障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立や社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズに応じ、多様な学びの場において適切な指導を行うとともに、必要な支援を行う必要がある。現在、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」(※1))においては、特別の教育課程や少人数の学級編制の下、特別な配慮により作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備等を活用して指導が行われている。特別支援教育は、発達障害も含めて、特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものであり、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対しても、合理的配慮の提供を行いながら、必要な支援を行う必要がある。
2017年5月1日現在、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級の在籍者並びに小・中学校及び高等学校の通級による指導を受けている幼児児童生徒の総数は約49万人となっており、増加傾向にある。なお、このうち義務教育段階の児童生徒については、義務教育段階の全児童生徒数の約4.2%に当たる約41万7千人である。
障害のある子供には、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通級による指導といった多様な学びの場が提供されている。2018年度からは高等学校段階における通級による指導が開始され、2018年度は45都道府県において実施、2019年度からは全都道府県において実施されている。また、障害のため通学して教育を受けることが困難な幼児児童生徒に対しては、教師を家庭、児童福祉施設や医療機関等に派遣して教育(訪問教育)を行っている。2018年5月1日現在、小学部1,242人、中学部769人、高等部869人の児童生徒が、この訪問教育を受けている。
2017年4月に新特別支援学校小学部・中学部学習指導要領、2019年2月に新特別支援学校高等部学習指導要領を公示し、 ①重複障害者である子供や知的障害者である子供の学びの連続性、 ②障害の特性等に応じた指導上の配慮の充実、 ③キャリア教育の充実や生涯学習への意欲向上など自立と社会参加に向けた教育等を充実させた。また、新特別支援学校学習指導要領等の円滑な実施のため、学習指導要領の趣旨を踏まえた教育課程の編成や、一人一人の障害の状態等に応じた指導方法の改善・充実について、先導的な実践研究を実施した。
幼稚園、小・中学校及び高等学校における特別支援教育については、学習指導要領等において、個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成するなど個々の児童生徒等の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的・組織的に行うこととしている。また、372018年8月には、学校教育法施行規則を一部改正し、特別支援学校に在籍する幼児児童生徒、小・中学校の特別支援学級の児童生徒及び小・中学校、高等学校において通級による指導を受けている児童生徒について、個別の教育支援計画を作成することとし、当該計画の作成に当たっては、当該児童生徒等又は保護者の意向を踏まえつつ、医療・福祉・保健・労働等の関係機関等と当該児童生徒等の支援に関する必要な情報の共有を図らなければならないこととしている。
特別支援学校の児童生徒にとっては、その障害の状態等によっては、一般に使用されている検定教科書が必ずしも適切ではない場合があり、特別な配慮の下に作成された教科書が必要となる。このため、文部科学省では、従来から、文部科学省著作の教科書として、視覚障害者用の点字版の教科書、聴覚障害者用の国語(小学部は言語指導、中学部は言語)及び音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数(数学)及び音楽の教科書を作成している。
なお、特別支援学校及び特別支援学級においては、検定教科書又は文部科学省著作の教科書以外の図書(いわゆる「一般図書」)を教科書として使用することができる。
また、文部科学省においては、拡大教科書など、障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等(※2)の普及を図っている。
具体的には、できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるよう標準的な規格を定めるなど、教科書発行者による拡大教科書の発行を促しており、2018年度に使用された、小・中学校の学習指導要領に基づく検定教科書に対応した標準規格の拡大教科書は、ほぼ全点発行されている。また、教科書発行者が発行する拡大教科書では学習が困難な児童生徒のために、一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して、教科書デジタルデータの提供を行っている。このほか、通常の検定教科書において一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な発達障害等のある児童生徒に対しては、教科書の文字を音声で読み上げるとともに、読み上げか所がハイライトで表示されるマルチメディアデイジー教材等の音声教材がボランティア団体等により製作されており、文部科学省においても必要な調査研究等を行うなど、その普及推進に努めている。
加えて、障害のある児童生徒の情報活用能力を育成するとともに、障害を補完し、学習を支援する補助手段として、情報通信技術(ICT)などの活用を進めることが重要であることから、企業・大学等が学校・教育委員会等と連携して行う、ICTを活用した教材など、児童生徒の障害の状態等に応じた使いやすい支援機器等教材の開発の支援を実施した。
さらには、近年の教育の情報化に伴い、2020年度から実施される新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善や、障害等により教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の支援のため、2018年に学校教育法等の改正等を行い、2019年度より、視覚障害や発達障害等の障害等により紙の教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の困難を低減させる必要がある場合には、教育課程の全部において、紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書(※3)を使用することができることとなった。
公立の特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級においては、障害の状態や能力・適性等が多様な児童生徒が在籍し、一人一人に応じた指導や配慮が特に必要であるため、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号)(以下「義務標準法」という。)及び公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和36年法律第188号)(以下「高校標準法」という。)に基づき、学級編制や教職員定数について特別の配慮がなされている。
・学級編制
1学級の児童生徒数の標準については、数次の改善を経て、現在、公立特別支援学校では、小・中学部6人、高等部8人(いわゆる重複障害学級にあってはいずれも3人)、公立小・中学校の特別支援学級では8人となっている。
・教職員定数
公立の特別支援学校における児童生徒数が増加していることや障害が重度・重複化していることに鑑み、大規模校における教頭あるいは養護教諭等の複数配置や、教育相談担当・生徒指導担当・進路指導担当及び自立活動担当教師の配置が可能な定数措置を講じている。
2011年4月の義務標準法の一部改正では、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒を対象とした通級による指導の充実など特別支援教育に関する加配事由が拡大された。
また、2017年3月の義務標準法の一部改正により、2017年度から公立小・中学校における通級による指導など特別な指導への対応のため、10年間で対象児童生徒数に応じた定数措置(基礎定数化)を行うこととしている。この他、特別支援学校のセンター的機能強化のための教員配置など、特別支援教育の充実に対応するための加配定数の措置を講じており、高等学校における通級による指導の制度化に伴い、2018年3月に高校標準法施行令を改正し、公立高等学校における通級による指導のための加配定数措置を可能とした。
特別支援教育担当教師の養成は、現在、主として大学の特別支援教育関係の課程等において行われている。また、幼稚園、小・中学校及び高等学校の教員養成においても、教職に関する科目において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」について取り扱うこととしているほか、特別支援教育について学ぶ科目を開設している大学もある。また、2017年11月に教育職員免許法施行規則の改正を行い、教職課程において「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」を新たに独立した事項として設け、2019年4月以降に入学する者については1単位以上修得することを定めた。
また、教職員の資質向上を図るため、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所においては、特別支援教育関係の教職員等に対する研修や講義配信を行っているほか、独立行政法人教職員支援機構(2017年4月に「独立行政法人教員研修センター」から名称変更)においても、各地域の中心的な役割を担う教職員を育成する学校経営研修において、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。さらに、都道府県等教育委員会においては、小学校等の教師等の初任者研修や中堅教諭等資質向上研修においても、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。この他、放送大学において、現職教師を主な対象とした特別支援学校教諭免許状取得のための科目が開講されている。
また、教員免許更新制における免許状更新講習においても、必修領域の事項の一つである「子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)」の中で特別支援教育に関する内容を扱うことが規定されている。
2007年度より、従来、盲学校・聾学校・養護学校ごとに分けられていた教諭の免許状が、特別支援学校の教諭の免許状に一本化されている。同時に、特別支援学校教諭免許状の取得のためには、様々な障害についての基礎的な知識・理解と同時に、特定の障害についての専門性を確保することとなっている。また、大学などにおける特別支援教育に関する科目の修得状況などに応じ、教授可能な障害の種別(例えば「視覚障害者に関する教育」の領域など)を定めて授与することとしている。
ただし、特別支援学校教諭免許状については、教育職員免許法(昭和24年法律第147号)上、当分の間、幼稚園、小・中学校及び高等学校の免許状のみで特別支援学校の教師となることが可能とされているが、専門性確保の観点から保有率を向上させることが必要である。
特別支援学校の教師の特別支援学校教諭等免許状の保有率は、全体で79.8%(2018年5月1日現在)であり、全体として前年度と比べ2.1ポイント増加しているが、特別支援教育に関する教師の専門性の向上が一層求められている中で、専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっている。このため、各都道府県教育委員会等において教師の採用、配置、現職教師の特別支援学校教諭等免許状取得等の措置を総合的に講じていくことが必要であることから、文部科学省において、特別支援学校教諭等免許状の取得に資する取組を実施した。
特別支援学校の幼稚部では、いずれの障害種においても幼稚園教育要領における健康、人間関係、環境、言葉及び表現の5領域に自立活動(※)を加えた6領域で構成されている。
小学部から高等部では、視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者又は病弱者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の教育課程については、高等学校までの教科等に自立活動(※)を加えて編成することになっている。また、知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の教育課程については、特別支援学校学習指導要領において、障害の特性等を踏まえた教科等の枠組みが設定されている。
文部科学省では、2017年4月に特別支援学校幼稚部教育要領、小・中学部学習指導要領、2019年2月に特別支援学校高等部学習指導要領の改訂を行った。
今回の改訂は、2016年12月の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策について」を踏まえ、「社会に開かれた教育課程の実現」、「育成を目指す資質・能力」、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善、各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立など、初等中等教育全体の改善・充実の方向性を重視している。
また、障害のある子供たちの学びの場が柔軟に選択できるようになったことを踏まえ、幼稚園、小・中学校及び高等学校の教育課程との連続性を重視している。
さらに、障害の重度・重複化、多様化への対応と卒業後の自立と社会参加に向けた取組を一層充実している。
教育内容等の主な改善事項としては、以下に示す3点があげられる。
子供たちの学びの連続性を確保する視点から、重複障害者等に関する教育課程の取扱いについて、基本的な考え方を規定した。
例えば、各教科の目標・内容の一部を取り扱わないことや、前の学年の目標・内容に替えることができる規定を設けている。
知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校については、小・中・高等学校の学習指導要領と同様に、育成を目指す資質・能力の3つの柱(※)に基づき、各教科等の目標及び内容を整理した。
また、特に必要がある場合には、小・中・高等学校の学習指導要領の各教科等の目標及び内容の一部を取り入れることができることなどを規定した。
さらに、各段階間で内容のつながりを整理するとともに、従来は一つの段階のみで示されていた中学部について、新たに二つの段階を新設していることや、小学部の教育課程に新たに外国語活動を設けることができるなどの充実を図っている。
視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者及び病弱者である子供に対する教育を行う特別支援学校においては、既述のとおり小・中・高等学校の学習指導要領に示された各教科の指導を行うこととしており、その上で、学習指導要領において障害の特性等に応じた指導上の配慮を充実するとともに、コンピュータ等の情報機器(ICT機器)の活用等について規定している。
文部科学省では、今後とも様々な場等において丁寧な説明を行う等、今回の改訂に係る趣旨・内容について周知徹底を図っていく。
教育の情報化に対応し、2020年度から実施される新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善や、障害等により教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の支援のため、一定の基準の下で、必要に応じ、紙の教科書に代えて「学習者用デジタル教科書」を使用できることとする学校教育法等関係法令の改正が行われ、2019年度より施行された。
特に、障害等により教科書を使用して学習することが困難な児童生徒については、文字の拡大や音声読み上げ等の機能により、教科書の内容へのアクセスが容易となり、効果的に学習を行うことができる場合には、教育課程の全部においても、紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用できることとなった。
等
例えば、以下のような活用方法により、教科書の内容へのアクセスが容易となることが期待される。
(「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」(平成30年12月、文部科学省)より)
※学習者用デジタル教科書の制度化の詳細については、文部科学省ホームページを参照。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1407731.htm
文部科学省では、学校施設の整備について、障害のある幼児児童生徒が支障なく学校生活を送るために障害の種類や程度に応じたきめ細かな配慮を行うよう、学校種ごとの学校施設整備指針を作成し、施設の計画・設計上の留意点を示している。このほか、学校施設のバリアフリー化に関する基本的な考え方や計画・設計上の留意点を示した「学校施設バリアフリー化推進指針」を策定するとともに、具体的な取組を事例集として取りまとめている。また、報告書「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」では、災害時に避難所となる学校施設におけるバリアフリー化の必要性について示している。これらの指針や事例集等は、地方公共団体等に配布するとともに、研修会等を通じて普及啓発に努めている。
さらに、学校施設におけるバリアフリー化の取組に対する支援の一つとして、エレベーターやスロープなどのバリアフリー化に関する施設整備について国庫補助を行っている。
また、私立の特別支援学校並びに小・中学校の特別支援学級において、障害に適応した教育を実施する上で必要とする設備の整備を学校法人が行う場合に、国がその一部を補助している。補助対象となる設備には、立体コピー設備、FM等補聴設備、VOCA(音声表出コミュニケーション支援装置)、携帯用防犯ベル、スクールバスなどがある。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、我が国における唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして、国の政策課題や教育現場等の喫緊の課題等に対応した研究活動を核として、各都道府県等において指導的立場に立つ教職員等を対象に、「特別支援教育専門研修」や高等学校における通級による指導などに関する「指導者研究協議会」を実施しているほか、インターネットを通じて、通常の学級の教師を含め障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教師の資質向上の取組を支援するための研修講義の配信や特別支援学校の教師の免許状保有率の向上に資する免許法認定通信教育を実施している。また、全ての学校を始めとする関係者に必要かつ有益な情報を提供するため、インターネットを活用し、発達障害に関する情報提供等を行う「発達障害教育推進センター」、合理的配慮の実践事例の掲載等を行う「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」及び支援機器等教材活用に関する様々な情報を集約した「特別支援教育教材ポータルサイト」などにより情報発信を行っている。さらに、研究成果の普及等を行う「研究所セミナー」(東京都)を開催しているほか、「教材・支援機器等展示会」(全国4か所)、45「発達障害地域理解啓発事業」(全国3か所)を実施するなど理解啓発活動も行っている。
このほか、2016年度に「インクルーシブ教育システム推進センター」を設置し、地域や学校が直面する課題を研究テーマとし、その解決を目指す「地域実践研究」、諸外国の最新情報の発信を行うとともに、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に十分に教育を受けられるよう、一人一人の教育的ニーズに応じた多様で柔軟な仕組みの構築に関する相談支援等を通して、地域や学校における取組を強力にバックアップしている(参照:http://nc.nise.go.jp/)。
都道府県の特別支援教育センターにおいて、当該都道府県における特別支援教育関係職員の研修、障害のある子供に係る教育相談、特別支援教育に係る研究・調査等が行われている。
文部科学省では、障害のある子供に対する特別支援教育を充実するため、学校における支援体制の整備や留意事項などを示し、学校や教育委員会などの取組を促進しており、障害のある子供への支援体制の整備、巡回相談や専門家チームによる支援、研修体制の整備・実施、関係機関との連携など、支援体制整備の推進に係る経費の一部を補助している。
特別支援教育体制整備状況等調査によると、小・中学校においては、「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており、「個別の指導計画」の作成、「個別の教育支援計画」の作成についても着実な取組が進んでいる。また、幼稚園・高等学校における体制整備は進みつつあるものの、小・中学校に比べると課題がみられる(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/1343888.htm)。
さらに、公立幼稚園、小・中学校及び高等学校に在籍する障害のある子供をサポートする「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が各市町村に対して地方財政措置されている。
文部科学省では、障害のある子供に対して、就学前から就労に至るまで一貫した切れ目ない支援体制を整備するため、自治体等が、(1)特別な支援を必要とする子供への就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援体制整備、(2)看護師、外部専門家の配置をする場合に要する経費の一部を補助している。
また、発達障害を始め障害のある子供への支援における教育と福祉の連携については、学校と障害福祉サービス事業者との相互理解の促進や、保護者も含めた情報共有の必要性が指摘されている。これを踏まえ、各自治体の教育委員会や福祉部局が主導し、支援が必要な子供やその保護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目なく支援が受けられるよう、文部科学省と厚生労働省では、両省連携による、家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトを2017年12月に発足させ、翌年3月に、教育と福祉の連携を推進するための方策及び保護者支援を推進するための方策について取りまとめた。報告書には、具体的な今後の対応策として、各地方自治体において、教育委員会や福祉部局が主導し、学校と障害福祉サービス事業者との関係構築の場を設置することで教育と福祉の連携を加速させることや、相談窓口の整理を行うなど保護者支援の取組を充実させることなどを掲げている。両省では、同年5月に連名の通知を各地方自治体に対して発出し、報告書の趣旨を広く周知するとともに、自治体の好事例等も併せて示し、教育と福祉の一層の連携の推進に向けた積極的な取組を促した。46加えて、同年8月には、各自治体の福祉サービス等の情報が保護者に分かりやすく届くよう、作成・配布を求めている保護者向けのハンドブックについて、ひな型を示し、各自治体の取組を後押しした。さらに、同年8月に、学校教育法施行規則の改正を行い、「個別の教育支援計画」の作成に当たっては、児童生徒等又はその保護者の意向を踏まえつつ、医療、福祉、保健、労働等の関係機関等と当該児童生徒等の支援に関する必要な情報の共有を図らなければならないこととした。
2016年4月からの障害者差別解消法の施行、同年6月の児童福祉法の一部改正、同年8月からの発達障害者支援法の改正等を踏まえ、関係部局・関係機関の連携の下、特別な支援を必要とする子供に対して、就学前から就労に至るまで、一貫した支援体制の整備や看護師、外部専門家の配置を実施することが必要である。
切れ目ない支援体制整備や看護師、外部専門家の配置に向けた取組として、自治体等が、下記の Ⅰ、 Ⅱの事業を行う場合に要する経費の一部を補助する。
学校において日常的にたんの吸引や経管栄養等の「医療的ケア」が必要な児童生徒が増加している状況を踏まえ、これらの児童生徒の教育の充実を図るため、学校に看護師を配置し、医療的ケアの実施等を行う。
特別支援学校のセンター的機能を充実させ、特別支援学校全体としての専門性を確保するとともに、特別支援学校以外の多様な学びの場における特別支援教育の体制を整備するため、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等の外部専門家を配置・活用する。
学校教育法(昭和22年法律第26号)の一部改正(2006年)により、幼稚園、小・中学校及び高等学校等のいずれの学校においても、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する特別支援教育を推進することが法律上明確に規定された。
2016年6月には発達障害者支援法(平成16年法律第167号)の一部改正が公布され(同年8月施行)、発達障害児がその年齢・能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるよう、可能な限り発達障害児が発達障害児でない児童と共に教育を受けられるよう配慮することや、支援体制の整備として個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成推進、いじめの防止等のための対策の推進等が規定された。文部科学省では、小・中学校、高等学校等における発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援に当たって、 ①特別支援教育の視点を踏まえた学校経営構築の方法、 ②学習上のつまずきなどに対する教科指導の方向性の在り方、 ③通級による指導の担当教師等に対する研修体制の在り方や必要な指導方法、 ④学校における児童生徒の多様な特性に応じた合理的配慮の在り方、 ⑤学校と福祉機関との連携支援、支援内容の共有方法に関する研究を実施した。
また、文部科学省と厚生労働省の両省主催で「発達障害支援の地域連携に係る全国合同会議」を開催した。
特別支援学校等には、日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が在籍しており、学習や生活を行う上で適切に対応することが必要である。
2011年6月に公布された介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成23年法律第72号)による社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、2012年4月から一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになったことを受け、特別支援学校等の教師等についても、制度上実施することが可能となった。
これに関して、文部科学省としては、特別支援学校等において安全かつ適切な医療的ケアを提供するために必要な検討を行うため、2011年10月より「特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議」を開催し、特別支援学校等において医療的ケアを必要とする児童生徒等の健康と安全を確保するに当たり留意すべき点等について整理を行い、都道府県・指定都市教育委員会等に通知した(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1314510.htm)。
また、制度の開始から5年を経て、人工呼吸器の管理を始めとした高度な医療的ケアへの対応や訪問看護師の活用など、新たな課題もみられるようになってきていることから、2017年10月に設置した「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議」において、有識者による議論が行われた。この検討会議の最終まとめを受けて、小・中学校等を含む全ての学校における医療的ケアの基本的な考え方や医療的ケアを実施する際に留意すべき点等を整理し、各都道府県教育委員会等に対して周知を図った。
2018年5月1日現在、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が特別支援学校に8,563人、小・中学校に970人在籍しており、文部科学省では、特別支援学校や小・中学校における医療的ケアを必要とする児童生徒の教育の充実を図るため、看護師の配置に必要な経費の一部を補助している。また、学校において高度な医療的ケアに対応するため、医師と連携した校内支援体制の構築や、医療的ケア実施マニュアル等の作成など、医療的ケアの実施体制の充実を図るモデル事業を実施した。
私立の特別支援学校、特別支援学級を置く小・中学校及び障害のある幼児が就園している幼稚園等の果たす役割の重要性から、これらの学校の教育条件の維持向上及び保護者の経済的負担の軽減を図るため、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国は経常的経費の一部の補助等を行っている。
教育の機会均等の趣旨及び特別支援学校等への就学の特殊事情に鑑み、保護者の経済的負担を軽減し、その就学を奨励するため、就学のために必要な諸経費のうち、教科用図書購入費、交通費、寄宿舎居住に伴う経費、修学旅行費等について、保護者の経済的負担能力に応じて、その全部又は一部を助成する特別支援教育就学奨励費が保護者に支給されている。
学校に在籍する喀痰吸引や経管栄養等の医療的ケアが日常的に必要な児童生徒等(以下「医療的ケア児」という。)は年々増加するとともに、人工呼吸器の管理等の特定行為以外の医療的ケアを必要とする児童生徒等が学校に通うようになるなど、医療的ケア児を取り巻く環境が変わりつつある。このため、特定行為以外の医療的ケアを含め、小・中学校等を含む全ての学校における医療的ケアの基本的な考え方を再度検討し、医療的ケアを実施する際に留意すべき点等について整理するために2017年10月に設置した「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議」において、有識者による議論が行われ、2019年2月に最終まとめが取りまとめられた。
この最終まとめでは、1.医療的ケア児の「教育の場」、2.学校における医療的ケアに関する基本的な考え方、3.教育委員会における管理体制の在り方、4.学校における実施体制の在り方、5.認定特定行為業務従事者が喀痰吸引等の特定行為を実施する上での留意事項、6.特定行為以外の医療的ケアを実施する場合の留意事項、7.医療的ケア児に対する生活援助行為の「医行為」該当性の判断、8.研修機会の提供、9.校外における医療的ケア、10.災害時の対応が示された。
医療の進歩等による入院期間の短期化や、短期間で入退院を繰り返す者、退院後も引き続き治療や生活規制が必要なために学校への通学が困難な者への対応など、病院や自宅等で療養中の病気療養児を取り巻く環境は、近年大きく変化している。こうした状況のもと、病気療養児の教育機会を確保するとともに学習や学校生活に関する不安感を解消し円滑な復学につなげるため、遠隔教育等を活用した取組を進めている。
小・中学校段階については、2018年9月に通知を発出し、受信側において児童生徒の体調管理や緊急時に適切な対応を行うことができる体制を整えるなどの一定の要件の下、受信側に教科等に応じた相当の免許状を有する教師を配置せず、同時双方向型の授業配信(※1)を行った場合、校長は指導要録上出席扱いとすること及びその成果を当該教科等の評価に反映することができることとした。
また、高等学校段階については、一定の要件の下に行われる遠隔教育に加え、通信制課程に準じた特別の教育課程を編成すること(面接指導時間の減免のための遠隔教育・オンデマンド型(※2)の授業を含む)により単位認定をすることができる特例制度や、特別支援学校高等部の訪問教育において、遠隔教育・オンデマンド型の授業により単位認定をすることができることとする制度が設けられている。
さらに、2016年度から2018年度までは「入院児童生徒等への教育保障体制整備事業」を実施し、2019年度からは「高等学校段階における入院生徒に対する教育保障体制整備事業」を実施しており、在籍校・病院・教育委員会等の関係機関が連携して病気療養児を支援する体制の構築方法に関する調査研究を推進している。
引き続きこうした取組を通じて、病気療養児に対する教育の充実を図っていく。
厚生労働省においては、障害のある児童の保育所での受入れを促進するため、1974年度より障害児保育事業において保育所に保育士を加配する事業を実施してきた。
当該事業については、事業開始より相当の年数が経過し、保育所における障害のある児童の受入れが全国的に広く実施されるようになったため、2003年度より一般財源化し、2007年度より地方交付税の算定対象を特別児童扶養手当の対象児童から軽度の障害のある児童に広げる等の拡充をしている。
また、2015年度より施行した子ども・子育て支援新制度においては、 ①障害のある児童等の特別な支援が必要な子供を受け入れ、地域関係機関との連携や、相談対応等を行う場合に、地域の療育支援を補助する者を保育所、幼稚園、認定こども園に配置、 ②新設された地域型保育事業について、障害のある児童を受け入れた場合に特別な支援が必要な児童2人に対し保育士1人の配置を行っている。
さらに、保育現場におけるリーダー的職員を育成するため、2017年度より開始した「保育士等キャリアアップ研修」の研修分野に「障害児保育」を盛り込み、障害児保育を担当する職員の専門性の向上を図っている。
なお、障害児保育の研修分野を含めた保育士等キャリアアップ研修を修了し、リーダー的職員となった者に対して、その取組に応じた人件費の加算を実施している。
加えて、障害児保育に係る地方交付税について、2018年度からは、措置額を約400億円から約880億円に拡充するとともに、障害児保育に係る市町村の財政需要を的確に反映するため、各市町村の保育所等における「実際の受入障害児数」に応じて地方交付税を算定することとした。
このほか、障害のある児童を受け入れるに当たりバリアフリーのための改修等を行う事業を実施している。
共働き家庭など留守家庭の小学生に対して、放課後等に適切な遊びや生活の場を与える放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)においては、療育手帳や身体障害者手帳を所持する児童に限らず、これらの児童と同等の障害を有していると認められる児童も含めて可能な限り障害のある児童の受入れに努めているところである。
障害のある児童の受入れを行っている放課後児童クラブは、年々、着実に増加しており、2018年5月現在で、全25,328クラブのうち約56%に当たる14,149クラブにおいて、39,231人を受け入れている状況である。障害のある児童を受け入れるに当たっては、個々の障害の程度等に応じた適切な対応が必要なことから、障害のある児童を1人以上受け入れている放課後児童クラブに専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費を補助しているところである。
加えて、2017年度からは、消費税財源を活用して、障害のある児童3人以上の受入れを行う場合について、更に1名の専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費の上乗せ補助や医療的ケア児の受入れを行う場合について、看護師等を配置するために必要な経費の補助を行っており、放課後児童クラブの利用を希望する障害のある児童が放課後児童クラブを適切に利用できるよう支援している。
障害のある児童に対しては、できるだけ早期に必要な治療と指導訓練を行うことによって、障害の軽減や基本的な生活能力の向上を図り、将来の社会参加へとつなげていく必要がある。このため、健康診査等により障害の早期発見を図るとともに、適切な療育を実施する体制の整備を図っている。
また、障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律(平成22年法律第71号)の公布に伴う児童福祉法(昭和22年法律第164号)の一部改正等により、障害児支援については、身近な地域で支援を受けられるようにする等のため、従来の障害種別に分かれていた体系について、2012年4月から通所による支援を「障害児通所支援」に、入所による支援を「障害児入所支援」として利用形態の別によりそれぞれ一元化し、障害児支援の強化を図っている。
さらに、学齢期における支援の充実を図るために「放課後等デイサービス」を、保育所等に通う障害のある児童に対して集団生活への適応を支援するために「保育所等訪問支援」を創設した。
また、在宅で生活する重症心身障害児(者)に対し、適切なリハビリテーションや療育を提供し、日中の活動の場を確保するため、「重症心身障害児(者)通園事業」を実施してきたが、児童福祉法の一部改正により、従来、予算事業で実施していた重症心身障害児(者)通園事業については、2012年度から法定化され、安定的な財源措置が講じられることとなった。
2016年5月に改正された児童福祉法により、障害児支援のニーズの多様性にきめ細かく対応して支援の拡充を図るため、重度の障害等により外出が著しく困難な障害のある児童に対し、居宅を訪問して発達支援を提供する「居宅訪問型児童発達支援」を創設した。加えて、保育所等の障害のある児童に発達支援を提供する「保育所等訪問支援」について、訪問先を乳児院及び児童養護施設にも拡大した。
2018年度の障害福祉サービス等報酬改定(以下「報酬改定」という。)において、52人工呼吸器等の使用などの医療的なケアを必要とする児童(以下「医療的ケア児」という。)が必要な支援を受けられるよう、障害児通所支援事業所への看護職員の加配を評価する看護職員加配加算を創設した。
一方、放課後等デイサービスについては、支援の質の向上を図るため、障害児の状態像を勘案した指標を踏まえた報酬区分を設定した。
支援 | 支援の内容 | |
---|---|---|
障害児通所支援 | 児童発達支援 | 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他の必要な支援を行うもの |
医療型児童発達支援 | 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他の必要な支援及び治療を行うもの | |
放課後等デイサービス | 授業の終了後又は学校の休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の必要な支援を行うもの | |
居宅訪問型児童発達支援 | 重度の障害等により外出が著しく困難な障害のある児童の居宅を訪問して発達支援を行うもの | |
保育所等訪問支援 | 保育所、乳児院・児童養護施設等を訪問し、障害のある児童に対して、集団生活への適応のための専門的な支援その他の必要な支援を行うもの | |
障害児入所支援 | 福祉型障害児入所施設 | 施設に入所する障害のある児童に対して、保護、日常生活の指導及び独立自活に必要な知識技能の付与を行うもの |
医療型障害児入所施設 | 施設に入所する障害のある児童に対して、保護、日常生活の指導、独立自活に必要な知識技能の付与及び治療を行うもの |
また、新しい経済政策パッケージ(平成29年12月8日閣議決定)及び経済財政運営と改革の基本方針2018(平成30年6月15日閣議決定)を踏まえ、2018年12月28日に取りまとめられた幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針に沿って、2019年10月以降、就学前の障害児について、満3歳になった後の最初の4月から小学校入学までの3年間を対象に、障害児通所支援・障害児入所支援の利用料を無償化することとしている。
地域で生活する障害のある児童の療育として、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業所において指導訓練等が行われている。
また、児童相談所等における相談支援等の施策により、障害のある児童とその家族への支援を行っている。
2006年4月からは、障害のある児童に対する居宅介護や短期入所などの在宅施策が障害者自立支援法(平成17年法律第123号)(2013年4月から障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。))の障害福祉サービスに位置づけられ、財政的な基盤強化が図られている。
2014年7月には、「障害児支援の在り方に関する検討会」により報告書が取りまとめられ、 ①地域における「縦横連携」を進めるための体制づくり、 ②「縦横連携」によるライフステージごとの個別の支援の充実、 ③特別に配慮された支援が必要な障害のある児童のための医療・福祉の連携、 ④家族支援の充実、 ⑤個々のサービスの質のさらなる確保が提言された。これらを踏まえ、地域の中核となる児童発達支援センターの地域支援機能を強化するとともに、532015年度の報酬改定において関係機関連携加算の創設等の対応を行っている。2015年4月には、放課後等デイサービスについて、支援の提供や事業運営に当たっての基本的事項を定めた「放課後等デイサービスガイドライン」を発出し、放課後等デイサービスの支援の質の向上を図っている。
2016年5月に改正された児童福祉法により、医療的ケア児が適切な支援を受けられるよう、地方公共団体において、保健、医療、福祉等の連携促進を図ることが努力義務とされた。併せて、障害児支援の提供体制の計画的な構築を図るため、地方公共団体において、「障害児福祉計画」を策定することが義務付けられた。
2017年7月には「児童発達支援ガイドライン」を発出し、提供すべき支援の内容や運営に関する基本事項を示すことにより、支援の質の向上を図っている。関係機関と連携を図り、円滑な児童発達支援の利用と適切な移行を図ることとしている。
これらにより、障害のある児童が、できるだけ身近な場所で適切な療育を受けられる体制の整備を図っている。
さらに2018年度からは、外部の看護職員が事業所を訪問し、障害のある児童に対して長時間の支援を行った場合等について新たに報酬上評価するなど、医療的ケア児に対する支援を拡充している。
厚生労働省では、地域で医療的ケアが必要な子供と家族を支える取組について、報告書をとりまとめた(2018年12月)。
本報告書では、身体に気管切開部がある、人工呼吸器を装着しているなど日常生活を送る上で医療的なケアを必要とする子供とケアを担う家族を支える障害福祉サービス等を実施する3つの法人(茨城県古河市にある一般社団法人Burano、千葉県白井市にある社会福祉法人フラット、熊本県合志市にある認定特定非営利活動法人NEXTEP)のサービス内容、子供と家族がサービスを利用して生活する事例、家族の小児看護師のインタビューを掲載している。
医療的ケア児は、日常生活を送る上で医療的なケアと医療機器を必要とする子供であるが、医療機器をつけているため、同年代の友達との交流や社会とのつながりが制限されてしまう場合がある。
医療的ケア児とその家族への支援は、医療、福祉、教育等幅広く、各分野のサービス調整のコーディネートを行う人材や必要なサービスを提供できる事業所等が未だ十分とは言えない現状である。厚生労働省としては、本報告書を地方自治体等に周知するとともに、地域で医療的ケア児等とその家族が安心して暮らせるよう体制の整備を進めていく。
障害のある人が、生涯にわたって自立し社会参加していくためには、企業等への就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要である。しかしながら、2018年5月1日現在、特別支援学校高等部卒業者の進路を見ると、福祉施設等入所者の割合が約61%に達する一方で、就職者の割合は約31%となっており、職業自立を図る上で厳しい状況が続いている。
障害のある人の就労を促進するためには、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を講じる必要がある。
このため、文部科学省では、厚生労働省と連携し、各都道府県教育委員会等に対し、就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用することや、福祉関係機関と連携の下で就労への円滑な移行を図ることなど障害のある生徒の就労を支援するための取組の充実を促している。
障害のある人が障害を理由に高等教育への進学を断念することがないよう、修学機会を確保することが重要である。このため、文部科学省では、出願資格について、必要に応じて改善することや、合理的配慮を行い、障害のない学生と公平に試験を受けられるように配慮することなど、適切な対応を求めている。
2016年度には「障害のある学生の修学支援に関する検討会」を開催し、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)の施行を踏まえた高等教育段階における障害のある学生の修学支援の在り方について検討を行い、その結果を2017年3月に「第二次まとめ」として取りまとめ、関係者の理解促進や取組の充実を促している。大学等に在籍する障害のある学生数は年々増加をしており、各校における体制整備等も進んできているところ、現場に個別に蓄積されてきた知見や支援手法等を共有することにより支援の一層の充実を図るため、大学等の関係機関の連携ネットワークの構築を推進している。また、独立行政法人日本学生支援機構においては、大学等における障害学生支援の充実に資するよう、全国の大学等における障害学生の状況及びその支援状況について把握・分析するための実態調査、各大学等が適切な対応を行うために参考にできる事例集の作成、理解・啓発促進を目的としたセミナーや実務者育成のための研修会の開催などの取組を行っている。
大学入試センター試験や各大学の個別試験において、点字・拡大文字(大学入試センター試験においては、障害のある入学志願者によりきめ細やかに配慮する観点から、拡大文字問題冊子について、14ポイント版に加え、22ポイント版も作成)による出題、筆跡を触って確認できるレーズライター(ビニール製の作図用紙の表面にボールペンで描いた図形や文字がそのままの形で浮き上がるため、描きながら解答者が筆跡を触って確認できる器具)による解答、文字解答・チェック解答(専用の解答用紙に選択肢の数字等を記入・チェックする解答方式)、パソコンの利用、試験時間の延長、代筆解答等の受験上の配慮を実施している。
学校施設については、障害のある人の円滑な利用に配慮するため、従来よりエレベーターやスロープなどのバリアフリー化に関する施設整備を進めるとともに、支障なく学生生活を送れるよう、各大学等において授業支援等の教育上の配慮が行われている。
聴覚障害のある人及び視覚障害のある人のための高等教育機関である筑波技術大学は、障害を補償した教育を通じて、 ①幅広い教養と専門的な職業能力を合わせもつ専門職業人、率先して社会に貢献できる人材の育成、 ②障害教育カリキュラム及び障害補償システムの開発研究等を行っている。
テレビ・ラジオ放送等のメディアを効果的に活用して、遠隔教育を行っている放送大学では、自宅で授業を受けることができ、障害のある人を含め広く大学教育を受ける機会を国民に提供しており、障害のある学生に対しては、放送授業の字幕放送化の推進や単位認定試験における点字出題や音声出題、試験時間の延長等を行っている。
障害のある子供の学校外活動や学校教育終了後における活動等を支援するためには、地域における学習機会の確保・充実を図るとともに、障害のある人が地域の人々と共に、地域における学習活動に参加しやすいように配慮を行う必要がある。
文部科学省では、公民館や図書館、博物館といった社会教育施設について、それぞれの施設に関する望ましい基準を定めるなど、障害の有無にかかわらず、全ての人々にとって利用しやすい施設となるよう促している。
障害のある人が、生涯にわたり自らの可能性を追求できる環境を整え、地域の一員として豊かな人生を送ることができるようにすることが重要である。2018年3月に閣議決定された第4次障害者基本計画及び同年6月に閣議決定された第3期教育振興基本計画においても、障害者の生涯学習について明記された。
両計画に記載したとおり、文部科学省では、2018年度より「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」として、学校から社会への移行期や人生の各ステージにおける効果的な学習プログラムや実施体制、関係機関・団体等との連携等に関する実践研究や、障害のある人が一般の生涯学習活動に参加する際の阻害要因や促進要因を把握・分析する調査研究を行っており、研究成果を順次普及することとしている。
また、障害のある人の生涯を通じた多様な学習を支える活動を行う個人又は団体に対し、その功績をたたえる文部科学大臣表彰として、67件の対象者を決定し、2018年12月には表彰式と事例発表会を開催した。さらに、同年11月には、障害の有無にかかわらずともに学び、生きる共生社会の実現に向けた啓発として、「超福祉の学校~障害をこえてともに学び、つくる共生社会フォーラム~」を、特定非営利活動法人ピープルデザイン研究所との共催で渋谷区にて開催した。
その他、「学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議」において、概ね一年間にわたり障害者の生涯学習の推進方策について検討を行い、2019年3月には「障害者の生涯学習の推進方策について―誰もが、障害の有無にかかわらず共に学び、生きる共生社会を目指して―」(学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議報告)をとりまとめた。
今後も、教育、スポーツ、文化芸術の施策全体にわたり、障害のある人の生涯を通じた多様な学びを支援するため、横断的・総合的に取組を推進していく。
文部科学省においては、これまで特別支援教育をはじめとした様々な障害者施策を通じて、障害者基本法の理念である「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会」の実現に向けた取組を推進してきた。
こうした取組を加速し、より積極的に障害者の活躍の場の拡大を図るため、2019年1月に、浮島文部科学副大臣のもとに省内の関係課で構成される「障害者活躍推進チーム」を設置し、横断的・総合的に検討を進めてきた。
検討の結果、学校教育、生涯学習、スポーツ、文化芸術の各分野において、より重点的に進めるべき6つの政策プランを「文部科学省 障害者活躍推進プラン」としてとりまとめた。
障害者がその個性や能力を生かして活躍することで、我が国の未来を切り開く力となるよう、本プランに掲げた施策を着実に推進していく。
障害のある人の就労意欲が高まっている中で、障害のある人が、希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍できることが普通の社会、障害のある人と共に働くことが当たり前の社会の実現に向けて、障害者雇用対策の一層の充実を図っていく必要がある。
対象障害者を1人以上雇用する義務がある民間企業(常用雇用労働者数45.5人以上)については、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告することになっている。2018年の報告結果は次のとおりである。
なお、障害者雇用状況報告では、重度身体障害者又は重度知的障害者については、その1人の雇用をもって、2人の身体障害者又は知的障害者を雇用しているものとしてカウントされる。
また、重度身体障害者又は重度知的障害者である短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者)については、1人分として、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については、0.5人分としてカウントされる。
ただし、精神障害者である短時間労働者については、雇入れや精神障害者保健福祉手帳を取得してから3年以内の場合、1人分としてカウントされる。
2018年6月1日現在の障害者雇用状況は、雇用障害者数が15年連続で過去最高を更新し、534,769.5人(前年同日495,795.0人)となるなど、一層進展している。また、障害者である労働者の実数は437,532人(前年同日406,981人)となった。雇用者のうち身体障害者は346,208.0人(前年同日333,454.0人)、知的障害者は121,166.5人(前年同日112,293.5人)、精神障害者は67,395.0人(前年同日50,047.5人)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きかった。
また、民間企業が雇用している障害者の割合は2.05%(前年同日1.97%)であった。
企業規模別に割合をみると、45.5~100人未満規模で1.68%、100~300人未満規模で1.91%、300~500人未満規模で1.90%、500~1,000人未満規模で2.05%、1,000人以上規模で2.25%となった。
一方、法定雇用率を達成した企業の割合は、45.9%となった。なお、雇用されている障害者数については、全ての企業規模で前年の報告より増加した。
区分 | ①企業数 | ② 法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 | ③ 障害者の数 | ④実雇用率E÷ ②×100 | ⑤法定雇用率達成企業の数 | ⑥法定雇用率達成企業の割合 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A.重度身体障害者及び重度知的障害者 | B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 | C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 | D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 | E.計A×2+B+C+D×0.5 | |||||||
F.うち新規雇用分 | |||||||||||
規模計 | 企業 100,586 (91,024)
| 人 26,104,834.5 (25,204,720.0)
| 人 117,892 (112,860)
| 人 16,026 (14,842)
| 人 262,305 (231,187)
| 人 41,309 (48,092)
| 人 534,769.5 (495,795.0)
| 人 60,491.5 (50,940.0)
| % 2.05 (1.97)
| 企業 46,218 (45,553)
| % 45.9 (50.0)
|
45.5~100人未満 | 企業 49,370 (40,842)
| 人 3,275,003.0 (2,850,910.0)
| 人 9,985 (8,717)
| 人 2,864 (2,466)
| 人 28,006 (21,274)
| 人 8,174 (9,031)
| 人 54,927.0 (45,689.5)
| 人 6,838.0 (5,306.5)
| % 1.68 (1.60)
| 企業 21,795 (18,983)
| % 44.1 (46.5)
|
100~300人未満 | 36,173
(35,359)
| 5,582,387.5
(5,463,540.5)
| 21,207
(20,523)
| 4,496
(4,202)
| 54,188
(47,247)
| 10,847
(13,066)
| 106,521.5
(99,028.0)
| 13,696.5
(12,183.5)
| 1.91
(1.81)
| 18,127
(19,112)
| 50.1
(54.1)
|
300~500人未満 | 6,965
(6,881)
| 2,469,779.5
(2,437,935.5)
| 10,226
(9,867)
| 1,538
(1,499)
| 23,052
(21,096)
| 3,670
(4,306)
| 46,877.0
(44,482.0)
| 5,307.5
(4,504.0)
| 1.90
(1.82)
| 2,795
(3,154)
| 40.1
(45.8)
|
500~1,000人未満 | 4,720
(4,639)
| 3,036,954.5
(2,988,052.5)
| 13,852
(13,615)
| 1,792
(1,676)
| 30,719
(27,385)
| 4,386
(5,242)
| 62,408.0
(58,912.0)
| 7,339.5
(6,166.0)
| 2.05
(1.97)
| 1,895
(2,256)
| 40.1
(48.6)
|
1,000人以上 | 3,358
(3,303)
| 11,740,710.0
(11,464,281.5)
| 62,622
(60,138)
| 5,336
(4,999)
| 126,340
(114,185)
| 14,232
(16,447)
| 264,036.0
(247,683.5)
| 27,310.0
(22,780.0)
| 2.25
(2.16)
| 1,606
(2,048)
| 47.8
(62.0)
|
国の機関(法定雇用率2.5%)に在職している障害者の割合、勤務している障害者数はそれぞれ1.22%、3,902.5人であった。
また、都道府県の機関(法定雇用率2.5%)は2.44%、8,244.5人であり、市町村の機関(法定雇用率2.5%)は2.38%、27,145.5人であった。
さらに、都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.4%)は1.90%、12,607.5人であった。
①法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ②障害者の数 | ③実雇用率 | ④法定雇用率達成機関の数/機関数 | ⑤達成割合 | |
---|---|---|---|---|---|
国の機関 | 320,654.0人
(318,467.0人)
| 3,902.5人
(3,711.0人)
| 1.22%
(1.17%)
| 8/43
(8/43)
| 18.6%
(18.6%)
|
都道府県の機関 | 337,872.0人
(336,880.0人)
| 8,244.5人
(7,951.5人)
| 2.44%
(2.36%)
| 99/161
(108/158)
| 61.5%
(68.4%)
|
市町村の機関 | 1,140,348.5人
(1,130,049.5人)
| 27,145.5人
(25,859.0人)
| 2.38%
(2.29%)
| 1,718/2,470
(1,838/2,367)
| 69.6%
(77.7%)
|
①法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ②障害者の数 | ③実雇用率 | ④法定雇用率達成機関の数/機関数 | ⑤達成割合 | |
---|---|---|---|---|---|
都道府県等教育委員会 | 662,641.5人
(668,289.5人)
| 12,607.5人
(12,337.5人)
| 1.90%
(1.85%)
| 39/100
(66/115)
| 39.0%
(57.4%)
|
①法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ②障害者の数 | ③実雇用率 | ④不足数 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
国の機関合計 | 320,654.0 | 3,902.5 | 1.22 | 4,273.5 | |
行政機関合計 | 291,986.0 | 3,620.0 | 1.24 | 3,875.0 | |
内閣官房 | 1,425.0 | 7.0 | 0.49 | 28.0 | |
内閣法制局 | 78.0 | 1.0 | 1.28 | 0.0 | |
内閣府 | 3,274.5 | 34.0 | 1.04 | 47.0 | |
宮内庁 | 941.5 | 9.0 | 0.96 | 14.0 | |
公正取引委員会 | 923.5 | 20.0 | 2.17 | 3.0 | |
警察庁 | 2,183.0 | 54.0 | 2.47 | 0.0 | |
金融庁 | 1,684.5 | 32.0 | 1.90 | 10.0 | |
消費者庁 | 455.5 | 0.5 | 0.11 | 10.5 | |
個人情報保護委員会 | 123.5 | 4.0 | 3.24 | 0.0 | |
復興庁 | 233.0 | 0.0 | 0.00 | 5.0 | |
総務省 | 5,247.5 | 51.0 | 0.97 | 80.0 | 特例承認あり(注4) |
法務省 | 33,600.0 | 265.5 | 0.79 | 574.5 | |
公安調査庁 | 1,596.0 | 8.0 | 0.50 | 31.0 | |
外務省 | 6,425.0 | 22.0 | 0.34 | 138.0 | |
財務省 | 11,992.0 | 142.0 | 1.18 | 157.0 | |
国税庁 | 58,488.5 | 393.5 | 0.67 | 1,068.5 | |
文部科学省 | 2,788.0 | 22.0 | 0.79 | 47.0 | 特例承認あり(注4) |
厚生労働省 | 53,015.5 | 1,531.0 | 2.89 | 0.0 | |
農林水産省 | 15,798.0 | 181.5 | 1.15 | 212.5 | |
林野庁 | 4,852.0 | 76.5 | 1.58 | 44.5 | |
水産庁 | 720.0 | 6.0 | 0.83 | 12.0 | |
経済産業省 | 6,441.0 | 57.5 | 0.89 | 103.5 | 特例承認あり(注4) |
特許庁 | 3,353.5 | 19.0 | 0.57 | 64.0 | |
国土交通省 | 40,968.5 | 310.5 | 0.76 | 713.5 | |
観光庁 | 240.5 | 0.0 | 0.00 | 6.0 | |
気象庁 | 4,776.0 | 65.0 | 1.36 | 54.0 | |
海上保安庁 | 173.0 | 5.0 | 2.89 | 0.0 | |
運輸安全委員会 | 193.5 | 0.0 | 0.00 | 4.0 | 注5 |
環境省 | 2,722.5 | 15.0 | 0.55 | 53.0 | |
原子力規制委員会 | 1,154.0 | 31.0 | 2.69 | 0.0 | |
防衛省 | 22,661.0 | 215.5 | 0.95 | 350.5 | |
防衛装備庁 | 1,510.0 | 8.0 | 0.53 | 29.0 | |
人事院 | 662.5 | 6.0 | 0.91 | 10.0 | |
会計検査院 | 1,285.5 | 27.0 | 2.10 | 5.0 | |
立法機関合計 | 3,655.0 | 37.5 | 1.03 | 51.5 | |
衆議院事務局 | 1,456.5 | 20.5 | 1.41 | 15.5 | |
衆議院法制局 | 86.5 | 2.0 | 2.31 | 0.0 | |
参議院事務局 | 1,103.5 | 6.0 | 0.54 | 21.0 | |
参議院法制局 | 72.0 | 1.0 | 1.39 | 0.0 | |
国立国会図書館 | 936.5 | 8.0 | 0.85 | 15.0 | |
司法機関合計 | 25,013.0 | 245.0 | 0.98 | 347.0 | |
最高裁判所 | 1,011.0 | 5.0 | 0.49 | 20.0 | |
高等裁判所 | 1,742.0 | 18.0 | 1.03 | 24.0 | |
地方裁判所 | 15,904.0 | 175.0 | 1.10 | 205.0 | |
家庭裁判所 | 6,356.0 | 47.0 | 0.74 | 98.0 |
省庁 | 総務省 | 文部科学省 | 経済産業省 |
外局等 | 消防庁 | 文化庁、スポーツ庁 | 中小企業庁、資源エネルギー庁 |
2017年度のハローワークを通じた就職件数は、2016年度を上回る97,814件(前年度比4.9%増)であった。このうち、身体に障害のある人は26,756件(前年度比0.7%減)、知的障害のある人は20,987件(前年度比3.2%増)、精神障害のある人は45,064件(前年度比8.9%増)、その他の障害のある人(発達障害、難病、高次脳機能障害などのある人)は5,007件(前年度比9.3%増)となり、精神障害のある人の就職件数が大幅に増加した。
また、新規求職申込件数は202,143件(前年度比5.4%増)となり、このうち、身体に障害のある人は60,533件(前年度比0.2%減)、知的障害のある人は35,742件(前年度比4.4%増)、精神障害のある人は93,701件(前年度比9.0%増)、その他の障害のある人は12,167件(前年度比10.2%増)であり、前年度同様に精神障害のある人やその他の障害のある人の申込件数が大きく増加していることがわかる。
①新規求職申込件数 | ②有効求職者数 | ③就職件数 | ④就職率( ③/ ①) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
前年度比 | 前年度比 | 前年度比 | 前年度差 | |||||
2008年度 | 119,765 | 11.0 | 143,533 | 1.9 | 44,463 | △2.4 | 37.1 | △5.1 |
2009年度 | 125,888 | 5.1 | 157,892 | 10.0 | 45,257 | 1.8 | 36.0 | △1.1 |
2010年度 | 132,734 | 5.4 | 169,116 | 7.1 | 52,931 | 17.0 | 39.9 | 3.9 |
2011年度 | 148,358 | 11.8 | 182,535 | 7.9 | 59,367 | 12.2 | 40.0 | 0.1 |
2012年度 | 161,941 | 9.2 | 198,755 | 8.9 | 68,321 | 15.1 | 42.2 | 2.2 |
2013年度 | 169,522 | 4.7 | 207,956 | 4.6 | 77,883 | 14.0 | 45.9 | 3.7 |
2014年度 | 179,222 | 5.7 | 218,913 | 5.3 | 84,602 | 8.6 | 47.2 | 1.3 |
2015年度 | 187,198 | 4.5 | 231,066 | 5.6 | 90,191 | 6.6 | 48.2 | 1.0 |
2016年度 | 191,853 | 2.5 | 240,744 | 4.2 | 93,229 | 3.4 | 48.6 | 0.4 |
2017年度 | 202,143 | 5.4 | 255,612 | 6.2 | 97,814 | 4.9 | 48.4 | △0.2 |
就職件数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
障害者計 | 身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | その他 | |||
うち重度 | うち重度 | ||||||
2017年度 | 97,814 | 26,756 | 11,051 | 20,987 | 4,330 | 45,064 | 5,007 |
新規求職申込件数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
障害者計 | 身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | その他 | |||
うち重度 | うち重度 | ||||||
2017年度 | 202,143 | 60,533 | 26,190 | 35,742 | 5,027 | 93,701 | 12,167 |
障害者施策の基本理念である、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のためには、職業を通じた社会参加が重要である。この考え方の下に障害のある人の雇用対策の各施策を推進している。
具体的には、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)(以下「障害者雇用促進法」という。)や同法に基づく障害者雇用対策基本方針(平成30年厚生労働省告示第178号)等を踏まえ、障害のある人、一人一人がその能力を最大限発揮して働くことができるよう、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を講じている。
障害者雇用促進法では、民間企業等に対し、一定の割合(障害者雇用率)以上の障害のある人の雇用を義務づけている。障害者雇用率は、企業の社会連帯の理念に基づき、身体障害者、知的障害者又は精神障害者に一般労働者と同じ水準の雇用の場を、各事業者の平等な負担の下に確保することを目的として設定している。1960年の制度創設時、民間企業の障害者雇用率は努力義務として事務的事業所1.3%、現場的事業所1.1%であった。その後、1976年に障害者雇用率制度を義務化し、1988年、1998年、2013年及び2018年に障害者雇用率を改正している。2018年4月からは、新たに精神障害者が雇用義務の対象となり、これを踏まえて、障害者雇用率が算定されることに伴い、民間企業の障害者雇用率は2.2%となった(2021年4月までに、さらに0.1%引き上げが行われる)。なお、国等の公的機関については、率先垂範すべき立場にあることから、民間企業を上回る2.5%(都道府県等の教育委員会は2.4%)としている(民間企業と同様に、2021年4月までに、さらに0.1%引き上げが行われる)。
事業主が障害のある人の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)を設立した場合には、一定の要件の下でこの特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されている者とみなして、雇用している障害者の割合(以下「実雇用率」という。)を算定できる特例措置(特例子会社制度)を設けている。特例子会社制度は、障害のある人の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより障害のある人の能力を十分に引き出すことができるなど、事業主及び障害のある人双方にメリットがあると考えられる。2018年6月1日現在で486社を特例子会社として認定している。
また、特例子会社を持つ親会社については、関係する他の子会社も含め、企業グループ全体での実雇用率の算定を可能としている。
さらに、特例子会社がない場合も、一定の要件を満たす企業グループとして認定を受けたものについては、企業グループ全体で実雇用率を通算できる「企業グループ算定特例」を設けている。
障害者雇用率制度の履行を確保するため、ハローワークにおいて、法定雇用率未達成企業に対する指導を行っている。
実雇用率の著しく低い民間企業に対しては、ハローワークが障害のある人の雇入れに関する2年間(2012年以降。それ以前は3年間)の計画の作成を命じ、66当該計画に基づいて障害のある人の雇用を進めるよう継続的な指導を実施している。また、雇入れ計画を作成したものの、障害のある人の雇用が進んでいない企業に対しては、雇入れ計画の適正な実施に関する勧告を行い、一連の指導にもかかわらず改善がみられない企業については、企業名を公表している。
雇入れ計画を作成していた企業のうち、計画終期で一定の改善が見られなかった企業に対し企業名公表を前提とした特別指導を行っている。
国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先垂範して障害のある人の雇入れを行うべき立場にあり、全ての公的機関における毎年6月1日現在の雇用状況を発表している。また、未達成である機関については、障害のある人の採用に関する計画を作成しなければならず、その計画が適正に実施されていない場合には、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画が適正に実施されるよう勧告を行っている。
国及び地方公共団体の機関(法律の規定としては任命権者)は、毎年、6月1日現在の障害のある職員の任免に関する状況を、厚生労働大臣に対して通報しなければならないものとされている。この通報に基づいて集計された、2017年6月1日現在の障害のある職員の任免に関する状況については、民間企業における障害のある人の雇用の状況と併せ、「平成29年障害者雇用状況の集計結果」として、2017年12月12日に公表していた。
2017年に厚生労働省が各機関から通報を受け、同年12月までに集計し公表した際には、国の行政機関においては、全体で、障害のある職員の数は6,867.5人、実雇用率は2.49%に達し、各機関ごとにみても、33機関中1機関を除いて法定雇用率を達成しているものとされていた。さらに、未達成であった1機関についても2017年度末までに達成に至ったことが報告されていた。
2018年5月以降、各機関からの通報について、障害のある人の範囲の確認が適切に実施されていない疑いが生じたことから、同年6月20日に、厚生労働省から各機関に対し、2017年6月1日現在の状況の通報内容に関して、通報の対象となる障害のある人の範囲について再点検を行うよう依頼し、改めて提出された通報について取りまとめ、同年8月28日に公表した(9月21日及び10月22日当該再点検結果の訂正を公表)。
再点検の結果、2017年12月に公表された数値と比較すると、国の行政機関全体として、障害のある職員の数が3,445.5人減少して3,422.0人、2.49%であった実雇用率が1.18%となった。また、各機関の、法定雇用率を達成するために必要な障害のある職員の不足数の合計は、2.0人から3,478.5人に拡大した。法定雇用率を達成していない機関は、1機関から28機関となった。
なお、立法機関及び司法機関、地方公共団体、さらには独立行政法人等においても、2017年6月1日現在の障害のある職員の任免に関する状況の通報内容について再点検が行われ、それぞれ結果を公表している。
このように、多数の国の機関と地方公共団体で法定雇用率を達成していない状況であったことが明らかになったことから、政府においては、政府一体として今般の事態に対応するため、2018年8月28日、「公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議」(議長:内閣官房長官)を設置することとした。
閣僚会議の下に「公務部門における障害者雇用に関する関係府省連絡会議」(議長:厚生労働大臣)を設置し、以下の事項について検討を進めてきた。
・今般の事態の検証とチェック機能の強化
・法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取組
・国・地方公共団体における障害者の活躍の場の拡大
・公務員の任用面での対応
また、事案の実態や原因を明らかにするため、2018年9月7日、連絡会議の下に、弁護士や行政監察、障害者施策に関する有識者等の第三者によって構成される「国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会」(委員長:松井巖氏(弁護士、元福岡高検検事長))を設置し、検証を行った。
同検証委員会は、2017年6月1日現在の障害者任免状況通報において不適切に障害のある人として計上された3,700人全てについて、書面(調査票)による調査を行うとともに、33の国の行政機関の人事担当課及び障害者雇用促進制度を所管する厚生労働省(職業安定局)に対してヒアリング調査を行い、2018年10月22日に調査結果を関係府省連絡会議に報告した。
検証委員会の報告書においては、厚生労働省(職業安定局)の問題と各行政機関側の問題とがあいまって、大規模な不適切計上が長年にわたって継続するに至ったものと言わざるを得ないと指摘されている。
厚生労働省(職業安定局)の問題として、国の行政機関における障害のある人の雇用の実態に対する関心の低さが根本的な問題であり、民間事業主に対する指導に重点が置かれ、国の行政機関で適切に対象となる障害のある人が雇用されているかの実態把握の努力をしなかったこと、制度改正等を踏まえた障害のある人の範囲や確認方法等についての周知等に不手際があったことなどが指摘されている。
他方、各行政機関側における今般の事案の基本的な構図として、組織として障害のある人の雇用に対する意識が低く、ガバナンスが著しく欠如している中で、担当者が法定雇用率を達成させようとするあまり、恣意的に解釈された基準により、例えば既存職員の中から対象となる障害のある人を選定する等の不適切な実務慣行を継続させてきたことにあるとの心証を強く形成するに至った旨が明記されている。
検証委員会における検証を行う一方で、関係府省連絡会議においては、公務部門における障害のある人の活躍の場の拡大に向け、障害者団体等からのヒアリングを行い、また、障害のある人の代表や労働者代表・使用者代表も参画する労働政策審議会障害者雇用分科会においても、事態についての審議を行った。それらの議論や検証委員会における検証も踏まえ、閣僚会議として、2018年10月23日、公務部門における障害者雇用に関する基本方針を策定し、公表した。
この基本方針においては、政府としての今後の取組について、以下の( ⅰ)~( ⅴ)のとおりとされている。また、その取組状況について、閣僚会議等政府一体となって推進する体制の下でフォローアップを行うこととされている。
( ⅰ)今般の事態の検証とチェック機能の強化
◯今般の事態の検証
「国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会」による検証結果について、真摯に受け止め、今般の事態について深く反省し、再発防止に向けて必要な対策を講じていく。
◯再発防止のための対策
・厚生労働省における取組として、
①各府省向けに手引きを作成し、障害者の任用状況に関する通報等の実務や再発防止のための取組に係る留意事項を示す
②各府省に対する説明会を毎年実施する
③通報に関する「チェックシート」を各府省に配布し、各府省によるチェック状況を確認する
などを実施していく。
・また、各府省においては
①府省全体で障害者雇用を推進していくための体制を構築し、取組状況のフォローアップを実施
②厚生労働省の示す手引きに従って、通報対象となる障害者の名簿を作成し、関係書類を保存
③実地確認・ヒアリングによる内部点検の実施や、複数の職員によるチェック等の体制強化
などを実施していく。
( ⅱ)法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取組
◯法定雇用率を達成していない府省においては、2019年末までの障害者採用計画を策定するとともに、障害者雇用を推進していくために必要な府省内の体制整備、採用活動及び職場定着等に関する具体的な計画を策定する。
◯厚生労働省においても、
・障害者雇用に精通したアドバイザーを選任し、各府省が専門的な助言を受けることができる体制の整備
・ハローワークにおける積極的な職業紹介
などにより各府省の取組を最大限支援していく。
( ⅲ)国・地方公共団体における障害者の活躍の場の拡大
◯障害者が活躍しやすい職場づくりの推進として、
・障害者雇用の推進に関する実務責任者の配置
・働く障害者向けの相談窓口の配置
・個々の障害者のサポートをする支援者の配置
・障害者の作業環境を整えるための機器の導入・設備改善
・早出遅出勤務の特例の設定、フレックスタイム制の柔軟化、休憩時間の弾力的な設定
などにより、必要な職場環境の整備を行う。
( ⅳ)公務員の任用面での対応等
〇障害者が希望や能力に応じて公務部門で働くことができるよう、任用面での対応として、
・障害者を対象とした新たな常勤採用の枠組みの導入
・非常勤職員として勤務した後、選考を経て常勤職員となることを可能とするステップアップの枠組みの導入
・非常勤職員の雇用の安定確保等に関する運用指針の策定
などの対応を講じる。
( ⅴ)今後に向けて
基本方針に基づく取組状況については、閣僚会議等政府一体となって推進する体制の下においてフォローアップを行い、今般の事態の再発防止及び障害者の活躍の場の拡大に向けた取組を着実に推進していく。
基本方針に基づき、再発防止はもとより、法定雇用率の速やかな達成と、障害のある人が活躍できる場の拡大に向け、政府一体となって取り組んできた。
また、基本方針においては、国の行政機関等における障害のある人の任免状況に関する、厚生労働大臣によるチェック機能の強化について、法的整備を視野に入れた検討を行うこととされており、このため、障害のある人の団体も参画する労働政策審議会障害者雇用分科会において、今後の障害のある人の雇用対策の在り方について検討を進め、2019年2月に民間企業における障害のある人の雇用の一層の促進に関する措置も含めた意見書をとりまとめた。そして、意見書を踏まえて、2019年3月19日に、障害のある人の活躍の場の拡大に関する措置や国及び地方公共団体における障害者の雇用状況についての的確な把握等に関する措置を講ずることを内容とする障害者雇用促進法の改正法案を第198回国会に提出した。
加えて、公務部門における障害のある人の雇用の取組が、名実ともに民間企業に率先するものとなるよう、改正法案の国会への提出と併せて、2019年3月19日の閣僚会議において、公務部門において障害のある人の雇用を推進するために必要となる政府としての取組をとりまとめた。その内容は、 ①障害者の採用・定着支援等、 ②対象障害者の不適切計上に対する是正のための勧告、 ③各府省等の障害者雇用に係る責任体制の明確化、 ④各府省等の法定雇用率未達成の場合の予算面での対応についてである。
さらに、公務部門における対応に留まらず、社会全体として、障害のある人が希望や能力を活かして活躍できることが極めて重要である。そのために、障害者雇用率制度の実績に直接反映される雇用の量的側面だけではなく、「希望や特性に応じて、安心して、安定的に働き続けることができる」といった意味での「雇用の質」にも着目しつつ、障害のある人の雇用の促進に着実に取り組むとともに、障害のある人の職業的自立を支援する施策全般において、今後さらなる充実を図っていく (この他、障害のある人の職業的自立を支援するための総合的支援施策の推進については、「2.総合的支援施策の推進」参照。)。
障害のある人も含めて、誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を創り上げることが重要であり、これまで、障害のある人の雇用促進は、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)(以下「障害者雇用促進法」という。)に基づき対策の充実が図られてきた。
障害者雇用促進法の下、国及び地方公共団体の機関も事業主として、障害のある人の雇用の確保や安定を図る責務を有しており、同法に基づき、各機関は、毎年、6月1日現在の障害のある職員の任免に関する状況を、厚生労働大臣に対して通報している。
2018年5月以降、各機関からの通報について、障害のある人の範囲の確認が適切に実施されていない疑いが生じたことから、厚生労働省において再点検を行ったところ、法定雇用率を満たしているとされていた多くの機関において、法定雇用率を満たしていなかったことが明らかとなった(国の行政機関については2018年8月28日に再点検結果を公表)。
このため、政府においては、2018年8月28日「公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議」(議長:内閣官房長官)を設置するとともに、その下に「公務部門における障害者雇用に関する関係府省連絡会議」(議長:厚生労働大臣)を設置し、政府一体となって今般の事態を受けた取組を検討してきた。
また、事案の実態や原因を明らかにするために、連絡会議の下に、弁護士や行政監察、障害者施策に関する有識者等の第三者から構成される「国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会」(委員長:松井巖氏(弁護士、元福岡高検検事長))を設置し、検証を行った。
このほか、連絡会議において公務部門における障害のある人の活躍の場の拡大に向けた障害者団体等からのヒアリングを行うなどし、それらの議論や検証委員会における検証も踏まえ、閣僚会議として、2018年10月23日、公務部門における障害者雇用に関する基本方針を策定し、公表した。
基本方針においては、 ①今般の事態の検証とチェック機能の強化、 ②法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取組、 ③国・地方公共団体における障害者の活躍の場の拡大、 ④公務員の任用面での対応等について、政府としての今後の取組をまとめるとともに、その取組状況について、閣僚会議等政府一体となって推進する体制の下でフォローアップを行うこととされている。基本方針に基づき、再発防止はもとより、法定雇用率の速やかな達成と、障害のある人が活躍できる場の拡大に向け、政府一体となって取り組んできた。
また、基本方針において、厚生労働大臣による国の行政機関等における障害のある人の任免状況に関するチェック機能の強化について、法的整備を視野に入れた検討を行うこととされていることも踏まえ、国及び地方公共団体における障害のある人の雇用状況についての的確な把握等を行うための措置を講ずること等を内容とする障害者雇用促進法の改正法案を第198回国会に提出した。
加えて、公務部門における障害者雇用の取組が、名実ともに民間企業に率先するものとなるよう、改正法案の国会への提出と併せて、2019年3月19日の閣僚会議において、公務部門において障害のある人の雇用を推進するために必要となる政府としての取組をとりまとめた。
こうした取組を通じ、障害のある人の就職促進、職場定着などを官民問わず進展させ、障害のある人が希望や能力を活かして活躍できる場を拡大していく。
障害者の雇用を一層促進するため、事業主に対する短時間労働以外の労働が困難な状況にある障害者の雇入れ及び継続雇用の支援、国及び地方公共団体における障害者の雇用状況についての的確な把握等に関する措置を講ずる。
国・地方公共団体
| 民間
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現状 | 障害者の任免状況について、再点検結果を公表(H30.8)
![]() 多くの機関において、対象障害者の不適切な計上があり、法定雇用率を達成していない状態であることが明らかになった。 [再点検前
⇒再点検後]
※法定雇用率 2.3%(H30.4~2.5%)
(ただし、都道府県等の教育委員会は2.2%(H30.4~2.4%))
関係閣僚会議で「基本方針」を決定し、取組を開始(H30.10)
※同方針において、引き続き、法的整備を視野に入れた検討を行う旨を表明
| 企業努力の積み重ねにより、障害者雇用は着実に進展
精神障害者や中小事業主における障害者雇用に課題
| |||||||||||
課題 | 対象障害者の不適切計上の再発防止 | 精神障害者や重度障害者を含めた、障害者雇用の計画的な推進 | 短時間であれば就労可能な障害者等の雇用機会の確保 | 中小企業における障害者雇用の促進 | |||||||||
対策(改正法案概要) |
|
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障害者雇用促進法は、障害者雇用率制度に加え、障害のある人の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、障害のある人の雇用を容易にし、社会全体として障害のある人の雇用水準を引き上げるため、障害者雇用納付金制度を設けている。この制度では、障害者雇用率未達成の民間企業(常用雇用労働者数100人超)から納付金を徴収するとともに、一定水準を超えて障害のある人を雇用している民間企業に対して、障害者雇用調整金、報奨金を支給している。
このほか、障害のある人を雇い入れるために施設、設備の改善等を行う事業主等に対する助成金の支給や在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する在宅就業障害者特例調整金等の支給を行っている。
障害者雇用促進法において、職業リハビリテーションとは、「障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ること」(同法第2条第7号)としている。これに基づき、障害のある人が職業を通じて社会参加できるよう、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関を中心に障害のある人が希望や能力、適性に応じた職場に就き、それを継続し、それにおいて向上することができるようにするための就労に関するサービスを実施している。
国では、民間企業が無理なく、かつ積極的に障害のある人を雇用できるよう、障害のある人を雇用した場合などに助成金を支給している。
例えば、身体に障害のある人や知的障害のある人、精神障害のある人を継続して雇用する労働者として雇い入れる民間企業に対して助成する「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」や、障害特性に応じた雇用管理や雇用形態の見直し等の措置を実施する企業に対して助成する「障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)」、障害のある人を雇い入れたり、継続して雇用するために必要な職場の環境整備等を行った場合に費用の一部を助成する障害者雇用納付金制度に基づく助成金等を支給している。
また、2018年度から、障害のある人の雇用義務の対象であるものの障害のある人を1人も雇用していない民間企業等を対象に、ハローワーク等が中心となって就労支援機関等と連携した「障害者雇用推進チーム」を設置し、民間企業ごとの状況やニーズ等に合わせて採用に向けた準備から職場定着まで一貫した支援を行っている。
このほか、民間企業等が積極的に障害のある人の雇用を進めるためには、障害のある人の雇用管理に関する先進的な事例等を普及啓発する必要がある。そのため、各種マニュアル等を発行し、民間企業等への配布等を通じて障害のある人の雇用の啓発を行っている。2017年度からは、一般労働者を対象とした「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催し、職場における精神・発達障害のある人を支援する環境づくりに取り組んでいる。
また、厚生労働省では、毎年9月の「障害者雇用支援月間」に障害のある人を積極的に多数雇用している事業所、障害のある人の雇用の促進と職業の安定に著しく貢献した団体又は個人、職業人として模範的な業績をあげている勤労障害者に対し、厚生労働大臣表彰を行い、障害のある人の職業的自立の意欲を喚起するとともに、障害のある人の雇用に対する国民の関心と理解を一層深めることを目指している。2018年度には21の障害者雇用優良事業所、23名の優秀勤労障害者の表彰を行った。
障害のある人を雇用する民間企業に対し、税制上の各種の特例措置を講じている。障害のある人の一層の雇用促進につながるよう、2019年度税制改正では、障害のある人を多数雇用する事業主が事業用施設等を取得した場合の不動産取得税の減額措置及び固定資産税の課税標準の特例措置について、その適用期限の2年延長を行った。
雇用分野において障害があることを理由とした差別を禁止し、過重な負担とならない限り、64合理的配慮の提供を事業主に義務付けている。
このため、障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供義務に関するリーフレットや合理的配慮に係る事例集等を作成・配布して周知・啓発に努めるとともに、全国の都道府県労働局・ハローワークにおいて事業主・障害のある人からの相談に応じ、必要な場合は事業主に助言・指導等を行っているほか、都道府県労働局長や障害者雇用調停会議による紛争解決の援助を行っている。
事項 | 内容 |
---|---|
機械等の割増償却措置 (法人税、所得税) | 障害者を雇用し、次のいずれかの要件を満たす場合、その事業年度(その年)又はその前5年以内に開始した各事業年度(各年)において取得、製作、建設した機械装置等のうち、障害者が労働に従事する事業所にあるものについては、普通償却限度額の24%(工場用建物等については32%)の割増償却ができる。
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助成金に係る課税の特例措置 (法人税、所得税) | 国や地方公共団体の補助金、納付金及び障害者雇用納付金制度に基づく助成金については、助成金のうち固定資産の取得又は改良に充てた部分の金額に相当する金額の範囲内で、圧縮記帳による損金算入(法人税)又は総収入金額不算入(所得税)とすることができる。 |
事業所税の軽減措置 | 事業所税の従業者割については、課税標準としての従業者給与総額から障害者の給与分を控除し、また、障害者を10人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上である事業所であって、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等の支給に係る施設又は設備に係るものについては、事業所税の資産割に係る課税標準の算定につき、当該事業所床面積の2分の1を控除するものとする。 |
不動産取得税の軽減措置 | 障害者を20人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上の事業所の事業主が、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等を受けて事業用施設(作業の用に供するものに限る)を取得した場合において、その者が当該施設の取得の日から引き続き3年以上当該施設を当該事業所の事業の用に供したときは、当該施設の取得に対して課する不動産取得税については当該税額から価格の10分の1に相当する額に税率を乗じて得た額を減額するものとする。 |
固定資産税の軽減措置 | 障害者を20人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上の事業所の事業主が、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等を受けて取得した事業用の家屋 (作業の用に供するもののうち、障害者の雇用割合に応じた部分に限る)に対して課する固定資産税の課税標準は、取得後5年間に限り、当該家屋の課税標準となるべき価格の6分の1を減額した額とする。 |
障害のある人の就労支援の充実と活性化を図るため、雇用・福祉・教育・医療の一層の連携強化を図ることとし、ハローワークを中心とした関係機関とのチーム支援や、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進、障害者就業・生活支援センター事業、トライアル雇用、ジョブコーチ等による支援などを実施している。
就職を希望する障害のある人に対しては、ハローワークの専門窓口で、求職の登録の後にその技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づき、ケースワーク方式による個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を実施し、安定した職場への就職・就職後の職場定着を支援している。
ハローワークにおいては、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、特別支援学校、医療機関等の関係機関からなる「障害者就労支援チーム」を作り、就職に向けた準備から職場定着までの一貫した支援を行う「チーム支援」を実施している。
事業所が障害のある人を短期の試行雇用の形で受け入れることにより、障害のある人の適性や業務遂行可能性を見極め、障害のある人と事業主の相互理解を促進すること等を通じて、常用雇用への移行を促進する障害者トライアル雇用事業を実施している。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構により各都道府県に1か所(そのほか支所5か所)設置・運営されている地域障害者職業センターでは、ハローワークや地域の就労支援機関との連携の下に、身体に障害のある人、知的障害のある人はもとより、精神障害のある人、発達障害のある人、高次脳機能障害のある人など、他の機関では支援が困難な障害のある人を中心に、専門職の「障害者職業カウンセラー」により、職業評価、職業指導から就職後のアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施している。
障害のある人個々の就職の希望等を把握した上で、職業評価・職業相談を行い、これらを基に就職及び就職後の職場適応に必要な支援内容等を含む職業リハビリテーション計画の策定を行っている。
障害のある人に対して、就職又は職場適応に必要な障害特性や職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援及び社会生活技能等の向上のための支援を行っている。
就職又は職場適応に課題を有する知的障害、精神障害のある人等が円滑に職場適応することができるよう、就職時のみならず雇用後においても事業所にジョブコーチを派遣し、障害のある人に障害特性を踏まえた直接的かつ専門的な支援を行うほか、事業主に対して、雇用管理に必要な助言や職場環境の改善の提案等の援助を行っている。
また、安定した雇用継続を図るためのフォローアップも行っている。
なお、地域障害者職業センターのジョブコーチ以外に、社会福祉法人等に所属し事業所に出向いて支援を行う訪問型ジョブコーチ、企業に在籍し同じ企業に雇用されている障害のある労働者を支援する企業在籍型ジョブコーチがいる。
精神障害のある人及び事業主に対して、主治医との連携の下、新規雇入れ、職場復帰、雇用継続のそれぞれの雇用の段階に応じた専門的な支援を総合的に行っている。
特に、休職中の精神障害のある人及びその人を雇用する事業主に対しては、円滑な職場復帰に向けた支援(リワーク支援)を進めており、精神障害のある人に対しては、生活リズムの立直しや集中力・持続力の向上等の支援を行うとともに、事業主に対しては、職場の受け入れ体制の整備等についての支援を行っている。
各地域における障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所等の関係機関において、より効果的な職業リハビリテーションが実施されるよう、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言や支援方法に係る助言や援助を行っている。
また、ジョブコーチの養成研修や関係機関の職員等の知識の習得、技術等の向上のための実務的研修を行っている。
障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域(2019年4月現在334か所)で就業面及び生活面の両面における一体的な支援を行っている。
例えば、就業やそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)や求職活動等の就業に関する相談と、健康管理や住居、年金等の生活に関する相談などを行っている。また、必要に応じ、ハローワークや地域障害者職業センターなどの専門的支援機関と連絡を取り合い、支援を引き継ぐなど適切な支援機関への案内窓口としての機能も担っている。
近年、雇用される障害のある人の数が増加する中で、定着支援の取組の重要性が高まっており、センターの業務実績を見ると、就職件数、雇用者数の伸びにしたがって、企業からの相談の半数以上を定着支援が占めており、また、就業時点で就労支援機関の支援を受けていない障害者に対する定着支援を求められるなど、定着支援の比重が増している。センターでは、事業主に対し、本人の障害特性や症状・能力等についての助言や関係機関と連携した支援を行うほか、就職後に生じる課題の予測と実際に生じた際の事前準備、センター職員による定期的な職場訪問及び電話連絡等を通じ、本人が現在抱えている悩み、課題及び事業主や上司・同僚等の意見等を把握し、問題が発生しないよう対応をしている。
2018年度には、精神障害のある人等の職場定着支援の充実・強化を図るため、引き続き、精神障害のある人に対する支援経験を有するなど精神障害のある人の支援に特化した担当者及び企業における人事管理や障害者雇用の経験を有するなど事業主からの雇用相談や雇用管理支援に対応する担当者をモデル配置するとともに、新たに精神障害のある人の職場定着推進に効果的な取組を行うための担当者を配置する等の体制整備を行った。
障害のある人が地域で自立した日常生活又は社会生活を送るための基盤として就労支援は重要であり、障害のある人の就労支援として以下の取組を行っている。
一般就労を希望する障害のある人が、できる限り一般就労が可能となるように、就労移行支援事業所では、在宅就労も含めて生産活動、職場体験等の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談、その他の必要な支援を行っている。
雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な障害のある人に対し、生産活動等の活動の機会の提供及びその他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。また、就労継続支援A型事業所における就労の質を向上させるため、2017年4月に改正した指定障害福祉サービス等基準に基づき、事業所の生産活動の収支を利用者に支払う賃金の総額以上とすることなどとした取扱いを徹底し、安易な事業参入の抑制を図るとともに、指定基準を満たさない事業所に経営改善計画の提出を求めることにより、事業所の経営状況を把握した上で地方公共団体が必要な指導・支援を行うことを通じ、事業所の安定運営を図るとともに、障害のある人の賃金の向上を図ることとした。
通常の事業所に雇用されていた障害のある人であって、その年齢、心身の状態その他の事情により、引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者、その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。また、事業所の経営力強化に向けた支援、共同受注化の推進、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号)(以下「障害者優先調達推進法」という。)に基づく調達の推進等、就労継続支援B型事業所等における工賃の向上に向け、官民一体となった取組を推進している。
2016年度の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)の一部改正により、就労移行支援事業所等を利用し、一般就労に移行した障害のある人に対して、一般就労に伴い生じる生活リズムの乱れや給料の浪費などの生活面や就業面の課題に対応できるよう、家族や関係機関との連絡調整等の支援を一定期間にわたって行う新たなサービスを創設した。
障害のある人がその能力を十分に発揮し、地域で自立した生活を実現することができるよう、障害福祉サービス等報酬改定において、一般就労への定着実績や工賃実績等に応じた報酬体系を構築し、就労系障害福祉サービスにおける工賃・賃金の向上や一般就労への移行の更なる促進が図られるよう見直しを行った。
精神障害のある人については、近年、ハローワークにおける新規求職者数が急激に伸びてきており、その専門窓口では「精神障害者雇用トータルサポーター」などの専門職員による個々の障害特性に応じたきめ細かな相談支援を行うとともに、精神障害のある人に関する事業主の意識啓発から就職後のフォローアップ等の働きかけを行っている。
また、民間企業に対しては継続雇用する労働者へ移行することを目的に、週の所定労働時間10時間以上20時間未満から一定程度の期間をかけて、週の所定労働時間を20時間以上とすることを目指す「トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)」の支給などを行っている。
なお、精神障害のある人については、これら各般の取組を通して、その雇用促進を一層図ることとしており、障害者基本計画(第3次)では、50人以上の規模の事業主で雇用される精神障害のある人を、2017年の障害者雇用状況報告で3.0万人にすることを目指していたが、2017年6月1日現在で5.0万人となっており、目標を達成した。
発達障害のある人についても、近年ハローワークにおける新規求職者数が増加しており、その雇用の促進を図ることが必要となっている。そのため、ハローワークでは、発達障害のある求職者に対する職業紹介を行うに当たっては、地域障害者職業センターや発達障害者支援センターと十分な連携を図って、対応している。なかでも、発達障害などの要因によりコミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、専門の支援員(就職支援ナビゲーター(発達障害者等支援分))によるきめ細かな就職支援を実施する「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」を実施している。
また、2018年度よりハローワークに発達障害者雇用トータルサポーターを新たに配置し、カウンセリング等の求職者支援や事業主が抱える発達障害のある人等の雇用に係る課題解決のための個別相談等を実施している。
さらに、発達障害のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。
ハローワークでは、障害者手帳の有無にかかわらず、就労支援の必要な難病のある人に対して、難病相談支援センターとの連携による就労支援も行っている。2013年度からは、ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センターと連携しながら、就職を希望する難病患者に対する症状の特性を踏まえたきめ細かな就労支援や在職中に難病を発症した患者の雇用継続等の総合的な就労支援を行っている。
また、難病のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。
さらに、難病患者の雇用管理に資するマニュアル「難病のある人の雇用管理マニュアル」(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が2018年に作成)を活用し、ハローワーク等において、難病のある人の就労支援を行っている。
自宅等で就業する障害のある人(在宅就業障害者)の就業機会の確保等を支援するため、これらの障害のある人に直接又は在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣の登録を受けた法人(在宅就業支援団体(2018年6月現在で20団体))を介して業務を発注した事業主に対して、障害のある人に対して業務の対価として支払われた金額に応じて、障害者雇用納付金制度で、在宅就業障害者特例調整金(常用雇用労働者数100人以下の事業主については在宅就業障害者特例報奨金)を支給する制度を運用している。
従来、障害のある人が就労困難と考えられていた職業であっても、IT機器を利用することにより、就労の可能性が高まってきている。このため、障害のある人の職域拡大に資することを目的として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において、障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。
各企業が積極的に障害者雇用を進めるなか、首都圏を中心とした採用活動だけでは必要な人員を確保できない可能性があったことから、在宅勤務制度を導入し、地方在住の障害のある人の雇用を進めた。在宅勤務者の職場定着に当たっては、テレビ会議やチャットシステムを活用し、在宅で研修を受講する体制を整備した。特に大切にしているのが、朝と夕のテレビ会議ミーティングである。同じ班の在宅勤務メンバーと本社勤務の班長が顔を見ながら対話する。朝のミーティングでは体調管理や当日行う業務の進め方などの情報交換に加え、班長は顔色や声などの変化を把握するようにしている。さらに、体調の変化をより正確に把握するための仕組みとして、専用のポータルサイトを立ち上げた。本サイトは、毎朝体調を自己申告できるページや業務進捗を入力できるページがあり、このサイトの情報をふまえて、班長は在宅勤務メンバーの体調の変化をとらえている。業務中に体調が悪くなった場合は、チャットにて発信してもらい、テレビ会議で個別面談をしたあと、早退を促したり、業務の調整を行うなど、安定就労をサポートしている。また、本社には保健師が常駐しており、本人の希望や上司の判断により、テレビ会議を活用して保健師と面談することが可能になっている。
障害者雇用を拡大するため、当初は倉庫内の軽作業のみで雇用していたが、パソコン作業に職域を拡大するとともに、通勤や対人関係に課題のある人も働くことができるよう、在宅勤務制度を導入した。さらに、在宅勤務者は自宅が職場となることから、勤務中に自宅で支援機関からの支援を受けられるよう、就業規則を改正した。これにより、家族も含めて、支援機関からのアドバイスを受けやすくなった。
また、コミュニケーションツールを活用し、事業所内で勤務する社員も在宅勤務者も頻繁にコミュニケーションを取っており、これに加え、在宅勤務者の体調管理のため、管理者から体調の確認を行うほか、3か月に1回は面談を行うなど、複数の方法できめ細く体調を管理している。体調管理を通じて悩みや要望を把握した際には、本人の業務実績を参考に、無理のない範囲の目標を本人と相談しながら決めたり、本人が得意な分野を勘案し、能力を発揮しやすい業務内容への変更を行っている。
国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局においては、一般就労を希望する障害のある人に対して、就労に必要な知識や技能を獲得させるため、障害福祉サービス(就労移行支援)を実施している。身体障害、高次脳機能障害又は発達障害のある人には、生産活動、職業体験等の必要な訓練を、視覚に障害のある人には、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取得のための教育訓練を行い、就労に関する相談や支援を通じて、障害のある人の適性に見合った職場への就労とその定着を支援している。
生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯、障害者世帯等に対し、資金の貸付けと必要な相談支援を行うことにより、その経済的自立及び生活意欲の助長促進並びに在宅福祉及び社会参加の促進を図り、安定した生活を送れるようにすることを目的に、都道府県社会福祉協議会を実施主体として運営されている。本制度の資金種類の1つとして、「福祉資金」が設けられており、障害者世帯が生業を営むために必要な経費や技能習得に必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費等の貸付を行っている。
また、経済産業省では、地域経済を活性化させるため、産業競争力強化法(平成25年法律第98号)の認定市区町村(2018年12月現在で1,419市区町村)において、新たに創業を行う者に対して、その創業等に要する経費の一部を助成し、新たな需要や雇用の創出等を促す取組を行っており、障害のある人も活用できる制度となっている。
障害者就労施設において、稲作や野菜、果樹、花き、畜産、農産加工や販売等、幅広い分野で農業活動等が取り組まれている。農業を通じて高い賃金・工賃を実現している事業所もあり、障害のある人の就労機会の確保や賃金・工賃の向上といった面のみならず、地域の農業における労働力不足への対応といった面でも意味のある取組であり、農業と福祉の連携の推進を図ることは重要な課題となっている。
このため、農林水産省では、障害のある人等のための福祉農園の開設・整備等の取組を支援しているほか、全国の地方農政局等に行政、福祉、農業等の関係者で構成する「農業分野における障害者就労の促進ネットワーク(協議会)」を設置し、シンポジウムを通じて優良事例や施策の紹介などを行っている。
一方、厚生労働省では、農福連携による障害のある人の就労支援を推進する取組として、農業分野に取り組もうとする就労継続支援事業所に対して、農業分野の専門家を派遣し、農業に関する知識・技術の習得や6次産業化の推進に向けた助言・指導を行うとともに、都道府県において農業に取り組む就労継続支援事業所が参加する農福連携マルシェ(市場)の開催等を支援している。2016年度は28府県、2017年度は40道府県、2018年度は42道府県で支援を実施した。
また、農林水産省と厚生労働省とが連携して「『農』と福祉の連携プロジェクト」を推進し、農業関係者と福祉関係者との相互理解を深めるため、農福連携推進フォーラムを開催(2018年度は2019年3月20日)している。
これらの取組を通じて、両省が連携しつつ、優良事例や支援策の周知を含め積極的に情報発信を行い、農業と福祉の連携や、それを通じた障害のある人の賃金・工賃の向上の推進に取り組むこととしている。
障害者就労施設では、稲作や野菜、果樹、花き、畜産、農産加工や販売等、幅広い分野で農業活動等に取り組んでおり、その中には、農業を通じて高い賃金・工賃を実現している事業所もある。こうした取組は、障害のある人の就労機会の確保や賃金・工賃の向上といった面のみならず、労働力不足や過疎化といった問題を抱える農業・農村にとっても、働き手の確保や地域農業の維持、さらには地域活性化にもつながることから、農業と福祉の連携の一層の推進が求められている。
厚生労働省では、農福連携による障害のある人の就労支援を推進する取組として、農業分野に取り組もうとする就労継続支援事業所に対して、農業分野の専門家を派遣し、農業に関する知識・技術の習得や6次産業化の推進に向けた助言・指導を行うとともに、都道府県において農業に取り組む就労継続支援事業所が参加する農福連携マルシェ(市場)の開催等を支援している。
農業分野での障害者の就労を支援し、障害者の工賃水準の向上及び農業の支え手の拡大を図るとともに、障害者が地域を支え地域で活躍する社会(「1億総活躍」社会)の実現に資するため、障害者就労施設への農業に関する専門家の派遣や農福連携マルシェの開催等を支援する。
実際に、付加価値の高い農作物を生産し、加工・販売まで手がけること(6次産業化)によって高い工賃を実現している事業所や、障害者の特性に応じた仕事を開発することで、より多くの障害者の雇用や福祉的就労につなげ、地域の農家とつながることにより地域活性化や地方創生にも資する事例もある。
厚生労働省では、農林水産省と連携し、これらの優良事例や支援策の周知を含め積極的に情報発信を行い、農業と福祉の連携や、それを通じた障害のある人の賃金・工賃の向上の推進に取り組むこととしている。
障害のある人に対し、作業環境への適応を容易にし、訓練修了後も引き続き雇用されることを期待して、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には職場適応訓練費(2万4千円/月)が支給される(訓練期間6か月以内)。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(1年以内)、職場適応訓練費も増額(2万5千円/月)している。
障害のある人に対し、実際に従事することとなる仕事を経験させることにより、就業への自信を持たせ、事業主に対しては対象者の技能程度、適応性の有無等を把握させるため、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には、職場適応訓練費(960円/日)が支給される(訓練期間2週間以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(4週間以内(原則))、職場適応訓練費も増額(1,000円/日)している。
司法試験においては、障害のある人がその有する知識及び能力を答案等に表すに当たり、その障害が障壁となり、事実上の受験制限とならないために、障害のない人との実質的公平を図り、そのハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、視覚障害者に対する措置として、パソコン用電子データ又は点字による出題、解答を作成するに当たってのパソコンの使用、拡大した問題集・答案用紙の配布、試験時間の延長等を、肢体障害者に対する措置として、解答を作成するに当たってのパソコンの使用、拡大した答案用紙の配布、試験時間の延長等を認めるなどの措置を講じている。
司法書士試験、土地家屋調査士試験及び簡裁訴訟代理等能力認定考査においては、その有する知識及び能力を答案等に表すことについて障害のない人と比較してハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、弱視者に対する拡大鏡の使用や記述式試験の解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用を、また、試験時間の延長を認める等の措置を講じている。
重点施策実施5か年計画(2008年度~2012年度)において、国は公共調達における競争性及び公正性の確保に留意しつつ、福祉施設等の受注機会の増大に努めるとともに、地方公共団体等に対し、国の取組を踏まえた福祉施設等の受注機会の増大の推進を要請することとされていた。これを踏まえ、官公需(官公庁の契約)を積極的に進めるため、各府省の福祉施設受注促進担当者会議を開催し、更なる官公需の促進を依頼するなどの取組を行うとともに、2008年に地方自治法施行令を改正し、地方公共団体の契約について随意契約によることができる場合として、地方公共団体が障害者支援施設等から、クリーニングや発送作業などの役務の提供を受ける契約を追加する措置を講じた。
また、障害者優先調達推進法の施行(2013年4月)にあわせて、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)を改正し、随意契約によることができる場合として、「慈善のため設立した救済施設から役務の提供を受けるとき」を追加する措置を講じた。
障害のある人が自立した生活を送るためには、就労によって経済的な基盤を確立することが重要である。そのためには、障害者雇用を支援するための積極的な対策を図っていくことも重要であるが、加えて、障害のある人が就労する施設等の仕事を確保し、その経営基盤を強化する取組が求められている。
このような観点から、障害者就労施設等への仕事の発注に関し、民間企業を始め国や地方公共団体等において様々な配慮が行われてきた。
2013年4月からは、障害者優先調達推進法が施行され、障害者就労施設等で就労する障害のある人や在宅で就業する障害のある人の自立の促進に資するため、国や地方公共団体などの公的機関が物品やサービスを調達する際、障害者就労施設等から優先的に購入することを進めるために、必要な措置を講じることとなった。当該法律に基づき、全ての省庁等で調達方針を策定し、障害者就労施設等が供給する物品等の調達に取り組んでいる。
また、公務部門における障害者雇用に関する基本指針(2018年10月23日公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議決定)において、障害者雇用と併せ、障害者優先調達推進法に基づく障害者就労施設等からの物品等の調達を確実に推進するため、対象となる障害者就労施設等に関する詳細な情報や創意・工夫等している取組事例を提供するとともに、地方公共団体に対しても本基本方針を参考にしながら引き続き障害者優先調達推進法に基づく取組を推進するよう要請した。
障害者就労施設、在宅就業障害者及び在宅就業支援団体 (以下「障害者就労施設等」という。)の受注の機会を確保するために必要な事項等を定めることにより、障害者就労施設等が供給する物品等に対する需要の増進等を図り、もって障害者就労施設で就労する障害者、在宅就業障害者等の自立の促進に資する。
障害者就労施設等は、単独で又は相互に連携して若しくは共同して、購入者等に対し、その物品等に関する情報を提供するよう努めるとともに、当該物品等の質の向上及び供給の円滑化に努めるものとする。
障害のある人がその能力に応じて適切な職業に従事することができるようにするため、多様な就業の機会を確保することが必要であることに鑑み、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号)(以下「障害者優先調達推進法」という。)において、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人から受注の機会を確保するために必要な事項を定めることとしており、就労移行支援、就労継続支援A型又は就労継続支援B型等の障害福祉サービス事業を行う施設、在宅就業者や在宅就業支援団体等が供給する物品及び役務に対する需要の増進を図っている。
この法律において、国等は毎年調達方針を作成し公表しなければならず、その後調達方針に基づく調達を実施し、調達実績を公表することとなっており、2013年度に123億円であった国等における調達実績額が、2017年度には177億円まで増加している。
さらに、2018年度には、公務部門における障害者雇用に関する基本指針(平成30年10月23日公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議決定)において、障害者雇用と併せ、障害者優先調達推進法に基づく障害者就労施設等からの物品等の調達を確実に推進するため、対象となる障害者就労施設等に関する詳細な情報や創意・工夫等している取組事例を提供するとともに、地方公共団体に対しても本指針を参考にしながら引き続き障害者優先調達推進法に基づく取組を推進するように要請した。
今後も、引き続き好事例集の提供等の取組を実施し、障害者就労施設等からの物品等の調達を更に推進していく。
2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 増減 (2016’→2017’) | |||||||
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件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
各府省庁 | 2,628 | 5.6億円 | 4,491 | 6.38億円 | 4,878 | 6.44億円 | 5,769 | 8.17億円 | 5,875 | 8.51億円 | 106 | +0.34億円 |
独立行政法人等 | 3,062 | 6.9億円 | 4,474 | 8.24億円 | 5,052 | 9.96億円 | 5,819 | 10.40億円 | 6,847 | 13.15億円 | 1,028 | +2.75億円 |
都道府県 | 14,596 | 21.4億円 | 18,368 | 25.91億円 | 21,537 | 26.71億円 | 23,640 | 25.16億円 | 24,814 | 27.51億円 | 1,174 | +2.35億円 |
市町村 | 43,481 | 86.6億円 | 57,974 | 106.05億円 | 68,613 | 110.57億円 | 79,861 | 123.85億円 | 95,288 | 124.22億円 | 15,427 | +0.37億円 |
地方独立行政法人 | 1,150 | 2.5億円 | 3,751 | 4.67億円 | 2,783 | 3.55億円 | 2,001 | 3.57億円 | 85,080 | 3.90億円 | 83,079 | +0.33億円 |
合計 | 64,917 | 123.0億円 | 89,058 | 151.25億円 | 102,863 | 157.23億円 | 117,090 | 171.15億円 | 217,904 | 177.29億円 | 100,814 | +6.14億円 |
一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については、障害者職業能力開発校において、職業訓練を実施している。
2019年4月1日現在、障害者職業能力開発校は国立が13校、都道府県立が5校で、全国に18校が設置されており、国立13校のうち2校は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営し、他の11校は都道府県に運営を委託している。
障害者職業能力開発校は、入校者の障害の重度化・多様化が進んでいることを踏まえ、個々の訓練生の障害の態様を十分に考慮し、きめ細かい支援を行うとともに、職業訓練内容の充実を図ることにより、障害のある人の雇用の促進に資する職業訓練の実施に努めている。
なお、障害者職業能力開発校の就職率については、障害者基本計画(第4次)において、2022年度に70%となるよう目標設定されている。
都道府県立の一般の公共職業能力開発施設において、精神保健福祉士等の相談体制の整備を図るとともに、精神障害のある人を対象とした職業訓練をモデル的に実施している。
雇用・就業を希望する障害のある人の増大に対応し、居住する地域で職業訓練が受講できるよう、企業、社会福祉法人、特定非営利活動法人、民間教育訓練機関等を活用した障害者の多様なニーズに対応した委託訓練(以下「障害者委託訓練」という。)を各都道府県において実施している。
障害者委託訓練は、主として座学により知識・技能の習得を図る「知識・技能習得訓練コース」、企業の現場を活用して実践的な職業能力の向上を図る「実践能力習得訓練コース」、通校が困難な人などを対象とした「e-ラーニングコース」、特別支援学校高等部等に在籍する生徒を対象とした「特別支援学校等早期訓練コース」及び在職障害者を対象とした「在職者訓練コース」の5種類があり、個々の障害特性や企業の人材ニーズに応じて多様な職業訓練を行うことが可能な制度である。なお、障害者委託訓練修了者の就職率については、2017年度は49.7%であり、障害者基本計画(第4次)において、2022年度に55%となるよう目標設定されている。
ハローワークに求職を申し込む精神障害や発達障害のある人の増加が近年著しいことを踏まえ、精神障害や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置を推進することとしている。このため、都道府県が運営する障害者職業能力開発校で精神障害や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置が円滑に行われるよう独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する障害者職業能力開発校において、訓練計画の策定、指導技法、訓練コース設置後のフォローアップ支援を行っている。また、前述の障害者委託訓練においても、精神障害のある人の増加や精神障害のある人向けの職業訓練の実施に係るノウハウの蓄積が乏しい現状を踏まえ、2014年度から、地域の就労支援機関に委託して精神障害のある人向け職業訓練の受託先の開拓や職業訓練の設定、実施等の支援を行っている。
全国障害者技能競技大会は、障害のある人が日頃培った技能を互いに競い合うことにより、その職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々が障害のある人に対する理解と認識を深め、その雇用の促進を図ることを目的として、アビリンピックの愛称の下、1972年から実施している。
2018年度には、沖縄県那覇市で第38回大会が開催(11月2日~5日)された。
2018年度は、11月2日から5日までの4日間にわたり、沖縄県那覇市において、「Challenges for the future(チャレンジズフォアザフューチャー)」という大会スローガンのもと、第38回全国障害者技能競技大会が開催された。
大会には、技能競技22種目に全国から382名の選手が参加し、日頃培った技能を競い合うとともに、障害者雇用に関する新たな職域の一部として、「ネイル施術」、「ベッドメイキング」の2職種による技能デモンストレーションが実施された。
また、第38回アビリンピックの開催に併せて、障害のある人の雇用に関わる展示、実演及び作業体験など総合的なイベントである「障害者ワークフェア2018」が同時開催され、盛大な大会となった。
国際アビリンピックは、1981年の「国際障害者年」を記念して、障害のある人の職業的自立意欲の増進と職業技能の向上を図るとともに、事業主及び社会一般の理解と認識を深め、更に国際親善を図ることを目的として、1981年10月に第1回大会が東京で開催され、以降おおむね4年に1度開催されている。第9回国際アビリンピックがフランス共和国ボルドー市において2016年3月に開催され、日本から、第35回全国大会での成績優秀者31名の選手が参加した。
全国の法務局・地方法務局及びその支局では、人権相談等により雇用の場における、障害のある人に対する差別的取扱い等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い事案に応じた適切な措置を講じるなどして、人権侵害による被害の救済及び予防を図っている。
「働き方改革」は、若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある人も、一度失敗を経験した人も、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現に向けた最大のチャレンジであり、働く方の視点に立ち、働く方一人ひとりの意志や能力、置かれた事情に応じた多様な働き方の選択を可能とするための改革である。
2017年3月、内閣総理大臣を議長とする「働き方改革実現会議」において、「働き方改革実行計画」が取りまとめられた。
本実行計画には、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現などによる非正規雇用の処遇改善のほか、障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進として、長期的寄り添い型支援の重点化等、障害のある人の一般就労に向けた在学中からの一貫した支援、在宅就業支援制度の活用促進等が盛り込まれた。
本実行計画を受けて、罰則付きの時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金の実現などの内容を盛り込んだ働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)が2018年6月に成立し、同年7月に公布された。
引き続き、「働き方改革実行計画」における障害のある人への支援についても、10年先を見据えたロードマップに沿って、着実に施策を進めていく。