深切(しんせつ)な医者(いしゃ)の助(たす)けで、芳一(ほういち)の怪我(けが)はほどなく治(なお)った。この不思議(ふしぎ)な事件(じけん)の話(はなし)は諸方(しょほう)に広(ひろ)がり、たちまち芳一(ほういち)は有名(ゆうめい)になった。貴(とうと)い人々(ひとびと)が大勢(おおぜい)赤間(あかま)ヶ(が)関(ぜき)に行(い)って、芳一(ほういち)の吟誦(ぎんしょう)を聞(き)いた。そして芳一(ほういち)は多額(たがく)の金(きん)員(いん)を贈(おく)り物(もの)に貰(もら)った――それで芳一(ほういち)は金持(かねも)ちになった……しかしこの事件(じけん)のあった時(とき)から、この男(おとこ)は耳(みみ)無(なし)芳一(ほういち)という呼(よ)び名(な)ばかりで知(し)られていた。