Duskin Leadership Training in Japan

最終レポート

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サンカ・ハシンタのファイナルレポート

地平線の向こうへ私の未来の道筋をつけた、かけがえのない経験

スリランカと日本は大昔から非常に親密な関係を築いてきました。スリランカの人たちの多くが、日本人をとても正直で、職業能力の高い国民として見ています。このため、来日前から、私も日本に対してよい印象を抱いていました。

私の視力が落ちたのは、早くも16歳の頃です。当時は高校生でしたが、目が悪いためにいろいろと難しい問題に直面しました。しかし、勇気と力を振り絞り、問題に立ち向かって、スリランカの最高学府とされるコロンボ大学への入学が叶いました。今では、障害のある生徒もない生徒も通学する中学校で英語教師として働いています。自分自身の経験から、子供たちの教育の支援をしなければならないと常に感じながら勤務しており、いつか教育分野でのリーダーになりたいと考えています。

そうこうしている間にダスキンリーダーシップ研修について知り、昨年、日本に第18期の研修生の一人として来日が叶いました。

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日本語クラス

研修生全員にとっての第一のそして最大の難関は、日本語の勉強です。素晴らしい先生方の支援を得て、日本語クラスが始まりました。三か月という短い間に日本語がスキルアップできると聞いて、全員驚きました。日本語の先生方に心から御礼申し上げます。

本研修プログラム

研修の中で一番長く、また主幹を成すのが、個別研修です。研修生一人一人の個人的な関心事、また将来の目標に合わせて、筋道だったプログラムが組まれます。私のメインテーマは、日本語の教育システムを学ぶこと、また、視覚障害者を対象にしたインクルーシブ教育を含む教育を学ぶことでした。研修中は、障害者を取り巻く状況改善にむけて活動している日本全国のさまざまな公的機関、リハビリテーションセンター、特殊学校、インクルーシブ教育を行なっている学校、大学や図書館の学生支援センター、NGO、NPOを見て回りました。

日本では、障害のさまざまな面についての理論的な知識と、実践的な経験を得ることができ、大変大きな経験となりました。私は障害者のための教育、DAISY、点字図書館、スポーツ、またバリアフリー環境を主なテーマとして勉強しました。

1. 教育

まず、日本初の視覚障害者のための学校である京都府立盲学校、そして、史上初めて日本語の点字を開発した筑波大学附属視覚特別支援学校を訪れました。

日本の教育システムに特徴的なことの一つとして、物理的な環境や資料が非常によく整備されていることが挙げられると思います。また、学生がある就学レベルからより高度なステージに移る場合に、時間のギャップがなく、まったく待たないで済むことが挙げられます。たとえば、3月に高校を卒業した学生は、すぐ同年4月に大学に入学して勉強を始められるのです。3つ目の特徴は、学科のカリキュラムのほかに、学生が課外活動に熱心に取り組むことです。

残念ながら、日本の特別支援学級には学生がそう多くありません。私の見学時には教室に一人か二人しか学生がいない場合もありました。そうなると、当然、仲間との交流や課外活動にも影響が出ます。しかし、先生の教え方が大変優れているために、学生は先生と活発に交流していました。また、化学、理科、数学、地理の授業参観もしましたが、化学では実験の授業に参加できたのが大変楽しかったです。先生や教育分野の専門家たちが、視覚障害のある学生が使いやすい教材や学習ツール、テキストを設計する豊かな創造性に大変驚かされました。

このように、日本の教育システムに関しては非常に貴重な経験を積むことができました。私自身も新しく独創的なアイディアを考案し、スリランカの学生や教師、教育者、社会に応用できるであろうという確固たる信念を得ました。

2. DAISYと点字図書館

情報アクセスの擁護・推進のために、日本ではいろいろな責任機関がさまざまな活動を展開しています。私はATDOでDAISY図書の作成についてのテクニカルな研修に参加しました。DAISY図書は視覚障害者にとって有益であるだけでなく、印刷媒体に関して何らかの困難を抱えている多くの人にも役立っています。

また、点字図書館もいくつか見学し、リソースや施設、その管理がどのようになっているのかを学びました。スリランカに応用するとすれば、以下の2つのサービスが有益であろうと思いました。

1) 図書の貸し出し

視覚障害のあるユーザーが図書を借りたい場合は、点字図書館に電話します。そうすると、点字図書やオーディオ図書が無料で郵送されます。

2) 読み上げサービス(対面サービス)

読み上げサービスはボランティアによって行なわれます。読み上げサービスをしてもらいたい場合は図書館に連絡します。これによって、視覚障害者は読みたい本が読めますし、ボランティアも本を読み上げることによって新しい知識を得ることができます。サービスユーザーにとっても提供者にとってもウィン・ウィンの関係というわけです。

この2つのサービスをぜひスリランカに紹介し実践したいと思います。

3. スポーツ

スポーツを体験したことにより、障害の問題について違う角度から見るということを考えるようになりました。日本に来て間もないうちに、二人乗りの自転車に乗ってみました。インクルーシブなスポーツで、障害者も健常者も一緒に参加します。乗ってみると大変楽しく、そのあとも何度もこのことを思い出しました。ちょっとした努力や、新しいことをやってみることで、どのくらい大きい結果が得られるかということを理解する良い経験でした。教育、交通システム、就職などについても同じことがいえます。環境をバリアフリーにして、障害者にも同様に皆同じ権利を与えることができるのです。スポーツはインクルーシブな社会を作るために、障害者と健常者を結ぶ橋のような役割を果たせるのではないでしょうか。ランニング、水泳、スキー、卓球、バレーボールなどを体験してみましたが、スリランカにもできるだけ早く導入したいと思います。

4. バリアフリー環境

日本国外の人間としては、障害のある人たちも含め、日本の人たちに、これだけの驚異的なバリアフリー環境を日本で作り上げたことに敬礼したい気持ちです。建物や交通機関、モノのほとんどが、障害者が利用できるようになっており、バリアフリーです。今では日本はすべての建築物やモノにユニバーサルデザインを採りいれようとしています。バリアフリー運動のための日本の障害者活動は何十年も前に始まりました。今も続いており、日々その活動が高まっています。私もスリランカで尽力し、スリランカにバリアフリー環境を作り上げたいと思います。

上述したように、日本では障害関連の活動を幅広く体験しました。日本の障害分野には前向きの要素がたくさんあり、毎日状況が改善されています。しかし、日本社会にはまだインクルーシブであるとは言えない部分もあります。まだまだ道のりが長いと思われるところもあるからです。とくに、就労、教育はまだ特殊な環境にあります。また、日本には、他の国の経験していない、日本独自の問題もあります。最大の社会問題は高齢化そして若者の人口の減少で、日本社会のありとあらゆる面に影響を及ぼしています。障害者の生活にも直接この問題が影響を及ぼしているのが見てとれます。

もうひとつ、特筆すべきことは、日本の医療が大変発展していることです。この結果、重度の障害をもって生まれた赤ちゃんでも生き延びることができます。過去には、こうした子供があまり長く生きられない時代もありました。しかし今は集中治療のおかげで、生き延びることができるのです。いっぽうで、日本では障害者や、重度の重複障害のある子供も含めて、だんだん人が長生きになってきています。日本は現在このような課題に直面しています。

ホームステイと日本文化体験

日本独自の文化に触れる機会はたくさんありました。新年のお休みは、2つのご家族と共に過ごし大変楽しいひと時を過ごしました。両家とも私を温かく迎え大事にしてくださり、滞在中私のことを守ってくださいました。家族の一員としていただいたこの絆は一生涯続くことでしょう。熊本の安田さんのお宅では、新年を共に祝いました。熊本や、ほかの地域で温泉を訪れたことは特に、忘れられない思い出です。

京都でも、竹下さんのお宅で大変楽しいひと時を過ごしました。美しい着物を着せていただきました。また、京都の素晴らしいお寺や神社を訪問し、新幹線博物館にも行きました。素晴らしい、新幹線第一号を目にできたことは大変幸運でした。

両家では、大変おいしい和食もご馳走になりました。また、実のある議論もたくさんして、自分の考え方の枠も広がりました。安田さんと竹下さんには、本当に親切にしていただいたことを心から御礼申し上げます。

私の夢

私の夢は、スリランカにインクルーシブな社会を作り、障害者も健常者も同等の権利を持って生活できる社会を作ることです。この夢を実現するため、以下のことをしたいと思っています。

日本に来るまで、私はスリランカで視覚障害者の兵士たちを対象にコンピュータ研修を行なっていました。 今後は他の兵士たちも対象に、このプログラムを続けて次の段階に進めていきたいと考えています。また、視覚障害の子供たちのための、質のよい教育実施を考えたいです。具体的には、地理、数学、理科の学習資料の作成を計画しています。また、障害者向けスポーツの機会を増やしたいです。インクルーシブなスポーツの導入を考えています。また、DAISY図書を作成し、アクセシブルな情報を増やしたいです。そして、スリランカの図書館に、図書の貸し出しおよび対面の読み上げサービスを導入したいと考えています。また、積極的に障害者運動にも参加し、バリアフリー環境を作り上げていきたいと思います。最後に、大学の講師になることを目標として、自分自身の高等教育も続けていきたいと思っています。

最後になりましたが、私の日本での滞在を楽しい、実りあるものとしてくださった、ダスキン愛の輪基金、日本障害者リハビリテーション協会、戸山サンライズの皆さん、日本語の先生がた、水泳やスキー研修の先生がた、そして私を温かく迎えてくださったそれぞれの研修先の皆さま、ボランティアの皆さま、すべての日本の友人に、心からの温かい感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。本当にありがとうございました。

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