20101130日(火):「基本的 聴覚検査マニュアル 改訂3版」

『空気中に生まれた生物としてのヒトには音を享受する権利があり、聴覚障害者は活用可能な残存聴力を有している。人間にとって(重度聴覚障害者にとっても)聴覚があることの大事な意味は、たとえ 残存保有する聴力が“音声”(話し言葉)の聞き分けには役立たなくとも、“音”(環境音など)が聞こえることにより生活の空間や感性に広がりを見せるという側面である。』(教育オーディオロジーを支える私の考え:大沼)

服部浩先生(神戸大学名誉教授)が著された「基本的 聴覚検査マニュアル」の初版(1994年)は、患者さんと自ら向き合って聴こえの検査を長年重ねて来られた臨床経験があればこその、オーディオロジーの神髄・心髄が伝わってくる好著である。先生から「改訂3版」を恵贈いただいた。改訂版の第6章「聴覚の3つのレベル」と第7章「難聴の早期発見と()ハビリテーションに関して」は、本研究会会員に是非読んでほしい迫真の著述である。



20101123日(火):入試の出題ミス

今朝の朝日新聞(茨城版)で「筑波技術大学に出題ミス」を読み驚いた。1117日付の会長日誌で、たまたま内部統制・危機管理について触れたばかりである。「内部統制、リスク管理、コンプライアンスなどについて・・・。国立大学法人の学長として筑波技術大学の運営を6年間経験したが、法人の長のリーダーシップとガバナンス(統治能力)が益々問われる時代である。」と。1120()に実施された産業技術学部の推薦入試において、設問の漢字と数式に誤りがあったのが採点の段階までだれも気が付かなかったという。教職員に緊張が欠けていると言わざるを得ない。猛省しなければいけない。聴覚障害教育に期待をかけ支援してきた全国のステークホールダーに対して、前学長としても大変申し訳なく残念に思う。



20101119日(金):教育格差の懸念

近年、中所得層は減少し低所得層が増加している(高所得層の割合には変化がない)。経済的困難による進学の断念が増加するおそれがあり、両親の年収が進路に大きな影響を与えている。諸外国と比べ、日本では特に就学前教育と高等教育において家計負担の重さが突出している。そして、日本の公財政教育支出の対GDP比は、OECD諸国のうちで低下位にある。イタリアや韓国よりも下位、スロバキアとトルコの間にある。大学・大学院レベルの教育まで子どもに対する教育期間が長くなればなるほど国は栄える。学習期間と産業成長率には関係性がみられる。

授業料の高さと奨学金等の学生支援の高さの関係について、諸外国の特徴を4種類に分類することができる。(モデル1)授業料が無償または低く、学生支援がかなり手厚い国は北欧である。(モデル2)授業料が高く、しかし学生支援がよく整備されている国は、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどである。(モデル3)授業料が高く、しかも学生支援が整備されていない国は、日本、韓国である。(モデル4)授業料が低く、学生支援があまり整備されていない国は、フランス、イタリア、オーストリア、スペインなどである。

少子化は日本だけのことではない。各国とも少子化が進展するにあって、公財政教育支出を増加させている。韓国などは急速に国による教育支援の支出を増やしている。残念ながら日本だけが横ばいの状況である。

以上のことは、文部科学省の官僚トップである事務次官に就いていた銭谷眞美氏(現在は東京国立博物館の館長)の講演で話題提供されたものである。銭谷・元事務次官は東北大学教育学部の同窓生で私の8期後輩になる。「東北大学教育学部関東地区同窓会」には約150名の会員がおり、2年に一度総会・講演会が開かれる。前回の総会では私が指名を受け「高齢社会と聞こえの補償」の講演をした。今回の銭谷氏の講演は「教育と文化をめぐって」であった。



20101117日(水):独立行政法人の監事連絡会

独立行政法人に国民の厳しい目が向けられている最中である。「国立特別支援教育総合研究所」も独立行政法人の一つで、私は昨年度からその役員(非常勤監事)に就任している。文科省や総務省が管轄する独立行政法人・特殊法人(第6部会)の監事が集まる連絡会が毎年1回開催される。今年度の会場はつくば市の「防災科学技術研究所」である。「日本原子力研究開発機構」、「宇宙航空研究開発機構」、「理化学研究所」など非常に大規模な研究機関や、消費者のための商品テストなどで有名な「国民生活センター」、国勢調査の「統計センター」など19の独立行政法人の監事が、独立行政法人の内部統制、リスク管理、コンプライアンスなどについて情報交換した。国立大学法人の学長として筑波技術大学の運営を6年間経験したが、法人の長のリーダーシップとガバナンス(統治能力)が益々問われる時代である。



20101114日(日):要約筆記指導者養成講座

広島県要約筆記指導者養成講座が13日から2日間にわたり府中市で開催された。府中市の会場は福山駅から1時間ほどの所にあり、私は「障害補償と情報保障:要約筆記者養成のこれから」という演題で講演した。昨年度は厚生労働省の「要約筆記者養成等調査検討委員会」の座長を、今年度は「要約筆記指導者養成事業委員会」の委員長を仰せつかっている。これまでの「要約筆記奉仕員」の専門性を更に高めた「要約筆記者」の新しい養成カリキュラムを作成する仕事に携わっている。社会環境等の地域性や手法・実践方法の違い(手書き、パソコン、一人書き、連携型など)をどのように整理し全国都道府県で実施できる標準的なカリキュラムが作れるか、難題も多い。



20101111日(木):聴覚医学会

55回日本聴覚医学会の学術講演会のプログラムをみると人工内耳の発表件数が際立って多いことが分かる。「人工内耳」に関するセッションは6群・25件の発表があったが、「補聴」に関しては5群・17件であった。なお今回の学会でも「難聴児教育」のセッションが2群設けられ、8件の発表があった。この群でも人工内耳と手話に関する症例報告が目立ち、医療と教育の連携、特別支援学校(聾学校)の役割と専門性についての質疑も行われた。「難聴児教育」では私と田中美郷先生が座長を務めた。



20101110日(水):「あなたの耳は大丈夫」

日本聴覚医学会総会・学術講演会が明日から2日間にわたって開催される。第55回学会の会長を務める奈良県立医科大学の細井裕司教授から夕食会に招かれた。由緒ある奈良ホテルに聴覚医学会(理事長:小寺一興教授)の理事・評議員や座長が集まり懇談した。

学会の参与でもある服部浩先生(神戸大学耳鼻咽喉科の3代目教授だった)から声をかけていただいた。『「あなたの耳は大丈夫」を読んでいますよ。世の中の人々に難聴を理解してもらうのに今でもとても役立つ本ですね』と、難聴診療の大家から思いがけず褒められ大変恐縮してしまった。「聴覚サポートガイド・あなたの耳は大丈夫?」はPHP研究所から12年以上前に出版され、今では絶版になっている。私自身も講演や講義で活用しているが、人工内耳やデジタル補聴器などについての内容が古くなってしまった。読者から復刊リクエストも寄せられているので書き直ししようと一度PHPの出版部に問い合わせたが相手にされなかった経緯がある。どこか適当な出版社に原稿を持ち込んで改めて相談してみたいと思う。



2010113日(水):京都市内散歩

京都市立総合支援学校での研修会と懇親会の後、京都市中心部にあるホテルに一泊した。実は、京都に嫁いだ次女が先月に二条城の近くのマンションに引っ越したばかりである。私の宿泊したホテルからも歩いて遠くない所である。購入資金に足りなかった分を私から少し借りて入手した新居であるから、ぜひ泊ってほしいとの娘夫婦の想いは分かっているが、今回は遠慮した。

娘が自転車でホテルに迎えに来た。京都の町中を散歩する、しかも昼間明るいうちになどというのは初めてのことである。烏丸御池駅周辺、姉小路通りの西から東に旧い町裏を歩いてみた。最近気に入って着けているリネン生地のネクタイがある。これを創った小さな店舗を見つけた。リネンのワイシャツをオーダーしたいと思っているので生地選びに今度また訪ねよう。久しぶりの休日を娘夫婦と楽しんだ。



2010112日(火):京都市立総合支援学校の研修会

日の出前の早朝のつくばエクスプレス始発電車は、マフラーと手袋を着けてちょうどよいほど冷えている。京都駅に予定通り948分に到着すると、京都市「感覚障害教育研究会」の役員の先生方と大阪教育大学の井坂准教授がわざわざ新幹線のホームまで出迎えてくれた。呉竹総合支援学校の植田教頭先生の運転する車の中で、川林まり子先生(北総合支援学校副教頭)が今日一日のスケジュールを説明してくれる。

京都市立の7つの養護学校は平成19年に「総合支援学校」に校名を変更した。地域の障害のある子どもや保護者、幼稚園、小学校、中学校を対象に幅広く相談・支援を行う「総合育成支援教育相談センター(育支援センター)」も併設されている。北総合支援学校、呉竹総合支援学校、東総合支援学校、西総合支援学校の4校で学んでいる主に発達障害の子どもたちの中には、聞こえに問題のありそうな子どもが約1割はいると推測されている。そのような子どもたちの聴覚や視覚の活用等について教師たちが自主的に学ぼうという機運が盛り上がり「感覚障害教育研究会」(会長:呉竹総合支援学校・永井実校長)が設立された。

午前中は北総合支援学校(奥田信一校長)の小学部、中学部、高等部を通覧し、その中で聴覚障害のある4名の児童生徒の授業参観をした。午後は呉竹総合支援学校(永井実校長)に移動した。ここでも校内通覧し、聴覚障害のある中学部の生徒の授業参観をした。今年4回目となる研修会には京都市教育委員会の指導主事の先生方を始め多くの教員が参加した。4校の総合支援学校から聴覚障害を併せもつ子どもたちの事例報告があった。主として発達障害の子どもたちの教育現場にあって、聞こえの問題にも着目しながら授業改善に取り組もうとする若手の先生方が増えており、聴覚活用に関する強い関心と勉強意欲を持っている。

私に依頼された講演テーマは「総合支援学校教員の専門性を考える~きこえにくさのある子のコミュニケーション力の育成を通して~」であった。聴覚の働き、聴能とは何か、聴能の評価法、聴覚と視覚の併用効果、など概論を講じた。講演の後の懇親会で「聴覚障害教育の専門性を身につける場はどこか」という質問があった。京都市立総合支援学校でこれからも聴覚障害教育に関わろうとする先生たちの多くが、「近畿教育オーディオロジー研究協議会」や「日本教育オーディオロジー研究会」の存在や活動にまだ関わりを持っていないようである。京都には府立・市立の枠を超えて連携できる格好の専門研修の場が身近に存在するのであるから、ぜひ関係者さそい合わせチームを組んでほしいと願わずにいられない。




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