3.自立活動
分散会T
言語

山形県立酒田聾学校

赤坂 宜紀

「一人一人の生きる力を育む言語指導のあり方とは」というテーマのもと,国外からのも含め11件の発表があった。

発表内容は,@聴覚障害がもたらす言語発達への影響を調査した研究 AITPAやK-ABC,手話会話力テストなどを利用し,認知面の発達や手話力の実態を把握した上で,手話を基本とした教育を推進している研究 B言語能力を高めるためのさまざまな工夫や配慮をした話し合い活動に関する研究 C言語能力を改善し高めるために生徒の自覚や意欲を喚起させる工夫を行った中学部・高等部における研究の4つに分けられる。

@田中(筑波大学)は,読書力診断検査において,健聴児に比べ,下位項目の「語い力」,「文法力」に課題を抱える聴覚障害児が多いことを明らかにし,ことばの内面的な指導が読解力向上において重要であることを指摘した。デニス チャン(香港中文大学)は,文法面で能動態と受動態を表す言葉の獲得が困難で,構文発達が健聴児と比較して遅れる傾向にあるとし,第一言語としての手話の確立が大切でないかとの考えを強調した。

A藤井(三重校)は,手話によるコミュニケーション力は高いが書き言葉での理解が弱い児童の日本語習得を図るために,ITPA等の結果を活用した成果と課題を報告した。阿部(広島校)は,K-ABCの利用と「手話会話力テスト(SLPIT)」の開発・実施を通じて,実態把握に即した指導の必要性を発表した。

B青木(群馬校)は,小学部で毎日1校時に行っている「話し合い」の時間をビデオを交えて報告した。内容をプリントにして家庭学習にすることで,5Wの理解や接続詞の使用に改善があった。加藤(一宮校)は,聾学校での話し合い活動で留意すべき事柄について長年の経験から得られた知見を述べ,小学部低学年の国語科指導では,「読みの傾向(粗さと弱さ)」を見極め,「ある程度自力読みや話ができる文章」を用意する必要性を強調した。廣木(水戸校)は,演劇活動を中心にして,話し合い活動,国語,読書を結びつけた実践研究を報告した。演劇活動がもたらす全人的な発達と相まって言語力の改善が見られる。

C小谷(鳥取校)は,中学部生徒に対し獲得させたい言葉に触れる環境を意図的に作り,表出語彙の記録や語彙テストを実施した成果と課題を報告した。木戸(石川校)は,助詞を系統的に学習できるテキストを自主作成し,検定試験を実施したところ意欲的な生徒が増えたと報告した。日高(浜田校)は,中高部生徒の「学びあい」を大切にし,週1時間を合同自立活動としたところ,生徒同士のかかわりや文章表現の姿勢にも良い変化が見られたと報告した。石井(群馬校)は,TPOに応じた適切な言葉遣いや態度について,普通高校と聾学校との意識調査を行った。意識の違いや,分かっていても実行できない実態を明らかにし,課題として取り組むことの重要性を強調した。

最後に中山座長から,「どの研究も優れたもので学ぶことが多かった。コミュニケーションモードが異なっていても,曖昧な認識状態に置かれがちな子どもたちにどのような意味理解をはかっていくかが課題であり,書き言葉の獲得に欠かせないことが明らかになった。」とのコメントがあった。実態が違う子どもたちにかかわっていく時の基本的姿勢について多くのことを学ぶ会となった。