4.コミュニケーション

山梨県立ろう学校

古屋 貴恵

昨年度も全日聾研の教科指導分科会に参加させていただき,今年度はコミュニケーションについて参加させていただきました。

「伝え合い」の質の向上に関する発表では,一方通行的な対話ではなく,相手に伝わるように意識して対話をしていくことの大切さが発表されました。三年間の実践研究の中で,「伝え合う」ことに関するチェック表を作成し,教員がビデオ分析をしたことで,教員の意識が高まり,それが指導に生かされたとの話がありました。子ども同士,教員と子どもとの対話では,お互いに何を言っているのかが分かること,つまり,共通したコミュニケーション手段があることが前提となる必要だと思いました。実践例のVTRの中で,子どもの発言場面で子どもが下を向いたまま発言するという場面がありましたが,そういう場面では音声以外の配慮も必要であるとの意見が出されました。視覚的補助手段を活用することの大切さも挙げられていました。しかし,視覚的な情報を掲示するときに,視覚的な情報をただ提示すればよいというのではなく,話されている内容と視覚的な情報とがうまくつながるように提示する方法についても工夫が必要です。具体的にどのように提示していくと良いのかという取り組みについての例も調べてみたいと思いました。

アドベンチャー活動の取り組みについての発表では,体を動かして一つの目標に向かって一緒に活動していくことで,子ども同士が解決方法を話し合っていく姿が見られるようになったという話でした。意見を言ったり,自分の考えを発表したりする話し合い活動は,コミュニケーションの力を培っていく大切な活動です。聾学校の児童・生徒の少数化と言われていますが,このような方法を用いて年齢を問わず参加できる活動をすることで,話し合いの場を持つことができることが分かりました。

聴覚主導の私立学校としての取り組みでは,教員との一対一の対話時間を設けているという報告が印象に残りました。聞こえない子どもたちのアイデンティティは,まわりの環境,保護者や教員たちの期待なども大きく影響するということを感じました。

聞こえない子ども達の言いたいことをしっかりと汲み取ることは,ろう教育の基本のことだとは思います。そして,汲み取った上で,どうコミュニケーションの質の向上を図るのかを常に考えていくことが重要であると改めて確認されたように思います。

午後からは国外の発表でした。手話言語学的なことが多かったように思います。自然手話と対応手話の違いに関する発表もありました。その中に,韓国手話(自然手話)には,日本語で言う助詞,単語等の組み合わせのように,手形,配置,身振り,動きの方向等の組み合わせからなっていることが発表されました。これは,日本手話(自然手話)でも同様なことが報告されており,手話が音声言語と同じように言語構造をもった言語として立証するものの一つだと思います。

そして,手話の表記方法の開発について,写真を絵のように編集し,手話の細かな動きなどもわかるように表記するという発表がありました。音声言語では表記すると音の抑揚などがなくなるのと同じように,手話では表情などの細かい動きがなくなってしまいます。それをいかにわかるように表記するのか,今後の研究に期待したいと思います。

こうしてみると,手話に関する発表や手話を導入した上での実践報告などが以前と比べて増えてきたように思います。しかし,一つ残念だったことは,情報保障の面が十分でなかったことです。ろう者,聴者,外国人,関係なくすべての参加者に,リアルタイムに同じ情報を共有できるようにすることが,本当の情報保障だと思います。それがもっと十分になされていれば,深く議論をすることができ,もっと意義の深い分科会になったと思います。十分な情報保障体制を整えるには多くの課題があるとは思いますが,ろう教育に関連性の高い「情報保障」だからこそ,早急に解決していくべきことだと思いました。そのことが,今後のろう教育の発展にもつながるのではないかと期待しています。