ある小さな村に元気なマダムが住んでいました。
マダムは子どもが大好きで、いつも一緒に遊んでいました。
子どもたちも、マダムのことが大好きでした。
でも、子どもたちがもっと好きなのは、マダムの作ってくれる料理でした。
ある日、マダムが料理を作っていると、一人の女の子が言いました。
「この料理がお家でも食べられたらいいのに…」
それを聞いて、マダムはぴこーんとひらめきました。
「この子たちが、お家でも自分で作れるように、
ここの料理をレシピにしよう!」
マダムは一週間かけて、
いままで作ったレシピを、一冊の本にして、子どもたちに渡しました。
「これで、お家でもマダムのご飯が食べられるの!?」
「そうよ、作ってみて」
マダムはにっこり。
ところが、一人の少年が言いました。
「レシピだけもらったって、ひとりじゃ作れないよ!」
子どもたちはしょんぼり。
こまったマダムは、村長さんに相談しました。
「子どもたちと一緒に作ったらいいのではないかの?」
「あら、そうですねぇ!!」
マダムはおおいそぎで、料理の道具をたくさん買ってきました。
マダムは子どもたちをよぶと、
「さぁ、今日はみんなで料理をするよ」と笑顔で言いました。
マダムは子どもたちに料理を教えました。
子どもたちの顔に笑顔がひろがりました。
「マダム!ぼく、昨日お母さんにご飯を作ってあげたよ!」
ひとりじゃ作れないと言った少年が、笑顔でいいました。
子どもたちは、自分たちの家族に
レシピ本にのっている料理を作ってあげるようになっていきました。
やがて子どもたちは大人になり、
それぞれ結婚をしたり、
村をでて一人で暮らすようになりました。
みんな大人になったけど、
子どものときとかわらないものがひとつあります。
それはね
茶色く古びたレシピ本が台所に置いてあったことなんです。
おしまい