生まれて約4週間、特に最初の2週間は、赤ちゃんがお母さんの体内とはまったく違う環境の中で、自分の力で発育していくことに慣れる大切な時期です。
下記のような注意をしながら、母体を離れての生活に無理なく慣れ、人生の第一歩を踏み出せるようにしましょう。
◎赤ちゃんが過ごす場所
生まれたばかりの赤ちゃんは、乳を飲むとき以外はほとんど眠っています。清潔で静かな場所に、ゆったりと寝かせましょう。
また、医学的な理由で医師からうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあお向けに寝かせるようにしましょう。また、なるべく赤ちゃんを一人にしないようにしましょう。乳幼児突然死症候群(SIDS)や窒息、誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことにもつながります。
◎保温
赤ちゃんは、まだ、自分で体温を調節することがうまくできないので、部屋の温度はなるべく20℃以下にならないようにしましょう。ただし、室内の空気を新鮮に保つことを忘れないでください。
◎母乳
新生児には母乳が基本です。母乳栄養は赤ちゃんの病気を防ぎ、赤ちゃんとお母さんのきずなを強くします。特に初乳は赤ちゃんが初めて口にする食物としてかけがえのないものですから、ぜひ与えたいものです。母乳が出ないようでも、あせらずに、赤ちゃんが欲しがるにまかせて根気よく吸わせてみましょう。母乳の出を良くするには、お母さんが十分な栄養と休息をとることも大切です。
授乳中はテレビなどを消して、ゆったりした気持ちで赤ちゃんと向き合いましょう。
◎清潔
赤ちゃんの世話をする前に手を洗い、寝具、衣類、おむつはいつも清潔に保ちましょう。また、毎日沐浴を行い、皮膚を清潔に保ちましょう。かぜをひいた人が赤ちゃんに近づいたり、抱いたりしないなどの注意も大切です。
◎低出生体重児の届出、未熟児への医療の給付
出生体重が2,500g未満の低出生体重児については、出生後、市町村に届けることが法律で義務づけられていますので、忘れずに届け出ましょう。出生体重が2,000g以下の場合や、その他の異常がある場合、自宅訪問などの支援が受けられます。また、入院が必要な場合、医療給付が受けられる場合がありますので市町村に連絡をしましょう。
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◎赤ちゃんの具合が悪い時
母乳・ミルクをいつもより飲まない、発熱があって元気がない、下痢・けいれんがある、顔色が悪い、呼吸の様子がおかしい、強い黄疸があるなどの症状がみられたら、すみやかに医師の診察を受けましょう。
◎先天性代謝異常等の検査を受けましょう
すべての新生児を対象として、血液を用いてフェニールケトン尿症などの先天性代謝異常検査や先天性甲状腺機能低下症のスクリーニング検査が行われています。これらの病気は早期に発見された場合、特殊ミルクや甲状腺ホルモン薬などで治療することができます。検査結果の異常が通知された場合には、すみやかに医療機関で受診しましょう。
◎新生児聴覚検査を受けましょう
赤ちゃんは産まれてから、色々な音を聞いたり、声を出したりして、話し始めるための準備をしています。ことばの発達の上で、とても大切な時期です。生まれつき、聴覚に何らかの障害を持つ赤ちゃんは1,000人に1~2人といわれています。出生後早期(おおむね3日以内)に、赤ちゃんが眠っている間に行う聴覚検査があります。耳の聞こえについて気になるときは、医療機関などに相談しましょう。
◎視覚の発達について
視覚は生まれてから発達します。新生児は、視線が定まらずぼんやりと外界を見ていますが、見続けることで視覚が次第に発達します。生後1か月から1歳6か月頃は特に視覚の発達が盛んな時期なので、この時期に両目でモノをしっかりと見ることが大切です。
ひとみが白い・光ってみえる、目が開かない、片目ずつ目の前にそっと手をかざすと片方だけ嫌がって顔をそむける、目つきが気になるといった症状が見られたら、眼科を受診しましょう。
目の健康を調べるチェックシート
※日本視能訓練士協会(http://www.jaco.or.jp/wp-content/themes/jaco_renew/assets/pdf/check.pdf)
◎乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防のために
SIDSとは、それまで元気だった赤ちゃんが睡眠中に何の前ぶれもなく亡くなってしまう病気です。原因はわかっていませんが、下記のような点を日頃から心がけることで、この病気の発生を減らせることがわかっています。
1 赤ちゃんを寝かせるときは、あお向け寝にしましょう。
ただし、医学的な理由から医師がうつぶせ寝を勧める場合もあるので、このようなときは医師の指導を守りましょう。
2 妊娠中や赤ちゃんの周囲では、たばこを吸ってはいけません。
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3 できるだけ母乳で育てましょう。
◎赤ちゃんを激しく揺さぶらないで(乳幼児揺さぶられ症候群について)
赤ちゃんは激しく揺さぶられると、首の筋肉が未発達なために脳が衝撃を受けやすく、脳の損傷による重大な障害を負うことや、場合によっては命を落とすことがあります(乳幼児揺さぶられ症候群)。赤ちゃんが泣きやまず、イライラしてしまうことは誰にでも起こり得ますが、赤ちゃんを決して揺さぶらないでください。万が一、激しく揺さぶった場合は、すぐに医療機関を受診し、その旨を伝えましょう。
※赤ちゃんが泣くのは?
言葉を話すことができない赤ちゃんは、泣くことにより、おなかがすいた、おむつが汚れた、だっこしてほしい、暑い、寒いなどと伝えてきます。お母さんやお父さんは一緒にいると徐々に泣き方で分かってきます。おむつを替えたり、おっぱいを飲ませたり、だっこしたり、静かな環境にしたりなどしても赤ちゃんが泣きやまない時は、イライラしてしまいがちです。そのようなときは、深呼吸をしたり、安全な所に赤ちゃんを寝かせてその場からいったん離れたり、誰かと言葉をかわしたりなどして、気分転換をしてみましょう。たいていの赤ちゃんは泣き疲れて眠ってしまいます。もし、心配な事があれば、かかりつけ医などに相談しましょう。
※厚生労働省広報啓発DVD「赤ちゃんが泣きやまない~泣きへの対処と理解のために~」ホームページ
(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/nakiyamanai.html)
◎新生児訪問や乳児家庭全戸訪問(こんにちは赤ちゃん訪問)など
保健師や助産師などが自宅を訪問し、赤ちゃんの発育状況の確認、お母さんの健康相談、育児相談、子育て支援に関する情報提供などを行っています。赤ちゃんが生まれたら、早めに出生通知のハガキを市区町村に郵送しましょう。
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