芳一(ほういち)は石(いし)のように静(しず)かにしていた――すると苦情(くじょう)を云(い)うような声(こえ)で――
『返事(へんじ)がない!――これはいかん!……奴(やつ)、どこに居(お)るのか見(み)てやらなけれやア』……
縁側(えんがわ)に上(あが)る重(お)もくるしい跫(あし)音(おと)がした。足(あし)はしずしずと近寄(ちかよ)って――芳一(ほういち)の傍(はた)に止(とま)った。それからしばらくの間(あいだ)――その間(あいだ)、芳一(ほういち)は全身(ぜんしん)が胸(むね)の鼓動(こどう)するにつれて震(ふる)えるのを感(かん)じた――まったく森閑(しんかん)としてしまった。