広島大会 学部・寄宿舎研究会

 


乳幼児教育相談研究会

京都府立聾学校 小宮山 邦枝

助言者に齋藤佐和先生(目白大学)をむかえ『豊かにコミュニケーションする力を育てる指導の在り方』をテーマに研究会が行われた。まずはじめに「乳幼児教育相談における支援センターの役割について−広島県の新生児聴覚検査の状況を中心に−」のレポート報告が行われた。広島では平成15年度より、広島県聴覚検査事業を実施し聴覚障害確定から早期支援機関までの流れは整ってきている。平成21年度よりこの事業は完全に県から市町に移管する予定であり学校としてrefer後の支援の役割は大きくなりそうである。

次に授業者より乳幼児教育相談のとりくみが報告された。10年前から手話を取り入れ豊かなコミュニケーションを育み、日本語に結びつけていくとりくみを行っている。乳幼児教育相談は専任体制ではなく、担当者は他学部の授業をしながら教育相談業務として乳幼児教育相談を行っている。担当者の多忙化の解消や経験の蓄積など課題が多い。参加者からも改善すべきとの声が上がっていた。午前中の公開授業は2歳児のグループ指導(週1回)の自由遊び・ルーティン活動・テレビを見ながらの活動場面であった。自由遊びでは大きい風船を親子でふくらませ、風船つきをしたり大きな布の上にのせてふわりふわりと動かしたりしていた。又、子どもたちは布の下に入りパラバルーンの様に上下する布の動きを楽しみ活動していた。テレビに映ったのは実際に動物園に行った時に撮った写真なので、とても良い表情でさわりにいったり、模型の食べ物をあげたりして楽しんでいた。別室でのビデオ参観だったので子どもたちへの影響は少なく普段の活動や表情を見ることができた。

研究協議での質疑応答では指導者の言葉かけ・活動の広げ方・3歳児からの進路についてなどがだされた。最後に齋藤先生より助言をいただいた。

(1)実際に経験したものは子どもたちはより心が動く。今回の動物の写真は子どもたちが実際に見た物だからこそテレビにあれだけ興味をしめした良い活動であった。この時期は「実際に経験したもの」と「その場で楽しむもの」の両方が大切である。

(2)手話、聴覚活用、音声を総合的に活用するという方針なのでどれもきちんと使用してほしい。日常使用する手話は理解しているようである。同様に聴力はどの程度活用できているのか、発声が出ているので次は模倣を促し、それを自発語につなげていくはたらきかけを意識的にすることが大切である。

(3)それぞれの活動によってねらいは異なる。ルーティン活動では子どもたちが活動の予想ができるのでコミュニケーションに重点をおく事ができる。

コミュニケーションをしながらルーティン活動をどう展開していくか等具体的にお話をしていただいた。日々の実践に大切な内容がたくさんある有意義な研究会だった。公開授業、研究会で学んだ事を今後の実践に生かしていきたいと思う。


幼稚部研究会

兵庫県立こばと聴覚特別支援学校 三木 眞一

幼稚部研究会は、「豊かにコミュニケーションする力を育てるとともに、初歩的な読み書きにつなげる授業の在り方」をテーマに、広島国際会議場で行われました。

午前中は、広島南特別支援学校での公開授業「朝の会」(3歳児、4歳児)、指定授業「ようすのことば」(5歳児)を参観しました。

3歳児クラスでは、日付や曜日、お天気など先生からの質問に指文字と音声で答えていました。また、絵本の読み聞かせを楽しみながら、手話や指文字、音声を使って活発にお話をしていました。4歳児クラスでは、文字カードと指文字を使っての名前パズルに挑戦し、がんばって答えていました。

「ようすのことば〜どうぶつクイズ〜」の授業では、先生の描いた動物の絵カード(ぞう、きりん、フラミンゴなど)を手掛かりに、「ぞうのはなはながいよ」「きりんのくびはながいよ」など手話、指文字、音声で答えながら自分の経験や知っていることを話し合っていました。5歳児らしく子ども同士の会話も活発に行われていました。

午後の幼稚部研究会では、はじめに広島南特別支援学校のこれまでの取り組みの発表がありました。幼稚部では、幼児としての日常生活・活動の中で十分に関わって遊び、手話を中心に豊かに考え、コミュニケーションするとともに、朝の会、帰りの会の時間等を中心に、コミュニケーションしたことを日本語として定着させる時間をつくっていくことを大切にして取り組んでいることが報告されました。また、子どもの実態把握の方法、VTRの活用、遊びの環境作り、指導技術の継承の問題、音遊びの取り組み、手話から日本語習得への指導等についての報告がありました。その後、保育者から指定授業についての話がありました。

授業については、子どもの言語的課題設定のあり方、子どもたちからのことばを豊かに広げることの大切さ、幼児は子ども同士がやりとりをする中でことばを身につけていくことなどの意見が出されました。次に「豊かなことばにつなげるための環境作りをどうしているのか」「専門性を継承するためにしていること」を討議の柱にして活発な論議が交わされました。

最後に、山崎久子先生(県立広島大学)から今日の授業について、子どものことばの取り上げ方、音声言語と手話の使い分け等について助言があり、幼児期を担当する教師は、子どもの遊び、子どもの経験とことばの育ち等、専門性をいくつも持つことが必要であること、VTRの研修では視点が大切であること等、貴重な話を伺うことができました。


小学部研究会

東京都立大塚ろう学校 田中 温子

小学部では、幼稚部で手話をベースに築いてきた豊かなコミュニケーションの力や概念をベースに、日本後の獲得、学力の定着を目指し、「聴覚障害の特性を配慮した指導の専門性」「教科指導の専門性」という二つの大きな柱を立て、研究を進めておられました。

聴覚障害の特性を配慮した指導の中で、特に「日本語を定着させるための工夫」と「豊かなコミュニケーション」に着目し、実践から細かく分析されていました。

昨今、手話で、「豊かにコミュニケーションをする」ということはよく言われますが、「豊かな」とは、一体どのようなものを指し、どのようなものを目指すのか、ということが曖昧になっている気がします。しかし、広島南特別支援学校では、「豊かなコミュニケーション」について、低学年、中学年、高学年という発達年齢にそった「めざす子ども像」として明確に示しておられました。生活場面と学習場面のそれぞれで、どのようなコミュニケーションを望み、教員が配慮、支援するのかをまとめてあり、社会性や学力を育てていくための基盤となるコミュニケーション能力の大切さを学部として共通理解を図りながら指導に当たられていることが分かりました。

手話を基盤としたコミュニケーションの力を日本語に結びつけ、定着を図っていく指導については、特に指文字の使い方を工夫し、学校全体で共通して取り組んでおられるのが印象的でした。また、小学部研究のもう一つの柱である「教科指導の専門性」に関しては、近隣の小学校の研究会に定期的に参加して研修されているということで、広島南特別支援学校での多岐にわたる研修の厚さに感心させられました。

協議会では、子どもたちの生活をどのように言語化し、それを日本語の読み書きにつなげ、定着させていくかということも話題になりました。参加されていた先生方からも、各校でなされている自立活動や帰りや朝のわずかな時間でされている指導についてのお話を伺え、参考になりました。 研究テーマや指定授業の他に研究体制についての質問もありました。各学部の研究会以外にも、幼稚部から高等部までの縦割りで、教科研究会を月一回程度設定されていました。そこで明らかになった高等部でのつまずきを他学部へ返すことで、子どもたちの将来を見通した指導が可能になってきたとのことでした。

最後に、助言者の藤本先生が、言語指導と教科指導の結びつき、一つのことばに対するたくさんのなげかけ「すてことば」などを取り上げながら、研究の柱にも関る「ろう学校らしい指導」の重要性についてお話くださいました。


中学部研究会

愛知県立豊橋聾学校 山内 登志

中学部の研究会は、助言者に国立大学法人筑波技術大学の長南浩人先生を迎えて、「豊かなコミュニケーションに基づいた学力を高める授業の在り方」をテーマに、広島南特別支援学校中学部の研究と実践報告、指定授業の研究協議、指導助言という流れで会が進められた。

研究報告では、「聴覚障害の特性を考慮した指導の専門性」「教科指導の専門性」を研究の柱とし、生徒の実態把握や指導技術の工夫、豊かなコミュニケーションの力をはぐくむための取組が発表された。

今回の指定授業は2年国語『壁に残された伝言』である。最初に授業者である田畑美佐江教諭より教材観が述べられた。田畑教諭はこの単元で子供は自分に何ができるのかを考え、授業者は生徒の心を育てることができる教材であると話された。また授業の工夫として、導入時に当番の生徒が前時のまとめや本時の目標を言うことにしているという。これにより授業への意識を高め、6人の生徒たちが2グループに分かれて行う協同作業を通して、お互いが高め合えることを目指していることなどを述べられた。指定授業ではグループごとに司会者とライター、発表者を分担して本文の読解を通して伝言の文字が白黒逆転した理由をまとめていた。参観後の質疑応答では、それぞれのグループの生徒がワークシートにまとめた内容や前時の生徒の様子、先生の意図していた活動とその評価などについて質問があり、活発な意見交換が行われた。

研究協議では、「学力の向上を目指した授業づくり 中学生相応の思考が育つ言語活動をすすめるためには」を柱として協議が進められた。経験が非常に少ない生徒については、経験と学習内容を結びつけるよう各校で工夫していることや、今後も情報交換を行い授業づくりに役立てていくことを確認した。

指導助言では、長南先生から今回の指定授業の評価の視点は「分かりやすく説明しているか」であり、接続詞や指示詞により論理が展開され分かりやすくなることを説明いただいた。つまり接続詞や指示詞が上手く使われていると文の構成が良くなる。このため今回の授業では発表時に接続詞や指示詞を用いることを表現のルールとして取り上げ、展開されていた。これにより読みに能動性が出てきて、人に分かりやすく説明するための読みになっていくと説明された。また、読書力診断検査の結果を授業に生かす方法についても具体的に取り上げられた。生徒の作文を読むと接続詞や指示詞があまり用いられていないことがある。この傾向が読書力診断検査からも認められ、さらに小学部の段階から分かっているならば、重点的に指導していく必要がある。また、学習活動と生徒の発言内容、評価の視点をもつことにより、より目的に近づく授業ができることを御指導いただいた。


高等部研究会

福岡県立福岡高等聾学校 大谷 伸弥

高等部会は約70名の参加者で活発な意見交換が行われた。

高等部の研究テーマは「豊かなコミュニケーションに基づいて、主体的に学び、考え、行動する力を育てる授業の在り方」であり、最初に広島南特別支援学校から今回のテーマに基づいた研究の実践報告がなされた。その中で、「聴覚障害教育の専門性を活かした授業」を研究の柱とし、聴覚障害の特性を考慮した指導(多角的な実態把握・板書、発問、視覚的教材、日本語を定着させるための工夫、集団で思考を深めるための工夫)と教科指導(生徒につけさせたい力を明確にした授業作り・学習内容を定着させる工夫)という2つの専門性に基づいた指導計画・授業作り・行事運営がなされたこと、その成果として生徒自身が自分で学習できる条件を整えるようになり、積極的に意見を述べようとする生徒が増えてきたことについての報告があった。

その後、今回指定授業を行った英語科・佐藤先生、理容科・小松先生から授業についての報告ならびに質疑応答がなされた。佐藤先生は、日ごろ「英語」という授業の中でどう生徒間の対話を増やしていこうかを考えながら授業を行っていること、英語Uの内容が身近ではない内容が多いので、イメージを膨らませるために映像や具体物を使っていること、生徒同士が意見を言い合える場面を作るように心がけていることなどを報告された。

その後の質疑応答で対話のある授業として、「生徒同士の相談」を取り入れたことの効果についての質問があり、学部主事から「教師主導の授業ではなく、(生徒同士が)伝え合うことで、生徒も受け止められるし、その受け止めようという姿勢が社会に出た時に大切なのではないかという考え方で取り組んでいる。その結果、今日の授業でも見られたように生徒の積極的なやり取りなどにつながったと思う。」との回答があった。

小松先生は、日ごろ授業中に私語はするなと指導していたことから、「対話のある授業」を取り入れることに抵抗を覚えたが、生徒を送り出した理容店や実習先から言われていた「待ちの姿勢」がその導入によって変わったことにより、私語とは違う「対話」をどう取り入れるか考えるようになったとの報告をされた。

その後の研究協議のなかで、今回の指導助言者である広島大学の谷本先生が3年前に広島南校の高等部の授業を見たときに感じられた「教師主導の授業」、「説明中心の授業」に対して、生徒が主体的に参加する「対話のある授業」を取り入れてはどうかという提言から、今回の「対話のある授業の構築を目指して」という高等部のサブテーマを設けたとの説明がなされた。この「説明主義からの脱却・生徒主体の授業」というキーワードに多くの先生が反応され、各校での取り組みや現状などの報告や質問がなされ、盛会の中、分科会が閉会した。


寄宿舎研究会

茨城県立水戸聾学校 大橋 京子

午前中は寄宿舎見学の後、寄宿舎概要説明が行なわれた。舎生8名(全員男子)が生活している寄宿舎の教育目標、日課、年間行事について、また午後の研究会にもつながるもの作りの様子などについて説明を受けた。七夕会やクリスマス会では保護者や通学生も参加し賑やかに行なわれている。学習時間も寄宿舎オリジナルのプリントを作り生活に密着した課題を提供しているということであった。

午後は会場をアステールプラザに移し、開会式の後「豊かなコミュニケーションに基づいて一人一人の生きる力を育てる指導の在り方」というテーマのもとに研究の柱を@指導技術A豊かなコミュニケーションとして掲げて取り組んだ発表が行なわれた。

内容としては、平成15年度から1時間の活動の中で、身近な素材を使って玩具やはがき作りを続けている。題材は小学生には少し難しいと思われるものにして年間を通して同じ素材を使って関連性のあるものを行なっている。インターネットや本から資料を作っている。失敗例や成功例を比較して掲示し、失敗の原因を考えることなども含めて視覚に訴えている。更に、ものづくりをするその工程の中で、体験談を交えながら最低限、人としてやってはいけないことなどを教えている。協力して作業をする中で言葉遣いなども覚え異年齢間の会話やマナーが培われてきている。また、様々な道具の安全な使い方、作る楽しさや達成感を味わうことで豊かな生活につなげられるようになったという成果が発表された。 参加校の中には、スクールサポーターを募集しお茶やお花など外部講師としてお願いしている。また、話し合いをするときにはレジメを用意し事前に渡しておくなどの工夫点なども参考として挙げられた。

助言者からは、発表内容は視覚教材の工夫がなされ準備から完成までのプロセスの説明がよくできているので、完成のイメージが作りやすくなっている。また、話し合いにおいては異年齢間のため理解力に差があるが具体的内容で話し合う場を作り話す力を引き出せている。

寄宿舎の生活は生きる力につながっているので、教育目標・行事・生活などを関連付けながら子どもにどんな力を付けさせたいのか、事前によく話し合い計画して進めていくことが大切であるとのお話を頂いた。

私もこの研究会で学んだことを今後の指導にいかして生きたい。