熊本大会部別研究協議会

幼稚部研究協議会

熊本県立熊本聾学校 中島 由美子

幼稚部では、「コミュニケーション力の向上と日本語の習得を目指して」〜通じ合い、伝え合う経験を通して〜のテーマに基づいて授業公開・幼稚部研究会が行われた。午前中は、公開授業「朝の会」(3・5歳児)、指定授業「おはなし」(4歳児)、絵本の読み聞かせ「おむすびころりん」(全体)が行われた。「朝の会」では、朝の歌や月の歌を手話で歌い、動物になって歌詞を再現し楽しんでいた。また、家で作ってきた野菜の話や自転車に乗ってころんだ話等、子どもたちが自分の伝えたいことを表現し、伝え合う様子がみられた。

「おはなし」では、前日の活動でおこなった野菜いため作りの再現遊びが行われた。畑でとった野菜やお店で買った野菜を思い出し、材料は何を入れたか、どんな様子だったか手話・指文字・身振り・音声で話し合いながら言葉の拡充が図られた。子どもたちは、参観の先生方に、野菜炒めを御馳走する真似などのやりとりも楽しんでいた。また、野菜クイズでは、皮の長さやにおい、大きさ、重さで想像し、野菜の名前を出し合っていた。大勢の参観の中で、緊張もあったが、各々の個性が発揮できていた。

絵本の読み聞かせ「おむすびころりん」は、子ども全員に絵が見えるように実物投影機を使い、ホールで行われた。物語の中に出てくる歌に合わせて、一緒に踊ったり歌ったりした。絵を見て子どもが気づいたことを話し合うなど最後まで手話での読み聞かせを楽しんでいた。

午後の授業研究会では、手話導入後(平成16年度以降)のコミュニケーション力向上と日本語習得の基礎作りに向けての取り組みが発表された。幼児の手話DVD活用や生活語彙チェック表、動詞カードの活用、行事や単元に合わせた掲示の工夫等、様々な取り組みについて説明があった。その後の質疑応答では、指定授業や幼稚部の取り組みについて、相互読話や手話表現、拡充模倣の習慣化、絵本の内容の理解等について活発な議論が行われた。

最後に松本末男先生(筑波大学附属聴覚特別支援学校)からコミュニケーションを楽しむことや子どもの表現の取り上げ方等の助言があり、日本語の習得をどうするか、熊本聾学校の今後の取り組みに期待するという言葉でしめられた。その言葉を受け、指導技術を向上させ、継続していくことの大切さを改めて感じた。

たくさんの参加をいただき、ありがとうございました。


小学部研究協議会

熊本県立熊本聾学校 日熊 崇文

助言者に鳥越隆士先生(兵庫教育大学)を迎えて、活発な協議がなされた。  まずはじめに、授業者から授業について自評が述べられた。2年自立活動:「動詞の活用」の授業者松本孝久教諭から、学習シートを使った活用の場面で、説明が不足してしまったことと、授業の最後で文章を各場面で、文章がなかなか出てこない児童への手だてを考えておく必要があったことが述べられた。6年国語:「海の命」の授業者佐藤彩教諭からは、主人公の心情を読み取るときには、深い読み取りまでできていたものの、最初にその意見が出たので、他の児童がどのくらい理解できているかを確認することができなかったことが述べられた。また、最後の設問に対する意見がなかなか出にくかったので、前の場面や手話表現などに戻ることで理解を深めるようにすればよかったことが述べられた。

協議では、動詞の活用の系統性や指導方法について議論になった。動詞の活用の系統性については、資料を基にして検証や実態把握を行っている段階であり、これから試行錯誤しながら作成する必要がある。動詞の活用の指導方法については、活用のルールなどを楽しく学ぶことができる雰囲気と、わかりやすい掲示物の活用できっかけを作り、日記指導や作文指導などで定着を図ることなどの意見が出された。

また、手話と日本語をつなげるための取り組みについては、単元に入る前に意味調べの時間を十分にとることや、主人公の心情を十分に理解した後に日本語で確認をすることが必要であるという意見が出された。

最後に、鳥越先生から以下のような貴重なアドバイスをいただいた。  自立活動の指導計画は、まだまだ練り直しが必要であり、これから系統性を考えつつ、全国の聾学校で行ってほしい内容である。手話と日本語をつなげていく活動は必要であり、手話そのものの理解を深めることと、日本語の読み書きを理解させることをバランスよく行っていくことが大切であり、手話を使うことで日本語の入力は減ってしまうが、質を考えると手話を用いることも一つの方法である。手話の役割は、認知的な役割と言語的な役割があり、手話ビデオを使うことでそれらの力を伸ばすことができる。


中学部研究協議会

熊本県立熊本聾学校 杉谷 美輝

中学部会では、助言者に国立特別支援教育総合研究所の小田侯朗先生を迎え、「生徒が興味・関心を持つ、わかる授業の実践研究」に基づき意見交換・協議が行われた。

熊本聾学校中学部の紹介のあと、指定授業(2年社会科『戦国時代/ヨーロッパ人との出会い』)を行った東剛智教諭による自評が行われた。東教諭は、「戦国時代を通じて、南蛮貿易を幅広く取り上げることができた。授業中『自分が戦国大名なら何を輸入したいか』という問いに、ある生徒が“楽器を輸入したい”と答えた。その時、他の生徒から、“戦国時代にも聾者がいたのか?”と質問があった。今後の授業でどう活かせばよいか考えている。今回の授業は“集団の授業”を意識したが、授業の進行が速かったと思う。理解度などしっかり確認しながら進めなければいけない。資料の屏風も見る時間をゆっくり取れば良かった。」と述べた。

質疑応答では、板書の工夫、予習と事後学習とどちらが効果的か、歴史分野にはどうしても時間がかかってしまうがどのようにしているのか、など活発に意見交換がなされた。

その後の研究協議では、生徒が興味・関心を持つための取り組みや意見が出された。教材作りについて、聾の生徒が何を求めているかを知るためには聾者へのリサーチが必要なのではないか。聾学校の教科教員同士で意見交換ができる場やネットワークが欲しいとの意見があがった。

また、英語科でASLを用いる効果とASL導入前後の様子について質問があった。英語科担当が、「ASL導入前は中3で中1の教科書が終わっていない状況。聾者からも希望があり導入した。中学学習単語全てをASLで対応させている。文法的なことを押さえるため対応手話を取り入れた。現在では学年に対応した学習内容で授業できている。」と回答した。

講評・まとめでは、小田先生から「わかる喜び」のために、(1)明確に表現されたもの、明確に意味が理解できるものが必要。(2)誰のための手話・声なのかを考え、相手に届くものにする。(3)物を持っての手話はしない。(4)情報の出所は1箇所にする。など、授業についての基本的な注意点が示された。指定授業については、“楽器を輸入したい”という生徒の発言に対して、聞こえない人にとって楽器はどのような意味があるのか、その時本人に尋ね、教師がフォローしつつ生徒自身が答える方が良いと助言された。最後に今回の授業について、導入から工夫され大変面白く引き込まれると共に、前回までの段階に興味がわく良い授業だった、と講評を頂いた。


高等部研究協議会(数学・理科)

熊本県立熊本聾学校 寺尾 誠一郎

本会には、指定授業者2名を含む約100名が参加し、数学・理科の指定授業についての授業研究会と高等部のテーマである「社会自立に必要な日本語習得の支援を目指して」についての研究協議が行われた。

○授業研究会 1 指定授業 3年1組・Uグループ 数学U「積分法 定積分と面積」 曲線によって囲まれた面積が定積分によって求められることを視覚的に捉えることが授業のねらいである。視覚的に認識しやすいように区分求積法と定積分を結びつけた。数学Vの無限級数の考え方を学習していないため、それを補うものとしてコンピュータのフリーソフト「GRAPES」を活用。学力差のあるクラスでの授業展開について、また、IT機器を活用した授業について活発な意見交換がなされた。

2 指定授業 1年1組 理科総合B「遺伝の規則性」 理科総合Bの遺伝の学習。遺伝子が親から子へ受け継がれていく過程を理解することが授業のねらいである。授業は手話の活用と併せて、前半はパワーポイント、後半は黒板を使って展開した。科学的思考力の育成に必要な日本語習得のために、手話表現、具体物や類義語の提示方法をどう工夫するかについて活発な意見交換がなされた。

○研究協議  「聾学校の数学の授業、理科の授業」、「社会自立に必要な日本語習得の支援を目指して」の2本を協議の柱とし、会が進められた。テーマの「社会自立に必要な日本語」は、生徒の実態によって異なるため、その習得の支援にあたっては細かいグループ分けをおこなって対応している。概念と言葉の一致、獲得と活用について、理科の授業で使用された「一対」という言葉を中心に様々な意見が出された。また、具体的・抽象的な日本語を文章の中で理解させることが困難であり課題であるという悩みも出された。助言者の市橋先生は、聾学校において学年対応の授業内容を進めていくこと、個を基本にした授業の充実によって魅力ある聾教育を築くことの大切さを強調された。


寄宿舎公開・部会

熊本県立熊本聾学校 原田 寛子

午前は、施設公開と本校寄宿舎の概要説明があった。施設公開には、早くから多くの参加者がお見えになり、各棟の舎室や掲示物などを見学された。その後、食堂にて概要説明を行い、寄宿舎の規模や施設、教育目標や経営方針、個別支援の流れ、及び今年度の取り組みについて説明をした。舎生数はここ3年間ではほぼ横ばいであることやエアコンの設置状況について、さらには方針に基づいた取り組みの紹介などを行った。

参加者からは、「(自由な)時間がない中、自治活動に生徒の気持ちをどのように向けているのか」「舎生が中高生のみであるが小学部のからの入舎希望はないのか」などの質問が挙げられたが、事前に活動時間や内容について伝えることや、行事については目的を明確にし、生徒たちと話し合いながら実施している旨を伝えた。また、本校には入舎基準がない現状や、時間の有効活用、職員の対応については今後も引き続き検討が必要であることを確認した。

午後は、交通センターホテルにて「学部・寄宿舎研究会」が行われた。テーマを「寄宿舎における個別支援の実際」とし、事前に本校から「基本的生活習慣の確立に向けて」「個別支援の充実に向けて」「自治活動をとおして」「交流教育の実際と課題」「学力の向上・言語の獲得に向けて」という主題で10本(各テーマ2本)のレポートを提示した。

まずは指導員平山より、「個別支援の充実に向けて」のレポート発表を行い、家庭との連携を深めるためには、生徒本人の気持ちや保護者の意向を理解し、認めながら支援していく必要があり、それをもとにした情報交換の大切さについて報告した。

指導員磧上からは、「自治活動」に関するレポート発表を行い、生徒が希望した部において、責任感や意欲を持って取り組み、かつ達成感や自信へとつなげるための支援のあり方について報告した。

質疑応答では、本校で作成した個別支援の評価項目にある「思いやり」について、客観的な評価をするのが難しいのではないかという意見が挙がったが、評価は生徒個々で違い、決して他と比較するものではないこと、複数の職員で協議したものであり、生徒へは個別懇談にて具体的な事例を示しながら説明していく旨を伝えた。

また、保護者との連携に関しては、連絡の手段として帰省ノートや電話・FAXの利用等が挙げられたが、まずは職員と保護者が仲良くする様子を生徒にも見せることが大事だとの意見も述べられた。

助言者の熊本先生からは、「寄宿舎は何気ない日常生活の中で、積み重ねながら力をつけていく場ではないか。本校に掲げてあった『凡事徹底』という言葉の通り、時間をかけ、ゆとりをもって考えることが大事ではないか。また、実践のためには、職員間や生徒同士、保護者との討議を積極的に行い、それぞれの合意を尊重すればよりよい実践ができていくだろう。」との助言をいただいた。

最後になるが、全国の寄宿舎指導員及び参加者に本校の取り組みを見ていただき、意見や新たな課題を提起していただいたことは、本校にとっても今後の実践につながる良い機会になったと思っている。