2010731日(土):心の安定

私事、恐縮である。人と同じように犬にも「自己免疫性溶血性貧血」が発症する。我が家のナツは急性の溶血症状で免疫抑制治療の効果もないまま、赤血球の破壊がどんどん進み輸血しても追い付かない。9年以上も私たちと離れない生活を続け自分も家族の一人だと思っている犬のナツにとって、動物病院のケージの中では不安とストレスが大きいはずだ。院長先生に無理を承知で退院を願い出た。自宅生活を優先させ、通院・往診の形での治療を継続することに同意していただくことができた。自宅のベッドルームで家族と一緒に寝られるようになると、諦めかけていた赤血球数の減少が下げ止まる傾向が出てきた。精神の安定が快復力をもたらしたにちがいない。



2010730日(金):犬の聴能

動物病院に緊急入院した私の愛犬(トイプードルの「ナツ」)の容体を電話で院長先生に訊ねた。会話し始めと間もなく「ワン、ワン、ワン」と犬の声が私の受話器から聞こえ始めた。院長先生が「いま鳴き始めてるのは、ナッちゃんですよ」「さっきまでグッタリして声を上げる元気もなかったのに」と教えてくれる。電話から微かに流れる私の声を聴き取って反応したのだ。

昨日午後、彼女が急病で入院したと研究室に妻から連絡を受け、つくば駅に迎えに来た車を運転して郊外の動物病院に駆けつけた。駐車場に車を止めると病院内の奥にあるケージの辺りから「ワン、ワン・・ワン!」と聞き覚えのある声がする。「パパ、私ここ、ここにいる!」とナツが訴えているのだと確信した。94カ月の長い間の私との暮らしの中で愛犬は様々な聴能(と言語?)を発達させてきた。親バカ過ぎた想いだろうか。



2010729日(木):幼児の補聴相談

「聞こえのバリアフリー研究室」の仕事の一環として、トライアングルに所属する聴覚障害幼児の補聴相談を行った。



2010728日(水):小学生の補聴相談

私の研究室(聞こえのバリアフリー研究室)の仕事の一環として、トライアングルに所属する聴覚障害小学生の補聴相談を行った。



2010724日(土):東京医大で講演

東京医科大学病院の聴覚・人工内耳センター(河野淳教授)主催のACIC年次フォーラムⅢで、「日本における聴覚障害教育の現状-難聴乳幼児教育を展望するために」の演題で講演した。次のことにも触れた。

特別支援教育を進めるおかげで、通常の学級での障害児への対応には見通しが立つようになる反面、これまでの盲・養護学校といった特殊教育諸学校が複数の障害種に対応する特別支援学校に変わったことにより、本来の聾・難聴教育の専門の指導がおろそかになる懸念も生まれている。

日本には教員が一つの学校に一定期間以上留まれない人事異動の規定があり(各自治体により異なるが5年の年限が多い)、それにより聴覚障害教育の専門性を身に付けた教員が聾学校から離れざるを得ない状況が生まれ、特別支援教育体制の中で益々聾学校・難聴学級固有の専門性の継承を難しくしている。

日本の公立の聴覚特別支援学校(聾学校)は、聴覚法(auditory approach)、口話法(oral approach)、手話法(sign language approach)を子供のニーズに合わせて使う教育を行っている。そして日本には2つの私立の聾学校がある。その内の一つの私立聾学校は聴覚口話法による教育に徹し、もう一つの私立聾学校は日本手話による教育に徹している。二つの私立聾学校は聴覚障害教育に採用する言語メディアの種類について明確な方針と自信を持っているのに対し、公立聾学校の中には、子供の実態に合わせて補聴器・人工内耳、読話、発音、手話、キュードスピーチなどをバランスよく取り入れることができないまま教育方針に迷いを生じている学校も少なくない。



2010719日(月):加齢にともなう「きこえ」とのつきあい方:本人と家族に知っておいてほしいこと

昨日の講演『加齢にともなう「きこえ」とのつきあい方:本人と家族に知っておいてほしいこと』で述べた「補聴器が効果を得る条件」を紹介する。

●難聴者本人に求められること

①難聴の自覚:自分の難聴を認め受け入れる。難聴を隠そうとする人には不適応。

②聴覚活用の必要性の自覚:耳を使っての情報収集やコミュニケーション

関係が必要だと思わない人には不向き。

③人や社会との関係性:孤立して社会と関係を持たずに生活しようとする人には不適応。

④補聴器の操作・管理能力:スイッチ操作や電池の交換などが自分でできる。

⑤補聴器の役割機能の理解:過大な効果を期待せず、補聴器の効果と限界を正しく理解しておく。

⑥多感覚を総合的に活用する能力:音声情報だけでなく、口や表情、文字などの視覚情報、場の雰囲気など多くの手がかりを活用して聞く。

⑦工夫・改善への積極性:より良く聞くための周辺機器を入手したり、効果的な補聴のテクニックを自ら求める。

●周囲に求められること

①家族や周囲の人の難聴理解:難聴の聞こえの特徴や不便さが家族によく分かってもらえると補聴器が効果的に使われる。

②家族や周囲の人の協力・支援:本人の能力や努力には限界がある。補聴器がうまく活用できる環境を周囲が整えてあげる。

③聞きやすい音響環境:騒音や反響の多い生活環境では、補聴器は本来の機能が発揮できない。

④聞きやすい話し方:複数の人が同時に話しかけたり、早口で話すなどを避け、難聴者に通じやすい話し方に配慮する。

⑤補聴器の専門家のフォロー:故障のチェックや再調整など、いつでも気軽に相談できる専門家を身近に。



2010718日(日):「オヤノコト.エキスポ2010

このところ厚労省自立支援関連、要約筆記者検討委員会、つくば市教育委員会、学会論文の査読、アメリカの研究者との連携準備、そして講演会などで、本欄の日誌を書く余裕もないままの毎日が続いた。

「オヤノコト.エキスポ2010」が開催されている有楽町の東京国際フォーラムに到着し会場に入ろうとすると、黒い服装をした中年婦人たちの長蛇の列である。昨夜のNHKニュースでも「オヤノコト.エキスポ2010」がとり上げられていたので、まさか今日の私の講演を聴きに来たのではなかろうし、何ごとかと「最後尾」の看板を掲げて列を整理している係りに訊ねると、先月末に自死した韓国の俳優パク・ヨンハさんの追悼献花式だという。これまで韓国には数えきれないほど出張しているが、いつも韓流人気スターを追いかけるオバサン達の異様さには驚かされる。

セミナー会場には、韓流スターよりも「老後」のことに関心を持つ多くの人々が私の講演『加齢にともなう「きこえ」とのつきあい方:本人と家族に知っておいてほしいこと』を熱心に聴いてくれた。



201078日(木):補聴器・人工内耳セミナー

東京医科大学病院の聴覚・人工内耳センター(河野淳教授主催のACIC年次フォーラムⅢ「理想を探して、何ができるか?」が下記のプログラムで開催される。

・日時:平成22725日 1330-1800
・会場:東京医科大学病院 教育棟3階  講堂
・会費:一般無料(メールにて申し込みhttp://acictmu.jp/
・プログラム
第1部 補聴器の現状と展望
・補聴器での聴取改善の現状(城戸由美子:東京医大病院)
・世界的における補聴器の機能と価格(成沢良幸:日本補聴器工業会)
・日本に於ける補聴器販売店の展開(鈴木庸介:日本補聴器販売店協会)
・特別講演 「うまく補聴器を装用、指導するには?」(中川雅文:みつわ台総合病院副院長)

第2部 人工内耳の現状と展望
<給元の立場から>
・日本コクレア社(有馬清代表取締役社長)
・日本メドエル社(関川宏美代表取締役社長)
・日本バイオニクス社(吉川秀夫副社長)
<人工内耳装用者の立場から>
・人工内耳友の会[ACITA](白石弘美副会長)

第3部 難聴乳幼児聴能学習の実際
・「世界におけるAuditory Verbal TherapyAVT)の最先端」(ロザリー・ヤレンコ(Rosalie Yaremko, M.ScAVTプログラムディレクター、カナダブリティッシュコロンビア州、子どもの聴覚言語センター)

第4部 特別講演
・「日本における難聴乳幼児教育の現状と展望」(大沼 直紀:東京大学先端科学技術研究センター客員教授)

第5部 招待講演
・「英国における難聴乳幼児への対応とその理想」(ジョン・ブッリクス(John Briggs, Prof.)(英国ケンブリッジ大学教授、難聴プログラム/小児難聴プログラムチーム)

総括
・これからの試み(河野 淳:東京医科大学耳鼻咽喉科教授/聴覚・人工内耳センター部長)



201077日(水):オヤノコト.エキスポ2010

「そろそろ親のことを・・・」と考え始めた世代に、歳をとっていく親との新しいカタチの親孝行を支援する「オヤノコト.エキスポ2010」が東京国際フォーラムで開催される。私は「聴こえのゾーン・補聴器」を担当する。来る718日(日)のセミナーでは、『加齢にともなう「きこえ」とのつきあい方:本人と家族に知っておいてほしいこと』のテーマで講演する。一般の方々にご案内いただきたい。http://www.oyanokoto-net.co.jp/event/expo10/event.html#seminar09



201076日(火):特総研で講義

国立特別支援教育総合研究所では特別支援教育専門研修事業が行われている。聴覚障害教育コースの研修員を対象に「聴覚障害教育の国際動向」の講義を行った。



201073日(土):小学校PTAで講演

つくば市立並木小学校の保護者研修会で「親子のコミュニケーション:障害児を育てた親から学ぶ」の演題で話をした。根本光子校長からいただいた最初の依頼は「発達障害などの児童を持つ親が子育てに不安や焦りを感じているようなので相談にのってほしい。特別支援学級の保護者を対象に講話してほしい」という趣旨であった。もちろん私の専門は発達障害ではないし、現在それぞれのお子さんが受けている教育方針に対し、実態を把握していない外部の者が余計な口出しをすべきではないとお断りしていた。ただし、障害児を持つ親だけを対象とするのではなく、学校の全ての保護者に向けて「障害児の育ち方・学び方・生き方」を知ってもらう場が作れるのであればお引き受けしたいと、その方が障害児を持つ親に励みと安心をもたらすのではないかと、根本校長先生に無理な注文を出した次第である。

その結果、学校参観日に合わせて保護者全体を対象とした講演会が実現した。障害児を持つ親を、一般に人は不幸だと見てしまうきらいがあるがそうではない。大変ではあるが親子のコミュニケーション関係つくりに費やす障害児を育てる(育てた)人の日々人生には本物の幸せがある。不幸感や悲しさは親子にあるのではなく、むしろ周囲の人々や環境との辛い関係から生じるものだ。障害児を育てた親からコミュニケーションや子育てのヒントを学んでほしい。グラハム・ベルの例や盲聾の東大教授・福島智さんと母・福島令子さんの親子関係などを参考にお話をさせていただいた。



201072日(金):厚労省が補聴援助機器の開発製品化を支援

障害者の自立支援に役立つ実用的な機器の製品化に対して、一件当たり年間1000万円から7000万円までの開発経費を補助するという「障害者自立支援機器等開発促進事業」が、平成22年度分の課題を再募集している。昨年度も実施され、肢体障害者と視覚障害者の日常生活支援機器にはかなりの数の応募があり採択されているのだが、残念ながら聴覚障害者向けの機器開発にはほとんど応募がない。このような多額な国家予算事業が行われていることを聴覚障害関係者や教育研究機関や関連企業が知らないからなのか、あるいは聴覚障害者のために必要な支援機器はもう十分に足りていると考えているのか、大変もったいない話である。現在公募している開発対象課題として次の例が挙げられている。
「携帯型補聴援助機器」
①(バス・車両用)磁気ループ補聴システム(磁気ループ補聴援助機器は振動や熱に強いアンプとループの貼る位置、方法など 特別に開発が必要である。)
 FM補聴援助電波を活用したFM補聴システム、赤外線補聴システム、携帯電話音声増システムなど(ワイヤレスで補聴器がテレビやPC、街頭、施設の音を拾って届けてくれるシステムという理解で、無線、ブルーツース等で聞こえるというのがよい)
【再募集の案内】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/cyousajigyou/02.html




201071日(木):小学校の授業参観

つくば市教育委員会事務局による学校訪問に教育委員として参加した。中島篤子校長のご案内で竹園東小学校の25クラス全部におじゃまし参観することができた。12年前(平成104月)に筑波大の吉野公喜教授と私なども協力して初めて設置された難聴学級では、この学級の発展にずっと尽くされ現在も「すずらん学級」担任である松本裕子先生に久し振りにお会いした。難聴学級のある学校に初めて着任された校長先生や教頭先生から「情報保障」という言葉が自然に出るのは嬉しいことである。懇談の席で「障害補償」と「情報保障」という、今では聴覚障害領域でよく使われる二つの用語の由来について、かつてその意味の整理に関わった私から少し解説を加えた次第である。







TOP


Home