熊本大会研究協議会

 

(1)総合的諸問題

岩手県立一関聾学校 鈴木 隆雄

本年度は,改正学校教育法が4月から施行され,「特別支援教育」がスタートし,法的には「聾学校」の名称が「特別支援学校」に変更された節目の年。大きな流れの転換期で「一関聾学校」という校名で全日聾研に参加することが最後という年でもあり,その意味からも思い入れと期待をこめて参加した分科会でした。

「聴覚障害児教育の現状と課題を明らかにし,その解決に向けて聾学校の在り方やこれからの聴覚障害教育の方向性について考える。」をテーマとした第1分科会は,「特別支援教育」という中での「いまの聾学校」「これからの聾学校」の在り方を顕著に反映した多様な分野からの発表が6本ありました。

基礎学力の向上につながる授業として情報機器を活用した数学の授業実践を発表した名古屋聾学校。幼稚部から高等部までの自立活動プログラムを3年間掛けて策定した内容を発表した大阪市立聾学校。高等部専攻科生徒の「発音・発語」学習の指導内容を発表した筑波大附属聴覚特別支援学校。カナダ・マニトバ聾学校との国際交流を通して生徒に将来の生き方に影響を与えた交流実践と重複障害児も一緒に体育大会の「集団演技」に取り組ませた実践の2本を発表した豊橋聾学校。全国唯一の幼稚部単独校としての取組みを発表した兵庫県のこばと聴覚特別支援学校。いずれの発表も聾教育における重要な内容と課題を提起するもので,一つ一つ時間を掛けて協議できる内容のものばかりでした。しかし,「総合的諸問題」という分科会の位置づけ上,発表内容に対して限られた時間内での質疑だけになってしまった点はいたし方がなかったかと思いました。協議の柱としては@聾学校の専門性A聴覚障害以外の障害を併せ有する子どもの対応B学部間のつながりの3つで協議されました。どの柱の内容も来年4月から病弱養護学校と統合して「特別支援学校」としてスタートする本校の現状と課題に通ずる内容が討議されましたが,踏み込んだ内容を参加者に提供し意見を聞けなかった点が残念でした。しかし,1・2歳の乳幼児に学籍を与え小規模学校ながら聴覚障害児の教育をさらに進めていこうとするこばと校の発表や第1分科会座長の筑波技術大学教授佐藤正幸先生から「これからの聾学校」という視点ではなく「これからも聾学校」という視点で考えたいという提起に強く印象に残りました。

来年4月から本校は統合され「特別支援学校」となりますが,聴覚障害児が少数となっても「これからも聾教育」という視点で,専門性の継承と更なる向上,多様化する子ども達への対応等聴覚障害児教育の充実と発展に取り組んでいく指針をたくさん得ることができた分科会でした。


(2)コミュニケーション

千葉県立千葉聾学校 上條 文裕

朝夕はめっきりと秋の気配を感じ、出発当日は雨模様の千葉から、いきなり30度以上の暑さの熊本に到着しました。地球温暖化といわれますが、こんなにも寒暖の差があるのかと驚きました。それと同様に、分科会では幼稚部段階から、コミュニケーションモードとして手話を導入し、日々の指導にあたっている聾学校の多さにも驚きました。時代の流れを感じると同時に、聾教育の現場におけるコミュニケーションの在り方が、ここ数年で大きな転換期を迎えていることは確かなようです。

このコミュニケーションの分科会では、言語力や学力の向上という視点ではなく、子ども達のコミュニケーション能力を高める指導・支援の在り方がテーマになっています。研究発表では、子ども同士のコミュニケーション能力を高めるための実践的な試みや工夫が発表されていました。

最初は平塚聾学校の佐渡先生の「コミュニケーションに主眼を置いた自立活動的な国語指導」という発表でした。児童の生育歴や学習環境等によって手話表現が違っていたり、相手にわかるように話すという基本的なルールが身についていなかったりという実態から、物語文について話し合う活動の結果、徐々に相手を認め合う気持ちや、日本語に対する興味関心が芽生え、コミュニケーション能力が高まっていったという実践報告でした。

次に佐賀県立ろう学校の中村先生は、「よりよく伝え合うために」という発表で、児童同士のコミュニケーションや障害認識の不足という実態から、自分の障害について考え話し合ったり、体験活動での一般の聴者とのコミュニケーションを経験したりして、児童自らがコミュニケーションのルール作りに取り組んだという報告でした。

どちらの発表も共通するのは、「自分の思いを相手に伝えたい、相手の思いも知りたい」というコミュニケーションの意欲を、どのように児童に気づかせ、高めていったかの研究でした。児童や生徒のコミュニケーション能力を高める上で大変参考になりました。

栃木県立聾学校の福田先生、井上先生の発表は「言語習得とコミュニケーションの広がりをめざした取り組み」で、「同時法」をめぐっての新たな取り組みについて報告されました。同時法は言語教育や口話の曖昧さを補う面では、大きな成果がありましたが、社会情勢や教育環境の変化、一般社会で使われる手話との違いから批判もあり、現在「同時法推進委員会」を設置し、同時法の見直しを進めているそうです。十数年前に私は栃木聾に伺ったことがあるので、今後、同時法がどのような見直しになるのか、注目してみたいと思います。 大分県立聾学校の伊藤先生は「手話力向上のとりくみ」で、教職員の手話力向上に向けて、全校挙げての取り組みの現状を報告されていました。本分科会に出席している他校の現状を聞くと、教職員の手話研修については、どの学校も校内の聾教員、又は聾団体から講師を招いて、定期的に手話研修を行っている実態がわかりました。

座長の小田先生から教員の研修に関して、指導内容を重視した傾向のものが多いが、子どもとのコミュニケーションをより良くするための研修が少ないとの指摘を受けました。また音声言語と手話との微妙な違いについての意見に対し、聾者は頭の中に日本語と日本手話を身につけており、状況に応じてスイッチを切り替えているという話をされていました。最後に子どもに合わせられる力量を持つ必要性と、コミュニケーションを自分の問題として捉えていく姿勢が教師には大切であるということを話されていました。


(3)自立活動I(日本語の読み書き)

茨城県立水戸聾学校 櫻井 裕美

「日本の社会の中で生きていく上で必要な日本語を読んだり書いたりする力を育成する指導法の在り方を考える」をテーマに7校の発表がありました。

発表はその都度の質疑応答で進められ,言語力の向上を目指した熱心な討論がなされました。又,午前と午後の最後には助言者である鳥越先生からの提案に沿って,多くの意見が出されました。午前の部は4校から発表がありました。一宮校からは『小学部「語い・文法〔品詞・構文〕指導表」を作成し,それを基に1・2年生に指導した実践報告』,附属校からは『小学部低学年の国語の教科書で使われている接続詞がどのくらい日記に使われているかの分析を行い,接続詞定着への具体的方法についての報告』,京都校からは『通級指導での取り組みを基礎言語が十分習得されてない場合と習得している場合に分けて整理した内容の報告』,三重校からは『手話等でのコミュニケーション力は高いが書記日本語でのコミュニケーション力が弱い児童への動詞活用定着の取り組み,文法の学習,文章の読みについての報告』がありました。午前中のまとめとして「系統的な言語指導と評価の在り方」について情報交換を行いました。系統的な言語指導については,いくつかの学校で参考になるものが作られ,成果も出てきているようですが,学年が上がるにつれ,暦年齢と言語力の差に開きが出ることが課題となっているようです。

午後の部は,3校からの発表がありました。千種校からは『小学部4年生を対象に行った「文法力」「表現力」の指導について報告』,静岡校からは『個の課題に焦点を当てて継続して行った国語の読み書きについての報告』,岡崎校からは『新聞コラム学習の実践を通して,言語力を高める学習の支援について報告』がありました。午後のまとめとして次の3つの内容で話し合いました。始めは「読み書きと話し言葉の関係」について,聾者の立場から意見が出されました。指導のポイントを絞った言語指導,日記の書かせ方等いくつもの意見が出され,聾者の立場からの見方の必要性を感じました。次は「読み書きの指導方法」について,参加校から,体験や心の育ちを大切にしながらの地道な取り組み,系統的な言語指導による取り組み,本人の内面を表現していく作文指導の取り組み等色々な方法が紹介されました。どれも子供達の言語力の向上を目指した充実した内容でした。最後の話題である「系統的日本語指導のカリキュラム」については,今後の課題として協議は終わりました。最後に鳥越先生から「言語は量と質」そのどちらも必要という助言を頂きました。子供達の気持ちにそして発達に合わせた言語指導を系統的にしかも自然な形で行い成果を出していく。責任の重さを感じる研究会でした。


(4)自立活動II(聴覚活用・聴覚補償工学)

大阪府立生野聾学校 中島 勝久

5本のレポート報告を中心に研究協議を深めた。 「学齢期の補聴器装用開始における配慮点と聴覚活用」の報告は、当初補聴器装用をためらっていた小学校高学年の中軽度難聴児が、補聴器の試聴を通して装用に至った事例であった。補聴器選定では、騒音抑制機能効果の検討が有効であり、語音検査を通じて、何よりも補聴効果を子ども自身が実感し、聞こえの向上を自らが認識することへの配慮が大切になされていた。補聴器装用指導の一方で、学級担任や周囲の子どもへの理解・啓発等、一般学級への適応を支援する実践も報告され、その重要性も明確となった。

両耳小耳症の幼児の聴覚検査と骨導補聴器の活用」の報告は、乳幼児期の遊技聴力検査で玩具等に工夫しながら興味・関心を持たせて早期に裸耳閾値を確定した事例であった。協議では、外耳道閉鎖のある場合であっても気導検査を実施する意義、骨導レシーバの装着位置やカチューシャ式ヘアバンドの圧によって閾値が変動することなどから閾値測定や語音検査をもとにした出力調整の意義について話し合われた。今後の課題として、騒音との関係やデジタル骨導補聴器の効果を調べることなどに話が及んだ。

「本校における自立活動の実践」は、教育オーディオロジーの業務内容を整理し、聴覚管理、聴能評価、聴覚学習のほか、音環境や施設設備の整備の重要性を指摘した報告となった。関係機関との連携では、新生児聴覚スクリーニング検討委員会等の機能の確立や聾学校がどうスクリーニングに関わっていくのかといった課題も提起され協議された。

「重複障害児の主体性を高める聴覚学習の実際」は、重複障害児への教材・教具を工夫した丁寧な実践報告で、とくにネオプレ(福岡県教育センターで開発したICタグを使用したスライド提示装置)を活用した聞き取り学習が、子どもの主体的な活動を促す実践例として紹介された。

「『補聴器ハンドブック』作成の試み」は、保護者及び教員を対象にした補聴器の管理に関する基礎知識から聴覚活用の意義まで幅広く活用できる冊子を校内の聴覚活用委員会で作成した報告であった。保護者への説明に活用したほか、小学部や中学部、歯科技工科における自立活動の取り組みにも活用したという実践と結びついたものであった。協議の中では、補聴器を自己管理するカリキュラム作成の課題も指摘された。

全体を通して、補聴器適合の評価にとどまらず、生活全般での聴能評価が重視され、子どもの実態に応じた聴覚活用、自己管理の課題についても論議や協議がすすんだことは意義深い。


(5)自立活動III(障害認識)

福島県立聾学校 飯塚 和也

「聴覚障害児の自己肯定感を高める“障害認識”の在り方と教師の障害認識に基づいた指導の方法について考える。」というテーマのもと、研究発表は、5本あった。兵庫県立こばと聴覚特別支援学校では、平成12年度から手話を取り入れた指導がなされるようになり、その後聾教員が転任してから、どのような取り組みがなされたか発表された。子供たちの周囲に手話という目に見える会話がある事で、他者の会話を見て話しの中に入るようになった事や手話導入により子供同士や母子の心理的安定につながっている事は大きな研究の成果であると感じた。秋田県立聾学校の発表では、中学部生徒に対する自己理解と他者理解を相互に深めるための実践についての発表がなされた。障害を持っているという意識から自分に自信が持てない中3のA君が、職場体験でロールモデルとなる卒業生と出会い、変容していく様子の発表に、ロールモデルの存在の大きさを改めて実感した。平塚ろうでは、美術科授業で、作品制作の活動と共に自立活動の「コミュニケーション能力の育成」を目指した実践の紹介があった。高等部の生徒が自ら作成した豆絵本を幼稚部の子供たちに一生懸命読み聞かせする様子が紹介され、聾学校だからこそ行う事のできる高等部生徒と幼稚部の幼児のふれあいを通した実践は、聾として生きていく集団の大変自然な係わりのよう見えました。千葉聾では、特別支援教育コディネーターという立場で、通級指導教室に通う児童生徒が自らの障害を受容し、クラスの子供たちにも理解をもとめる実践の紹介がなされた。難聴児が自らの障害を肯定的に捉ていけるようにと大変丁寧な指導がなされている事が分かった。また、難聴児が自らの障害をクラスメートに理解してもらうための取り組みをビデオで見せていただいたが、生き生きと学習に取り組む児童生徒の様子が見られ大変興味深かった。福岡聾では、昨年度から行ってきた障害認識に関する研究についての発表があった。研究を始めた頃は、職員の「障害認識」に関して捉え方がばらばらであったが、研修を深めるにつれて共通理解することができたという事であった。また、この研究を通じて作成された発達段階表の説明もあったが、子供の障害認識がどのように発達していくのかを考える上で、大変参考になる表であると思った。西垣先生からの指導助言の中で、「障害認識」と言うことばを今一度しっかり捉える事が大切であるというお話しがあった。「障害受容」と「障害認識」の意味の違いの説明をしていただいたが、「障害認識」と言うことばを、理解しているようでまだまだ深いところまで理解していないことに気づかされるお話しであった。「障害認識」と言うことばの重みと深さを考えさせられるお話しであった。


(6)早期教育(3歳未満)

兵庫県立神戸聴覚特別支援学校 高木 倫子

早期教育T(3歳未満)の分科会は、南村洋子先生を座長として進められました。「今日の新生児聴覚スクリーニングによる早期教育支援体制の充実や人工内耳装用児、重複障害児の増加等による多様な教育的ニーズへの対応が必要な現状を踏まえ、これからの早期教育の在り方を考える」というテーマにそって、6校からの発表がありました。

筑波大附属校の「乳幼児の補聴器装用支援」についての発表は、今までの事例記録を丁寧に分析し、検討されてきた中から見えてきたことと今後の課題を明らかにされた興味深いものでした。安定しにくい乳幼児の補聴器装用の要因として、母子関係や聴力の他に乳幼児という年令による行動も考えられ、それを踏まえた上での支援の必要性を報告されました。乳幼児の発達・行動様式を正しく理解して保護者に対応することが求められます。

長崎ろう校からは「新生児聴覚スクリーニングで発見された子どもの母親支援」についての発表でした。具体的事例をあげて、実際の支援内容とポイントとなる観点を4段階に分けたもので、ステップアップしていく様子がよく整理してまとめられていました。学校と医療機関との連携もスムーズに行われていることがうかがえました。

兵庫県こばと校は「家庭用配布ビデオ教材の作成と実践」について、実際にビデオを見ながら報告されました。10年前から続けているこの取り組みは、取り上げる内容や方法について毎年検討を重ねてきており、今回は手遊びや歌の他にも行事の事前・事後の活動、絵本の読み聞かせなど幅広い内容の興味深いものでした。発表の後も他校から多くの関心が寄せられていました。継続的な実践に基づいた貴重な報告でした。

宮城ろう校の「乳幼児教室の現状と課題」についての発表は、多様な保護者のニーズに応える支援のあり方として、関係機関との連携が印象的な報告でした。ヒヤリングセンターや医療機関、地元の大学との相互連携を図り、保護者勉強会や諸機関との合同研修会など、積極的に専門家の支援を取り入れている報告はとても参考になったと思います。

福岡県久留米聾校からは「エピソード記述について」の発表でした。母子との関わりの中で感じた小さなエピソードを通して、保護者から「気づき」を与えられ、学ばされることの多さと大切さを報告されました。教師の姿勢として、改めて襟を正す思いでした。

最後に、参加者全員が一言ずつ感想や意見を述べたあと、座長の南村先生からまとめの助言をいただきました。「0歳で障害が発見される時代になったが、初めて聾学校に来る母親たちは心に傷をもってさまよっている。傷の深さに関係なく、その心が癒えるような支援をしていくことが乳幼児相談の最も大きなテーマである」と結ばれました。乳幼児に関わるものとして、参加者全員がその言葉の重さをしっかりと受け止めたことと思います。


(7)早期教育(幼稚部教育)

筑波大学附属聴覚特別支援学校 関根 英子

幼稚部教育の分科会は「幼児が主体性を発揮し、生き生きと活動できる保育環境について考える。」というテーマのもと、6件の発表がありました。絵本への取り組みに関わるものが2件、授業分析の結果から検討されたものが2件、そして集団や個別の指導方法についてまとめたものが2件でした。どの研究も目の前にいる幼稚部の子ども達に、毎日どのように支援していったらよいのかを、真摯に考えていこうとするものでした。その一つ一つが大変勉強になるものでしたので、簡単ではありますがご報告したいと思います。

まず絵本については、本大会主管校の熊本聾学校幼稚部指定授業にも「絵本の読み聞かせ」がありましたが、「絵本が好きな子になって欲しい」「絵本が読める子になって欲しい」という願いと関心の高さを強く感じました。読み聞かせの工夫には、パネルシアターやペープサート、拡大した大型の紙芝居、パソコンで作成した絵本などがあり、楽しみながら内容を深く理解させるために、子ども達や教員による劇遊び、保護者による劇という取り組みも報告され、細やかな手だての大切さが確認されました。想像力やイメージをふくらませ心豊かに成長していけるよう、様々なジャンルの絵本をたくさん読むことも必要であろうという助言者からのお話もありました。

次に授業分析を行い検討した発表では、多大な時間と労力をかけたもので驚かされると共に、良い面だけではなくマイナス面の細かなところまでつかむことができ大変有意義なものであることが実感されました。授業分析を踏まえての実践例では、いろいろな事情をもつ子ども達一人一人の素晴らしい成長を知ることができました。そして参加者からは、指導の細かな内容や保護者への支援についての質問が出され、日常の授業の内容がいかに大切であるか考えさせられました。

最後に3学年合同での指導法と個別に行う指導法についての発表がありました。集団と個別という違いはあっても、どちらとも子どもを主体とし一人一人に合わせた対応を考え支援していくという点では一致しておりました。大勢の中であっても発達段階に合う遊びは一人一人が楽しむことができ、一方1対1で充分に認められるという経験を持った子どもはその自信を土台にし集団でのやりとりができるようになっていくという示唆がはっきりと浮かび上がってきました。

今回の分科会を通して私は、目の前の子ども達のより良い成長のために、毎日の指導技術を高めるための研鑽や丁寧な教材研究が何より大事であることを改めて痛感いたしました。ご発表いただいた先生方並びにご参加くださった先生方に、心から感謝申し上げます。


(8)学力の保障(教科指導)

東京都立立川ろう学校 古川 龍夫

「幼児・児童・生徒が自ら学び、継続して基礎的な学力を伸ばせるための学部・学校としてのあり方、及び授業のあり方について考える」というテーマのもと、44名の参加者で予定通り行われました。10本のうち7本がパワーポイント、1本がe−黒板を使っての発表、誌上発表は2本でした。写真やビデオや具体物を交えながらの分かりやすかったです。

初めの3本は理科系の指導に関するものでした。岡崎聾学校は、量の感覚を身に付けるための指導でした。量の感覚を育む授業展開の工夫、さらに量の感覚を身に付けるには多くの時間を使う必要があり、その手立てとしてクイズ形式の算数コーナーの設置などの実践発表がありました。大変興味深いものであり、先生の熱意が窺えました。

葛飾ろう学校は、葛飾算数数学検定(KSK)の作成と実践でした。作成は校内の数学科の教員が協力して取り組んだ。KSKを実施した結果、高等部段階になると計算では学力差が大きくなる。図形、文章題になるとさらに偏りが大きくなることが、表やグラフにより説明されました。どの内容でつまずいているのかが分析できるようになったなど報告がありました。つまずいた内容を明らかにして今後の指導に活かしていくことはとても意義があることだと思いました。

静岡聾学校は、授業における形成的評価と、思考を助ける板書の工夫でした。学習内容を授業内でしっかり定着を図る大切さである。個々の生徒の日本語の課題を把握し、授業の中で活かし、板書を構造化していくことが学習内容の定着と日本語を向上化つながるという内容でした。授業の中での教師の「気づき」の大切さ、「つぶやき」が子どもたちの中から生まれる授業展開など感嘆しました。

これら理数系に関する発表に対しては5件ほどの質問があり、活発な質疑応答がありました。その後、意見や感想を言う時間が設けられました。これからの理数系学習の指導に役立つ内容だったように思います。

休憩をはさんだ後、2本の人文系の発表がありました。 北海道高等聾学校は学習教材の発表でした。パワーポイントや拡大コピー機で作った教材や創意工夫されたイラスト教材が紹介されました。生徒の実態に合った教材が生徒の意欲、主体性を育み、学力につながると報告がありました。教材発表の中で、先生の自作教材の似顔絵がすばらしかったです。自分の得意とするところで教材作りを取り入れることが魅力或る授業につながると思いました。

大塚ろう学校は日本語文法テスト(J.COSSV)を使った児童の日本語文法力の把握を指導の発表でした。指導事例を通して、子どもたちの日本語の構文力の弱さと授業で構文力を付ける指導が報告されました。ろう学校の子どもの問題点をつかむことの大切さを教えていただきました。

午後からは文科系の発表が3本ありました。名古屋聾学校は、e−黒板を使っての国語の授業の様子の発表でした。e−黒板を使う時のメリット、生徒が学習に興味を持つようなるなどの変容の様子、難しい意味を理解するようになったことなど数年間に渡るきめ細やかな研究がされていました。生徒の思考力や想像力を育むために何(教材など)をいつ見せるかが重要になることを示唆していただきました。教材の提示などの活用方法は、日頃の指導に役立つばかりでなく、授業の取り組む姿勢を振り返る機会になりました。

広島南特別支援学校は、ろう学校における専門性をふまえた授業改善についての発表でした。ろう学校の専門性とは。障害の特性を考量した指導力と教科の指導力の2つを高める必要がある。授業改善の手立てとして発問や働きかけを精選した。その結果、生徒が主体的に関わるようになったり、考える場面が増えたことなどが報告された。ろう学校における教師の役割の大きさから専門性を身に付ける必要性を痛感しました。

最後は、岡崎聾学校のコラム学習についての発表でした。コラム学習の実践事例より、コラム学習をすると知識、物の見方が広がることにより意欲が高まったこと等が報告されました。ろう学校では助詞など間違わないで書くことが大切であり、コラム学習は、書く力を付ける上でも良いと思った。

発表後の討議では、幼児、児童、生徒に構文力をいかに付けていくか意見交換をおこなった。討議の中では、聴覚障害者の先生方が積極的に発言をされていました。市橋先生がまとめられたように、日本語の力をしっかりと付けていくことが教科学習の前提になることを改めて感じました。


(9)総合的な学習の時間

鹿児島県立鹿児島聾学校 中野 卓栄

本分科会では,「子どもの生きる力の育成を目指し,創意工夫した取組,活動の在り方を考える」というテーマのもと4校から5つの実践事例研究が発表された。分科会の参加者は14名と少数ながらも活発な協議がなされた。事例は,小学部1例,中学部2例,高等部2例と各学部から出され,お互いに課題として感じていることや小中高それぞれの学部の実践をもとに協議が行われた。

日本聾話学校の発表では小学部5年生の大豆の栽培や納豆作りを通して,子どもたちが非常に興味関心を持って調べ学習を行い,お互いに協力して取り組んでいる活動の様子が伝わってきた。

宮崎県都城ろう学校の中学部では,学校行事と関連した実践報告で,修学旅行の事前学習で調べたことを文化祭の時に楽しい劇で発表するという見通しを持たせることで意欲を引き出した取組が紹介された。 筑波大学附属聴覚特別支援学校は,平成7年度からの継続した取組で,地域を題材とした総合的な学習の時間の経緯について報告があった。教科学習との関連を深めることによって,より確実な知識の定着がはかれており,教科指導の中で発展させていくことの大切さを感じた。

高等部については,都城ろう学校と鹿児島聾学校からインターンシップや社会見学を通しての職業観の変化について事前評価と事後評価等の報告があった。両校とも全体的には社会生活で必要なマナーの定着や,責任感や自信を持たせることにつながっているが,個別指導の重要性を再確認することができた。

また,午後からは発達段階に応じた指導の在り方と評価について,協議が行われた。ルーブリック評価表を参考にして,今後各学校で客観的にできる評価表の作成を進めていくことと,その活用方法を個に応じた指導と関連させていくことの難しさを感じた。都城ろう学校では,生徒の実態に合わせた独自の評価表を作成しており,観点等の項目やその活用について実践事例を聞くことができ非常に参考になった。

最後に青山先生から,今後,学校を卒業した後,たくましく生きていく力を身につけさせること,評価についてより深く具体的な取組についての話し合いがこれからの指導に必要なこと,今後の課題として生徒数減少,重度重複化に対する総合的な学習の時間の在り方を見直していくことが必要である等の助言をいただいた。 今回の研究協議に参加して,実践事例を発表していただいた先生方に感謝するとともに,学んだことを今後の指導に生かしていきたいと思う。


(10)重複障害教育

福島県立聾学校 山下 由美

本分科会では「障害を併せ有する聴覚障害児の,それぞれのニーズに応じた指導・支援の在り方を考える。」というテーマのもと,6校からの研究発表がなされました。

大阪市立聾学校からは,小学部で学年をこえて重複児童のグループを作り,重複児童同士の集団での関わり合いを大切にしながら「ひとりひとりが主役になれる集団づくり」に取り組んでいる様子の報告。愛知県立豊橋聾学校からは,「盲ろう児が見通しをもてる学校生活のために」生活経験を重視しながら,生活リズムや環境づくり等の支援や児童の変容の報告。山形県立酒田聾学校からは,「見通しを持って生き生きと活動する姿をめざして」として帯状の週日程表を活用しての取り組みや生活単元での取り組みの報告。福岡県立小倉聾学校からは,「生活場面における言葉の理解を高める指導法の工夫」について,文字カードやコミュニケーションボードを活用した文字の理解や,書き言葉によるコミュニケーションを促す指導についての報告。横浜市立ろう特別支援学校からは,「『ろう学校』におけるろう重複障害教育の可能性」として,小学部から聾学校に入学してきた児童の3年間の実践を通し,聾学校においてろう重複児童の教育を行う重要性・必要性についての報告。東京都立葛飾ろう学校からは,「聴覚障害児に対する教育アセスメントの実施」ということで,WISC-Vや新版K式発達検査を行い,その結果を個別の指導計画やその後の支援にどう生かしていくかの報告がありました。

各発表を受けて,参加者からの質問や,発表に関連して各校で行っている取り組みが報告されました。重複障害児と一口に言っても,併せ有する障害や支援の方法も違います。しかし,参加されたそれぞれの先生方が,児童・生徒の実態を把握し指導の目的を明確にし,彼らが学校生活を見通しを持って主体的に活動できるよう取り組んでいる様子をうかがい,研究発表だけではなく,それらの実践もおおいに参考になりました。最後に,座長の蓑毛先生がおっしゃたように,これからは,彼らの発達を支援していくと共に,将来を見据えた各学部段階に応じた指導を考え,校内や関係諸機関と連携していくことも大切だと思いました。今回初めて参加しましたが,児童・生徒達の指導に対する,先生方の熱い思いや教材研究・指導法に対する研修,その他いろいろな思いを含め,有意義な研究協議会でした。


(11)キャリア教育(進路指導)

岡山県立岡山聾学校 小野 信哉

今年度初めて校務分掌の進路指導係に加わり,聾学校での経験も浅く勉強中の者であるが,高等部の教育に携わる中,「キャリア教育」について少しでも知識を深め情報を得たいという気持ちで本分科会に参加した。私なりに分科会の様子を紹介したい。

本分科会では,「進路指導からキャリア教育へ。聾学校でのキャリア教育の在り方を考える。」というテーマのもとに,4校からの実践研究発表があった。

まず前半は,東京都立立川ろう学校からの「進路決定に向けて高等部でどのような力を身につけさせるか〜新たな進路指導の観点を見出すために〜」と愛知県立一宮聾学校からの「高等部における一人一人の進路実現に向けた支援の在り方」の発表が行われた。その後の研究協議では,発表の中から「自己認識の深化」,「コミュニケーション能力の向上」,さらに一宮聾学校が取り組まれていた「自己実現シート等について」を3つの柱として討議,情報交換が行われた。

後半は,島根県立浜田ろう学校から「一人一人のニーズに応じた進路支援に向けて〜島根県特別支援学校進路開拓推進事業の実践を通して〜」と神奈川県立平塚ろう学校から「職業教育の意義づけ〜『キャリア教育』の視点からとらえ直すための一考察〜」の発表が行われた。その後の研究協議では,「学校におけるキャリア教育推進の手順」が確認されたのち,発表の中から「進路指導とキャリア教育」,「卒業後の支援のあり方」,さらに平塚ろう学校が取り組まれていた試案をもとにした「キャリア教育の評価項目と評価について」を3つの柱として討議や情報交換が行われた。

最後に,まとめとして座長の方から次の7つの項目が確認された。「キャリア教育のニーズの原因」,「進路指導からキャリア教育へ」,そして「職業教育とキャリア教育」では,キャリア教育の定義,キャリア発達に関わる諸能力(4領域8能力)が確認された。続いて,「高等学校におけるキャリア教育の例」,「キャリア教育の現状と課題」へと進み,教員への研修の充実の必要性が確認された。さらに,「聾学校がキャリア教育を推進するに当たっての課題」として@適正な自己理解,Aコミュニケーション能力の向上,B学力の向上,C多様な学科の編成の4項目が確認された。最後に「聾学校がキャリア教育を推進するに当たっての利点 」として@学校間の連携を1校で実現できること,A家庭,地域との連携が,他の小学校,中学校,高等学校よりとりやすいことの2項目が確認された。

「キャリア教育」の分科会は,全日聾研としても今回が初めての設置であった。この分科会に参加して先進的な取り組みを知る中,キャリア教育について今後研修を深め,全校をあげてキャリア教育の推進に取り組まねばならない時期に来ていることを痛感した。


(12)寄宿舎教育

神奈川県立平塚ろう学校 桐野 涼江

本分科会では、「舎生が自分の将来を見据え、自立し豊かに生きるための、個に応じた寄宿舎教育の在り方を考える」というテーマのもと、パソコン・OHPを使って7本の発表と1本の紙上発表がありました。熊本五年先生の指導・助言をその都度、また全体助言を最後にいただく形で進められました。鹿児島県立鹿児島聾学校から、集団学習を通してコミュニケーションを高めるための試みや、よりよい社会生活が送れるようにルールやマナー、人との付き合い方などの実践報告がありました。長崎県立聾学校は、グループ研修会を通して社会自立に向けて、エチケット・マナーの習得を4年前より取り組み、冠婚葬祭について知りたいとの希望を取り上げ、寸劇を用いた実践報告がされました。愛知県立名古屋聾学校は、食生活に対する意識の高揚をねらい、アンケートによる調査・活用を実施、栄養士の協力で献立の工夫やマナーの指導などの報告がありました。北海道高等聾学校は、社会自立に向けて3年計画で個別指導に焦点をあて、1年次は指導項目表の作成に取り組み、2年次は、目標に対して具体的な指導方法を取り入れた指導項目表を活用した個別指導の実践報告がありました。茨城県立水戸聾学校でも、3年前より個別指導計画に取り組み、目標を明確にした計画を活用し、会話と正しいことばの習得を基本とした実践報告がありました。兵庫県立神戸聴覚特別支援学校からは、知的・視覚の重複障害がある、他傷行動を示す舎生に、代替行動を取り入れた行動変容プログラムで訓練をすることで、適切な行動を獲得し、他傷行動が軽減された実践報告がありました。島根県立浜田ろう学校は、卒業後の生活を考え、身辺語彙の拡充・整理整頓に重点をおいた社会生活の取り組みについて実践報告がされました。熊本五年先生より、豊かさとは何か、個に応じたとは一人一人のニーズに添う事、目標を持たせる事の大切さ、行事を通して自分自身に力がつく良い利点がある事、教えようとする人は学ぶことを忘れてはいけないなど、また、「わからない事の意識化」として、とまどいの表情を読みとる、知りたい意欲を育てる、色々な手段で知ろうとする意欲や態度を育てる、わからないと言える関係づくり、問い返すことばを教える、何がわからないかを意識させる、わからない事を急がないなど、心に残るお話をたくさん聞かせていただきました。今後の生活支援に生かしていきたいと思います


(13)情報保障

佐賀県立ろう学校 馬場崎 誠一郎

今年から設定された分科会であり、良い意味で過去に縛られない発表と問題提起がなされたと思います。午前中で発表だけを終える予定でしたが、聴覚障害教育の専門である聾学校から二つ、聴覚障害の学生を受け入れた短大と学院大学から二つという内容を考慮して、午前と午後に大きく会を分けて行われる事になりました。会の参加者も教職員・寄宿舎といった学校職員側だけでなく、大学・短大の学生、将来教員を志す若者、研究機関・手話サークル、そして地元熊本の情報提供センターと多彩な顔ぶれに加えて、発表に関わる聴覚障害の学生もいました。この分科会そのものが、スクリーンの位置、聴覚障害の参加者の座席、机と椅子の配置、通訳者の立ち位置と向き、発表や質疑の際にどちらを向くか、どのくらいの速度で喋るのか、当然手話の出来る者は手話を極力使う、といった様子で情報保障の小さな実践の場になりました。この点は是非ともこの分科会の長所として次回にも引き継いでもらい、聴覚障害があって情報保障を受ける側からの発表を毎回入れるべきと思います。 内容について、前半の情報保障を行う学校からの発表は、一つに「情報保障は環境整備」という視点で、どれだけ即時性を構築できるかをポイントに「1 活動する者」「2 製作する者(記録・まとめ・資料化)」「3 ライブラリ化する者(システムを管理維持する)」「4 資料活用する者」の4グループの循環によって、児童生徒の理解・共感できる視聴覚教材・校内放送の例を示されました。(例:活動する者は機器に詳しく無くてもよい) また『設備 = 手段ではないし、機器設備に情報内容が縛られてはいけない』とも示されました。もう一つは「身近な話題から離れた一般的な内容の正しい理解」という視点での研究と実践です。個々の生徒の理解力の差から始まって、どのような教材・手段が効果的であるのかを研究する中で「情報保障意識」というべき二つの事柄、自ら情報を取る「リテラシー」と、自らを受け入れる「レディネス」、これらを教育活動に結び付けていく事が課題として浮上しました。これは後半で『聴覚障害者自身が情報保障を求めていく意識』として表された事の発見とも言えます。

後半の発表はこれまで障害者を受け入れた事の無い大学と短大から「ノートテイク」「手話通訳」を中心とした情報保障を形作っていく様子や苦労、課題、気づき、そしてこうした取組を共有活用してこれから障害者を受け入れていく大学のために伝え残していく事柄を取り上げられました。ノートテイクという手段ではなく、大学という組織が障害者を受け入れていく為に本人・大学・ボランティア等が一同に介する連絡会議を定期的に持つ事がもっとも重要であった点などが興味深かったです。


(14)センター的役割

富山県立高岡ろう学校 中村 いずみ

特別支援教育の流れの中、地域の小中学校に在籍する聴覚障害児・生に対する支援、また他の障害を有する子どもたちへの支援等、聾学校の役割がこれまで以上に問われている。本分科会では「聾学校に期待されるセンター的な役割について、各校の取り組みを報告し合い、今後の聾学校における支援の在り方を考える。」をテーマに、7校8件の発表と大分県立聾学校による全国の聾学校に行ったアンケート(センター的役割についての動向)の結果報告(事後集録に掲載)が行われた。

まず、午前中は通級指導教室における取り組みを中心とした内容で、静岡県立沼津聾学校、大阪府立境聾学校、島根県立浜田ろう学校の3校からの発表があり、連携とシステム作りということが協議の柱となった。

通級の時間を中心とした直接的な支援だけではなく、通級児童・生徒の在籍校との連携や保護者への支援、連絡帳の活用やおたよりの発行など様々な取り組みが報告された。在籍校での児童や生徒に対する難聴理解授業の実施については、通級生たちが在籍校や地域でよりよく生きていく、生活していくという視点から、障害理解を育てる取り組みとして、また彼らを取り巻く環境への働きかけとして、センター的な取り組みの重要な一つであると強く感じた。実際に授業を受けた子どもたちからは「聞こえにくいということがとても不便だということがわかった。」「これからはゆっくりと話をしたいと思います。」などの感想が聞かれたということだ。

午後からは、聾学校のセンター的役割の取り組みを中心とした内容で、神奈川県立平塚ろう学校、栃木県立聾学校、宮城県立ろう学校小牛田校、佐賀県立ろう学校の4校の発表があり、多様なニーズに応じたセンター的機能の在り方と専門性の維持向上ということが協議の柱となった。学校はもともと地域社会に根ざした開かれた学校として積極的に貢献していくことが今までも求められてきたが、昨年6月、学校教育法の一部改正に伴い、特別支援学校にセンター的役割が法的に位置づけられた。このような状況の中、聾学校はどのような役割を果たすべきか、それぞれの学校での取り組みの中からいくつかの課題も見えてきた。新生児聴覚スクリーニングで発見された乳幼児へのフォローアップ体制、通級児童・生徒の在籍校への支援体制、聾学校の卒業生が就職した企業への支援等様々な関係各機関との連携が大切であることはもちろんであるが、根本的にはすべて人と人とのつながりであると言われた先生の言葉が印象に残った。聾学校に在籍している、していないに関わらず、地域の多くの聴覚障害児・生とその保護者、担当教員等から頼りにされる魅力ある聾学校を一丸となって作っていかなければならないと強く感じた。


(15)個別の教育支援計画

奈良県立ろう学校 中井 弘征

本大会では、「センター的役割」「個別の教育支援計画」の分科会が設けられ、「特別支援教育元年」を象徴する分科会となりました。本分科会では、「聴覚障害のある子ども達一人一人のニーズに合った教育支援計画の在り方、具体的な支援の方法や関係諸機関との連携等の在り方について考える」というテーマで5校から発表がありました。

長崎県立ろう学校、八戸聾学校、小倉聾学校の発表は、いずれも「個別の教育支援計画」の策定と活用に関わる内容で、平成17年度からの取り組みについて報告するものでした。

個別の教育支援計画については試行錯誤の中で取り組みを開始して3年、情報も少なく課題が山積しています。ですから、質疑応答や討議においても、様式や記載内容、保管の仕方、保護者(本人)の参画をどうすすめるか、保護者や関係機関への開示について、活用の仕方や引き継ぎ方など、具体的で多岐に渡る内容となりました。参加校の状況についても逐次情報交換を行い、また分科会独自にアンケートを実施ししていただいていたので、全国的な情勢を踏まえながら討議ができました。

討議の中で特に問題となったのは、個人情報を保護しながら個別の教育支援計画をどのように活用していくのか、という問題でした。この問題に関しては、座長の松田先生から、「個人情報まで開示する必要はない、本人と保護者と話し合って必要な情報だけを出す、そのためにはつなぐための別の文書が必要」というアドバイスをいただきました。

個別の教育支援計画においては、子どもたちの実態を適切に把握し、効果的な支援の方法について関係者が共有し支援をすすめていく必要があります。近年は発達障害への理解と対応が課題となっています。広島南特別支援学校からは、K-ABCを用いて客観的な実態把握を行っている取り組みについて報告がありました。問題提示の段階を設けて柔軟に対応しながらも、ガイドラインを設けて検査の信頼性を保つ工夫をされていました。大塚ろう学校からは、聴覚障害と発達障害を併せ有する児童に対して、学校と支援機関(NPO法人大塚クラブ)とが連携し、特別なニーズをもつ児童への支援をすすめている取り組みについて報告がありました。学校でやれることには限界があります。支援・連携の新しいモデルとなるものだと思います。地域の実情は厳しいですが、外部の支援機関の力をもっと利用するという発想がこれからの聾学校には必要だと思いました。 「様式がつながっていくということよりも中身がつながっていく必要がある」と座長の松田先生がおっしゃいました。「整備期間」を終え、これから「中身のつながりの充実」に力を注いでいかなければならないと思います。発表、討議、情報交換、助言、アンケートから多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。