すぐそのよくばん芳一ほういちてらしてくのをたので、下男げなんたちただちに提灯ちょうちんをともし、そのあとけた。しかるにそれがあめばん非常ひじょうくらかったため、てらおとこ道路どうろないうちに、芳一ほういち姿すがたせてしまった。まさしく芳一ほういち非常ひじょうはやあしあるいたのだ――その盲目もうもくことかんがえてみるとそれは不思議ふしぎことだ、何故なぜかとうにみちるかったのであるから。
おとこたちいそいでまちとおってき、芳一ほういちがいつもきつけているいえき、たずねてみたが、だれれも芳一ほういちことっているものはなかった。しまいに、おとこたち浜辺はまべほうみちからてらかえってると、阿彌陀あみだ墓地ぼちなかに、さかんに琵琶びわだんじられているおときこえるので、一同いちどう吃驚びっくりした。

ふたみっつの鬼火おにび――くらばん通例つうれいそこにちらちらえるような――ほかそちらのほう真暗まっくらであった。しかし、おとこたちはすぐに墓地ぼちへといそいでった、そして提灯ちょうちんかりで、一同いちどうはそこに芳一ほういちつけた――あめなかに、安徳あんとく天皇てんのう記念きねんはかまえひとすわって、琵琶びわをならし、壇ノ浦だんのうらの合いくさきょくたかしょうして。
その背後うしろ周囲まわりと、それからいたところたくさんのはか うえ死者ししゃれい蝋燭ろうそくのようにえていた。いまだかつてじんにこれほどの鬼火おにびえたことはなかった……