日没にちぼつまえ住職じゅうしょく納所のうしょとで芳一ほういちはだかにし、ふでふたして芳一ほういちの、むねあたまかおくび手足てあし――身体からだじゅうどことわず、あしうらにさえも――般若はんにゃ心経しんぎょうというきょう文句もんくきつけた。それがむと、住職じゅうしょく芳一ほういちにこういつけた。――

今夜こんやわたしったらすぐに、まえ縁側えんがわすわって、っていなさい。するとむかえがる。が、どんなことがあっても、返事へんじをしたり、うごいてはならぬ。くちかずしずかにすわっていなさい――ぜんじょうはいっているようにして。もしうごいたり、すこしでもこえてたりすると、まえりさいなまれてしまう。わがらず、たすけをんだりしようとおもってはいかぬ。――たすけをんだところでたすかるわけのものではないから。わたしとおりに間違まちがいなくしておれば、危険きけんとおぎて、もうわいことはなくなる』