2014928():学芸大の出口学長

 今年4月に出口利定先生が東京学芸大学の学長に就任し半年が過ぎた。学長室だより”The Deguchi TIMES”が大学のホームページに連載されている。学長職に就くと膨大な情報が毎日押し寄せてくる。入力過多の状況を整理する意味でも、また大学責任者としての広報広聴の意味でも、日誌などの形で出力しておくことが大事である。日本の教育を代表して牽引する立場にある東京学芸大のトップに就いた出口先生が日々の思いを書き出す”The Deguchi TIMES”を読んでいると、身の回りで起こる出来事を重責の中で処理している様が伺える。私も学長就任の時から6年間「学長日誌」を書き続けた経験があるので、出口先生の「学長室だより」には共感を覚える(余談だが、筑波技術大学のホームページでは過去の「学長日誌」は全て削除されており今では読むことができない。大学の歴史の一端を著していると自負していただけに残念である)。

 聴覚障害を専門とする人が大学の学長になった例は、他の障害領域よりも多いのではないかと思われる。出口利定先生は東北大学大学院で菅井邦明先生(元東北大副総長、東北福祉大学教授)の教え子であり聴覚言語障害学を専攻した。菅井先生は私の1学年後輩で、出口先生も私の10歳下の同窓生である。筑波大学附属聾学校の校長も務められた吉野公喜先生も筑波大学教授のあと県立高知女子大学と東日本国際大学の学長となっている。菅井先生と吉野先生には筑波技術大学の幹部役員として私の大学経営を支えていただいた。もう一人、聴覚障害者に対するパソコンによる情報コミュニケーション支援の道を拓いた太田晴康先生が今年4月に静岡福祉大学の学長に就任している。



2014917():日本教育オーディオロジー研究会上級講座(教育実践研究とは)

 日本教育オーディオロジー研究会の第11回上級講座が成功裏に終了した。大阪市立聴覚特別支援学校(森田雅子校長)を会場とした2日間の講座は、「マスキング」「乳幼児聴力検査」「補聴器の機能」「ファンクショナルゲイン法の問題点と実耳測定の意義」「発音指導と聴覚活用」「インサートイヤホンの較正」「補聴器の特性測定」「聴能マトリクステスト」「人工内耳のマップの理解」「障がい理解授業」など、どれもレベルの高い内容であった。

 ところで、最近は聴覚医学会などでも耳鼻科や言語聴覚士の医療の側から聴覚障害児教育の実情を調査した報告が多くなってきている。中には現場の教師から見ると必ずしも当たっていないのではないかと思われる記述も散見される。短時間の訪問見学やアンケート調査などで聾学校の実態はこうだ難聴学級の教育はこうだと決めつけられるような「過剰般化」が心配になってきた。そのような状況を招いた要因には、聾学校・難聴学級で行われている教育実践の成果がきちんとした論文の形で外向けに発信されていなかったことにあると私たちは反省している。

 そこで今回の上級講座のプログラムに加わった新しい内容が「教育実践研究法」。①「研究の進め方」(立入 哉:愛媛大学)②「実践研究を行う時の留意点」(庄司和史:信州大学)③「統計の活用」(平島ユイ子:国際医療福祉大学)④「論文のまとめ方」(加藤哲則:上越教育大学)である。さらに上記4人の講師それぞれから発表された「わたしが気になった研究・論文」は圧巻の内容であった。この4人の大学人に共通している経歴は「学校で聴覚障害児の教育実践に取り組んだ教師だった」ことである。今後とも本研究会誌「教育オーディオロジー研究」への教育現場からの論文投稿が増えることを期待したい。



201494():近況報告

 517日に発症した帯状疱疹の予後は芳しくなく、今でも「帯状疱疹後神経痛」は続いている。筑波技術大の東西医学統合医療センターの大越教授(副学長、神経内科)が親身になって治療してくれている。右額から右目にかけてのピリピリした痛みは、耳鳴りの症状にも似たところがある。何かに夢中になっている時は痛みを忘れていられる。気にすると顕われるのだ。SN比(信号対雑音比)のような図と地の関係なのだろう。仕事に追い励まされているほうがいい。それにしても、このところ会長日誌の原稿執筆が滞っている。筆が進まないのは気力の減退かもしれない。書いておくべきことはたくさんあるのに。

 この夏、札幌、名古屋、郡山、そして長岡の各教育オーディオロジー研究協議会研修会でお会いしたこの教育に賭ける先生たちの話。

 817日、つくば市で開催された「あこがれ先生プロジェクトin茨城」に参加し、子どもが恩師とあこがれる先生とはと考えたこと。

 825日、仙台の墓参りの足で故郷の鳴子温泉の「大沼旅館」に投宿し湯守の大沼伸治社長や母堂と昔話をし、生まれ故郷に留まり守る人と故郷を出て懐かしむ人について自省したこと。

 介護職の方々に聞こえや補聴器装用の基礎知識を身に着けてもらうための冊子を編集する仕事を始めたこと。

 言語聴覚士を養成する都内の専門学校で「障害児教育概論」の講義を開始した。聴覚にも強い言語聴覚士が一人でも多く育つことを願って始めたことである。12月までの15回の講義内容を準備するのは容易でないが遣り甲斐もある。

 髭をたくわえたことがなかった私があご髭を伸ばした。剃刀を当てると帯状疱疹後神経痛のため皮膚に痛みが走る。それがいやで不精髭を生やしているうちにこうなった。髪の毛と同じ真っ白な髭である。1980年代、CID(ワシントン大学附属中央聾研究所)の講義で、聴覚障害教育に携わる専門家は口髭をたくわえてはいけないと教えられたことがある。口形を読む口話法が全盛の頃の話だ。この夏が終わるのを待って剃り落すことになる。







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