2012 129()「生きるって、人とつながることだ!」

川崎市の中途失聴・難聴者協会から、創立20周年を迎えるにあたっての記念講演の打診があったのは半年ほど前のことである。ずいぶん先のことだから予定に入れても大丈夫だと考え、気安くお引き受けしていたのだが、その後、主催の事務局と具体的な打ち合わせをする段になって、与えられた演題が「難聴者が明るく生きるために」であったことが、私の心に重くのしかかっていた。大変なテーマを承諾してしまったものだ。とうとう講演の日となり、筑波の自宅から川崎の会場に向かう電車の出発時間前まで、パワーポイントのスライド作成に悩んだ。結局、私の専門の領域から話せること率直にお伝えしようと決め、主題の「難聴者が明るく生きるために」に、さらに副題と副々題を付けた。副題は「聞こえのバリアフリー」、副々題は「聴覚補償と情報保障」である。東大の福島智教授の著書「生きるって、人とつながることだ!」を参照しながら、人とつながるための聴覚補償・情報保障があればこそ明るく生きられるのではないかという話をさせていただいた。



2012 127()「残存聴力」と「保有聴力」

要約筆記者養成の研修を担当する方から次のような質問をいただいた。これまで「残存聴力」という表現が使われてきたが、最近になってある地域では「保有聴力」が使われている。どちらが正しい用語なのか。次のようにお答えしたので、ご参考までに紹介する。

『聴覚に障害を受けた後の聞こえの状態は、完全に音が聞こえなくなってしまうということは稀で、殆どの人にはある周波数の帯域のある強い音圧に対して聴覚的反応が得られます。最重度の難聴の例で言えば、オージオメータによる純音聴力検査で、500Hz1000Hz2000Hz4000Hzなどの周波数では最も強い検査音に対しても反応がなく、平均聴力レベルを計算しても125dB以上などとスケールアウトの結果となるいわゆる「全聾」であっても、低域の125Hz250Hzでは検査音に対する反応が得られるということは珍しくありません。難聴の程度がより軽度であればより多くの聴覚的反応が得られることになります。英語ではこのことを"residual hearing"と言います。これの訳語として一般に使われてきたのが「残存聴力」です。この用語を「障害を受けてしまった聴力、残されたわずかな聞こえ」というマイナスなイメージでとらえた関係者が、障害に重きを置くのではなく「その人固有の聞こえが在る」ことを強調する意味で「保有聴力」という用語を使い始めたのだと思われます。

聴覚障害関連の用語を定義・解説する日本聴覚医学会用語集(最新は2011916日刊行)には、実は「残存聴力」と「保有聴力」は、どちらも扱われていません。つまりどちらを使っても間違いではないということでしょう。私の場合は国際的用語である"residual hearing"の原義をふまえ、「残存聴力」を用いることが比較的多いのですが、用語に触れる対象者や場面状況に応じては「残存保有聴力」とやや配慮した表現をすることもあります。しかし用字用語の適切・不適切に振り回され本当の問題解決から外れてしまうようでは不本意で非生産的です(「障害」か「障碍」か「障がい」か、なども)。なお、「残存聴力」と「残聴」は同義ではありません。定評ある辞書や科学用語対訳事典などでも混同し間違った記述があります。「残聴」は音が止んでいるのにまだ聞こえている感じのことを表現する言葉で、英語では"after hearing" に当たります。この「残聴」も日本聴覚医学会用語集には含まれていない言葉です。



2012 116()APCD 2012(シンガポール大会)の発表アブストラクト締め切り日

今年726日から3日間、APCD2012(第11回アジア太平洋地域聴覚障害問題会議、11th Asia Pacific Congress on Deafness, 共催 the 6th National University Singapore – National University Hospital ENT Conference.http://203.127.83.176/hosting/APCD2012/index.html

がシンガポールで開催される。2006年に第9回のAPCD国際会議が日本で開催されてから既に6年経ったことになる。

発表論文のアブストラクトの提出締切日が、シンガポールの大会事務局が開設しているホームページと事前に各国に配布された大会案内パンフレットに書いてある内容とが異なり、混乱を生じているようだ。1月末が締め切りだと思い、まだ準備の時間があると思っている研究者も多い。筑波大学附属聴覚特別支援学校からも数件の研究発表が見込まれており、日本の各大学の聴覚障害研究者も、昨年12月で締め切られたというホームページを見て驚いた。各人が日本からシンガポールの大会事務局のメールアドレスに問い合わせしても不通の状態で埒があかない。この国際会議の運営委員の一人でもある私から、大会会長のDr. Lynne Lim とメールでやり取りを行った結果、“The deadline for abstracts submission is now March 31st 2012.“ との回答をようやく得た。しかし、シンガポール大会事務局の論文受付体制になお不安が残るので、発表予定者は前もって大会会長の"Lim Hsueh Yee, Lynne"宛てに、「3月末までに」アブストラクトを送る旨一報を入れておくことをお勧めする(必要な方には私からメールアドレスをお教えします)。



2012 113():聞こえのバリアフリー・シンポジウム(補聴器・人工内耳と音楽)

補聴器を装用した聴覚障害児が彼らなりの聴能で音楽を聴取し、音楽のある生活を楽しむように成長することはよく知られている。一方、音声の特徴にあわせて信号処理するようにつくられた人工内耳は音楽の聴取にも適うものなのか、聴覚障害教育に関わる者は誰しも素朴な疑問をもっている。今年の東大・先端研の聞こえのバリアフリー・シンポジウム(企画:福島智研究室/大沼直紀研究室)のテーマは「聴覚障害(補聴器・人工内耳)と音楽」とした。関東教育オーディオロジー研究協議会の後援もいただいている。多くの方の参加をお待ちしている。

●プログラム内容:

1)基調講演: 「音楽と言語と脳」(中田隆行・公立はこだて未来大学准教授)

2)シンポジウム:「人工内耳と音楽」

・中田隆行氏(音楽脳の研究者として)

・丸尾直子氏(難聴のピアニストとして)

・大嶋直子氏(日本聾話学校の教師として)

・洗足学園音楽大学音楽感受研究室(難聴児の音楽プログラム開発者として)

3)総括講演:「聴覚補償と音楽保障」(大沼直紀)

●日時:25(日) 午後100500 (受付開始12:30~)

●会場: 東京大学先端科学技術研究センター 3号館南大ホール(ENEOSホール)

153-8904 東京都目黒区駒場4丁目61

●参加費: 無料(情報保障あり。託児予定)

●問い合わせ先:(主催)人工聴覚情報学会・講演会事務局(mocomo28@m6.dion.ne.jp



2012 19():古稀のスキー合宿

日本オーディオロジー研究会の会員には上級レベルのスキー愛好家が多い。加藤哲則先生(上越教育大学准教授)のお世話で長野県の白馬スキー場に有志10数名が参集した。今回のスキー合宿プログラムは体力の続く限り心ゆくまでスキーすることであったが、やはり近畿や関東の教育オーディオロジー研究会のメンバーが集まるとそれだけでは済まない。夕食後は民宿の特別室を手配していただき当然のように教育オーディオロジー研修会が組まれた。井脇貴子先生(愛知淑徳大教授)をはじめ皆さん熟達で積極的なスキーの滑りを見せたが、夜の部でもFM補聴器、人工内耳、教員研修、医療との連携など専門性の高い内容の勉強会が繰り広げられたのはさすがである。

この十年間、私は北海道ニセコ山麓の菅原亭にスキー用具一式を預けっぱなしに、菅原廣一先生(国立特殊教育総合研究所名誉所員)と一緒にスキーを楽しんできた。菅原先生が逝かれてからはニセコに行き一人で滑るというのもつまらなくなり、とうとう昨シーズンは一度もスキーをしない年となってしまったのである。心残りではあったが思い切って菅原夫人に頼んで私のスキー用具一式をニセコから白馬八方の宿に宅配便で送ってもらうことにした。

考えてみると私にとってこの一年は古稀(数え年で70歳)であった。今週の112日で満70歳になるから、今回の白馬スキー合宿は古稀最後の記念となる出来事である。ひと廻りも三周りも若いメンバーと一緒に格好よいターンを見せようとつい意識してしまうのでかなり体力を消耗した。最終日の朝は腰痛でやっと床から起き上がる状態で、メンバーの皆が降りしきる雪のなかをゲレンデに向かうのを見送ることになったのである。しかし何ものにも代えがたい有意義な古稀のスキーであった。



2012年 元旦:被災地復興応援ステッカー

日本教育オーディオロジー研究会が進めてきた東日本大震災の被災地支援事業の一つである復興応援ステッカーが完成し、本研究会のホームページから申し込みができるようになった。「聞いてるよ 東北の声、聞こえてるよ みんなの声」が会員を通じて広がるよう期待したい。そして、懸案の「東北教育オーディオロジー研究協議会」が今年こそ設立されるよう私たちは応援を惜しまない。【参照:20111128日会長日誌】






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