1.障害のある人の雇用の場の拡大

(1)障害者雇用の現状

ア 2021年障害者雇用状況報告

 対象障害者を1人以上雇用する義務がある民間企業(常用雇用労働者数43.5人以上)については、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告することになっている。2021年の報告結果は次のとおりである。

 なお、障害者雇用状況報告では、重度身体障害者又は重度知的障害者については、その1人の雇用をもって、2人の身体障害者又は知的障害者を雇用しているものとしてカウントされる。

 また、重度身体障害者又は重度知的障害者である短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者)については、1人分として、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については、0.5人分としてカウントされる。

 ただし、精神障害者である短時間労働者については、雇入れや精神障害者保健福祉手帳を取得してから3年以内の場合、1人分としてカウントされる。

① 民間企業の状況

 2021年6月1日現在の障害者雇用状況は、雇用障害者数が18年連続で過去最高を更新し、597,786.0人(前年同日578,292.0人)となるなど、一層進展している。また、障害者である労働者の実数は499,985人(前年同日479,989人) となった。雇用者のうち身体障害者は359,067.5人(前年同日356,069.0人)、知的障害者は140,665.0人(前年同日134,207.0人)、精神障害者は98,053.5人(前年同日88,016.0人)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きかった。

 また、民間企業が雇用している障害者の割合(以下「実雇用率」という。)は2.20%(前年同日2.15%)であった。

 企業規模別に割合をみると、2021年から新たに報告対象となった43.5~45.5人未満規模で1.77%であった。また、従来から報告対象であった45.5~100人未満規模で1.81%、100~300人未満規模で2.02%、300~500人未満規模で2.08%、500~1,000人未満規模で2.20%、1,000人以上規模で2.42%となった。

 一方、法定雇用率を達成した企業の割合は、47.0%となった。なお、雇用されている障害者数については、全ての企業規模で前年の報告より増加した。

67

■図表3‐7 民間企業における障害者の雇用状況


○実雇用率と雇用されている障害者の数の推移
(各年6月1日現在)

注1:雇用義務のある企業(2012年までは56人以上規模、2013年から2017年までは50人以上規模、2018年から2020年までは45.5人以上規模、2021年以降は43.5人以上規模の企業)についての集計である。

注2:「障害者の数」とは、次に掲げる者の合計数である。

2005年まで
身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
2006年以降2010年まで
身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
精神障害者
精神障害者である短時間労働者
(精神障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
2011年以降
身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
精神障害者
身体障害者である短時間労働者
(身体障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
知的障害者である短時間労働者
(知的障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
精神障害者である短時間労働者(※)
(精神障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)

※ 2018年以降は、精神障害者である短時間労働者であっても、次のいずれかに該当する者については、1人分とカウントしている。

①通報年の3年前の年に属する6月2日以降に採用された者であること

②通報年の3年前の年に属する6月2日より前に採用された者であって、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること

注3:法定雇用率は2012年までは1.8%、2013年から2017年までは2.0%、2018年から2020年までは2.2%、2021年以降は2.3%となっている。

68

○企業規模別実雇用率

(各年6月1日現在)

※2012年までは56~100人未満

※2013年から2017年までは50~100人未満

※2018年から2020年までは45.5~100人未満

※2021年からは43.5~100人未満


○企業規模別達成企業割合

(各年6月1日現在)

※2012年までは56~100人未満

※2013年から2017年までは50~100人未満

※2018年から2020年までは45.5~100人未満

※2021年からは43.5~100人未満

資料:厚生労働省「令和3年障害者雇用状況の集計結果」

■図表3‐8 民間企業における企業規模別障害者の雇用状況

(2021年6月1日現在)

区分①企業数②法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数③障害者の数④実雇用率E÷②×100⑤法定雇用率達成企業の数⑥法定雇用率達成企業の割合
A.重度身体障害者及び重度知的障害者B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者E.計A×2+B+C+D×0.5F.うち新規雇用分
規模計106,924企業
(102,698)
27,156,780.5人
(26,866,997.0)
124,508人
(122,795)
18,003人
(17,084)
304,060人
(291,126)
53,414人
(48,984)
597,786.0人
(578,292.0)
55,081.0人
(57,630.0)
2.20%
(2.15)
50,306企業
(49,956)
47.0%
(48.6)
43.5~45.5人未満2,657企業
(-)
117,789.5人
(-)
330人
(-)
123人
(-)
1,070人
(-)
454人
(-)
2,080.0人
(-)
225.0人
(-)
1.77%
(-)
932企業
(-)
35.1%
(-)
45.5~100人未満52,219企業
(50,544)
3,428,602.5人
(3,348,466.5)
10,380人
(10,222)
3,306人
(3,020)
32,314人
(30,097)
11,590人
(9,578)
62,175.0人
(58,350.0)
7,035.5人
(6,818.0)
1.81%
(1.74)
23,855企業
(23,224)
45.7%
(45.9)
100~300人未満36,803企業
(36,787)
5,682,382.5人
(5,677,127.5)
21,842人
(21,796)
5,001人
(4,806)
59,370人
(58,097)
13,700人
(13,408)
114,905.0人
(113,199.0)
11,858.0人
(12,718.5)
2.02%
(1.99)
18,614企業
(19,274)
50.6%
(52.4)
300~500人未満6,983企業
(7,078)
2,478,229.0人
(2,511,339.5)
10,524人
(10,560)
1,874人
(1,777)
26,228人
(25,598)
5,015人
(4,659)
51,657.5人
(50,824.5)
5,026.0人
(5,123.5)
2.08%
(2.02)
2,911企業
(3,122)
41.7%
(44.1)
500~1,000人未満4,810企業
(4,818)
3,092,099.0人
(3,090,963.5)
14,224人
(14,109)
2,003人
(1,895)
34,823人
(33,993)
5,293人
(4,964)
67,920.5人
(66,588.0)
6,436.5人
(6,926.0)
2.20%
(2.15)
2,063企業
(2,252)
42.9%
(46.7)
1,000人以上3,452企業
(3,471)
12,357,678.0人
(12,239,100.0)
67,208人
(66,108)
5,696人
(5,586)
150,255人
(143,341)
17,362人
(16,375)
299,048.0人
(289,330.5)
24,500.0人
(26,044.0)
2.42%
(2.36)
1,931企業
(2,084)
55.9%
(60.0)

注1: ②欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数」とは、常用労働者総数から除外率相当数(対象障害者が就業することが困難であると認められる職種が相当の割合を占める業種について定められた率を乗じて得た数)を除いた労働者数である。

注2: ③A欄の「重度身体障害者及び重度知的障害者」については法律上、1人を2人に相当するものとしており、E欄の計を算出するに当たりダブルカウントを行い、D欄の「重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者」については法律上、1人を0.5人に相当するものとしており、E欄の計を算出するに当たり0.5カウントとしている。ただし、精神障害者である短時間労働者であっても、以下の注4に該当するものについては、1人とカウントしている。

注3:A、C欄は1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者であり、B、D欄は1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者である。

注4:C欄の精神障害者には、精神障害者である短時間労働者であって、次のいずれかに該当する者を含む。

①通報年の3年前の年に属する6月2日以降に採用された者であること

②通報年の3年前の年に属する6月2日より前に採用された者であって、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること

注5:D欄の精神障害者である短時間労働者とは、精神障害者である短時間労働者のうち、注4に該当しない者である。

注6:F欄の「うち新規雇用分」は、2020年6月2日から2021年6月1日までの1年間に新規に雇い入れられた障害者数である。

注7:( )内は2020年6月1日現在の数値である。なお、精神障害者は2006年4月1日から実雇用率に算定されることとなった。

資料:厚生労働省「令和3年障害者雇用状況の集計結果」

② 国・地方公共団体の状況

 国の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の割合、勤務している障害者数はそれぞれ2.83%、9,605.0人であった。

69

 また、都道府県の機関(法定雇用率2.6%)は2.81%、10,143.5人であり、市町村の機関(法定雇用率2.6%)は2.51%、33,369.5人であった。

 さらに、都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.5%)は2.21%、16,106.5人であった。


■図表3‐9 国・地方公共団体における障害者の在籍状況

1 法定雇用率2.6%が適用される国、地方公共団体 (2021年6月1日現在)

①法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数
②障害者の数③実雇用率④法定雇用率達成機関の数/機関数
⑤達成割合
国の機関339,099.5人
(329,989.5人)
9,605.0人
(9,336.0人)
2.83%
(2.83%)
46/46
(44/45)
100.0%
(97.8%)
都道府県の機関361,308.0人
(355,407.5人)
10,143.5人
(9,699.5人)
2.81%
(2.73%)
143/160
(142/159)
89.4%
(89.3%)
市町村の機関1,329,895.5人
(1,301,788.5人)
33,369.5人
(31,424.0人)
2.51%
(2.41%)
1,763/2,477
(1,741/2,465)
71.2%
(70.6%)

2 法定雇用率2.5%が適用される都道府県等の教育委員会 (2021年6月1日現在)

①法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数

②障害者の数③実雇用率④法定雇用率達成機関の数/機関数

⑤達成割合
都道府県等教育委員会729,403.5人
(729,491.0人)
16,106.5人
(14,956.0人)
2.21%
(2.05%)
50/99
(39/101)
50.5%
(38.6%)

注1: 各表の①欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数」とは、職員総数から除外職員数及び除外率相当職員数(旧除外職員が職員総数に占める割合を元に設定した除外率を乗じて得た数)を除いた職員数である。

注2: 各表の②欄の「障害者の数」とは、身体障害者、知的障害者及び精神障害者の計であり、短時間労働者以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については法律上、1人を2人に相当するものとしてダブルカウントを行い、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間勤務職員については法律上、1人を0.5人に相当するものとして0.5カウントとしている。

ただし、精神障害者である短時間勤務職員であっても、次のいずれかに該当する者については、1人とカウントしている。

①通報年の3年前の年に属する6月2日以降に採用された者であること

②通報年の3年前の年に属する6月2日より前に採用された者であって、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること

注3: 法定雇用率2.5%が適用される機関とは、都道府県の教育委員会及び一定の市町村の教育委員会である。

注4:( )内は、2020年6月1日現在の数値である。なお、精神障害者は2006年4月1日から実雇用率に算定されることとなった。

資料:厚生労働省「令和3年障害者雇用状況の集計結果」

70

■図表3‐10 国の機関ごとの障害者の在籍状況

(2021年6月1日現在)

①法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数
②障害者の数③実雇用率④不足数備考
国の機関合計339,099.59,605.02.830.0
行政機関合計309,694.08,813.52.850.0
内閣官房1,598.544.02.750.0
内閣法制局76.52.02.610.0
内閣府3,435.594.02.740.0
カジノ管理委員会165.04.02.420.0
宮内庁1,203.536.02.990.0
公正取引委員会920.025.52.770.0
警察庁2,300.069.03.000.0
金融庁1,770.047.02.660.0
消費者庁489.015.03.070.0
個人情報保護委員会162.04.02.470.0
復興庁192.07.03.650.0
総務省5,336.5158.02.960.0特例承認あり(注4)
公害等調整委員会44.01.02.270.0注5
法務省33,536.5954.52.850.0
出入国在留管理庁4,640.0132.52.860.0
公安調査庁1,645.048.02.920.0
外務省3,400.5119.03.500.0
財務省12,122.5340.02.800.0
国税庁62,007.51,699.52.740.0
文部科学省2,829.576.52.700.0特例承認あり(注4)
厚生労働省60,990.01,775.02.910.0
農林水産省16,130.5471.02.920.0
林野庁4,752.5134.02.820.0
水産庁781.524.03.070.0
経済産業省6,610.5191.52.900.0特例承認あり(注4)
特許庁3,489.095.52.740.0
国土交通省42,337.51,207.52.850.0
観光庁273.59.53.470.0
気象庁4,750.0146.03.070.0
海上保安庁271.017.06.270.0
運輸安全委員会193.58.54.390.0
環境省2,839.081.52.870.0
原子力規制委員会1,187.532.02.690.0
防衛省23,648.5636.02.690.0
防衛装備庁1,598.547.02.940.0
人事院688.520.02.900.0
会計検査院1,278.541.03.210.0
立法機関合計4,002.0109.02.720.0
衆議院事務局1,632.042.02.570.0
衆議院法制局87.02.02.300.0
参議院事務局1,240.533.02.660.0
参議院法制局71.01.01.410.0
国立国会図書館971.531.03.190.0
司法機関合計25,403.5682.52.690.0
最高裁判所1,032.027.02.620.0
高等裁判所1,766.549.02.770.0
地方裁判所15,933.0431.52.710.0
家庭裁判所6,672.0175.02.620.0

注1: ①欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数」とは、職員総数から除外職員数及び除外率相当職員数(旧除外職員が職員総数に占める割合を元に設定した除外率を乗じて得た数)を除いた職員数である。

注2: ②欄の「障害者の数」とは、身体障害者数、知的障害者数及び精神障害者数の計であり、短時間勤務職員以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については、法律上、1人を2人に相当するものとしてダブルカウントとしている。

また、短時間勤務職員である重度身体障害者及び重度知的障害者については1人を1カウントとしている。

さらに、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間勤務職員については、法律上、1人を0.5人に相当するものとして0.5カウントとしている。ただし、短時間勤務職員である精神障害者であって、2017年6月2日以降に採用された者又は2017年6月2日より前に採用され、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者は、1人1カウントとしている。

注3: ④欄の「不足数」とは、①欄の職員数に法定雇用率を乗じて得た数(1未満の端数切り捨て)から②欄の障害者の数を減じて得た数であり、これが0.0となることをもって法定雇用率達成となる。

したがって、実雇用率が法定雇用率を下回っていても、不足数が0.0となることがあり、この場合、法定雇用率達成となる。

注4: 注4の省庁は、特例承認を受けている。特例承認とは、省庁及び当該省庁におかれる外局の申請に基づき、厚生労働大臣の承認を受けた場合に、当該省庁におかれる外局に勤務する職員を当該省庁に勤務する職員とみなすものである。

【特例承認一覧】

省庁総務省文部科学省経済産業省
外局等消防庁文化庁、スポーツ庁中小企業庁、資源エネルギー庁

注5:公害等調整委員会は、法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数が38.5人以上となったことから、法律第38条に基づく障害者の雇用義務が新たに発生したものである。

資料:厚生労働省「令和3年障害者雇用状況の集計結果」

71

イ ハローワークの職業紹介状況

 2020年度のハローワークを通じた就職件数は、89,840件(前年度比12.9%減)であった。このうち、身体障害者は20,025件(前年度比21.4%減)、知的障害者は19,801件(前年度比9.6%減)、精神障害者は40,624件(前年度比18.1%減)、その他の障害のある人(発達障害、難病、高次脳機能障害などのある人)※は9,390件(前年度比52.2%増)であった。

 また、新規求職申込件数は211,926件(前年度比5.1%減)となり、このうち、身体障害者は57,691件(前年度比7.0%減)、知的障害者は34,300件(前年度比6.9%減)、精神障害者は95,385件(前年度比11.3%減)、その他の障害のある人は24,550件(前年度比45.6%増)であった。

※ 「その他の障害のある人」とは、身体障害者・知的障害者・精神障害者以外の障害者をいい、具体的には、障害者手帳を所持しない発達障害者、難病患者、高次脳機能障害者などである。ただし、2020年1月のハローワークシステム刷新の影響により、障害者手帳を所持する方も一部計上されている。


■図表3‐11 ハローワークにおける障害者の職業紹介状況

①新規求職申込件数②有効求職者数③就職件数④就職率(③/①)
(件)前年度比
(%)
(人)前年度比
(%)
(件)前年度比
(%)
(%)前年度差
(ポイント)
2010年度132,7345.4169,1167.152,93117.039.93.9
2011年度148,35811.8182,5357.959,36712.240.00.1
2012年度161,9419.2198,7558.968,32115.142.22.2
2013年度169,5224.7207,9564.677,88314.045.93.7
2014年度179,2225.7218,9135.384,6028.647.21.3
2015年度187,1984.5231,0665.690,1916.648.21.0
2016年度191,8532.5240,7444.293,2293.448.60.4
2017年度202,1435.4255,6126.297,8144.948.4△0.2
2018年度211,2714.5272,4816.6102,3184.648.40.0
2019年度223,2295.7300,51810.3103,1630.846.2△2.2
2020年度211,926△5.1331,26610.289,840△12.942.4△3.8

資料:厚生労働省「2020年度障害者の職業紹介状況等」


■図表3‐12 ハローワークにおける障害者の職業紹介状況(障害種別ごと)(2020年度)

2020年度
障害者計身体障害者うち重度知的障害者うち重度精神障害者その他
新規求職申込件数211,92657,69120,02434,3004,08895,38524,550
就職件数89,84020,0257,38419,8013,33040,6249,390

資料:厚生労働省「2020年度障害者の職業紹介状況等」

72

(2)障害のある人の雇用対策について

ア 障害のある人の雇用対策の基本的枠組み

 障害者施策の基本理念である、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のためには、職業を通じた社会参加が重要である。この考え方の下に障害のある人の雇用対策の各施策を推進している。

 具体的には、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号。以下「障害者雇用促進法」という。)や同法に基づく「障害者雇用対策基本方針」(平成30年厚生労働省告示第178号)等を踏まえ、障害のある人、一人一人がその能力を最大限発揮して働くことができるよう、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を講じている。

イ 障害者雇用率制度及び法定雇用率の達成に向けた指導

① 障害者雇用率制度

(ア)障害者雇用率制度

 「障害者雇用促進法」では、民間企業等に対し、一定の割合(障害者雇用率)以上の障害のある人の雇用を義務づけている。障害者雇用率は、企業の社会連帯の理念に基づき、身体障害者、知的障害者又は精神障害者に一般労働者と同じ水準の雇用の場を、各事業者の平等な負担の下に確保することを目的として設定している。1960年の制度創設時、民間企業の障害者雇用率は努力義務として事務的事業所1.3%、現場的事業所1.1%であった。その後、1976年に障害者雇用率制度を義務化し、1988年、1998年、2013年及び2018年に障害者雇用率を改正している。2021年3月1日から、さらに0.1%引き上げが行われ、2.3%となった。なお、国等の公的機関については、率先垂範すべき立場にあることから、民間企業を上回る2.6%(都道府県等の教育委員会は2.5%)としている。

(イ)特例子会社制度等の特例措置

 事業主が障害のある人の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)を設立した場合には、一定の要件の下でこの特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されている者とみなして、実雇用率を算定できる特例措置(特例子会社制度)を設けている。特例子会社制度は、障害のある人の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより障害のある人の能力を十分に引き出すことができるなど、事業主及び障害のある人双方にメリットがあると考えられる。2021年6月1日現在で562社を特例子会社として認定している。

 また、特例子会社を持つ親会社については、関係する他の子会社も含め、企業グループ全体での実雇用率の算定を可能としている。

 さらに、特例子会社がない場合も、一定の要件を満たす企業グループとして認定を受けたものについては、企業グループ全体で実雇用率を通算できる「企業グループ算定特例」を設けている。

② 法定雇用率の達成に向けた指導の一層の促進

 障害者雇用率制度の履行を確保するため、ハローワークにおいて、法定雇用率未達成企業に対する指導を行っている。

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(ア)民間企業等に対する指導等

 実雇用率の著しく低い民間企業に対しては、ハローワークが障害のある人の雇入れに関する2年間(2012年以降。それ以前は3年間)の計画の作成を命じ、当該計画に基づいて障害のある人の雇用を進めるよう継続的な指導を実施している。また、雇入れ計画を作成したものの、障害のある人の雇用が進んでいない企業に対しては、雇入れ計画の適正な実施に関する勧告を行い、計画終期で一定の改善が見られなかった企業に対し企業名公表を前提とした特別指導を行っている。さらに、一連の指導にもかかわらず改善がみられない企業については、企業名を公表している。

(イ)国・地方公共団体に対する指導等

 国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先垂範して障害のある人の雇入れを行うべき立場にあり、全ての公的機関における毎年6月1日現在の雇用状況を発表している。また、未達成である機関については、障害のある人の採用に関する計画を作成しなければならず、その計画が適正に実施されていない場合には、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画が適正に実施されるよう勧告を行っている。

ウ 障害者雇用納付金制度

 「障害者雇用促進法」は、障害者雇用率制度に加え、障害のある人の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、障害のある人の雇用を容易にし、社会全体として障害のある人の雇用水準を引き上げるため、障害者雇用納付金制度を設けている。この制度では、障害者雇用率未達成の民間企業(常用雇用労働者数100人超)から納付金を徴収するとともに、一定水準を超えて障害のある人を雇用している民間企業に対して、障害者雇用調整金、報奨金を支給している。

 このほか、障害のある人を雇い入れるために施設、設備の改善等を行う事業主等に対する助成金の支給や在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する在宅就業障害者特例調整金等の支給を行っている。

 加えて、2020年4月から、短時間であれば就業可能な障害のある人の就業機会の確保を促進するため、短時間労働者のうち週所定労働時間が一定の範囲内にある者(特定短時間労働者)を雇用する事業主に対して、障害者雇用納付金を財源とする特例給付金を支給する仕組みを創設した。

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■図表3‐13 障害者雇用納付金制度について

➣全ての事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者に雇用の場を提供する共同の責務を有する。
➣障害者の雇用に伴う経済的負担を調整するとともに、障害者を雇用する事業主に対する助成・援助を行うため、
事業主の共同拠出による納付金制度を整備。
●雇用率未達成企業(常用労働者100人超)から納付金(不足1人当たり原則月5万円)を徴収。
●雇用率達成企業に対して調整金(超過1人当たり月2万7千円)・報奨金を支給。

資料:厚生労働省

エ 職業リハビリテーションの実施

 「障害者雇用促進法」において、職業リハビリテーションとは、「障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ること」(第2条第7号)としている。これに基づき、障害のある人が職業を通じて社会参加できるよう、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関を中心に、障害のある人が希望や能力、適性に応じた職場に就き、就労を継続し、職業生活において自立を図ることができるようにするための支援を実施している。

オ 助成金等による企業支援や普及啓発活動

 国では、民間企業が無理なく、かつ積極的に障害のある人を雇用できるよう、障害のある人を雇用した場合などに助成金を支給している。

 例えば、身体に障害のある人や知的障害のある人、精神障害のある人を継続して雇用する労働者として雇い入れる民間企業に対して助成する「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」や、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換した事業主に対して助成する「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」、障害のある人を雇い入れたり、継続して雇用するために必要な職場の環境整備等を行った場合に費用の一部を助成する障害者雇用納付金制度に基づく助成金等を支給している。

 また、障害のある人の雇用義務の対象であるものの障害のある人を1人も雇用していない民間企業等を対象に、ハローワーク等が中心となって就労支援機関等と連携した「障害者雇用推進チーム」を設置し、民間企業ごとの状況やニーズ等に合わせて採用に向けた準備から職場定着まで一貫した支援を行う「企業向けチーム支援」を行っている。

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 このほか、民間企業等が積極的に障害のある人の雇用を進めるためには、障害のある人の雇用管理に関する先進的な事例等を普及啓発する必要がある。そのため、各種マニュアル等を発行し、民間企業等への配布等を通じて障害のある人の雇用の啓発を行っている。2017年度からは、一般労働者を対象とした「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催し、職場における精神・発達障害のある人を支援する環境づくりに取り組んでいる。さらに、2020年度より、障害者の雇用の促進等に関する事業主の取組に関し、その実施状況が優良なものであること等の基準に適合するものである旨の認定を行い、認定された事業主について、その商品等に厚生労働大臣の定める表示(認定マーク(愛称:もにす))を付すことができる中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)を創設した。この認定を受けることで、中小事業主にとっては、自社の商品や広告等への認定マークの使用によるダイバーシティ・働き方改革等の広報効果や、障害のない者も含む採用・人材確保の円滑化といった効果が期待できる。2021年12月末時点で117事業主をもにす認定企業として認定している。

 また、厚生労働省では、毎年9月の「障害者雇用支援月間」に障害のある人を積極的に多数雇用している事業所、職業人として模範的な業績をあげている勤労障害者等に対し、厚生労働大臣表彰を行い、障害のある人の職業的自立の意欲を喚起するとともに、障害のある人の雇用に対する国民の関心と理解を一層深めることを目指している。2021年度には6の障害者雇用優良事業所、12名の優秀勤労障害者の表彰を行った。

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第3章第2節 1.障害のある人の雇用の場の拡大/厚生労働省

TOPICS

障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)

 「障害者雇用促進法」は、第5条において、「すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであつて、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない。」と定めている。

 しかし、中小事業主は大企業に比べて障害者の実雇用率が低く、さらに、障害者を全く雇用していない企業が多い等、障害者雇用の取組が停滞している状況にある。このため、2020年4月から、個々の中小事業主における障害者雇用の進展に対する社会的な関心を喚起し、障害者雇用に対する経営者の理解を促進するため、障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)を新設した。

 厚生労働省では、障害者の雇用の促進及び安定に関する取組の実施状況などが優良である中小事業主を、「障害者雇用優良中小事業主」(もにす認定企業)として認定している。認定に当たっては、障害特性に応じた体制づくりや職場づくりなどの取組を実施していること、その結果として雇用状況・定着状況の数的側面と従業員の満足度などの質的側面からその取組の成果が出ていること、これらの取組・成果関係について事業主自らも幅広く情報開示していることなどを総合的に評価している。認定を受けた中小事業主は、自社の商品・サービスや広告等に「障害者雇用優良中小事業主認定マーク」を表示すること等が可能になる。


このロゴは障害者を企業が丸く優しく包み込み、多様性を受け入れ、「共に社会貢献をしていこう!」という前向きな想いを表したキャラクターです。企業と障害者が、明るい未来や社会の実現に向けて「ともにすすむ」という思いを込めて、「もにす」と名付けました。

 2021年12月末時点において、全国で117事業主が認定を受けている(参考)。認定事業主は社会的認知度が高まるというメリットを享受することができるとともに、認定事業主が障害者雇用における身近なロールモデルとして認知されることで、当該地域における障害者雇用の取組が一層推進されることが期待される。さらに、この認定制度を通じて、障害者の雇用の促進と雇用の安定を図ることで、組織における多様性が促進され、ひいては女性や高齢者、外国人等の誰もが活躍できる職場づくりにつながることが期待される。


(参考)認定企業一覧:https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu_00002.html

株式会社 中西

株式会社 大和屋

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カ 税制上の優遇措置

 障害のある人を雇用する民間企業に対し、税制上の各種の特例措置を講じている。具体的には、障害のある人を多数雇用する事業主が事業用施設等を取得した場合に不動産取得税の減額措置及び固定資産税の課税標準の特例措置(2023年3月31日まで)等を講じている。

キ 障害者差別禁止と合理的配慮の提供

 雇用分野において障害があることを理由とした差別を禁止し、過重な負担とならない限り、合理的配慮の提供を事業主に義務付けている。

 このため、障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供義務に関するリーフレットや合理的配慮に係る事例集等を作成・配布して周知・啓発に努めている。また、全国の都道府県労働局・ハローワークにおいて事業主・障害のある人からの相談に応じ、必要な場合は事業主に助言・指導等を行っているほか、都道府県労働局長や障害者雇用調停会議による紛争解決の援助を行っている(2020年度実績:相談件数246件、助言件数54件、指導件数0件、勧告件数0件、紛争解決援助申立件数12件、調停申請受理件数5件。)。

(3)公務部門における障害者雇用について

ア 障害者の活躍の場の拡大に関する措置

 国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先垂範して障害のある人の雇入れを行うべき立場にある。加えて、2018年の公務部門における障害者雇用の不適切計上事案が明らかになったことを踏まえ、雇用率の達成はもとより、雇用の質の向上を実現するため、障害者雇用推進者、障害者職業生活相談員の選任義務等に加え、2020年4月からは障害者活躍推進計画の作成・公表義務を課されており、各機関においては当該計画に基づき障害者雇用を進めるとともに、その取組状況について点検し、毎年公表しなければならないとされている。

 厚生労働省としては、各機関における活躍推進計画の作成やそれに基づく取組の実施に対して必要な助言、援助等を行うことを通じて、障害者が活躍できる職場づくり等に対する各機関の自立的な取組を支援している。

イ 国の行政機関における雇用率の達成や障害者の活躍の場の拡大を図るための支援策

① 支援体制の整備

 国及び地方公共団体においては、障害者雇用推進者及び障害者職業生活相談員を選任しなければならないとされており、各機関において配置を義務付けている障害者職業生活相談員については、障害者の職業生活に関する相談及び指導を行うに当たって必要な知識・スキルの付与を行う「障害者職業生活相談員資格認定講習」の受講等を選任要件としており、当該講習は都道府県労働局において実施している。

② 障害者雇用に関する理解の促進

 人事院において、一般職国家公務員における合理的配慮の考え方等を定めた「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針(国家公務員の合理的配慮指針)」を2018年12月に策定するとともに、2020年1月には各府省において提供された合理的配慮の事例を把握し、厚生労働省とも連携して取りまとめ、各府省に提供している。

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 内閣人事局を中心として厚生労働省、人事院の協力のもと、公務部門において障害者を雇用する際に必要となる基礎知識や支援策等を整理した「公務部門における障害者雇用マニュアル」を2019年3月に作成した(「障害者雇用促進法」の改正内容を踏まえ、2020年3月に改正)。

 厚生労働省において、国の機関における障害者雇用に関する理解の促進を図るため、以下の取組を実施している。

・障害者雇用の際に必要となる設備改善・機器導入に関する情報について、国の機関の人事担当者等を対象に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に蓄積されたノウハウ・情報の提供

・国の機関等の人事担当者等を対象に、障害者の働きやすい職場環境づくりや障害特性に応じた雇用管理を内容とする「障害者雇用セミナー」の開催

・障害者とともに働く国の機関及び地方自治体等の職員を対象に、精神・発達障害の特性を正しく理解し、職場でこれら障害者を温かく見守り、支援する応援者となるための講座(あわせて同講座のe-ラーニング版を提供)を実施

・各府省における障害者雇用の取組を好事例として収集し、各府省に共有

 内閣人事局において、障害特性を理解した上での雇用・配置や業務のコーディネートを行う障害者雇用のキーパーソンとなる職員を養成するための「障害者雇用キーパーソン養成講習会」を実施している。

③ 職場実習の実施

 厚生労働省において、各府省における障害者の採用に向けた着実な取組を推進するため、各府省等の人事担当者等を対象に、各府省が行う特別支援学校等と連携した職場実習の実施に向けた支援を行う。

 また、内閣人事局において、障害者就労支援機関との連携により、障害者(実習生)とその支援者を各府省の職場へ一定期間派遣し、各府省における職場実習を支援する「障害者ワーク・サポート・ステーション事業」を実施している。

④ 職場定着支援等の推進

 厚生労働省において、ハローワーク等に各府省からの職場定着に関する相談を受け付ける窓口を設置して、各府省において働く障害者やその上司・同僚からの相談に応じるほか、専門の支援者を配置して各府省からの要請等に応じて職場適応支援を実施している。

 また、各府省が自ら職場適応に係る支援を適切に行えるようにするため、職員の中から選任した支援者に必要な支援スキル等を付与する支援者向けセミナーを実施している。