芳一ほういちはあまりに吃驚びっくりしてしばらくは返事へんじなかった、すると、そのこえきびしい命令めいれいくだすような調子ちょうしばわった――

芳一ほういち!』

『はい!』と威嚇いかくするこえちぢあがって盲人もうじん返事へんじをした――わたし盲目もうもく御座ございます!――どなたがおびになるのかわかりません!』

 見知みしらぬひと言葉ことばをやわらげてした、なにわがることはない、せつしゃはこのてら近処きんじょるもので、まえとこようつたえるようにいつかってたものだ。せつしゃいま殿様とのさまうのは、たいしたたか身分みぶんかたで、いまたくさん立派りっぱともをつれてこの赤間あかまぜき滞在たいざいなされているが、壇ノ浦だんのうらいくさ御覧ごらんになりたいというので、今日きょうそこを見物けんぶつになったのだ。ところで、まえがそのいくさ争のはなしかたるのが、じょうだということをおきになり、まえのその演奏えんそうをおきになりたいとの所望しょもうである、であるから、琵琶びわをもち即刻そっこくせつしゃ一緒いっしょとうと方方かたがたけておられるいえるがい』