9.高等教育・生涯教育

筑波技術大学

長南 浩人

T.口頭発表

1. 手話の言語分析,指導,通訳とベトナムにおける聴覚障害者への大学教育の開始

発表者 ジェームズ・ウッドワード,グエン・サイ・ホア,グエン・トラン・トゥイ・テェン(ドンナイ県・訓練省 ベトナム)

ベトナムにおいて手話言語分析,指導,通訳を通して聴覚障害者を対象とする大学教育が開始されたのは,2000年である。内容は,手話言語分析に関するプログラム,手話教育プログラム,大学入学プログラム,手話通訳のためのプログラムである。教育成果は,全国試験における高い合格率に表れている。

2. タイにおける聴覚障害者の高等教育と継続教育

発表者 マリワン・タマセン(スワンシット・ラジャハット大学 タイ)

 タイの大学では過去20年間の間に4つの有効なプログラムが行われた。高等教育のプログラムは,1984年に聴覚障害及び難聴の生徒たちのために作られた。現在,942名の聴覚障害および難聴を抱える学生が在籍している。

 スワンドゥシット・ラジャバット大学におけるサポートサービスは,オリエンテーションワークショップ,新入生のための特別なクラス,通訳,ノートテイカー,カウンセラー,チューターのサービスなどである。その他のサービスは,ワークショップ,インターンシップもある。ラチャスダ・カレッジラチャスタフォーディスエーチュード大学では,手話の通訳のためのプロフェッショナルなプログラムも提供されている。ドン・ボスコ・テクニカルスクールのサポートサービスは,通訳,カウンセリング,及びノートテイクである。

3. 韓国国立再活福祉大学における聴覚障害学生のための速記タイプ支援システム

発表者 チャン・スークミン(韓国国立再活福祉大学 韓国)

韓国国立再活福祉大学は2002年に設立され,インクルーシブ・エジュケーションを促進している。学生は,30から50%が障害を持つ学生である。障害を持つ学生のためのサポートセンターがあり,速記サービスを行っている。韓国で速記支援システムを用いて講義を行っているのは,韓国国立再活福祉大学のみである。速記支援サービスは,評価を受け,それは速記者にフィードバックされる。速記者には,トレーニングセッションを提供している。将来的には機械技術,コンピューター技術の発展とともに,ほかの大学でもこういったようなものが可能になり,韓国の国内,全国でこのようなサービスが提供されるものと思う。

4. 韓国テグ大学における障害を持つ学生たちのための高等教育

発表者 ビュン・ハ・キム(テグ大学 韓国)

1995年に韓国政府は障害を持つ学生のための大学進学のための特別なプログラムを導入した。以降,高等教育機関における障害学生の数が増加したが,2003年から高等教育に進む障害を持つ学生の数が減少した。その原因は,1つ目は障害を持つ生徒は物理的には授業に参加しているが,授業の実際のやり取りの中で除外されてしまうような状況になっているということ,2つ目は,障害学生の個別のニーズに応じた支援が提供されていないことである。したがって高等教育の一般的な特徴としての長所を維持しながらも障害を持つ学生個人に合った適切な教育を提供すべきであるということが重要な課題となる。聴覚障害学生は,手話通訳,ノートテーカーを使うことがでる。キャンパスライフでの支援は,奨学金,電子情報ルームの供与,精神的な衛生面に関するコンサルテーションである。将来の課題は,大学全体の文化を変え,教育的なコミュニティを作っていくことである。

5. 3年生筑波技術短期大学,卒業生の就職状況

発表者 村上芳則(つくば技術大学 日本)

筑波技術短期大学は開学以来,就職率は,ほぼ100%であり,ここでは卒業生の就職状況を分析して述べる。就職が良好な理由として,設置された専門分野が理工系,技術系であること,多くのものが学校推薦制で就職していること,産業構造が本学と合うこと,日本の企業体質が障害者には働きやすいことの4点を挙げることができる。他にも障害者雇用促進法などによる法的なサポート,適切な教育方法や指導上の配慮による教育内容とレベルの維持,企業体質を含めた社会の意識と理解も要因と言える。

6. 韓国ナザレ大学における障害者のための教育の動向−聴覚障害学生を中心に−

発表者 エイブラハム・スンガン・イム(韓国ナザレ大学 韓国)

韓国ナザレ大学は,聴覚障害の学生のための特別カリキュラムや支援のための施設,そのほか学習のための機器を持っている。また優先エンロールメント在籍があり,これはキャンパスのオリエンテーション,特別寮,自立統合センターなどで優先的な扱いを受けるものである。自立生活支援統合研究センターでは,障害者のためのスポーツチームのサポート,学生の生活のための相談センターの設置,コミュニケーション訓練リアルタイム字幕提示コンテストを実施している。また手話言語通訳専攻を国際的に幅広い言語に展開していくつもりである。

7.聴覚障害学生高等教育支援ネットワークの構築と今後の課題。

発表者 白澤麻弓(筑波技術大学 日本)

筑波技術大学は,2004年から聴覚障害学生支援に関する情報の蓄積と共有,それから発信を目的として聴覚障害学生支援に積極的な大学とネットワークを構築するという取り組みを始めた。ネットワークの連携大学,機関は,全国で13大学,機関である。ネットワークの名称は,日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク,愛称で,PEP Net-Japanという。PEP Net-Japanの活動は,3つに分けることができる。1つ目に実態の把握と情報の共有,聴覚障害学生支援に関する教材や資料の作成,資料を用いた研修や情報の発信である。今後はネットワークの拡大,特に大学の経営者レベルでのネットワークも構築していけないかという構想が出てきている。

8.アジア太平洋地域の聴覚障害者を対象とした成人教育における手話言語の開発

発表者 グラディス・タン・ジェームズ・ウッドワード(手話言語聴覚障害研究センター)

ここでは,手話言語の実用的な辞書作成プロジェクトについて話をする。いくつかの目標がこのプロジェクトにはあり,それはアジアにおける手話を維持すること,個々の聴覚障害を持った,聴覚障害を持った人のための手話言語学という分野を確立させること,手話言語の使い手をトレーニングすることであり,このトレーニングを成人の聴覚障害プログラムの中に位置づけることである。そして質の高い手話言語の辞書,それから参考教材を作ることである。このプロジェクトは,ベトナム,カンボジア,フィリピン,香港で行われている。

U.講演とポスター発表

(テーマ,発表者のみ記載)

(講演)

・「聴覚障害者のための国際連合(PEN)アジア地域における聴覚障害者高等教育の発展」

講演者ビル・クライマー:NTID準教授 PENコーディネーター 

(ポスター発表)

・専門性の高い講義等の内容を実時間文字生成するための手法に関する研究 

三好茂樹(筑波技術大学)

・聴覚障害者のための国際大学ネットワーク(PENインターナショナル):世界中の成人男女の聴覚障害者に対する聴覚教育の推進

E・ウイリアム・クライマー(ロチェスター工科大学)

・「つく・糸展」の開催―卒業生の作品製作を支援するために−

林 菜美(筑波大学附属聾学校)

・聴覚障害者の生活困難問題への教育的・福祉的対処とその地域的基盤―大正期から昭和線前期の福岡県と和歌山県―

佐々木順二(筑波大学)

・卒業生の職場適応の状況と就労に関する指導,支援

石原保志(筑波技術大学) 

・携帯電話による個別学習―聴覚障害学生への試験的な教材配信―

後藤豊(筑波技術大学)ほか5人

・ヒトと機械の共同作業によるリアルタイム音声―字幕変換システムの研究

黒木速人(筑波技術大学)

・日米手話動画辞書の開発

松藤みどり・新井達也・大塚和彦(筑波技術大学)

・聴覚障害学生のための学年別ルビつきリアルタイム字幕提示システム

小林正幸・西川俊・三好茂樹・石原保志(筑波技術大学)