まえ住職じゅうしょくかえってた。いそいですぐにうら縁側えんがわところくと、なにんだかねばねばしたものをみつけてすべり、そして慄然ぞっとしてこえをあげた――それは提灯ちょうちんひかりで、そのねばねばしたもののであったことたからである。しかし、芳一ほういち入禅にゅうぜん姿勢しせいでそこにすわっているのを住職じゅうしょくみとめた――きずからはなおをだらだらながして。

可哀かあいそうに芳一ほういち!』おどろいた住職じゅうしょくこえてた――『これはどうしたことか……まえ怪我けがをしたのか』……

 住職じゅうしょくこえいて盲人もうじん安心あんしんした。芳一ほういちきゅうした。そして、なみだながらにそのよる事件じけん物語ものがたった。可哀かあいそうに、可哀かあいそうに芳一ほういち!』住職じゅうしょくさけんだ――『みなわたし手落ておちだ!――ひどわたし手落ておちだ!……まえ身体からだじゅうくまなく経文きょうもんいたに――みみだけがのこっていた! そこへ経文きょうもんこと納所のうしょまかしたのだ。ところで納所のうしょ相違そういなくそれをいたか、それをたしかめておかなかったのは、じゅうじゅうわたしるかった!……いや、どうもそれはもういたかたのないことだ――出来できるだけはやく、そのきずなおすより仕方しかたがない……芳一ほういちまアよろこべ!――危険きけんいままったくんだ。もうとあんな来客らいきゃくわずらわされることはない』