障害者白書は、平成5年に施行された「障害者基本法」に基づき、障害者のために講じた施策の概況について毎年国会に提出している年次報告です。平成6年に初めて刊行されてから今回で30回目になります。
我が国が平成26年に締結した「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」は、「合理的配慮」の否定を含めた障害に基づく差別の禁止を求めており、令和5年4月現在186の国・地域等が締結しています。我が国では、この条約の趣旨を「障害者基本法」に基本原則として取り込む形で差別の禁止を規定し、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」等で具体化しています。
障害者差別解消法は、行政機関等や事業者に対して、「障害を理由とする不当な差別的取扱い」を禁止するとともに、「合理的配慮の提供」を求めており、これらを通じて障害者の活動を制限し、社会参加を制約している社会的障壁を取り除くことで、全ての国民が障害の有無にかかわらず相互に人格と個性を尊重し支え合いながら共生する社会の実現を目指しています。令和6年4月1日には「改正障害者差別解消法」が施行され、事業者による「合理的配慮の提供」が、現行の努力義務から義務へと改められます。この改正は、障害を理由とする差別の解消に向けた動きを大きく進展させるものであり、社会的障壁を取り除くための取組の裾野が更に広がることが期待されます。
本白書では、「改正障害者差別解消法」の施行に向けて、法や改定された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を分かりやすく解説し、施行に向けた政府の施策を掲載しています。また、令和5年3月に閣議決定した障害者のための施策の最も基本的な計画である「障害者基本計画(第5次)」(令和5年度からの5年間を対象)を始め令和4年度に政府が講じた各分野の障害者施策や取組の概況を紹介しているほか、教育、雇用、生活、まちづくり、情報アクセシビリティ・コミュニケーションなどに係る官民の取組や具体事例をTOPICS(トピックス)として取り上げています。
本白書が、国民の皆様に広く活用され、障害者差別の解消への関心が一層高まるとともに、共生社会の実現に向けた取組がより推進されることとなれば幸いです。
令和5年7月