20141123():新生「きこえを学ぶ会」講演会

 【201434日】の本日誌でも紹介したように、オーストリアのホフマイヤー博士(Ingeborg Hochmair)、オーストラリアのクラーク博士(Graeme Clark)、アメリカのウィルソン博士(Blake Wilson)の3人が「2013年・ラスカー賞」を共同受賞している。一昔前まで聴覚活用無用論者たちから懐疑的に見られていた人工内耳だが、ノーベル賞の前評判に挙げられる「ラスカー賞」を受賞したとなると、もはや21世紀最大の発明と言ってもよい。

 日本ではコクレア社(オーストラリア)、メドエル社(オーストリア)、バイオニクス社(アメリカ)の3社の人工内耳が認可され、互いに競い合う状況にある。残念ながら補聴器の世界にあるような、会社の枠を超えた組織団体(日本補聴器工業会、日本補聴器販売店協会、日本補聴器技能者協会)は未だつくられていない。人工内耳3社が力を合わせて「日本人工内耳○○会」のような組織をつくれないものだろうか。

 どの会社の人工内耳を使用しているかを問わず、装用当事者が自ら「きこえを学ぶ」ことをコンセプトにした会合を、これまで何回か試みてきたところである。「きこえを学ぶ会」の新生の意義などを説明することを含め、この度、講演会を開催する運びとなった。

・日時:1130日(日曜日)午後1時~4時(受付は1230分から)

・会場:東京大学先端科学技術研究センター 3号館 207セミナー室

・プログラム内容:

 1)講演「きこえを学ぶ-聴能訓練と聴覚学習」(大沼直紀)

 2)ディスカッション「きこえのバリア」

 ・申し込み:自由参加、問い合わせは、お世話担当のメドエル・ジャパン社に。



20141116()iPhoneと補聴器

 予約していたiPhone 6 Plusがようやく入荷し、スマートフォンを機種変更した。まだ十分に使いこなせてはいないが、つくば・代々木上原の通勤電車内での仕事に重宝している。iPhoneのユーザガイドには「補聴器」の項があり、2ページにわたり補聴器との接続手順が解説してある。iPhoneの「設定」>「一般」>「アクセシビリティ」と入っていくと「補聴器」が選択できる。まだ一部のメーカの補聴器にしか対応できないが、スマートフォンを手元に簡単な音量・音質の自己調整もできる。電話も音楽も両耳の補聴器を通して聞くという新しいオーディオ生活の時代となったことを実感する。



2014119():「日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」余話

 週末の2日間、久しぶりに筑波技術大学の行事に参加した。「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク」(PEPNet-Japan)の第10回シンポジウムがつくば国際会議場で開催された。昨夜は第10回を祝う記念式典に招かれ、10年を振り返っての短いスピーチをした。第1回のシンポジウムは2005108日に開催されている。この年の10月は4年制の筑波技術大学が誕生した時である。様々な行事が企画され超多忙な週であったことが、当時の「学長日誌」に綴られている。

 ・2005103日(月):新大学の2名の理事に辞令を交付。大熊由紀子先生(元朝日新聞論説委員、国際医療福祉大学教授)と吉野公喜先生(元筑波大学附属聾学校長、東日本国際大学学長)である。新しい大学名「国立大学法人筑波技術大学」を刻んだ碑銘が二つのキャンパスの入り口に設置され除幕式が執り行われた。

 ・2005104日(火):第1回経営協議会を開催。錚錚たる新メンバーである。安藤豊喜(全日本ろうあ連盟理事長)、小田豊(国立特殊教育総合研究所理事長)、川村恒夫(神奈川県立外語短大学長・文化庁元長官)、北原保雄(日本学生支援機構理事長・筑波大学前学長)、笹川吉彦(日本盲人会連合会長)、品川萬里(日興コーディアル証券()顧問)、関正夫(関彰商事()代表取締役会長兼社長・茨城県社会福祉協議会会長)、古橋靖夫(難聴児を持つ親の会副会長)、星川安之(共用品推進機構専務理事)。顧問には川口幹夫(NHK元会長)、西川哲治(東京理科大学前学長)

 ・2005105日(水):大学運営の新しい組織として「部局長会議」を設置し、その第1回会議を開催。

 ・2005107日(金):つくば市と筑波技術大学との連携協定の締結式。市原市長と将来構想を語り合った。

 ・2005108日(土):日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)の第1回シンポジウムを開催(13の大学や機関から150名近い参加者)。献身的な準備に当たったのは、白澤麻弓美、河野純大、根本匡文、三好茂樹の各先生であった。

 ・2005109日(日):国際シンポジウムのゲストとしてNTID(ロチェスター工科大学・国立聾工科大学)のハーウイッツ学長、デカロ教授(PEN-International事務局長)、クライマー教授を招聘。拙宅に招いて夕食懇談会。

 20051013日には、筑波技術大学開学記念式典を挙行した。その準備に教職員は夜鍋して働いた。式典では文科省の塩野谷副大臣や近藤審議官から「文科省として今後も最大限の支援努力をする」とのお言葉をいただき、まさにその通りの進展となったのである。本日の10PEPNet-Japanシンポジウムには全国22の大学・機関から500名以上の参加があった。



2014115():教育委員会で講演「特別支援教育の源流」

 つくば市の隣には「つくばみらい市」がある。市名も似ていて他県から来る人には紛らわしい。両市は教育行政でも連携していて、「つくば市・つくばみらい市教育委員会連絡協議会」という組織がある。両市の教育委員会合同の研修会が開催された。私が講師となって32名の指導主事などを対象に「特別支援教育の源流」の演題で話しをした。

 昨今は特別支援教育イコール発達障害児教育と思われるほど、聴覚障害教育のほうは目立たなくなってしまったようである。聾・難聴教育には長い歴史があり、教育方法や教材教具などの蓄積と専門性の高さでは他の障害領域からは及びもつかないものがあるのだが、特別支援教育全体の中にあっては、そのことがよく知られていない。聴覚障害教育に現在携わるようになった教師の中にすら、聾・難聴教育が障害児教育を先導してきたことを認識できない先生がいるのは残念なことである。

 講演では、アベロンの野生児の教育に取り組み、パリ国立聾唖学校に住み込みの校医として聴覚障害児の聴覚言語指導を試みたイタールの話をした。イタールに教えを請い、後に精神薄弱児教育の成立期を代表する教育者となったエドアール・セガン。イタールを師と仰いだセガンにより確立された感覚教育の諸方法は、次にはマリア・モンテッソリー夫人に伝授され、モンテッソリー法として20世紀の教育思想へと発展したこと。このように聴覚障害児の教育は源流となって先行し、これからも特別支援教育に応用できる財産がたくさんあることを説いた。ところでさて、いざ他の障害領域から聾学校に何かを教えてほしいいと来られたとき、本当に大丈夫だろうか。聴覚障害教育の専門性の維持・向上・共有に怠りがあってはなるまい。




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