あるなつよること

住職じゅうしょくんだ檀家だんかいえで、仏教ぶっきょう法会ほうえいとなむようにばれたので、芳一ほういちだけをてらのこして納所のうしょれてった。それはあつばんであったので、盲人もうじん芳一ほういちすずもうとおもって、寝間ねままえ縁側えんがわていた。この縁側えんがわ阿彌陀あみだ裏手うらてちいさなにわ見下みおろしているのであった。芳一ほういち住職じゅうしょく帰来きらいち、琵琶びわ練習れんしゅうしながら自分じぶん孤独こどくなぐさめていた。夜半やはんぎたが、住職じゅうしょくかえってなかった。しかし空気くうきはまだなかなかあつくて、うちではくつろぐわけにはいかない、それで芳一ほういちそとた。やがて、裏門うらもんからちかよってあしおときこえた。だれれかがにわ横断おうだんして、縁側えんがわところすすみより、芳一ほういちのすぐまえどまった――が、それは住職じゅうしょくではなかった。底力そこぢからのあるこえ盲人もうじんんだ――けに、無作法ぶさほうに、ちょうど、さむらい下下したじたびつけるようなふうに――

芳一ほういち!』