11.心の教育と

健全な発達

大阪市立聾学校

阿佐 輝美

本分科会は「次代を担う子どもたちが可能性を生かして主体的に生きるため力をいかに育成するか」を主題とし,心理的な発達,社会性の育成,自己概念の発達,青年期の心理,精神衛生などの視点から寄宿舎教育を含め,聴覚障害教育に潜む諸問題を理解し,その支援のあり方について考えていくために,11本のレポート報告を基に質疑応答と,濱田豊彦先生の助言を頂く形で進められました。

今大会はアジア太平洋地域聴覚障害問題会議(APCD)も兼ねており,はじめに,台湾より,聴覚維持プログラム(HCP)の効果調査の報告がありました。HCPは最近始まったばかりのもので多く広がっていないが教師にプログラム作成を働きかける取り組みや,パンフレットについては生徒だけでなく両親にも見て学んでもらうようにしていると話されていました。

午前は学部の実践報告がありました。千葉聾学校からは,難聴学級通級児と聾学校在籍児を比較した自己認識の捕らえ方についての報告で,聾学校在籍児の方が困っているという意識は希薄という話があり,健聴者や異年齢の同障害者などいろいろな集団とのかかわりの大切さが話されました。立川ろう学校からは,小学部全体で「心に響く道徳(的)指導を目指して」のテーマで取り組まれた授業実践の報告で,「社会性」がキーワードとなったレポートでした。豊橋聾学校からは,小学部3年〜6年生の和太鼓の実践で,今年は14年目を迎え,地域交流の一環として,地域の行事や祭りなどの出演依頼も多く地域に根づいた取り組みの報告でした。岡崎聾学校では,中学部1年〜3年生の生徒の希望に合わせて,器楽・和太鼓・ダンスの3グループの縦割りに分かれて音楽の授業を行い,その取り組みのなかで,生徒たちが主体的に取り組んできた報告がされました。

午後からは,寄宿舎の実践と情報管理についての報告がありました。立川ろう学校では,‘寄宿舎の適時性’の議論で小学生が教育上入舎の対象から外れ,寄宿舎の活用のついて話し合われ,学習入舎・部活動入舎という新しい試みの報告がありました。今回は,その新しい試みの中でも学習を目的とした短期間の入舎(学習入舎)の舎生対応の様子ついての報告がありました。坂戸ろう学校では,H17年度より「期間入舎」を導入し,短期間の利用となったが,保護者からの「友だちとたくさん遊ばせたい」「寄宿舎でいろいろな経験をさせたい」と言った希望希望に応えるべく,小学生のあそびを豊かにし,楽しい集団遊びを保障するための工夫を凝らした実践報告がありました。岡崎聾学校からは,舎生会活動のレポートが出されました。受身になりがちな舎生が主体的に活動するために,舎生会活動の中に週番・部屋会・定例委員会を設け,舎生が意見を出し合い,協力して取り組むように支援することで,少しずつ自信を持ち,意欲的に活動するようになってきた様子の報告でした。千葉聾学校からは,高等部卒業学年を対象に「社会的自立に向けての支援」をテーマとして,福祉制度・行政サービスの利用の仕方・簡単な調理の仕方・地域社会とのつき合い・生活費などの生活学習に取り組んだ実践報告がありました。

情報管理については2校からの報告がありました。筑波大附属聾学校からは,火災や不審者対策などの避難情報を伝えるための文字放送システムがつくられて,3年目の現状と生徒のアンケートの報告がありました。葛飾ろう学校からは,「見える校内放送」への取り組みで,誰でもできる簡単な操作方法を目標に,見やすい画面の大きさなど工夫された点などについて報告がありました。

分科会のまとめでは,濱田先生からこの分科会でポイントになった「社会性」「円滑に参加できる豊かな集団を子どもたちの周りにつくる事」「主体性」「障害認識」「親の障害受容」「情報環境の整備」「優しい学校づくり」についての助言をいただきました。また,締めくくりの「既成の価値観に子どもをあてはめるだけでなく,一人ひとりを見て,本当に大切なことは何なのか考え続けることが大切です。」の言葉は,参加者の胸に残ったのではないかと思います。