2010527日(木):独立行政法人の事業仕分け

 国立特別支援教育総合研究所(特総研)は独立行政法人であるから行政刷新会議の行う見直しの対象ではあるが、今回の公開ヒアリングには選定されなかった。しかし、昨日は、田中眞紀子議員を委員長とする衆議院文部科学委員会の一行15名(民主11名、自民4名)の視察を受けた。法人そのものの存続や事業の見直しを厳しく問われた今回の一連の事業仕分け作業の中で、特総研には他の多く独立行政法人や政府関連公益法人とは異なった存在意義や事業の特長があることを、田中眞紀子委員長をはじめ国会議員諸侯に少しでも理解いただければ有り難い。

 本日は、特総研の4名の役員(小田理事長、鎌田理事、遠藤監事と同じく監事の私)が集まり役員会を開催した。独立行政法人の中でも障害児教育に専念する特総研だけは特別だと甘えることなく、日本のナショナルセンターとしての役割をこれまで以上に果たしていかなければならない。



2010524日(月):車のノイズを聴く

 運転中の車のエンジン音やロードノイズには私は気を配るほうである。タイヤ内の空洞共鳴を低減するためにスポンジが入れてある静音タイヤに交換してみたり、空気の代わりに窒素ガスを充填するとよいと説明を受けると早速実行したりもする。それで実際にどれほど静粛性が増すものなのか科学的な説明には怪しいものがあるとは知りながら、聴能の好都合性により「静かになった」と自己満足しているのである。

 しかし最近になって車内のノイズがひときわ大きく聞こえるのに気が付いた。耳の方が変なのか車に問題があるのか分からず、初めて補聴器を着けて運転してみた。何か以前とは違う異常な音が確かに大きく聞こえる。自分だけの思い込みかも知れないので、妻に「車内の音がこの頃うるさくなったようだけど、どう?」と聞いてみると「実は私もそう感じていた」と。買い物ついでの道すがら目についた自動車修理屋に乗りつけて点検してもらった。丁寧にみてくれた若い店員は「エンジンにも足周りにも特に問題はないのですが・・・」と言う。これ以上言いつのれば年のせいや気のせいと片付けられてしまう気配も感じ礼を述べて終わりにした。

  その後、購入したジャガーの専門店に数日預けてチェックしてもらったところディフェレンシャルギアーの故障が主な原因で更にプロペラシャフトのボールベアリングも摩耗しているので交換が必要だという結論になった。約40万円の修理費をかけるのだから「落ち葉マーク」を着けるまで、残り2年は愛車のジャガーを乗り続けようと決めた。それにしてもエンジン音や走行音の変化を弁別する聴能はまだ確かだったと安心している次第である。



2010520日(木):井原榮二先生のご逝去

 愛媛大学名誉教授の井原榮二先生が518日に永眠された。本研究会の事務局長・立入哉先生の師匠であり、我が国初の障害者高等教育機関設立準備に尽力された筑波技術大学の生みの親のお一人でもある。昔、福岡で開催された研究会の打ち上げ会で、酒豪であった井原先生を囲んで皆で飲んだ。居酒屋から引き揚げるとき井原先生と私は靴を取り違えて履いたまま帰ってしまった。翌朝ホテルで自分の靴ではないことに気付いたが、井原先生の宿泊先が分からず帰宅してから宅配便で松山市との間で靴交換をしあったのである。会席を共にした若い先生方からその珍騒動が伝わり、「俺の靴の方が上等なものだった」と互いに言いふらしたという後日談がある。昨年春の私の学長退任記念祝賀会ではその靴を着用した。今でも大事に手入れし靴箱に入れてある。井原先生、有難うございました。合掌。



2010511日(火):京都新聞に「聴力の衰えた人が聞き取りやすい話し方」

京都市に在住の81歳のご婦人から感謝の手紙が東大・先端研に届けられ驚いた。59日付の京都新聞に載った記事「聴力・高齢化で誰もが衰える」「聞こえない・・・心の痛みに」の読者であった。「高齢難聴者の置かれた立場や悩みを一般の人によく説明してくれて、安心することができた」とお礼が書かれている。一ヶ月以上前に共同通信社の取材を受けて話した内容である。京都新聞のほか各地の共同通信社の加盟社発行新聞にも同様の記事が配信されているそうだ。



2010510日(月):聴覚障害者教育福祉協会の評議員会・理事会

「移動母子教室」などの事業を開設している財団法人聴覚障害者教育福祉協会(会長:山東昭子・参議院副議長)の平成22年度評議会・理事会が、東京麻布にある参議院副議長公邸で開催された。昨年度の「移動母子教室」では、私が福島県立聾学校と茨城県水戸聾学校から指名され講師をお引き受けした。今年度も全国6か所で開催する事業計画が承認された。

聴覚障害者教育福祉協会は来年に創立80周年を迎える。記念式典を平成23124日に開催するなど、記念事業の準備が進められている。



201058日(土):APCD(アジア太平洋地域聴覚障害問題会議)シンガポール大会の準備状況

11回のAPCD(アジア太平洋地域聴覚障害問題会議)は2012年にシンガポールで開催されることが決まっている。国立シンガポール大学のLynne Lim 教授(国立大学病院耳鼻咽喉科・聴覚言語センター)が実行委員長を務める。リム教授から大会運営についての助言を求められたので、第9APCD2006を日本で開催したときの資料を送り「耳鼻科医療の問題だけでなく聴覚障害教育の問題を同等に扱ってほしい」旨の要望を添えた。



201055日(水):シンポジウム「聞こえのバリアフリー~人工内耳・補聴器の選択と非選択~」の企画

今年第48回となる日本特殊教育学会は長崎大学を会場に918日から3日間にわたり開催される。 自主シンポジウムの企画を大会準備委員会(委員長:長崎大学教育学部・平田勝政教授)に申請すべく計画を検討中である。テーマは「聞こえのバリアフリー ~人工内耳・補聴器の選択と非選択~」としたいと考えている。

近年、人工内耳という新しい聴覚補償の選択肢が加わったことにより、人工内耳と補聴器と手話の選択や適応などに迷う事例が増えている。複数の専門家からさまざまなアドバイスや情報を示された親の悩みは更に複雑になる。一人の聾・難聴児の育ち方・学び方・生き方に深く接している関係者が一人で抱えてしまいがちな問題に対して、多様な領域から専門家が集い総合的にカンファレンスできる場が必要である。

欧米の先進国に比べ人工内耳の手術に慎重である我が国でも、近年は人工内耳を適応し「きこえの補償」が得られた重度な聴覚障害児・者が増えている。人工内耳の聴覚補償の効果により「聞こえのバリアー」の一つが解かれる可能性が見えてきた。しかし一方で、人工内耳を選択しない・選択できない聴覚障害者もいることが認識されてきた。

補聴器や人工内耳による聴覚の補償を望まず、手話による情報保障やその環境改善を求める聾者も少なくない。また、新しい聴覚障害の補償技術の一つとしての人工内耳に対する誤解や不安、過度の期待などの様相も見られる。そして、人工内耳によるよりも最近進歩の著しいデジタル補聴器による聴覚補償の効果を重視する考えや、人工内耳と補聴器を併用する実践も増えている。さらに、盲ろう者など視聴覚障害への人工内耳の適応についても課題の整理が十分にはできていない。こうした人工内耳・補聴器の選択と非選択の背景を踏まえ、重度な聴覚障害児・者の聴覚補償・情報保障に関わる教育、医療、障害学等の新しい動向から「きこえのバリアフリー」を展望してみたいと考えている。

シンポジウムでは次のような話題提供を予定している。 1)人工内耳装用を自ら選択した専門家(聴覚障害のある耳鼻科医や研究者など)の考え、2)人工内耳装用児の親による「人工内耳を選択した理由や背景」「人工内耳を装用した効果や聴能の発達の様子」「人工内耳の選択・非選択に悩む親にお話ししたいこと」など、3)人工内耳・補聴器を選択しない聾者の考えについて、4)人工内耳よりも補聴器を選択する考えについて、5)人工内耳と補聴器を併用する考えについて

特教学会開催の地元である長崎には、耳鼻科医でご自身も人工内耳装用者である神田幸彦先生(神田耳鼻咽喉科クリニック・長崎ベルヒアリングセンター院長)がいらっしゃるので心強い。シンポジウムの進め方、話題提供者や指定討論者について相談させていただいている。【参照:会長日誌2009127日付】








TOP


Home