【速報】日本耳鼻咽喉科学会 小児人工内耳適応基準を見直し
報告=[ACITA]相談役・・小木保雄

日本耳鼻咽喉科学会の福祉医療・乳幼児委員会で「小児の人工内耳適応基準」が見直され、06年1月20日の理事会で承認されたと発表がありました。

「以下、日本耳鼻咽喉科学会ホームページより転載」


◆小児人工内耳適応基準

本適応基準では、言語習得期前および言語習得期の聴覚障害児を対象とする。

T、人工内耳適応条件
小児の人工内耳では、手術前から術後の療育に至るまで、家族および医療施設内外の専門職種との一貫した協力体制がとれていることを前提条件とする。

1、医療機関における必要事項
(A)乳幼児の聴覚障害について熟知し、その聴力検査、補聴器適合について熟練していること。
(B)地域における療育の状況、特にコミュニケーション指導法などについて把握していること。
(C)言語発達全般および難聴との鑑別に必要な他疾患に関する知識を有していること。

2、療育機関に関する必要事項
聴覚を主体として療育を行う機関との連携が確保されていること。

3、家族からの支援
幼児期からの人工内耳の装用には長期にわたる支援が必要であり、継続的な家族の協力が見込まれること。

4、適応に関する見解
Uに示す医学的条件を満たし、人工内耳実施の判断について当事者(家族および本人)、医師、療育担当者の意見が一致していること。

U、医学的条件
1、手術年齢
(A)適応年齢は原則1歳6カ月以上とする。年齢の上限は定めず、上記適応条件を満たした上で、症例によって適切な手術時期を決定する。

(B)髄膜炎後蝸牛閉塞など、1歳6カ月未満での手術を要する場合がある。

(C)言語習得期以後の失聴例では、補聴器の効果が十分でない高度難聴であることが確認された後には、獲得した言語を保持し失わないために早期に人工内耳を検討することが望ましい。

2、聴力、補聴効果と療育
(A)種々の聴力検査を用いても両耳とも平均聴力レベル90dB以上である場合。
(B)少なくとも6カ月以上にわたる最適な補聴と療育によっても両耳とも平均補聴レベルが話声レベルを超えず、補聴器のみでは音声言語の獲得が不十分と予想される場合。

3、禁忌
 中耳炎などの感染症の活動期

4、慎重な適応判断が必要なもの
(A)画像診断で蝸牛に人工内耳が挿入できる部位が確認できない場合。
(B)反復性の急性中耳炎が存在する場合。
(C)制御困難な髄液の噴出が見込まれる場合など、高度な内耳奇形を伴う場合。
(D) 重複障害および中枢性聴覚障害では慎重な判断が求められ、人工内耳による聴覚補償が有効であるとする予測がなければならない。


◆「小児人工内耳適応基準」の見直しの概要と解説

幼小児の聴覚障害について、早期発見と早期療育が必要と言われてきたが、それは補聴器の適合と療育を早期に行うことを意味していた。
今日、乳幼児聴力検査の進展でこれらはかなり達成され、さらには補聴器による療育に限界が認められる場合には人工内耳という選択肢も開けてきた。
今回の見直しでは、聴覚障害児に対する人工内耳が一定の効果を示してきていることを踏まえて、その適応年齢を1歳6カ月、聴力閾値では平均聴力レベル90dB以上と枠を広げた。また聴力閾値だけでなく、補聴レベルについても記載した。
補聴レベルが小児の生活環境において話し声レベルを超えることとしたのは、そうでない場合には必然的に聴覚・音声言語によるコミュニケーションが困難となり、十分な聴覚活用が困難になる例が多いと予測されるためである。
その目安は、補聴レベルで55dB程度と考えられる。

その一方で、適応基準をより厳格に規定した。それは人工内耳を用いて、今後生活していくこととなる幼小児では慎重に適応を見極める必要があるからである。
その問題点を列挙すると、
 1、年齢あるいは発育のために、手術を受けることについて自己の意思で決定すること   ができない。
 2、年齢あるいは発育のために、正確な聴力を把握しにくい場合がある。
 3、人工内耳は蝸牛内に電極を埋め込む手術であり、残聴を失う可能性がある。
 4、聴力レベルが90dB以上であっても、療育によっては補聴器で対応できる場合も実在
   する。
 5、療育の現状は、地域によってかなりの違いがある。
などであり、したがって家族、保護者はもちろん、手術施設内外の聴覚・音声言語指導の療育にかかわる人達との意見の一致が欠かせないと考え、特にその項目を設定した。

なお、言語を獲得した後に聴力障害を生じた幼小児について、効果が不十分な補聴器装用のみでは音声言語を喪失する可能性や、構音障害についても言及した。

重複先天性障害については、必ずしも禁忌にはならない。合併する障害にもよるが、両者の障害程度を総合的に判断すべきであり、
(1)コミュニケーションに困難を伴うほどの重度の知的障害
(2)広汎性発達障害、
(3)注意欠陥・多動障害、
(4)その他言語発達に影響を及ぼしうる高次脳機能障害、
などが含まれることを想定した。この場合も、術後の療育にかかわる人達の、理解と見解の共通性が求められる。ことに低年齢では見過ごされるか、顕著に表出していない障害の場合もあるので、全体的な発達・発育の観察を怠ってはならない。

聴覚障害の原因が内耳よりも中枢側にあると推定される場合には、人工内耳術後の効果についての慎重な見通しが必要であり、特にこれに言及した。
ただし、皮質聾は人工内耳の-適応としない。

最後にこの適応基準は時代の変化や医学の進歩に伴って適宜見直しを図る必要があることを付言したい。

ホームへ戻る