(1)基本的な考え方
・障害のある選手たちが圧倒的なパフォーマンスを見せる東京パラリンピック競技大会は、共生社会の実現に向けて人々の心の在り方を変える絶好の機会である。
・「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」をすべての人が理解し、それを自らの意識に反映していくことが重要である。
・この機を逃さず、国民全体を巻き込んだ「心のバリアフリー」の取組を展開するとともに、世界に誇れるユニバーサルデザインの街づくりを実現すべく取り組む。
・障害のある人に関する施策の検討及び評価に当たっては、障害当事者が委員等に参画し、障害のある人の視点を施策に反映させることとする。
・これら施策が確実に実現されるよう、関係府省等の施策の実施状況を確認・評価し、その結果を踏まえて関係府省等が施策を改善することにより、実行性を担保していくこととする。
(2)具体的な取組
ア 心のバリアフリー
行動計画で取り組む「心のバリアフリー」とは、様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことである。そのためには、一人一人が具体的な行動を起こし継続することが必要であり、そのために重要なポイントとして、以下の3点をあげた。
・障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること。
・障害のある人(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。
・自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、全ての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。
「心のバリアフリー」を実現するための施策は、あらゆる年齢層において継続して取り組まれなければならない課題であるとともに、学校で、職場で、病院などの公共施設で、家庭で、買い物や食事の場で、スポーツ施設や文化施設など地域のあらゆる場において、また、日々の人々の移動においても、切れ目なく実現されなければならない。よって、以下の主な施策を含め、社会全般に渡って施策を展開することとした(図表2-2)。
イ ユニバーサルデザインの街づくり
我が国において、交通分野、建築・施設分野のバリアフリー化(情報にかかわる内容を含む)については、2006年以降、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー法」という。)の下、交通施設、建築物等の種類毎に目標を定め、個々の施設のバリアフリー化と地域における面的なバリアフリー化に全国的に取り組み、一定の水準まで整備が進んできた。東京2020大会は、こうした取組に加え、世界に誇ることのできるユニバーサルデザインの街づくりを目指して、更なる取組を行う好機であった。
街づくりは極めて幅広い分野であり、かかわる施策も多岐にわたる。このため「ユニバーサルデザイン2020行動計画」においては、大きく①東京2020大会に向けた重点的なバリアフリー化と②全国各地における高い水準のユニバーサルデザインの推進という2つの観点から、幅広い施策をとりまとめた(図表2-3)。
第1回関係閣僚会議で行動計画を決定(内閣総理大臣、障害者団体も出席)
■図表2‐2 「心のバリアフリー」の具体的な取組
資料:内閣官房
■図表2‐3 「ユニバーサルデザインの街づくり」の具体的な取組
資料:内閣官房
第2章第2節 2.ユニバーサルデザイン2020行動計画の概要/文部科学省
TOPICS
東京パラリンピック競技大会
2013年9月に開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会(アルゼンチン/ブエノスアイレス)において、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市が東京都に決定した。これにより、東京都は史上初めて、2度目のパラリンピック夏季競技大会を開催する都市となった。
パラリンピック競技大会は、世界のトップアスリートが参加し、スポーツを通じて、障害のある人の自立や社会参加を促すとともに、様々な障害への理解を深めることにつながるものである。また、アクセシビリティに配慮した会場やインフラの整備により、東京のまち全体を障害のある人を始めとする全ての人々が安全で快適に移動できるよう、ユニバーサルデザイン都市・東京の実現が促進された。
東京パラリンピック競技大会は、「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」を3つの基本コンセプトとし、大会組織委員会を中心に、東京都や日本パラリンピック委員会(JPC)、政府が一丸となって大会成功に向けて取り組んできた。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、史上初の大会延期となったが、2021年8月24日から9月5日の日程で開催された東京パラリンピック競技大会は、難民選手団を含む163の国・地域から過去最多となる4,403名の選手が参加した大会となった。
オリンピック・パラリンピック競技大会を始めとする国際競技大会における日本代表選手の活躍は、国民に誇りと喜び、夢と感動を与えるものであり、我が国の国際競技力向上に向けた取組を進めていくことは重要である。このため、スポーツ庁では、パラリンピックの競技特性や環境等に十分配慮しつつ、オリンピック競技とパラリンピック競技の支援内容に差を設けない一体的な競技力強化支援に取り組んでいる。なお、東京2020大会等の結果を踏まえつつ、これまでの競技力向上施策の成果と課題を検証し、新たに「持続可能な国際競技力向上プラン」(2021年12月)を策定し、パラリンピック競技の国際競技力向上とオリンピック競技団体、パラリンピック競技団体間の連携の促進についても取組を進めていくこととしている(第4章第1節5.(1)イを参照)。
また、東京パラリンピック競技大会を契機に、将来のパラリンピアンを始め一人でも多くの障害のある人がスポーツを楽しめる環境を整備することにより、障害者スポーツの裾野を広げていくことが重要である。このため、地方自治体における障害者スポーツ推進体制の整備を推進するとともに、全国の特別支援学校を地域の障害者スポーツの拠点として活用する取組を進めていくこととしている。
東京パラリンピック競技大会メダルデザイン(おもて面)
Copyright© 2022 - Tokyo 2020 / International Paralympic Committee –All rights reserved