2013215():スキーと補聴器

 今シーズンの初滑りは越後湯沢だ。東京駅から新幹線に乗れば1時間17分でGALA湯沢スキー場に到着する。スキー用具一式は前もって越後湯沢温泉の宿に宅急便で届けてある。初日は足慣らしのつもりだったが、雪質も天気も見晴らしも最高に良いので思いっきり滑走した。二日目の今日は吹雪くほどではないがコンディションの悪い大雪だ。それでも欲張って滑りに行った。

 今回のような「お一人様スキー」では、誰とも話す必要がないので補聴器いらないと考え、昨日は補聴器なしでゲレンデに向かったのが失敗だった。様々なスキー場行の巡廻バスのコースを運転手に確認したいとき、初めての地名や聞き慣れないバス停は聞き返さなければならない。スキーリフト券を購入するのに、JRスキーツアー割引を使うのと高齢者割引とではどちらが得かなど、騒音に囲まれたチケット売り場のガラス仕切り越しに質疑応答するのに苦労する。補聴器を着けてくればよかったと思う。そもそも雪山にあるスキー場やその施設内には、すでに自然のままの静かさは無くなっているのだ。レストハウス内は人混みのノイズだけでなくボリュームの大きすぎるバックグランド音楽が流れ続けている。リフトに乗っていても騒音から逃れられない。リフト塔に取り付けられたスピーカからも好みではない歌声が鳴りやまない。複数人乗りのリフトに見ず知らずのスキーヤーと隣り合わせに座って話しかけられると生返事で応えるしかないのだ。スキーを楽しむにもSN比(信号対雑音比)対策が必要となる。

 2日目の今日は、ゲレンデに向かうバスに乗る前に補聴器を装用した。ゴンドラと長いリフトを乗り継いで頂上近くから滑り降りるコースだ。昨日の天気と打って変わり視界の悪い大雪の中、帽子とゴーグルを被ると私の耳かけ型補聴器は窮屈で装着の具合がとても悪い。被り直そうとすると補聴器が外れてポロリと雪の中に落ち手袋をはずして探す始末。結局は両耳の補聴器はケースに入れられポケットにしまい込まれた。補聴装着の意義が装用の煩わしさに負けたわけである。アメリカ留学時代の補聴器学の恩師だったパスコ博士が、補聴器の満足度を決める観点の一つに「もう一つのSN比」を挙げていた。”Signal to Nuisance Ratio”(「信号」対「煩わしさ」の比)である。



2013211():日本教育オーディオロジー研究会(第3日目)

 毎晩続いた懇談会では、教育学部の立入研究室と高橋研究室の学生スタッフが総動員で地元の食材を揃え美味しく調理し、キャンパス内の会議室に即席の夕食会場を設営し配膳してくれた。そして、今回の研究会における私に与えられた仕事は、そうした場での挨拶や乾杯発声が主なものである。もはや講義のコマを分担させられることもなくなってしまった。それでは余りにも寂しかろうと立入事務局長が配慮してくれたのが「大沼先生と昼のcoffee」「大沼先生と朝のcoffee」という上級講座プログラムとしては有るまじき2コマ。実はこのコーヒーが特別仕立ての絶品なのである。砥部焼の口の広いカップに入れられた煎れたてのコーヒーの表面にパンダや熊の見事なクリーム模様が描かれているのだ。アルバイトで腕を磨いた学生スタッフの労作が私の担当コマに参加した受講者にサービスされる。

 「大沼先生とcoffee」だけでは申し訳ないので、いくつか話題を用意して臨んだ次第である。羽田空港から発つ直前に自宅に二つの本が送られてきた。一冊は「当事者研究の研究」(石原孝二編、医学書院)。著者の一人である熊谷晋一郎先生(東大先端研特任講師、私と聴覚過敏の共同研究も)から贈られた新著である。もう一冊は「聴こえの障害と金沢方式」(能登谷晶子編、エスコアール出版)。聴覚障害教育の在り方について所謂専門家たちがとる主義主張の違いを超えたところに、改めて当事者が学ぶ・当事者に学ぶことの重要性があると思う。障害当事者が「自分自身で、共に」自らの問題に取り組んできた歴史や理念を知りたいと思う。医療や教育の専門家から耳を治してもらい、もっと聞こえるようにと訓練してもらう必要はもはやないと訴えた当事者は、本当は何を求めようとしたのか、贈呈のあった2冊の著書を読みながら考えた。



2013210():日本教育オーディオロジー研究会(第2日目)

 ハイライトは「教育オーディオロジー上級講座」であろう。担当講師はみな教育オーディオロジーの現場出身者である。どの講義科目も聾・難聴教育の深い経験があるからこそできる実践的な内容だ。全国から受講に参集した先生たちの専門性も驚くほど高い。オーディオロジーの博士号を持っている韓国の二人の先生も受講生となり、日本の各地の教育機関に勤める教育オーディオロジー担当教師のレベルの高さに感銘を受けていた。日韓合同の研究会開催もいよいよ現実味を帯びてきた。下記に、今回の上級講座のプログラムを参考までに載せた。

上級講座(第1日目)

9:0010:30

90

全体企画1:早期発見・早期補聴・ 早期教育【樋口・高橋・庄司】

10:4512:15

90

イヤモールド1
【立入】

通常校での難聴理解授業
【平島】

幼児の聴覚活用と評価
【中井・樋口】

難聴児の評価ツール
【富澤・小川】

ケース研究1
【芦田】

12:3013:30

60

luncheon seminar 1:FM音場補聴システム :仕組みとデモ
【川津】

13:4514:45

60

ニーポイントと圧縮比
【尾﨑】

FM:受信・送信の調整
川津】

openBTEと中等度難聴
【立入】

人工内耳の調整1
【高橋】

大沼先生と昼のcoffee
【大沼】

15:0016:30

90

イヤモールド2RECD
【立入・富澤】

会話分析と訂正方略
【平島】

幼児の言語獲得
【庄司・中井】

人工内耳の調整2
【高橋】

難聴学級
【中山・松森】

16:4518:15

90

VRA
【富澤・立入】

HACIの安定装用
【尾崎】

地域支援
【芦田・村上】

耳鼻科STに何でも相談
【中村】

補聴器特性機による
フィッティング
【大橋・山田】

18:3022:00

210

party seminar 2:職域別懇談会

上級講座(第2日目)

9:3010:30

60

一側性難聴
【中山】

周波数圧縮変換
【河窪】

中・高の自立活動
【大藪】

FM音場増幅
【川津】

大沼先生と朝のcoffee
【大沼】

10:4512:15

90

LOOP
【立入】

APD
【小川・八田・Jang

初期の保護者支援
【福島・福島・尾崎】

通級指導での聴覚活用
【平島】

ケース研究2
【中井】

12:3013:30

60

luncheon seminar 2:愛媛大学の聾学校教員養成・バリアフリー推進室紹介

13:4514:40

60

全体企画2:最新の人工内耳・これからの人工内耳【高橋信雄】       




201329():日本教育オーディオロジー研究会(第1日目)

 本研究会恒例の上級講座が愛媛大学を会場に3日間開催される。初日の研究発表では私が次の4演題の座長を務めた。 

1)「聞こえの困難を示す児の語音聴取訓練の効果」八田徳高先生(福岡県立小倉聴覚特別支援学校)

2)「横浜市立ろう特別支援学校における聴能担当の取り組み」木村淳子先生(筑波大学附属聴覚特別支援学校)

3)「57s単音節語表による両耳語音明瞭度曲線-単耳聴と両耳聴との比較から-」高橋真実先生(さいたま市総合療育センターひまわり学園)、富澤晃文先生(目白大学保健医療学部言語聴覚学科)

4)「人工内耳装用児のコミュニケーションブレイクダウン誘発要因」平島ユイ子先生(国際医療福祉大学言語聴覚学科)

 さらに特別講演が二つあった。講演1.では、韓国Hallym大学オーディオロジー学科のDr.Hyunsook Jang先生が「韓国に於ける聴覚情報処理障害への対処」の演題で話され、講演2.では、中井弘征先生(奈良県立ろう学校) が「きこえとことばを育てる関わりと地域支援について」 、本来あるべき聴覚学習の内容について分かりやすく話された。






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