2011524():聴覚障害者のための真剣な避難訓練

今回の災害の反省点として、これまで聴覚障害者向けに特化した避難訓練が徹底されてこなかったことを指摘したい。地域住民や組織の構成員などを対象とした恒例の避難訓練が実施されても、いざ当日になると聴覚障害者の姿が見えないことが多い。一つの理由は、一般の避難訓練に手話通訳、要約筆記、補聴援助システムなどが、これまで長い間手配されてこなかったことにある。情報保障されない場にわざわざ参加しに行っても、流れにうまく乗れず迷惑をかけるのではないかと気を遣ってしまい、進行や内容が分からないまま居心地が悪くなるという経験を誰もがする。次回に、そのことに気付いた避難訓練の主催者がせっかく情報保障の準備を整えても、一度懲りた聴覚障害者はもう足を運ばない。障害当事者が参加してくれないのであれば手話通訳や要約筆記を手配することはないと決め込まれてしまう。そういった悪循環が長く続いてしまった結果、一般に行われる日頃の避難訓練の重要性を認識しない聴覚障害者が増えていったのではないだろうか。そうであれば次善策として、聴覚障害者自らが企画する真剣な避難訓練を実施してほしい。聴覚障害問題に特化した避難訓練の方法やプログラムを構築する必要がある。各地の聾者難聴者の団体組織や聾学校等にモデルとなる先行例があれば今こそ共有してみてはどうだろう。

なお、屋外における情報保障をより確かなものにするために、さらに改善工夫
すべきものを二つ挙げてみる。
高い位置に文字や図を表示できる使い勝手の良い掲示システム
屋外でも簡単に設置や貸出ができる補聴援助システム




2011517():要約筆記のこれから

厚労省の障害者自立支援調査研究プロジェクトの助成による「要約筆記者養成等事業委員会」の委員長を務め、要約筆記者養成のカリキュラム、指導者養成プログラム、指導者用テキストの検討・作成の仕事が一段落した。

新しい「要約筆記者」の存在が聴覚障害者の自立支援に確かに及ぶことはもとより、広く世の中に情報保障の大事さが伝わってほしいと願い、今後に期待することを列記してみる。

●人はだれでも「サウンドスケープ(音の風景)」の中で生活していることを再認識する必要がある。ことば(音声言語)を文字で提示するだけの要約筆記ではなく、環境音(周囲の物音、機器類の信号音、雨や風など自然音、咳やくしゃみ等)も含めての情報保障のニーズが高まるであろう。

●文字による情報保障には、手話や関連画像等も一緒に提示される感覚併用の環境が進展するはずである。更に最新型の補聴器・人工内耳からの聴覚補償の併用がこれまで以上に容易になってくる。視覚・聴覚・触振動覚の併用効果を加味した要約筆記のあり方についても検討が迫られるであろう。

●要約筆記の恩恵を受けてきた聴覚障害者も高齢になり、耳の障害に目の障害が加わることも覚悟しておかなければならない。残存聴力の管理と併せて視覚管理にも意を用いることが大事である。「見えにくくなった聴覚障害者に対する見えやすい文字提示」の工夫改善策をも検討しておく必要がある。

●一般の社会にあっても情報保障には文字提示が不可欠だという認識が更に高まり、音声認識などの科学技術の応用が当たり前になってくる。そのような動向は要約筆記者の仕事にブレーキをかけるものではなく、それを取り込み相まって効果を上げる手法にグレードアップしてほしい。

●大震災などの混乱状況では誰もが障害を持つ弱者の身となる。このようなときこそ、暗闇の中でも不自由なく歩ける盲者、騒音の中でもサインで通じあえる聾者などの例のように、支援される側から転じて支援する能動者になり得えよう。要約筆記や独自の聴覚障害者情報ネットワークなどから多くの情報を得た聴覚障害当時者が、その強みを持って一般の人々に向けても情報提供を果たすような気概を持ってほしい。

●聴覚障害とは、周囲の人々や環境の在りようにより「聞こえの痛み」が更に増したりも和らげられたりもするという社会的な問題である。専門性の高い要約筆記者が増えていくことは喜ばしいが、一方で、世の中の人々が聴覚障害者への情報保障を要約筆記者に任せてしまうようになって困る。一般の人々に対しても聴覚障害者とのコミュニケーションスキル向上の機会が保障されるとよい。



201154():東大・駒場公開で「あなたの耳は大丈夫?」を講演

 東大のホームページに「駒場公開」(63()4()の案内が載った。http://komaba-oh.jp/

『東京大学の駒場リサーチ(駒場)キャンパスは、駒場公園や日本近代文学館、日本民藝館にも近い、緑豊かなこぢんまりとしたキャンパスで、先端科学技術研究センター、生産技術研究所、駒場オープンラボなどの研究機関が立ち並んでいます。キャンパス公開は、これら研究所で行われている研究を広くご紹介するために開催されている年一度の恒例行事で、普段は立ち入ることの出来ない研究室内部の見学や、世界トップクラスの研究者たちによる最新の研究成果などに触れられる貴重な機会となっています。企業や他研究機関の研究者はもちろん、近隣住民や未来の科学者である小中高生も数多く訪れています。』

駒場キャンパス公開実行委員会からの依頼を受け私も講演する。http://komaba-oh.jp/lecture/lecture.html 
演題を「あなたの耳は大丈夫?-グラハム・ベルの電話器から最新の補聴器まで」とした。64日(土)の午後である。この機会にぜひ私の研究室にもお寄りいただきたい。





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