障害者施策の円滑な推進を実効性あるものにしていくには、幅広い国民の理解を得ながら進めていくことが重要であり、障害者基本法(昭和45年法律第84号)及び障害者基本計画の掲げる共生社会の実現を目指すためには、行政、民間企業・団体、マスメディア等、多様な主体が連携して、幅広い広報・啓発活動を計画的かつ効果的に推進することが必要である。
2018年3月に閣議決定された「障害者基本計画(第4次)」では、「 Ⅱ 基本的な考え方」として「理解促進・広報啓発に係る取組等の推進」を掲げている。この中では、障害のある者と障害のない者が、お互いに、障害の有無にとらわれることなく、支え合いながら社会で共に暮らしていくことが日常となるように、国民の理解促進に努めること、また、本基本計画の実施を通じて実現を目指す「共生社会」の理念や、いわゆる「社会モデル」の考え方について、必要な広報啓発を推進することとされている。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を通じて、障害者施策に対する更なる国民意識の醸成が図られるとともに、参加する多くの人々が共生社会に対する理解を深め、その実現の重要性を共有することが期待されている。
障害者基本法(昭和45年法律第84号)第9条では、毎年12月3日から9日までの1週間を「障害者週間」と規定している。この障害者週間は、同法の基本原則である「すべての国民が、相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の理念の普及を図り、障害及び障害者に対する国民の関心と理解を一層深めること」を目的として、我が国全体で実施するものである。
また、「障害者基本計画(第4次)」では、障害者施策における「理解促進・広報啓発に係る取組等の推進」として、「障害者週間における各種行事を中心に、一般市民、ボランティア団体、障害者団体などの幅広い層の参加による啓発活動を推進する」としており、障害者週間の実施に当たっては、国及び地方公共団体が民間団体等と連携して、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加することを促進するため、毎年、全国各地で様々な障害者週間の趣旨にふさわしい障害者の自立及び社会参加等に関する多様な取組が行われている。
内閣府では、障害者基本法の基本理念である、障害の有無にかかわらず、誰もが互いに人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現を目指し、同法に規定される「障害者週間」の趣旨を踏まえ、同週間の取組の一環として、広く国民に対する障害及び障害者に対する理解促進のための各種広報啓発事業等を行っている。
2018年度においては、主に次の取組を実施した。
内閣府では、2018年12月5日(水)に「障害者週間」関係表彰式を実施した(各表彰に関する詳細は後述)。
本表彰は、内閣府と各都道府県・指定都市との共催事業として(各都道府県・指定都市を窓口として)、全国から障害のある人とない人との心の触れ合いをつづった「作文」、及び障害者に対する国民の理解の促進等に資する「ポスター」を募集し、障害者週間の時期に合わせ入賞者に対する表彰を行うものである。
区分 | 都道府県・指定都市における応募総数 | 都道府県・指定都市からの内閣府への推薦数 |
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小学生 | 669 | 44 |
中学生 | 2,117 | 55 |
高校生 | 532 | 22 |
一般 | 118 | 25 |
合計 | 3,436 | 146 |
区分 | 都道府県・指定都市における応募総数 | 都道府県・指定都市からの内閣府への推薦数 |
---|---|---|
小学生 | 593 | 40 |
中学生 | 677 | 44 |
合計 | 1,270 | 84 |
◯受賞者/入賞作品
最優秀賞(内閣総理大臣賞) | |||
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区分 | 県・市 | 氏名 | 作品名 |
小学生 | 愛知県 | 中根 暖 | やりたいことはやってみりん |
中学生 | 千葉県 | 横山 莉玖 | 偏見のない世の中を目指して |
高校生 | 名古屋市 | 久野 藍里 | 共生社会の中に飛び込んでみて |
一般 | 鳥取県 | 植田 悠郁 | 今伝えたい事~弟と歩んだ日々~ |
優秀賞(内閣府特命担当大臣賞) | |||
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区分 | 県・市 | 氏名 | 作品名 |
小学生 | 愛媛県 | 伊藤 翔馬 | ぼくと祖母 |
神戸市 | 近藤 咲来 | 見えるざしきわらし | |
福島県 | 長谷川 慶佑 | その出会いがぼくをかえた | |
中学生 | 神戸市 | 椎原 温人 | 「少しずつ、ゆっくりと」 |
静岡県 | 長田 大和 | 障がい者と共に働くこと | |
長崎県 | 服部 嵯介 | 兄ちゃんの想いと役目 | |
高校生 | 三重県 | 小辻 英里加 | 私が伝えたいこと |
鹿児島県 | 園田 康太郎 | 障害のある人との関わり方 | |
群馬県 | 長谷川 璃奈 | 生きることで | |
一般 | 北九州市 | 黒田 美穂 | 触れ合ってわかる大切なこと |
福岡県 | 郡 健人 | 自分の歩幅で | |
神戸市 | 松浦 綾子 | 心のバリアフリー |
佳作 | |||
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区分 | 県・市 | 氏名 | 作品名 |
小学生 | 栃木県 | 井本 紗季 | 妹とまわりの人たち |
福岡市 | 長尾 早恵 | 右手が不自由な母の従姉妹 | |
奈良県 | 中堀 乃愛 | しょうがっこうのおともだち | |
京都府 | 西山 勇人 | ぼくの妹 | |
兵庫県 | 山本 裕介 | 障害者とは | |
中学生 | 宮崎県 | 榎木 颯月 | 「当たり前」の存在 |
佐賀県 | 太田 汐里 | 祖父と私 | |
愛知県 | 西田 和哉 | 彼の強さ | |
茨城県 | 藤咲 葉月 | 理解と勇気と思いやり | |
大阪府 | 丸山 萌菜 | 害とがい |
高校生 | 京都府 | 安楽 みなみ | 障がいがある人ない人、みんながはじける笑顔を! |
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栃木県 | 木村 芽依 | 勇気120% | |
長崎県 | 城添 水咲 | 誰もが暮らしやすく生きやすく | |
大阪市 | 徳山 幸恵 | 相手の気持ちを考える | |
茨城県 | 成田 遥南 | 「笑顔」と「ありがとう」 | |
一般 | 川崎市 | 久米 映里 | 小さな奇跡を起こしたヒーロー |
埼玉県 | 小松﨑 有美 | つながれ、私 | |
札幌市 | 菅原 ルミ子 | ゆっくりでいいよ | |
堺市 | 武内 美津子 | びっぐ・あい | |
静岡市 | 福島 遥 | 障がいの有無を越えて人とのつながり |
最優秀賞(内閣総理大臣賞) | |||
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区分 | 県・市 | 氏名 | 作品名 |
小学生 | 富山県 | 南日 花陽実 | 楽しいピアノの音 |
中学生 | 滋賀県 | 布藤 咲喜 | 私のきもち |
優秀賞(内閣府特命担当大臣賞) | |||
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区分 | 県・市 | 氏名 | 作品名 |
小学生 | 鹿児島県 | 中村 優香 | 一緒に行こう |
中学生 | 徳島県 | 西田 玲美 | 一緒に丸 |
佳作 | |||
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区分 | 県・市 | 氏名 | 作品名 |
小学生 | 茨城県 | 植村 文香 | みんななかよし |
愛媛県 | 土居 万紘 | しょく手話 | |
千葉県 | 長嶌 梨依子 | みんななかよし | |
大阪府 | 道下 陸 | この席 どうぞ | |
徳島県 | 湯浅 慶香 | だれでもいっしょにオーケストラ | |
中学生 | 仙台市 | 網代 桃香 | 困っている人がいます・・・ |
山口県 | 岩本 楓 | みんなでつくる笑顔のまち | |
浜松市 | 近藤 臣希 | 1人ひとりが輝く舞台 | |
三重県 | 杉山 輝 | ヘルプマークは僕の声 | |
秋田県 | 船木 幸将 | やさしいみんなの気持ち |
内閣府では「障害者週間」の実施に合わせ、障害者関係団体等と連携し、障害又は障害者をテーマとする同週間の趣旨にふさわしいセミナーを一般国民向けに開催し、障害及び障害者に対する理解の促進を図っている。
◯日時 2018年12月6日(木)・7日(金) 各日9:30~18:20
◯場所 有楽町朝日スクエア(東京都千代田区)
◯主催 障害者関係団体等(8団体)
2018年12月6日(木) | ||
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主催団体 | テーマ | |
実施概要 | ||
1 | 特定非営利活動法人 カラーユニバーサルデザイン機構 | 見逃されてきた色覚障害者への社会の対応
~わかりやすいはずの色使いが混乱や危険を誘発する~
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「色覚障害」は軽度の障害とされ、生活上困難は少ないとして、理解も対応も十分になされてこなかった。色があふれる社会で当事者たちにどのようなことが起きているか。困難な事例や対処がなされた事例を多く提示しつつ、あるべき社会について議論を行う。 | ||
2 | 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 | 障害のある子供の教育 ~特別支援教育に関するQ&A紹介~ |
当研究所は、障害のある子供と障害のない子供が共に学ぶインクルーシブ教育システムの構築に貢献するために、特別支援教育の推進に取り組んでいる。本セミナーでは一般の方々に向け、障害のミニ体験、教材・支援機器の展示、特別支援教育に関するQ&Aを通じて障害のある子供の教育について紹介する。 | ||
3 | 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 | 読み書き障害児の教育支援
~デジタル教科書(デイジー教科書)の取組と今後の課題~
|
当協会では、2008年度から発達障害など読みの困難がある児童生徒にデイジー教科書を製作・提供している。当初80名だった利用者は、2017年度8千名を超えたが、未だ一部に限られていることから、更なる普及を目指し、学校現場での成果や課題等について、行政、特別支援教育の専門家、製作者等による意見交換を行う。 | ||
4 | 特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会 | 吃音とは ~「発達障害者支援施策」&「当事者研究」から~ |
吃音は、障害者制度の谷間にある障害と言われて久しいが、障害者制度改革が一段落した今も色々な捉え方が当事者にも支援者にもある。吃音とも関連が深い「発達障害者支援施策について」の講演を行政側から行うとともに、当事者から体験発表や吃音への当事者研究の取組を紹介し、吃音の理解を深める。 |
2018年12月7日(金) | ||
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主催団体 | テーマ | |
実施概要 | ||
5 | 全国手をつなぐ育成会連合会 | 「命について」結婚、出産、医療を通して、障害者の人生を考える |
科学・医療技術の進歩は、成熟した長寿国を生み出した。一方で、出生前診断による命の選別も行われ優生思想の強制避妊の傷も十分に癒えていない。本セミナーでは、結婚、出産、医療を通して、障害者の人生を考えるとともに、命を大切にする支援の実際も紹介し、社会のあり方について議論する。 |
6 | 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 | 発達障害者の雇用を促進するために
~雇用事例から学ぶ職場定着に向けた支援のポイント~
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発達障害のある方の「職場定着」に焦点をあて、企業側から定着に向けた課題への対応等の具体的事例、及び障害当事者の視点から就労に当たっての準備や工夫等について紹介する。また、地域の支援機関との連携状況や支援内容も紹介し、発達障害のある方の雇用促進の方策について考える。 | ||
7 | 社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 | ユニバーサルデザインの街づくりを考える
~好事例からみる街づくりの展望と期待~
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障害のある方や障害者団体が行政機関や民間事業者と連携した取組の好事例などを参考に、協働作業で得られた成果や波及効果について話し合い、地域でのコミュニケーションや期待するユニバーサルデザインの街づくりについて考える。また、我が街のこととして、参加者の皆さんと一緒に考えながら情報共有を図る。 | ||
8 | 一般社団法人 日本発達障害ネットワーク | クワイエットアワープロジェクト中間とりまとめ報告
~発達障害を手掛かりとして音環境について考える~
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感覚過敏の発達障害者の中には、買い物においても、困りごとや困難さを抱えている人がいる。本プロジェクトは、音や光を緩和し、感覚過敏の人でも安心して買い物に行ける環境を、色々な立場の人と地域が一体となって実現することを目指すものである。本セミナーでは、そのための手法の有効性についてのアンケート調査の報告の共有を始め、参加者の皆さんと発達障害を手掛かりとして音環境について考える。 |
内閣府では、「障害者週間」の全国的な展開を図るため、各省庁及び地方公共団体等と連携・協力を図り、全国各地における「障害者週間」の実施に合わせた取組を推進している。
全国で「障害者週間」に合わせて行われる行事や取組については、内閣府のホームページで公開しており、一般国民が多くの行事等に参加し、障害及び障害者に対する理解を深めることができるよう取り組んでいる。
◯国主催行事:119件
◯地方公共団体主催行事:1,274件
※上記件数は、2018年12月時点で内閣府に登録のあったもの
このほか各種の週間・月間等の活動の中でも、障害のある人への理解を深めるための広報・啓発活動が展開された。
9月1日から30日までの「障害者雇用支援月間」においては、障害のある人の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的として、障害のある方々から募集した絵画や写真を原画とした啓発用ポスターが作成され、全国に掲示されたほか、障害者雇用優良事業所等表彰、障害者雇用支援月間ポスター原画表彰及び優秀勤労障害者表彰を始め、各都道府県においても、障害者雇用促進のための啓発活動が実施された。
10月15日から21日までの「第66回精神保健福祉普及運動」の期間においては、精神障害のある人に対する早期かつ適切な医療の提供及び社会復帰の促進等について、国民の理解を深めることを目的として、精神保健福祉全国大会を始めとする諸行事が実施された。
12月4日から10日までの「人権週間」においては、世界人権宣言の趣旨及びその重要性を広く国民に訴えかけるとともに、障害のある人に対する偏見や差別を解消することを含め、人権尊重思想の普及高揚を図るため、法務省の人権擁護機関である法務局・地方法務局及び人権擁護委員等により、全国各地で講演会の開催、ポスター・パンフレットの作成・配布等の広報・啓発活動が実施された。
2007年12月、国連総会本会議において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする決議が採択されたことを受け、厚生労働省では、毎年、自閉症を始めとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るためのシンポジウム等を開催している。2019年4月6日には、「輝く人・照らす人」をテーマとしたシンポジウムを開催した。
また、世界自閉症啓発デーを含む4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」においては、全国の地方公共団体や関係団体等により様々な啓発活動が実施された。
高齢者、障害のある人、妊婦や子供連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人・団体に対して、内閣総理大臣及び高齢社会対策又は障害者施策を担当する大臣が、毎年度、表彰を行い、その優れた取組を広く普及させることとしている。2018年度においては、6団体を表彰した(図表1-1)。
有限会社 エクストラ
(静岡県静岡市)
【厚生労働省推薦
】
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社会福祉法人 愛知たいようの杜
(愛知県長久手市)
【愛知県推薦
】
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明石市
(兵庫県明石市)
【厚生労働省推薦
】
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合同会社 Chupki
(東京都北区)
【厚生労働省推薦
】
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藤巻 進
(静岡県富士市)
【静岡県推薦
】
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富士見高原リゾート株式会社
(長野県諏訪郡)
【長野県推薦
】
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ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進することを目的としたユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律(平成30年法律第100号)が2018年12月に公布・施行され、同法に基づき、2019年1月、関係行政機関相互の調整を行うための「ユニバーサル社会推進会議」を開催した。毎年1回、政府が講じたユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の実施状況を取りまとめ、公表することとしている。
2018年12月に、「全ての国民が、障害の有無、年齢等にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、障害者、高齢者等の自立した日常生活及び社会生活が確保されることの重要性に鑑み、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の推進に関し、国等の責務を明らかにするとともに、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の実施状況の公表及びユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の策定等に当たっての留意事項その他必要な事項を定めることにより、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進することを目的」としたユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律(平成30年法律第100号)が成立し、同月に公布・施行された。
2019年1月に、同法第13条に規定されている「ユニバーサル社会推進会議」を開催した。同会議においては、内閣府副大臣を議長として、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の実施状況の公表の方向性について決定するとともに、各省庁におけるユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の現在の取組等について情報共有を行ったところである。
今後も、同法に基づく「政府が講じたユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の実施状況の公表」など、関係省庁が連携しながら、ユニバーサル社会の実現に向けた取組を推進することとしている。
各種障害者施策の状況について積極的に情報提供していくことは、施策を進める上で欠くことのできないものである。
2012年5月に設置された「障害者政策委員会」は、全国の障害のある人を始め関係者の関心が高く、会議運営に当たっても情報保障の観点から、2018年度においても積極的な情報提供に配意している。
具体的には、会議の開始から終了までの全状況をインターネットによるオンデマンド配信として、動画、音声、手話及び要約筆記の文字情報により一定期間提供している。これに加え、会議資料を当日の会議開始と同時に内閣府のホームページに掲載するとともに、終了した会議については議事録を掲載している。また、障害者政策委員会の運営に当たっては、障害のある委員及び傍聴者の参画に資するため、視覚障害者のための資料の点字訳の提供、聴覚障害者のための手話通訳者の配置、要約筆記の提供、磁気ループの敷設などの配慮を講じている。
障害者基本法(昭和45年法律第84号)第13条に基づき、障害者のために講じた施策の概況について、毎年、政府が国会に提出する年次報告書である本「障害者白書」については、平成28年版障害者白書(平成27年度障害者施策の概況)より、視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のためのデジタル録音図書の国際標準規格として、近年用いられている情報システムである「マルチメディアデイジー(※)」版を作成し、内閣府のホームページにおいて公表している。
※:マルチメディアデイジー図書は、音声にテキストおよび画像をシンクロ(同期)させることができるため、使用者は音声を聞きながらハイライトされたテキストを読み、同じ画面上で絵を見る等、一人一人のニーズに合った「読み」のスタイルを可能にするもの(デジタル録音図書)。視覚障害者のほか、学習障害、知的障害、精神障害等のある人にとっても、今後も有効なツールとなっていくものと考えられる。
障害のある幼児児童生徒と、障害のない幼児児童生徒や地域の人々が活動を共にすることは、全ての幼児児童生徒の社会性や豊かな人間性を育成する上で意義があるだけでなく、地域の人々が障害のある子供に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっている。
このため、幼稚園、小・中・高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等において、交流及び共同学習の機会を設ける旨が規定されているとともに、教育委員会が主体となり、学校において、各教科やスポーツ、文化・芸術活動等を通じた交流及び共同学習の機会を設けることにより、障害者理解の一層の推進を図る取組等を行っている。また、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(2017年2月20日ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)に基づき、「心のバリアフリー学習推進会議」を設置し、2018年2月に交流及び共同学習の推進方策について提言を取りまとめた。提言を踏まえ、2019年3月に、学校において交流及び共同学習を行う際の参考となるよう、「交流及び共同学習ガイド」の改訂を行い、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校それぞれの観点からの取組事例を掲載した。
障害のある幼児児童生徒が、自立し社会参加するためには、広く社会一般の人々が、幼児児童生徒と教育に対する正しい理解と認識を深めることが不可欠である。
社会教育施設等における学級・講座等においては、障害のある人に対する理解を深めることを重要な学習課題の一つと位置付け、青少年の学校外活動や成人一般、高齢者の学習活動が展開されている。
また、精神保健福祉センターや保健所では、精神障害のある人に対する正しい理解を促すため、住民に対する精神保健福祉に関する知識の普及・啓発を行っている。
学習指導要領において、道徳、総合的な学習の時間及び特別活動等において、思いやりの心や助け合いに関する指導、ボランティア活動の充実などを図っている。
また、高等学校等においては、生徒が行うボランティア活動などの学校外における学修について、校長が教育上有益と認めるときは合計36単位を上限として単位として認定することが可能となっている。
ボランティア活動の振興の基盤整備については、全国社会福祉協議会内の「全国ボランティア・市民活動振興センター」へ補助を実施している。「全国ボランティア・市民活動振興センター」では、「ボランティア全国フォーラム」の開催などのボランティア活動等に関する広報・啓発活動、情報提供、研修事業等を実施している。
内閣府では、地域における共生社会の実現に向けた課題解決に対応できる人材育成を目的とした「地域課題対応人材育成事業『地域コアリーダープログラム』」を実施した。
このプログラムは、障害者関連、高齢者関連、青少年関連のそれぞれの3分野において、地域における社会活動に携わる日本の青年を海外に派遣するとともに、海外の様々な組織で活動する青年リーダーを日本に招へいして地域における課題の共有や意見交換等を通じて相互に交流することにより、我が国の地域社会活動の中核を担う青年リーダーの非営利団体の運営、国・企業・地方公共団体等との連携及び人的ネットワーク形成の方法等の実務的な能力の向上及び各国、各分野間のネットワークの形成を図るものである。
このうち障害者関連分野について、2018年度は、10月に日本青年9名(団長含む)をフィンランドに派遣し、2019年2月にドイツ、フィンランド及びニュージーランドの青年リーダー計9名を日本に招へいした。
障害のある人が地域において安全に安心して生活していく上では、公務員を始め公共サービス従事者等が障害及び障害のある人について理解していることが重要である。
警察では、警察学校や警察署等の職場において、新たに採用された警察職員に対する採用時教育の段階から、障害者施設への訪問実習、有識者による講話等、障害のある人の特性や障害に配慮したコミュニケーション等への理解を深めるための研修を行っている。
刑務所等矯正施設に勤務する職員に対しては、矯正研修所及び全国7か所の矯正研修所支所において、各種研修を行っているが、その中では、人権擁護、精神医学などの科目を設けて適切な対応の仕方について講義しているほか、社会福祉施設における介護等体験実習を実施するなどし、障害のある人に対する理解を促進している。
更生保護官署職員に対しては、各種研修において、職員の経験や業務内容に応じ、障害のある人や障害特性に対する理解を含む人権全般に関する知識等を深めるための講義や精神障害のある人等が入所する施設等の見学を実施するなどし、障害のある人に対する理解の促進とその徹底を図っている。
法務省の人権擁護機関では、中央省庁等の職員を対象として、人権に関する国家公務員等の理解と認識を深めることを目的とした「人権に関する国家公務員等研修会」を、また、都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象として、その指導者として必要な知識を習得させることを目的とした「人権啓発指導者養成研修会」を実施している。その中で、障害のある人をテーマとした人権問題も取り上げている。これらの取組を通して、障害のある人の人権問題を含む各種人権問題への理解と配慮の必要性を訴えている。このほか、検察職員、矯正施設職員、入国管理関係職員及び裁判官・家庭裁判所調査官に対する研修等に講師を派遣し、法執行機関及び司法機関の職員の人権問題に関する理解と認識を深めることに努めている。
日本司法支援センター(法テラス)では、本部の担当職員がサービス介助士の資格を取得し、全国の職員が参加する研修で、障害のある人への支援の方法や、利用者の立場を理解した丁寧かつ適切な対応方法等の知識を伝達し、各地の取組につなげている。さらに、各地で取り組んだ障害のある人への合理的配慮等を全国の職員間で共有することで、法テラス全体における職員の対応や事務所の環境の改善につなげている。
障害者による人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利の実現に向けた措置などを規定した障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)が、2006年12月の第61回国連総会において採択され、2008年5月に発効した。
我が国においては、この起草段階から積極的に参加するとともに、2007年9月に署名して以来、締結に向けた国内法の整備と国会承認を経て、2014年1月に批准書を国連に寄託し、同年2月から効力が発生している。
障害者権利条約は、障害に基づくあらゆる形態の差別の禁止について適切な措置を求めており、我が国においては、2011年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正の際、障害者権利条約の趣旨を基本原則として取り込む形で、同法第4条に差別の禁止が規定された。
この規定を具体化するものが障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)であり、障害を理由とする差別の解消を推進し、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的として、2013年6月に成立し、2016年4月から施行された。
対象となる障害者は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下「障害者差別解消法」という。)第2条に規定された「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」である。
これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえている。したがって、対象となる障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。なお、高次脳機能障害は、精神障害に含まれる。
障害者差別解消法は、国や地方公共団体などの行政機関等のほか、事業者も対象に含まれる。対象となる事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含む。)であり、個人事業者やボランティアなどの対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人なども、同種の行為を反復継続する意思をもって行っている場合は事業者として扱われる。
分野としては、教育、医療、福祉、公共交通、雇用など、障害者の自立と社会参加に関わるあらゆるものを対象にしているが、雇用分野についての差別の解消の具体的な措置(障害者差別解消法第7条から第12条までに該当する部分)に関しては、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の関係規定に委ねることとされている。
障害者差別解消法では、障害を理由とする差別について、「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」の二つに分けて整理している。
不当な差別的取扱いとは、例えば、正当な理由なく、障害を理由に、財・サービスや各種機会の提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為である。このような行為は、行政機関等であるか事業者であるかの別を問わず禁止される。
正当な理由となるのは、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが、客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。正当な理由に当たるか否かについては、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止など)及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持などの観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。
障害者やその家族、介助者等、コミュニケーションを支援する人から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、その実施に伴う負担が過重でない範囲で、社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの)を取り除くために必要かつ合理的な配慮を行うことが求められる。
この典型的な例としては、車椅子を使う障害者が電車やバスなどに乗り降りするときに手助けをすることや、窓口で障害の特性に応じたコミュニケーション手段(筆談や読み上げなど)で対応すること、障害の特性に応じて休憩時間を調整することなどがあげられる。こうした配慮を行わないことによって、障害者の権利利益が侵害される場合には、障害を理由とする差別に当たる。
過重な負担の有無については、行政機関等及び事業者において、個別の事案ごとに、事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)、実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況といった要素などを考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。
ただし、合理的配慮に関しては、一律に義務付けるのではなく、行政機関等には率先した取組を行うべき主体として義務を課す一方で、事業者に関しては努力義務とされている。これは、障害者差別解消法の対象範囲が幅広く、障害者と事業者との関係は具体的な場面などによって様々であり、それによって求められる配慮の内容や程度も多種多様であることを踏まえたものである。
障害者差別解消法第5条では、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、21障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上など)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための「環境の整備」として実施に努めることとしている (これには、ハード面のみならず、職員に対する研修などのソフト面の対応も含まれる。)。
前述した合理的配慮は、こうした環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。
また、障害者の状態などが変化することもあるため、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や障害者との関係性が長期にわたる場合などには、その都度の合理的配慮の提供ではなく、環境の整備を考慮することにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。
政府は、障害者差別解消法第6条の規定に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月閣議決定)(以下「基本方針」という。)を定めることとされており、障害者政策委員会(障害者基本法(昭和45年法律第84号)第32条に基づき内閣府に置かれている機関。障害者や学識経験者などを委員として構成されている。)における検討やパブリックコメントなどを経て、2015年2月24日に閣議決定された。
この基本方針に即して、国や地方公共団体などの行政機関等は、不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供に関し、その職員が適切に対応するために必要な「対応要領」を定めることとされている。このうち地方公共団体の機関等の策定は努力義務であるが、都道府県及び指定都市においては全て策定済みとなっている。
また、事業を所管する各主務大臣においては、基本方針に即して、不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供に関し、事業者が適切に対応するために必要な事項(相談体制の整備、研修・啓発等)や、各事業分野における合理的配慮の具体例等を盛り込んだ「対応指針」を定めている。
障害を理由とする差別については、国民一人ひとりの障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りに起因する面が大きいと考えられる。このため、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会を実現するためには、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下「障害者差別解消法」という。)で求められる取組やその考え方が、幅広く社会に浸透することが重要である。政府においては、同法の円滑な施行に向けた各般の取組により国民各層の関心を高め、障害に関する理解と協力を促進することによって、建設的対話による相互理解を通じた合理的配慮の提供等を促進していく。
内閣府では、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供や環境の整備に関する事例を関係省庁、地方公共団体、障害者団体などから収集し、障害種別や生活場面別に整理した上で、「合理的配慮の提供等事例集」として取りまとめている。
この事例集の活用を通じて、合理的配慮を始めとする障害者差別の解消に向けた取組の裾野が更に広がるとともに、障害者差別解消法に対する国民の理解が一層深まることが期待される。
障害者差別解消法第17条において、国及び地方公共団体の機関は、「障害者差別解消支援地域協議会」(以下「地域協議会」という。)を組織することができるとされている。地域協議会を設置することで、その地域の関係機関による相談事例等に係る情報の共有・協議を通じ、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止などを行うネットワークが構築されるとともに、障害者や事業者からの相談や事案に対し、地域協議会の構成機関が連携して効果的な対応、紛争解決の後押しを行うことが可能となり、差別解消に関する地域の対応力の向上が図られる。
都道府県及び指定都市においては全て設置済みとなっているが、現在未設置の市町村に対しても取組を後押しするため、課題整理などを支援する有識者等を内閣府からアドバイザーとして派遣している (2018年度は、山形県酒田市、埼玉県八潮市、千葉県習志野市、東京都渋谷区、同中野区、同昭島市、長野県諏訪市、愛知県岡崎市、和歌山県有田市及び沖縄県沖縄市へ派遣)。また、地方公共団体等の幅広い関係者の出席を得て、学識経験者による講演、地方公共団体による取組事例の報告、パネルディスカッション等を内容とする報告会を開催し、地域協議会の設置に向けた各地域における取組の促進と機運の醸成を図っている。
選択肢 | 計 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
都道府県 | 政令市 | 中核市等 | 一般市 | 町村 | ||||||||
数 | 割合 | 数 | 割合 | 数 | 割合 | 数 | 割合 | 数 | 割合 | 数 | 割合 | |
設置済み | 923 | 52% | 47 | 100% | 20 | 100% | 63 | 74% | 428 | 60% | 365 | 39% |
設置予定 | 167 | 9% | 0 | 0% | 0 | 0% | 7 | 8% | 78 | 11% | 82 | 9% |
設置していない | 698 | 39% | 0 | 0% | 0 | 0% | 15 | 18% | 203 | 29% | 480 | 52% |
計 | 1,788 | 100% | 47 | 100% | 20 | 100% | 85 | 100% | 709 | 100% | 927 | 100% |
事業者における障害者差別解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。
しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣又は地方公共団体の長等は、事業者に対し、行政措置を講ずることができるとされている(2018年度、主務大臣等による助言、指導及び勧告の行政措置の実績なし)。
岐阜市では、障害者差別解消法の理念と取組を広めるべく、障害者理解の啓発を推進するとともに、2018年度から、障害者理解を「合理的配慮」につなげていくための新たな取組を実施し、障害者差別の解消の加速化を図っている。
障害者団体との協働により、「障がいの理解啓発パンフレット」の作成や「白杖SOSシグナル普及啓発シンボルマーク」など障害者に関するマークの普及に取り組むとともに、障害者週間や発達障害啓発週間等において講演会や障害者スポーツ体験会、作品展等の啓発イベントを開催している。
自治会等の地域活動団体や学校、企業等における障害者配慮の好事例を収集、発信するとともに、好事例の一層の創出を図るため、地域活動団体や学校、企業等からの要請に応じ、配慮について助言等する「岐阜市インクルーシブアドバイザー」を派遣している。
アドバイザーには、障害者団体や高等教育機関、障害者雇用の実績のある企業に候補者の人選を依頼し、講習会を経て、2018年9月に15人に委嘱した。アドバイザーの派遣は、岐阜市内の自治会等の地域活動団体や学校、企業等からの申請(助言等を求める内容、配慮を必要としている人の障害の種別等を申請)を受け、岐阜市で対象となる障害や事案の状況を確認してアドバイザー2人を選定し、派遣(1回当たり2時間を限度)している。2018年の派遣実績は1件であるが、問い合わせや研修の講師としての派遣の要望等が寄せられている。
配慮の事例の収集、インクルーシブアドバイザーの派遣による更なる事例創出、事例集の発信により、市民一人一人が、それぞれの立場に立った配慮や身近にできる工夫に気づき、考えることで、障害の有無にかかわらず、誰もが生き生きと暮らす地域社会の実現を目指している。
2015年11月に閣議決定された「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」において、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、障害の有無等にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進することや、全国展開を見据えつつ、東京においてユニバーサルデザインの街づくりを進めることで、共生社会を実現し、障害のある人等の活躍の機会を増やしていくことが位置づけられた。2016年12月までの間に、多数の障害者団体が参画する分科会を12回開催し、分野毎の専門的な議論を行い、2017年2月、総理及び障害者団体の出席を得て、「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議(第1回)」を開催し「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を決定した。
・障害のある選手たちが圧倒的なパフォーマンスを見せる2020年東京パラリンピック競技大会は、共生社会の実現に向けて人々の心の在り方を変える絶好の機会である。
・「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」をすべての人が理解し、それを自らの意識に反映していくことが重要。
・この機を逃さず、国民全体を巻き込んだ「心のバリアフリー」の取組を展開するとともに、世界に誇れるユニバーサルデザインの街づくりを実現すべく取り組む(「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(以下「行動計画」という。)に記載された内容は、本白書に記載される様々な障害のある人にかかわる施策に反映されていくものである。)。
・障害のある人に関する施策の検討及び評価に当たっては、障害当事者が委員等に参画し、障害のある人の視点を施策に反映させることとする。
・2020年にこれら施策が確実に実現されるよう、関係府省等の施策の実施状況を確認・評価し、その結果を踏まえて関係府省等が施策を改善することにより、実行性を担保していくこととする。
行動計画で取り組む「心のバリアフリー」とは、様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことである。そのためには、一人一人が具体的な行動を起こし継続することが必要であり、そのために重要なポイントとして、以下の3点をあげた。
・障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること。
・障害のある人(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。
・自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。
「心のバリアフリー」を実現するための施策は、あらゆる年齢層において継続して取り組まれなければならない課題であるとともに、学校で、職場で、病院などの公共施設で、家庭で、買い物や食事の場で、スポーツ施設や文化施設など地域のあらゆる場において、また、日々の人々の移動においても、切れ目なく実現されなければならない。よって、以下の主な施策を含め、社会全般に渡って施策を展開することとした(図表1-5)。
我が国において、交通分野、建築・施設分野のバリアフリー化(情報にかかわる内容を含む)については、2006年以降、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)のもと、交通施設、建築物等の種類毎に目標を定め、個々の施設のバリアフリー化と地域における面的なバリアフリー化に全国的に取り組み、一定の水準まで整備が進んできた。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京大会」という。)は、こうした取組に加え、世界に誇ることのできるユニバーサルデザインの街づくりを目指して、更なる取組を行う好機である。
街づくりは極めて幅広い分野であり、かかわる施策も多岐にわたる。このため行動計画においては、大きく ①東京大会に向けた重点的なバリアフリー化と ②全国各地における高い水準のユニバーサルデザインの推進という2つの観点から、幅広い施策をとりまとめた(図表1-6)。
「ユニバーサルデザイン2020行動計画」では「心のバリアフリー」の実現のためには、一人一人が具体的な行動を起こし継続することが必要であるとしている。
2016年度に、以下3点の気づきを受講者に与えることを目的とする研修プログラムを、障害者団体・経済界協議会等の協力を得て作成した。
2017年度においては、個々人のマインドセットを促す入門編のツールとしてアニメーション教材を作成した。2018年度は、学校の授業や課外活動、公務員・企業・各種団体等の集合研修等において同教材を活用するための研修シナリオ例をホームページで公開し、積極的な活用を呼びかけた。
「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(以下「行動計画」という。)をもとに、関係省庁等が共生社会の実現に向けた諸施策を推進する中、2018年12月に「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議(第3回)(以下「関係閣僚会議(第3回)」という。)」を開催し、レガシーとしての共生社会の実現に向け、施策の更なる進展を図り、取組の加速化を確認した。また、障害のある人の視点を施策に反映させる枠組みとして、構成員の過半を障害当事者又はその支援団体が占める「ユニバーサルデザイン2020評価会議」を創設し、その意見に基づき行動計画の施策の更なる改善を図った。
◯小学校で2020年度から、中学校で2021年度から全面実施される新たな学習指導要領において、「心のバリアフリー」教育を充実。
◯パラリンピック教育を実施し、機運の盛り上げを推進。
◯2018年5月に高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第32号)が成立し、交通事業者によるハード・ソフト一体の計画策定、市区町村によるマスタープラン作成、交通機関等の利用者への情報提供等に取り組むとともに、国際パラリンピック委員会のバリアフリー基準を参照して、国内基準の見直しを実施。
◯鉄道駅等について、バリアフリールートの最短経路化や、利用状況に応じたエレベーターの複数化・大型化などを義務付け。
◯一定規模以上の宿泊施設の新築時などの車いす使用者用客室の設置数の義務付けを、現状の1室以上から建築する客室総数の1%以上に引き上げ。
JIS Z8210「案内用図記号」は、言語ではなく目で見ただけで案内を可能とし多くの公共交通機関や公共施設等で広く使われており、ピクトグラムとも呼ばれている。本規格は、2002年に開催されたサッカー日韓ワールドカップを契機に、日本人だけでなく外国人観光客の円滑な移動誘導を目的とし、理解度・視認性テスト等を経て経済産業省が制定した。
今般、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、より多くの外国人観光客が訪日することが見込まれることから、あらゆる人にとってより分かりやすい案内用図記号とするため、2016年から2017年にかけてJIS Z8210の改正を検討した。JIS Z8210原案作成委員会では関係省庁、観光業界、障害者団体等の幅広い関係者を含め図記号の内容を検討し、経済産業省の審議会である日本工業標準調査会(JISC)の審議を経て、2017年7月20日にJIS Z8210を改正した。具体的な改正内容としては、既存の図記号についてISO規格との整合化を図るとともに、ヘルプマークなど新たに図記号を追加した。
2019年2月20日には、以下3種類のトイレに関する案内用図記号を追加した。訪日外国人の大半が外出先で洋風便器や温水洗浄便座の付いたトイレを選択する傾向にあり、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催などにより増加が見込まれる訪日外国人観光客をはじめ、全てのトイレ利用者にとってより分かりやすい案内表示が行われることが期待される。
2020年東京パラリンピック大会(以下「東京大会」という。)を契機に、レガシーとして共生社会を実現することが重要である。このため、政府レベルの取組としては、2017年2月に「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(以下「行動計画」という。)を策定した。また、障害のある人の視点を施策に反映させる枠組みとして「ユニバーサルデザイン2020評価会議」を2018年12月の「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議(第3回)」にて設置したところである。
この行動計画に基づく取組とあわせて、地域でのユニバーサルデザインへの自立的なきめ細かい取組を促すため、パラリンピアンとの交流をきっかけに、共生社会を実現するべく、「共生社会ホストタウン」制度を2017年11月に創設した。2019年1月現在13件※が登録されている。
共生社会ホストタウンの取組は、以下の二つの柱から構成される。