

【テーマ】「聴覚障害(補聴器・人工内耳)と音楽」

【基調講演】「音楽と言語と脳」

中田隆行(公立はこだて未来大学)

【シンポジスト】

中田隆行(音楽脳の研究者として)

丸尾直子(難聴のピアニストとして)

大嶋直子(日本聾話学校の教師として)

洗足学園音楽大学音楽感受研究室(難聴児の音楽プログラム開発者として)

【総括講演】「聴覚補償と音楽保障」

大沼直紀(東京大学先端科学技術研究センター)



●第4

【日時】2012922()

【主催】福島智研究室

【テーマ】「聴覚障害児の日本語言語発達のために“ALADJINを聴覚障害教育の領域から読み解く”」

【基調講演】福島邦博(厚労省・感覚器戦略研究チームリーダー、岡山大学医学部)

【シンポジスト】

武居渡(金沢大学) 「手話学の立場から」

中井弘征(奈良県立ろう学校) 「聾教育の立場から」

斎藤佐和(目白大学) 「聾児の言語発達研究の立場から」

森壮也(アジア経済研究所(IDE)開発研究センター) 「障害学研究のろう者の立場から」




●第5

【日時】2013923()

【主催】福島智研究室

【テーマ】「特別支援教育と教育オーディオロジー」

【特別講演Ⅰ】「聴覚障害教育の現状と課題」

大西孝志先生(文科省特別支援教育調査官)

【特別講演Ⅱ】「当事者研究の可能性-聴覚過敏を例に」

熊谷晋一郎(東京大学先端科学技術研究センター)



●第6

【日時】201521(日)

【主催】福島智研究室

【テーマ】「多様な情報保障を総覧する」

【ショートレクチャー】「聴覚補償から情報保障へ」

大沼直紀(東京大学先端科学技術研究センター)

【シンポジスト】

石井靖乃(日本財団ソーシャルイノベーション本部)「電話リレーサービスについて」

白澤麻弓(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター)「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワークPEPNet-Japanについて」

山口美信(中途失聴者の当事者研究者・故・山口利勝氏夫人)「夫の情報保障について」

瀬谷和彦全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、弘前大学大学院)「こえの健康支援センター構想について」

渡辺儀一(聴覚障害者キャリアアップ研究会)「会社におけるキャリアアップ情報保障について」



2015111日(日):つくば市の成人式

 「つくば市成人の集い」が開催され、教育委員長として壇上に並んだ。派手な袴羽織姿にサングラスを付けた数十名の新成人集団が前方の席を占拠し、旗と幟を振って騒ぎ出し、市長や来賓の祝辞の最中もヤジを飛ばす。荒れた成人式が恒例となっていたが、今年の式典はちょっと様子が違った。

 昨年のように異様な集団は居るのだが、なぜか騒いでトラブルを起こすこともない。つくば市の教育委員会関係者や市議会議員等が列席するのは例年通りであるが、その他に、彼らをかつて担任したことのある20人以上の先生たちも会場の前列に顔を見せていたのである。その先生の多くは今ではつくば市内の小中学校の校長や教頭となっている。やや不良な新成人たちも昔お世話になった熱血恩師を前に騒ぎを起こす気力を失ったようで、微笑ましくもあった。恩師にはいつまでも頭が上がらない。



2015年 元旦:年頭所感(「教育オーディオロジスト」の認定制度の検討)

 今年度の「丸紅基金社会福祉助成」(第40回)が全国難聴者・中途失聴者団体連合(全難聴)に授与された。採択されたテーマは「聴覚に障がいを持つ人たちの社会参加を総合的に支援する新システムの構築・研究」で、具体的には「きこえの健康支援総合センター」(仮称)の必要性を調査研究することである。この事業を進めるための専門委員会(委員長:瀬谷和彦・全難聴役員、弘前大学大学院教員)が設置され、私が委員として委嘱された。

 この事業は、もともとは中川辰雄先生(横浜国立大学大教授)が委員長となって平成21年度に報告書がまとめられた「総合ヒアリングセンター」構想にさかのぼる。立入哉先生(愛媛大学教授)も委員として参加していたし、中川先生が横須賀の特総研の研究員だった時代、私が難聴研究室長として上司であったから、かつての愛弟子の仕事を私が改めて引き継いだという縁でもある。

 私たち専門委員が先ず始めた仕事は、様々なきこえの悩みを抱えた当事者が誰にその問題を訴え相談できるのか、耳鼻科医や言語聴覚士に限らず日本に存在する聴覚補償・情報保障などに関わる専門家の職種を広く列挙し整理してみることである。この作業を通じて気が付いたことがある。

 学校で聴覚障害児の聞こえの問題に対応する職種名を何としたらよいのか。現状では「特別支援学校教員」や「特別支援教育コーディネーター」、あるいは「特別支援学校教員(聴能担当)」としか表しようがないのである。教室の子どものきこえの問題の相談受け手を「特別支援学校教員」全般と記載することは専門性低下の実情を見ると心配である。

 聴覚障害教育の現場で補聴器・人工内耳、情報保障などの相談に携わっているのは、実際は「教育オーディオロジスト」なのではなかろうか。言い換えれば実働しているのは「日本教育オーディオロジー研究会」の会員であるということである。しかしこの呼称は私たち会員の中だけで使われ一般に認知されたものではない。そうであれば、日本耳鼻咽喉科学会が認定する「補聴器相談医」やテクノエイド協会が認定する「認定補聴器技能者」のように、日本教育オーディオロジー研究会が認定する「教育オーディオロジスト」を設けることを検討してもいいのではないだろうか。




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