Duskin Leadership Training in Japan

最終レポート

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アシュファッグ・アホメッドのファイナルレポート

私の名前はアシュファッグ・アホメッドです。2008年よりモルディブのモルディブろう協会(MDA)の代表を務めています。モルディブには多くの島があります。首都や大きい島から遠く離れた島に住んでいるろう者はいろいろな問題に直面していることを伝え聞いたので、私は協会のメンバーとともにこれらの島々を訪ね、どうやって権利擁護のために闘ったらよいかを話してきました。しかし、十分な資金がないためすべての島を回ることはできませんでした。このような事情から、どうやったらこうした問題を解決できるか学ぶために、本研修に応募しようと思い立ちました。

三か月の日本語と日本語手話の研修

日本では日本語と日本手話を勉強することになりましたが、モルディブでは勉強したことがありませんでした。ひらがな、カタカナ、漢字を習いました。日本手話はおもしろく覚えるのも楽でしたが、漢字は非常に難しかったです。日本のろう者とは日本手話で話が通じてしまい、日本語の書き言葉を使うことがなかったためです。12月には日本語能力試験を受けなければなりませんでした。落ちたらどうしようと少し心配でした。実際に不合格だと知って、少し悲しくなりました。しかし、日本語および日本手話の先生に、知識を分け与えてくださったことを感謝したいと思います。

ホームステイ

年末年始には、ホームステイをさせていただくために兵庫県に向かいました。私がお世話になったのは岩林さんのお宅でした。ろうのご両親と一番上の娘さんに会いましたが、ほかの三人の娘さんはもう実家を離れて暮らしていました。ご両親はまるで私の本当の両親のように感じられ、一緒にすることが何もかも楽しく感じられました。また、お父さんである岩林さんが畑でトマトを収穫するのを手伝ってくれというので、一緒に2日間トマト採りを楽しんだのも良い思い出です。

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一番上の娘さんはあまり話さないのでお父さんに聞いてみたところ、何か事情があるとのことでした。そこで彼女の悩みを解消する一助となろうと、私は積極的に彼女に話しかけてみました。私の生活やモルディブのことを話したところだんだん聞いてくれるようになり、一緒にいろんな話をしました。最初は無口だった娘さんですが、だんだんに話をしてくれるようになったので私も安心しました。お母さんは、娘さんが明るさを取り戻してご両親とも話をするようになったのでとても喜んでいました。そのほかにもみんなで兵庫のいろいろな場所を訪ね、とても楽しかったです。

スキー研修

新潟の越後湯沢にスキー研修のために出かけました。これまでスキーをしたことはありませんでしたし、もちろん滑り方も知りませんでした。スキーの先生の一人は手話ができたので、どうやってスキーをするか手話で教えてくださいました。いろいろな場所で滑るのは楽しかったですが、2日間だけでなくもっと滑りたかったです。

個別研修

1.長崎

長崎では長崎聴覚障害者情報センターに滞在し、一カ月の研修を受けました。そこ長崎 はとても静かなところでした。そこで会った本村さんは、政府との交渉方法やろうの女性の権利擁護などを教えてくださいました。また、ろうのスタッフ、聴者のスタッフがそれぞれ情報センターのビデオやメディアサービスの使い方を教えてくれました。

2.かがやきパソコンスクール

かがやきパソコンスクールでは、PCでのビデオ編集や、ブログを活用したHPの作成などについて習いました。ポスターやブログの作り方、ビデオの編集などはまったく知らなかったのですが、自分の協会のためにこうしたことを学んでいると思うと、とてもワクワクしました。教えてくださった野中さんに、感謝したいと思います。

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3.手話通訳

国立障害者リハビリテーションセンターでは手話通訳者養成のためのプログラムを見学し、手話の指導法やろうコミュニティの文化の多様性について学びました。

4.教育

明晴学園に2週間行きました。ろう児が手話を使って豊かに会話できることに驚きました。生後5カ月のろう乳児が手話の喃語を使っている様子をおさめたフィルムを見て、ろう児が流暢に手話を使っていたことが納得できました。6歳になる女の子に家族のことを尋ねてみたところ、完璧な手話で事細かに説明してくれました。彼女が実に知識豊かで、またその手話がその知識を説明できるレベルにまで達していることに非常に驚きました。

5.ろうの老人ホーム

兵庫県の淡路島では、ろうの老人ホームに一週間滞在しました。高齢ろう者の介護の仕方を習いました。それまでの人生の話などをいろいろ伺うのが興味深かったです。また、食事のお手伝いをするのを学んだのも大変良い経験でした。

6.日本ASL協会でのプレゼンテーション

日本ASL協会ではプレゼンテーションやパワーポイントの効果的な作り方を勉強し、1時間にわたるプレゼンテーションを作成しました。このプレゼンテーションでは私の生活や、モルディブの文化、モルディブのろう協会などについて紹介しました。私のプレゼンテーションを聴くために24人の参加者が集まることになっていたからですので、何度も一生懸命練習しました。参加者は私のプレゼンを評価しながら聞いてくださっていましたが、最後まで自信を持って講演ができました。皆さんからいただいた評価は良好でした。長崎でも1時間プレゼンテーションを行ない、終わってから45分間、たくさんの質問を受けました。私の話を一生懸命聴いて、質問やコメントをしてくださったことが嬉しかったです。プレゼンテーションの方法について教えてくださった日本ASL協会の皆さんに、感謝の言葉を捧げたいと思います。

ダスキン松山

3月4日に、愛媛県の松山で行われた「ダスキンファミリー感謝の集い」で、モルディブの文化やモルディブのろう協会についてプレゼンテーションを行ないました。会場には1400人もの人が集まっていたのでびっくりしましたが、皆さんが私のプレゼンテーションを喜んでくださったと聞き、嬉しかったです。

モルディブに戻ってからの目標

  1. ろうコミュニティ:権利擁護、コミュニティの発展、エンパワメント--モルディブのろう者への意識と知識を高め、ろう者をエンパワーする
  2. ろう者のアクセシビリティ:手話通訳センターを設立する--病院、警察など手話通訳が必要されるところで手話サービスを提供できるように、手話通訳センターを設立する
  3. ろう学校の設立:モルディブでのろう教育--遠くの島々に住んでいるろうの学生のために、宿舎つきのろう学校を設立する
  4. ろう者のための情報サービス:ニュースとメディア--モルディブの社会がろうコミュニティへ意識を向けられるように機会作りをする。また、モルディブのろうコミュニティに対しアクセシブルなニュース、メディアを目指す。
  5. アジアのろう者:アジアのろう者の発展とエンパワメント:アジアのろう者が聴者と同様の知識をつけられるようサポートし、エンパワーする。

感謝の言葉

ダスキン愛の輪運動基金、日本障害者リハビリテーション協会に、感謝の言葉を捧げたいと思います。この素晴らしい研修の間、私を支えてくださった皆さんのことは忘れません。そして、14期の研修生の仲間、そして日本のろうの友人にも感謝を捧げたいと思います。帰国後はモルディブの島々にいるろう者を助け、さらにアジアのろう者の手助けもして、アジアのろうコミュニティの発展を見守っていきたいと思います。モルディブに戻ったら、どれだけ日本を懐かしく思うことでしょう。日本の社会はろうコミュニティ・マネジメントの方法や、福祉などの社会的な取り組みについて教えてくれました。いつか日本にまた旅して戻ってきたいと思います。

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